2010年7月17日土曜日

ツインレイクスカントリー倶楽部=大手の下で蘇った“バブルの遺産”

 バブル期に接待ゴルフ場として開場し、その後、経営破たん。大手ゴルフ場運営会社や外資系企業の下で再建を果たす――。ツインレイクスカントリー 倶楽部もそんなゴルフ場の一つだ。経営していた日東興行㈱が1997年に和議申請(その後、民事再生手続きに移行)。現在は㈱アコーディア・ゴルフグルー プに属する。関係者には辛い過去だが、一般の利用者にとってはこのパターン、決して悪い話ではない。施設は豪華なままだし、プレー代もぐっと安くなったか らだ。

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 豪華なクラブハウス

 ツインレイクスCCがあるのは群馬県藤岡市。群馬県と埼玉県の県境に近い丘陵地帯だ。開場は1988年10月。堂々とした外観のクラブハウス。パ ンフレットにある「壮麗で優美な空間」という表現もあながちオーバーとは思えない。メインロビーに一歩足を踏み入れて「これはバブリーだ」と直感した。
 1階のかなりのスペースをプロショップが占めている。ゴルフクラブあり、ウエアあり、地元産品ありと品揃えの豊富さは圧倒的。たくましい商魂を感 じる。受付脇に「試打クラブ」の案内が出ていたので、女性スタッフに尋ねてみると、「無料でお試しいただけます。何本でも構いませんよ」と嬉しい返事が 返ってきた。
 ロビー中央には高い吹き抜けがあり、明るく、開放的。「これだけ空間が広いと空調代がかさむだろうな」と想像してしまったのは“不景気育ち”のやっかみか。
 そんな思いを抱きながら、らせん状に造られた階段を上る。2階には1階以上に広々とした空間が広がる。ゆったりと並べられたソファー。大きな窓からは強い夏の日差しが降り注ぐ。
 奥の「特別室」のようなコンペルームを覗くと、テーブルや椅子、ソファーが鎮座し、高級感ある木製の厚い扉が接待需要旺盛だった当時をしのばせる。「全部で3室、最大100人の収容が可能だ」という。


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 見物ついでに、2階レストランにも足を運ぶ。正面、左右が全面ガラス張り。眼下には人工池が見え、周囲の景観もなかなかのものだ。テーブルごとの間隔が広く、柱のデザインや照明にも格調の高さが感じられる。今もまだ接待ゴルフ場としての雰囲気を失っていない。
 「何でもコスト、コスト」の時代には、こうした贅沢なクラブハウスはもう建設できないのではないか。バブル経済には負の側面が多いが、一方で、こ うした非日常的な楽しみを持つ豪華ゴルフ場を残してくれたのも事実だ。それを「邪道」と非難するか、「素晴らしい」と評価するかは人それぞれだが・・・。
 今回は「開場当初からの会員」という知人に同伴をお願いした。その方によると、開場当時は施設の内外に花々があふれ「花のゴルフ場」という愛称で 親しまれていたという。コース上には四季折々の花が咲き乱れ、来場した女性には特別に1,000円分の花束がプレゼントされたそうだ。
 さすがに今はそんな気配はなく、ソフト面では館内に流れるクラシック音楽が高級感を漂わす程度だ。その音楽も「昔はピアノの生演奏だった」そうだから、様変わりではある。

 景観の美しい、素直なレイアウト


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 さて、肝心なコースである。「ツインレイクス」という名前からして「池だらけのゴルフ場」を想定していた。確かに2番ショートは池越えの名物ホール。続く3番もティインググランドの直ぐ前に池があって、難しさと美しさが同居する戦略的なホールだ。
 しかし、その後は「池がらみ」は思ったほど多くはなかった。OUTコースは素直なレイアウトで、景観の美しいホールが多いという印象。INコース はややトリッキーながらフェアウエーは意外にフラット、横幅もしっかり確保されている。キャディさんは「開場当時、山をかなり削ったんみたいですよ」と漏 らす。
 さらに聞けば「ツインレイクス」とは、ゴルフ場に隣接する鮎川湖と三名湖の2つを指すのだという。鮎川湖はコースに面しているが、三名湖はプレー にはほとんど邪魔にならないコースの東側にある。コース内でハザードとなる池は戦略性を高めるために別途、配されたもののようだ。

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 コースメンテナンスは良好。夏場で深いラフに苦戦するはずだったが、そうでもなかったのは、フェアウエー周辺のラフが広範囲に刈り込まれていたため。
 「ボールが沈んで、出すだけで精一杯」というシーンはほとんどなかった。

 グリーンの速さは7・5フィート

 グリーンも遅く感じた。昼休みにキャディマスター室で確認したところ「速さは7・5フィート」。普段、8~9フィートでプレーすることが多いので、易しいというより慣れるまでに時間が掛かった。
 ティショットをOBした場合に4打目を前から打つアドバンスティは全ホール(ショートホールは前3)に設置され、プレーが淀みなく進むよう仕組まれている。これは真剣にゴルフを楽しもうとするプレーヤーにとっては面白くない措置だ。
 特に13番のロングホール(レギュラーティから509ヤード)の「前4」は、グリーンセンターまでの残り距離が200ヤードの地点に設けられてい た。仮にティインググランドから3打目を打ち直したら300ヤード以上飛ばないとここまでは来ない計算。「さすがに前過ぎるよね」というのが一緒に回った 全員の意見だった。
 綺麗に刈り込まれたラフ、遅めのグリーン、アドバンスティの設置などはスコアを崩さず、ゲストに気分よくラウンドしてもらうための配慮と感じた。接待ゴルフ場としてスタートしたことが、こうしたコース設定に結びついているのかもしれない。

 本来は難コース

 「なら、さぞ良いスコアで回ったのでしょうね」。そんな突っ込みを入れられそうだが、実は他のコースでのスコアと比べて大差がなかった。全体の距 離はバックティから7,129ヤード、レギュラーティからでも6,412ヤードと十分。コースレートはバックから73.4、レギュラーから69.8で、本 来、易しいコースではないのだ。
 平均800㎡の広さを持つ、ベントの1グリーン。スピードが遅めとはいえ、乗ったボールの位置によっては常に3パットの危険を伴う。1993年から5年間、「ダンロップツインレイクスレディースオープン」を開催した実績も持つチャンピオンコースである。
 ラフを伸ばし、高速グリーンに仕立てれば、上級者でも苦戦する難コースに変身するはずだ。今はそんな「難しさ」と「ラウンドのしやすさ」とのバランスを重視して設定、運営しているのだろう。
 「花のゴルフ場」の名残りはあった。9番のティインググランド近くにはインド原産の夾竹桃(きょうちくとう)という珍しい木が植えられていた。所々に花壇が設けられ、季節外れのアジサイが咲いていたりと、それなりに目を楽しませてくれる。


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 コース上で気になった点は2つ。1つは「コースレイアウト図」を設けたホールが少なかったことだ。1番、9番、13番、15番と要所には設置されているが、どうせなら全ホールに設置して欲しい。
 もう一つが近隣の牛舎からの臭い。樹木に隠れて姿は見えないが、この日は風向きが悪かったのか16番、17番ホール周辺ではちょっと異臭を感じた。

 割安プラン設定に熱心

 プレー代が安くなったことも、このコースの大きな魅力だ。OFFシーズンの平日通常料金(セルフプレー、以下同)は8,500円、土日祝日で 14,500円。ハイシーズンでも平日が9,500円、土日祝日が17,500円。平日なら特にAG(アコーディア ゴルフ)サイトから申し込むと6,000円台、7,000円台でプレーできる割安プランが多い。
 安い「Webユーザー料金」の利用は組数限定なので、特に休日分を申し込む際には早めの予約が必要だ。
 キャディ付かセルフプレーかは選択可能。キャディ付ならプラス3,150円。今回は初めてのラウンドだったのでキャディ付でプレーしたが、「最近は(料金の安い)セルフで回られる方が多くなった」(受付スタッフ)そうだ。
 乗用カートの前面に「Play Fast」「上手よりも速いがカッコイイ」と大書した紙が貼ってあったり、GPSゴルフナビゲーション「Walkalong」(530円)を熱心に貸し出していたのもセルフプレーヤーが増えてきたことの表れだろう。
グリーン上のピン位置は赤、白、青で区分けされ、分かりやすい。乗用カートはコンディションの良い日にはコース内へも乗り入れられる。
 キャディさんの水準はまずまずだった。各ホールで「狙い目」をしっかりとアドバイスし、目土は小まめに実行。
 「(打つのは)もう少し待ってください」と進行管理にもかなり神経を使っていた。
 「昔はキャディさんもみんな若い子だったんだけどね」と会員氏はぼやいていたが、そんな不満は、今は言うまい。
 ホームページ(HP)を見ると「緊急特別企画プラン」「2サム保証割増なしプラン」「午後スループラン昼食付」など様々な割安プランが並んでいる。
 通常料金を説明してくれた女性スタッフが逐一「昼食代は別ですが」と断りを入れていた理由も分かった。「昼食代込みの割引プラン」も少なくないからだ。ゴルフ場がこうした特別プランの設定に熱心なのは、会員でない一般の利用者にとっては有り難い。

 たくましい商魂
 
 プレースタイルもかなり融通が利く。「2サム保証」や「スループレー」「早朝プレー」はもちろん、日没の心配のない時間で回れるなら「1・5ラウンド」も可能だ。
 コンペへの対応はさらに柔軟だ。「プレー日と参加人数が決まりましたならば連絡を下さい。トータル予算を伺い、ご希望に合わせてプレー料金やパー ティープランを決めさせて頂きます。食べ物は1,500円から3,200円まで4コースありますが、いくらでも相談に応じます」。あの豪華なコンペルーム も「人数に合わせて仕切りを変えますから、少人数でもお使いいただけます」と滑らか。営業の熱心さには、こちらが戸惑うほどだ。
 昼食時、朝方のぞいたレストランでくつろぐ。ランチメニューは15種類ほどあって豊富。料金は1,050円から1,890円まででリーズナブル。ビール(生中)は680円。ツマミは約20種類。ビールを飲んでいると女性スタッフがワゴンにツマミ類を乗せて巡回してきた。
 テーブルの上には「お土産」用として「ビーフカレー」「肉じゃがコロッケ」「カレーナン」(1,200円~1,800円)の案内。さらに精算時に はロビーの一角にワゴンが出現し、「お土産」用として「宇都宮餃子」や特製のケーキ類を販売していた。商魂のたくましさは終始一貫している。
 ちなみにレストランでは「朝食バイキング」を実施中。料金は630円。「これを楽しみに朝、早く来られる会員さんもいらっしゃいます」。

 快適な練習場、浴場

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 ゴルフ場施設の中で忘れてならないのが練習場。ここのドライビングレンジは爽快だった。右側に防球用の大きなネットが張ってあり、開放感にはやや 欠けるものの、正面までの距離は200ヤード強。打席数は12。ボールは紛失球を拾い集めたのか新品と中古品が混在。パター練習場は比較的広かった。ただ しアプローチやバンカーの練習場はなし。
 もう一つの大切な施設である浴場も明るく、快適だった。湯温がぬるめだったが、夏の暑い時期を考えての工夫と思われる。窓の外には小さな池。その 周囲には石を配した枯山水風の中庭。脱衣場にはクーラー、冷水機、マッサージチェアー、大型扇風機など必要なものがひと通り備わっている。

 「送迎バスなし」が残念

 最後に利用者の立場からみて、残念に感じた点を記したい。最大の不満は送迎用のクラブバスがないことだ。東京の練馬ICから上信越自動車道の藤岡ICまで約1時間。同ICで降りてからは9kmほどの距離にあり、クルマで来るには比較的便利。
 しかし、電車利用だとJR高崎線の高崎駅からタクシーで約30分、5,000円近く掛かる。今回は東京方面から来た同伴者を新幹線の本庄早稲田駅でピックアップして来場したが、このルートでも所要時間はほとんど変わらなかった。
 経営主体が変わる前は「高崎駅との間でクラブバスを運行していた」そうなので、このサービス低下は痛い。施設もコースも高水準なので、送迎バスが復活すれば集客力は確実に高まると思えるのだが、どうだろう。
 もう一つがクラブハウス前の大きな人口池。遠目には美しくても側を通ると水底に噴水用のパイプ装置が見え、興ざめしてしまう。かつては綺麗な水が 噴き出していたに違いないのだが、今、そんな様子は感じられない。流れが止まった水は、色も冴えない。時々、稼動させているのだろうか。せめて昼食時くら い往時の美しい噴水を見たかった。