2010年8月21日土曜日

日高カントリークラブ=壮大な松林に囲まれた名コース。会員重視で高い敷居

 日高カントリークラブは埼玉県南西部に位置し、東に「東京ゴルフ倶楽部」「霞ヶ関カンツリー倶楽部」、南に「武蔵カントリークラブ」といった日本 を代表する名門コースと隣接する。都心に近いこともあり、周囲には他にも人気ゴルフ場が密集。全国でもトップレベルの“ゴルフ場銀座”を形成している。そ んなライバルたちに伍して「名門・日高」と呼ばれ続ける魅力はいったいどこにあるのだろう。今回は会員の方に同伴プレーをお願いし、予約を取ってもらっ た。

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(東コースの1番ミドルホール。堂々たる林間コースだ)

 朝7時30分、東コース1番ホールに立つ。フラットで思ったより広いフェアウエー。どっしりと構えた太い松林が壮観で美しい。武蔵野の面影を残す、落ち着いた雰囲気の林間コースだ。
 グリーンは2つ。キャディさんが大きな声で「今日はAグリーンです。このホールではセンターから右サイドを狙って下さい」と叫ぶ。

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(せり出した枝がショットの邪魔になる)
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(要所要所に配されたバンカー。難度を高める)

 打ったボールは忠告とは反対の左側のラフ。そんなに悪い当たりではない。
 だが、2打目地点に行って困った。大きな松の枝がせり出し“空中ハザード”になっていてボールを上げられない。しかも、グリーン手前には大きなバンカーが口を開けて待っている。
 「グリーンとグリーンの間を狙って打とう」と構え直したが、そこにもバンカーが2つ。花道からパーオンを狙うにはキャディさんの言う通り、センターから右サイドに打つしかなかったのだ。
 最初、広く感じたフェアウエーも、そんなコース設計を考えれば落とし所がグッと狭まる。しかも多くのホールで、狙い場所の周辺に必ずハザードがある。まさに“良くできたコース”。厳しさの洗礼をいきなりスタートホールから受けることになってしまった。

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(東コースの2番は美しいショートホール)

 続く2番は池越えのショートホール。バックティから190ヤード、レギュラーティから173ヤード。難しかったのは距離の長さだけではない。グ リーンの傾斜だ。かなりの受けグリーンで、奥からは速い。松林、池、白いバンカー。美しい「絵になるホール」なのに、早くも景観を楽しむ余裕を失う。
 キャディマスター室に「本日のグリーンコンディション」として「グリーンスピード8.0フィート、刈り高4.5mm」と表示されていたことを思い出す。
 会員氏は「前回は9.0フィートで、3.5mmだった。今日はかなり遅めだ」という。それでも傾斜のきつい所ではボールが良く転がり、ショートパットも苦戦を強いられた。
 3番ホールは右に緩やかに曲がるミドルホール。「さあ、ここから仕切り直しだ」と深呼吸。だがバックティから468ヤード、レギュラーティからでも430ヤード。パー4なのに何とも長い。
 4番ロングホールもバックティから553ヤード、レギュラーティから525ヤードと十分な長さ。キャディさんに「飛ばない人は大変ですね」と同情を求めると「東の8番はレギュラーティからでも556ヤードありますよ。頑張ってね」とハッパを掛けられた。
 この日ラウンドしたのは「東コース」「西コース」「南コース」。名門コースなので頑張って早朝から回り、全27ホールをラウンドすることにしたのだ。同伴した会員氏は「他のコースより1ラウンドで3打程度スコアが悪くなるのでは」と話す。
 開場は昭和39年1月。堂々とした長い松林が50年近い歴史と風格を物語る。「これでもコース上の風通しを良くするために木を切り、昔からの会員さんにはつまらなくなったとお叱りを受けることもあります」とキャディさん。
 平坦な林間コースなので景観に変化が少なく、単調になりがちな面はある。しかし、戦略的ホールが多く、プレーしていて飽きることはない。
 この東コースでは、使用グリーンによって攻め方が大きく変わる5番ホール。グリーンの難しさが印象的な6番ショートホール、レギュラーティからでも 430ヤードを越える7番ミドルホール。同じく長い、長い8番ロングホール、バンカーの数に思わず尻込みさせられる9番ホールといった具合だ。

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(距離のあるショートホール)

 西コースも難易度は同じ様に高く感じられた。印象的なホールを一つだけ挙げるとすれば7番のショートホールだろう。レギュラーティから約200ヤード。池越えの美しいホールだが、みな手前の美景より遠くのピンをじっと見つめる。

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(南コースへはバスに乗って行く。珍しいスタイル)

 昼食を挟んで、午後は南コースをラウンドした。こちらは東、西コースに比べると距離はやや短い。その分、ハザードが戦略的に配置され、より正確なショットと冷静なコースマネジメントが求められる。

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(南コース6番。距離は短いが、初めてだと戸惑うレイアウトだった)

 特に「売店」を過ぎた後の6番ホールからは、短くても厄介なホールが続く。池やクリークがフェアウエーを狭め、癖のあるグリーンがプレーヤーに悲鳴を上げさせる。
 9番最終ホールのフェアウエーは一見広そうに見えるが、実は左半分が大きな池。みんな右の林にティショットを打ち込み、ホールアウトするのに四苦八苦。「最後までコースにいじめられたね」というのが同伴者の感想だった。
 会員氏が「南コースには魔女が住んでいる」と予言。キャディさんが「短いからといって甘く見るととんでもないことになりますよ」と警告していたが、実際、その通りの展開になってしまった。
 コースレートは東が71.1(レギュラーティ、Aグリーン使用)、西が69.6(同)、南が69.3(同)。
 ラウンド中、この数字以上に難しく感じた理由が、後になって分かった。グリーンがみな砲台型で速いこと。2つのグリーンの間にしっかりとしたバンカーが設けられていること。そして距離が長いことなどだ。特にバンカーは砂が少なく、硬く、難しい。
 ここで好スコアを出すには、技術と経験、プラス精神力が欠かせない。普段、100前後のスコアで回っている人が最も苦戦するコースではないか。
 景観的には所々に立つ送電線の鉄塔と高圧線がせっかくの林間美を損なっていたのが残念だった。ティインググランドから眺める景色よりも、グリーン上からティインググランド方向を振り向いた時の方が美しく見える場所が多かったのも、この高圧線の存在が大きいように思えた。
 コース全体はアップダウンが少なく、歩きやすい。フェアウエー中央に数ヶ所、小さなプレートが埋め込んであり、グリーン中央までの残り距離が明記されている。これは便利だ。

 
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(「売店」は周囲の景観に馴染んでいた)

 途中の「売店」もコースの景観に良く馴染んでおり、スタッフの対応も気持ち良かった。
 プレースタイルは全て「キャディ付の歩き」。乗用カートに慣れてしまうと歩くのが大変になるが、この日の同伴者はみな「やっぱりゴルフは歩かなきゃ」と大歓迎。「歩く方が健康にもプレーのリズムにも良いしね」と嬉しそうだ。

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(スターティングテラス周辺の植栽は手入れも十分)

 スタート前、無謀にも同伴者の1人が「バックティから打ちたい」とキャディさんに頼んだ。「メンバーさんのハンディキャップが16以下でないとダ メです」とピシャリ。後にキャディマスター室で尋ねたら、「必ずしも16以下でなくても可能です。ただし、後の組に迷惑がかかるようなら前からお願いしま す」と案内された。
 1.5ラウンドは夏場なら「3:30分までに(最後のハーフが)スタートできればOK」。ただし冬場は「2:00までに」と厳しくなり、実際には難しい。
 2サムプレーは「特に混んでいない限り可能」だが、キャディフィが5,775円(4バッグは3,990円)かかる。「休日は結局、他の方とご一緒してもらうことになりやすいので、あまりお受けしないようにしています」。
 この日のキャディさんはかなりのベテランとお見受けした。コースやグリーンは熟知。「ここは右サイド、バンカーの左を狙って」とか「グリーンの傾斜はこうだけど、芝目が逆だから、思ったほど曲がらない」等々、身振りを交えて熱心にアドバイスしてくれた。
 安全や進行管理にも注意を払っていた。ティインググランドでは「皆さん、飛ぶ方ばかりなので(打つのは)もう少しお待ち下さい」と声を掛けられた。お世辞と分かっていても、こう言われれば皆、素直に従うしかない。
 難点はちょっと動きが鈍かったことか。ホール間を移動する際にプレーヤーの後ろをゆっくり歩くことがあり、次のティインググランド近くで何度か待たされた。ラフに入ったボールを探す時もマイペース。せっかちな性格の客だと不満を抱いたかもしれない。
 ベテランや「派遣キャディ」さんが増えるのはどこのゴルフ場でも同じ傾向。日高CCでも「最高齢のキャディは73歳。募集すると若い人が来るが、ルールなど勉強しなければならない事柄が多く、直ぐ辞めてしまう」そうだ。
 ラウンド中「印象が地味なのはなぜだろう」と考え続けた。一つはコース内に花が少ないことだ。ティインググランド脇に時々草花が植えられている が、気持ち程度。キャディさんは「これでも女性客が増えてきたので、花を植えたんですよ」と苦笑いする。「春は梅や桜。普段目立たないこぶしなども花を咲 かせて綺麗なのでぜひ、お出で下さい」。

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(クラブハウスの玄関。綺麗だが地味)

 もう一つの答えが地味なクラブハウスの存在だ。数年前にロッカーや浴室などを改造、ずいぶん綺麗になったそうだが、それでも豪華な感じはしない。 むしろ質素と表現しても良いくらいだ。比較的年配の個人会員さんが多く、「ゴルフ場はコースが第一。クラブハウスなどは」という“正統派”の意見が強かっ たのかもしれない。あとは経費の問題か。
 ただ地味とはいえ、特に不満を抱くような個所があるわけではない。ロッカーは木製で黒。高級感がある。あまり利用されているようには見えなかったが、独立した「ストレッチルーム」もある。
 トイレも清潔で気持ちが良かった。個室(1階6室)は横幅が広く、使いやすい。洗面台には使い切りタイプの歯ブラシが用意されていた。「会員にお医者さんが多いからかもしれません」と女性スタッフさん。
 売店は小ぶりで、ゴルフ関連商品は最小限のものしか置いていない。地元特産の「ハムセット」(3,000円)は当日生産したものを帰りに購入できるシステム。お土産として重宝されそうだ。
 浴室もまずまず。窓の外には石を配した小さな庭園が造られている。ただ、その奥にはゴルフ場の施設があり、遠景は期待できない。洗い場はセパレーツで区切られ使い勝手がいい。脱衣場には冷水が用意されていて思わず2杯、グイっと飲み干した。血圧計も常備。
 レストランは2階。広さは普通。目の前に広めのテラスがあり、そこからの陽光がまぶしい。浴室とは違い、ここからの景観は壮観だった。東コースの1番ホールと西コースの9番ホールが眺められる。その周辺には良く手入れされた樹木。
2階ラウンジには白いランの鉢植えが並んでいて、ここだけは妙に豪華な雰囲気だった。
 昼食を取っていると、眼下に前半戦を終了したプレーヤーたちがクラブハウスに戻ってくる様子が見える。どの組もワイワイガヤガヤと賑やかだ。きっと思いがけないドラマが何度も展開されたのだろう。ここはそんなゴルフ場である。
 昼食メニューは1,050円の「BLTサンドウィッチ」や1,365円の「特製豚丼」などで価格はリーズナブル。売れ筋は1,260円の「本格イ ンド風チキンカレー」。涼しくなると「日高名物、ちゃんぽん麺」(同)が登場、人気を集める。コーヒーのお替りは自由。生ビール(中)は672円。ミル ク、コカコーラの420円は取り過ぎでは。ツマミ系は315円から630円まで16種類と豊富。
 日高CCが特に大切にしているものが2つある。1つは「会員」。もう一つが「環境」だ。最近では会員制とは名ばかりで、会員の紹介がなくても自由 に予約し、プレーできるコースが多いが、ここは今でも「平日は会員の同伴もしくは紹介が必要」で、「土日、祝日は会員同伴が原則」だ。
 HPを見ると、コンペも土日、祝日は開催そのものを認めていない。会員制クラブの本来のあり方を堅持したいという強い意志が伝わってくる。名門ゴルフ場としての矜持と理解する。
 ただ、一般のゴルファー(ゲスト)の立場からすれば、善し悪しは別にして、日高CCの「開放度」は低く、敷居が高いと言わざるを得ない。
 このHPではもう一つ「日高カントリークラブ環境貢献」を強調している。CO2の年間吸収量が極めて大きいことや、芝の刈りかすや落ち葉を堆肥として再利用しているなどを紹介、「環境重視のゴルフ場」であることをアピールしている。
 
 また「動画ブログ」や写真付きのコース案内などもあって、HPとしてはかなり充実している。平成14年にはISO9001認証を取得、小集団活動などを通じて顧客満足度を上げる運動も展開中だ。

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(広々としたドライビングレンジ。ネットの左側にアプローチなどの練習場がある)
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(芝の上から打てるアプローチ練習場)

 施設面で忘れてならないのが練習場。クラブハウス近くにあるドライビングレンジは15打席、200ヤード。ボールは1箱(24球)が210円と割 安。その隣には本格的なアプローチとバンカー(2つ)の練習場がある。ここには専用ボールが用意されているので、何球でも時間のある限り芝の上からボール を打てる。これは嬉しい。
 会員以外の利用者にとって最大の難点はやはり「プレー料金」の高さだろう。プレーフィー、キャディフィ、それにゴルフ場利用税、ロッカー使用料を加えた費用は平日で1人24,405円。土日祝日だと28,605円必要で、飲食代などを加えると3万円を突破する。
 今回同伴してくれた会員氏が「休日だと(高くて)ゲストを誘いにくいんですよね」とぼやいていたのもうなずける。
 受付で「ゴルフ場利用税(1,200円)廃止に向けた署名活動を展開していますのでご協力ください」と女性スタッフさんが声を掛けてきた。もちろん署名した。
 最近は、連休の最終日などに「平日料金適用日」を設けたり、平日に「フレンドリーゴルフ大会」や「七夕(クリスマス)オープンゴルフ」を開催。夏場や冬場に「季節優待制度」を設定するなど、営業面での工夫も増えてきた。
 それでもまだ他のゴルフ場に比べると、一般のプレーヤーが利用できる割安プランは極めて少ない。名門ゴルフ場としての「品格維持」と「集客力アップ」という課題の狭間で、今後も経営陣の試行錯誤が続きそうだ。
 アクセスは比較的良好。最寄り駅はJR川越線の武蔵高萩駅。タクシーで1メーターの至近距離。時間に余裕があれば歩いてでも行けそうだ。
 送迎用のクラブバスが出ているのは西武新宿線の狭山市駅。平日、土日祝日とも朝4便。約20分。クルマの場合は圏央道「狭山日高IC」から約5分。都心から近いのはこのゴルフ場にとって大きな魅力である。
 
 予約の受付は電話のみ。「今どきネット予約がないなんて」と驚いた。これも「名門」ゆえなのだろうか。

2010年8月14日土曜日

千葉カントリークラブ 北越谷パブリックコース=石川遼もラウンドした安さ自慢の河川敷コース

 「千葉カントリークラブ」は50年の歴史を誇る関東でも有数の人気ゴルフ場だ。日本オープン選手権を開催した実績を持つ「梅郷コース」のほか、林 間の美しい「野田コース」「川間コース」の計3コースからなると思い込んでいた。ところが、この「北越谷パブリックコース」も実は同じ系列のゴルフ場だっ た。昭和41年に同クラブがゴルフの大衆化と健全なスポーツとしての振興を目的に開場したのだという。東京に近い。プレー代は安い。「これは穴場かもしれ ない」と勇んで出かけた。

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(土手の上から見た景色。典型的な河川敷コースだ)

 住所は埼玉県吉川市。江戸川を挟んで千葉県野田市に接する埼玉県の東端だ。最近はその吉川市の北に位置する松伏町の方が有名かもしれない。石川遼プロの出身地だからだ。
 
 実際、コースは松伏町に隣接。ゴルフ場でも「石川遼がまだ小さい頃、お父さんとここで薄暮プレーなどをされていたようです」と話す。想像するだけでもウキウキする。
 今回は夏休みの1日を利用し、クルマでゴルフ場へと向かった。常盤自動車道の流山ICで降りて一般道を15分。江戸川の土手伝いにクルマを走らせると、左側に大きな屋根のクラブハウスが見えてくる。建物の周辺は駐車場。男性スタッフ2人が笑顔で出迎えてくれた。

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(クラブハウス。ゴルフ場らしいデザインで、遠くからでも目立つ)

 クラブハウスに入ると右手が受付。奥に簡素なソファーが置かれたラウンジ。左手に貴重品ボックスと2階に上る階段という構成。階段周辺とラウンジ手前の2ヶ所に販売用のゴルフ用品が並び、狭いスペースを少しでも有効に使いたいというゴルフ場側の意図が伝わってくる。
 コースに向かう出口に自動販売機が並んでいるのが目に付いた。「ここでの支払いはみな現金かもしれない」。そう直感して受付のスタッフに尋ねて見ると、「はい、そうです。必ず現金をお持ち下さい」。
 ロッカーはスチール製でサイズは普通。100円を投入して施錠。鍵を開けると100円が戻ってくる仕組み。早速、現金が必要になった。
 自販機で飲み物を購入し、歩いてコースへと向かう。クラブハウスとコースのちょうど中間にある土手(堤防)の上から全体を眺める。想像していた通りの広々とした河川敷コースである。

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(広々とした練習場。屋根がないのでラウンド前から汗びっしょりに)

 土手を下りる階段の先に、乗用カートと手引きカートがズラリ並んでいる。右側がドライビングレンジ。打席数は40。距離も250ヤードある。左側はかなり遠くまでコースが続く。
 
 目に入ってくるのは江戸川にかかる大きな「野田橋」と直線的に並んだ柳の木、グリーン上のピンフラッグ。他の河川敷コースに比べても樹木が少なく、ちょっと殺風景な印象も受ける。

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(ここで練習ボールを購入、飲み物も販売していた)

 プレハブ工法で造られた簡素な建物がプレーの前線基地。練習ボールもそこで買う。「はい。200円です」。1箱24球。ボールの印字がバラバラだったので紛失球を集めたものと思われるが、そんなひどいボールはなかった。
 ドライビングレンジの隣に小さなパター練習場。河川敷コースのグリーンは重く、パター感覚が他とは違うので練習に時間を費やした方が良いと思い、長めに練習した。
 「ちょっとボールが跳ねる感じ」。芝のせいか、打ち方が悪いのか・・・。
 アプローチやバンカーの練習場はない。後で分かったが、実はこのコース、バンカーが一つもない。「バンカー0」のコースは初めてだ。バンカー練習場がないのも当然である。
 プレーは全てセルフ方式。乗用カートか手引きカートかは選択制。乗用カート利用の場合は、通常のプレー料金にプラス1,000円が必要。

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(10番ホール脇の池には古い小船があった。河川の雰囲気づくりを狙ったものなのだろうか?)

 この日はINコース10番ホールからのスタートだった。順番待ちをしていると男性スタッフがティインググランド近くにやって来て、何か話を始めた。
 「ローカルルールの説明をします。隣のコースに行ったボールはペナルティなしで元のコースに戻して下さい。乗用カートはコース内に乗り入れOKです。ホールとホールの間にある溝は滑りやすいのでご注意下さい」
 同伴者は「見渡したところOB杭はほとんどないし、ボールを曲げて隣のホールに打ち込んでも、ペナルティなしで戻せるんですって」とニコニコ。早くも楽勝ムードだ。
 確かにストレスは少なかった。河川敷コースの割にはフェアウエーが広い。というよりラフの部分が溝近くまで綺麗に刈られている。

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(所々に池を配してあるが、あまり綺麗な池ではなかった)

 樹木は柳の木が点在しているくらい。池はあるが、なぜかホールとホールの間に設けられていることが多く、ショットの邪魔にはほとんどならない。江戸川もコース内からは見えない。当たり前だが、全ホールフラット。
 これだけハザードが少なければ、初心者でも十分に楽しめる。ラウンド中、若者や女性客の姿が目立ったのも納得できた。ただ、初心者が多いたためだろうが進行は遅れ気味で、ショットする際に何度も待たされた。この点では少しイライラした。
 また、INコースはパー3のショートホールが4つもある変則的なレイアウト(パー34)。全体の距離も短く、レギュラーティからだと2,605ヤードしかない。
 河川敷コース特有の小さな砲台グリーン(2つ)と、芝目の強さ、重さには手こずったが、それでも皆“ローカルルール”にも救われ、今年の自己ベストに近いスコアで前半戦を終了することができた。

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(ティインググランドの中には荒れ気味な所もあった)

 コースメンテナンスに対する不満が出るのではと心配していたが、「河川敷だから、こんなもんだよ」と同伴者。スコアが良ければみな、気も大きくなる。
 後半に回ったOUTコースは、INとは逆にパー5のロングホールが3つあり、距離も3180ヤード(バックティからだと3400ヤード)とやや長め(パー37)。
 昼食を挟んですっかり気持ちが緩んでしまったこともあり、同伴者たちはみな「後半はダメだ。調子が悪い」。一転してスコアが伸び悩んだ。
 「ここはコース途中に休憩所(売店)もないし、自販機もない。トイレも簡易型が1ヶ所あるだけだ」。午前中は出なかった不満もこぼれる。
 「緊張感のあった午前中にOUTコースを、疲れの出てくる午後にINコースを回ればもっと良いスコアで上がれたのではないか」とぼやいたが、すでに時遅し。
 「スコアをコースのせいにしてはいけない」と先輩格の同伴者にたしなめられてしまった。
 一般的に河川敷コースはハザードが少なく簡単そうに見えるが、狭いフェアウエーや砲台グリーンに悩まされ、意外にスコアがまとまらないと言われる。
 このコースも変則的なコース設計、変則的なローカルルール下ではあったが、やはり同じように「河川敷の罠」にはまってしまった。
 次回は最後まで気を引き締めて回り、ぜひとも「今年の自己ベスト」を出したい。

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(ホールごとに距離が違うだけで、景観はみな同じ。番号を示す大きな看板が印象的)
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(ティショットで池が視界に入る8番ロングホール。記憶に残った数少ないホールだ)

 写真を見て頂ければ分かるが、景観は平凡で、単調なホールが続く。目の前に池があった8番ロングホールが印象に残ったくらいで、後は「利根川か荒川の河川敷でも見たことがあるようなホール」と錯覚するほど。
 
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(太い柳の木が並みの河川敷コースではないことをアピール)

 唯一、太くて立派な老柳が40年を越える歴史の長さを誇っているように見えた。
 全部ではないが、ホール間の移動距離が長いところがあり、手引きカートでは回るのが大変かもしれないと感じた。その点、移動だけでなくコース内を自由に走れ回れる乗用カートは楽で、ほとんどのプレーヤーが追加料金を支払って乗用カートを利用していた。
 コースレイアウト図はティインググランドにはもちろん、乗用カート内にも置いてなかった。特に厄介なハザードがあるわけではないし、見晴らしが良く、ドッグレックもないのだから不要との判断だろう。
 ボールは思いのほか無くした。各ホールの両サイドにある溝にボールを落とすと、見つけても足元が不安定で拾えない。溝周辺の草むらに消えてしまったケースもあった。
  「あぁ~、新品ボールだったのに・・・」。後でゴルフ場のスタッフに拾ってもらい、朝の練習場で復活してくれることを願うばかりだ。
 クラブハウスはハード面もソフト面も、合理的かつ効率的にできていた。例えば2階のレストラン。長方形のスペースに椅子とテーブルが2列に並び、一方の端に厨房が設けられている。その側には食券の自動販売機。
 「ビール(生中)500円」の他、昼食用には500円の「ラーメン」から1300円の「うな重定食」までごく一般的なメニューが15種類。「カレー」「ハンバーグ」「ヒレカツ定食」・・・。
 HPには「味と値段を見事に両立させたレストラン」と紹介されているが、ちょっと自慢し過ぎのような気がする。
 朝食メニューは「和定食」「洋定食」(ともに700円)など4種類。モーニングコーヒーは150円でお替り自由。さらにアフターメニューとして300円から600円のツマミ類が各種。
 みな自販機で食券を購入し、厨房の女性スタッフに手渡す。その際に番号札を受け取り、しばらく席で待っていると番号が呼ばれ、注文品を取りに行くという仕組み。返却も全てセルフサービスだ。
 レストランからの景観は期待できない。窓は大きいのだが、クラブハウスに平行して走る土手の側面が見えるだけ。クラブハウスと土手の間に比較的スペースがあり、圧迫感がないのが救いだ。
 浴室も清潔で必要な機能こそ揃っているものの、贅沢感を求めると肩透かしを食う。窓の外には「目隠し」のパネルが置かれているため、どんな場所に面しているのかも中からは分からない。
 脱衣場には窓がなく、扇風機も置いてなかった。天井には埋め込み式のクーラーがあるが、スペースが狭いのでラッシュ時には混雑し、湯上りの熱気にクーラーが力負けしているように感じた。
 何より驚いたのは、小さなフェースタオルだけでバスタオルがなかったこと。そういえば洗面所にも布製の小タオルがなく、ペーパータオルだけだった。
 もう一つなかったのが「スコアカード ホルダー」。カードを裸のまま使い続けたので、終盤ではヨレヨレになってしまった。経費削減のためというのは分かるが、やはりバスタオルとカードホルダーは欲しい。
 料金は安い。自信があるのだろう。HPには「平日、土日祝ともに首都圏随一の低料金。コストパフォーマンスの良さは多くのお客様に定評があります」と堂々と謳っている。さらに「2サム保証」「1・5ラウンドへの追加が無料」と安さを強調している。
 通常料金は年間を通し、平日で4500円、土日、祝日で8000円。このほか「学生割引」(学生証を持参すれば年齢不問)や日没まで回れる「薄暮プレー」(施設の利用不可)など、特別料金でのプレーも可能だ。
 10月から2月までの「薄暮プレー」は平日、何と「2500円」。冬場という条件付とはいえ、首都圏でこの料金は確かに安い。
 料金は朝の受付時に支払う前金制。予約は3ヶ月前の1日から受け付ける。
 交通アクセスは、クルマだとかなり便利。都心からも高速道路が空いていれば1時間足らずだ。電車だとJR武蔵野線の「吉川駅から定期バスを利用する」とHPの案内にはある。
 が、定期バスは運行本数が少なく、結局は駅からタクシーを利用することになりそうだ。所要時間は20分強、料金は約2,700円。クラブバスはない。
 どうせタクシーを利用するなら東武野田線の野田駅からの方が近い。ここからなら約10分、1500円程度で到着できる。

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(江戸川とコースをまたぐ大きな橋。一日中、クルマの往来が途切れることがない)

 ただし「朝は江戸川を渡る橋の所が混むので注意が必要」(受付スタッフ)。東京駅からは吉川駅も野田駅も所要時間はさほど変わらない。
この「北越谷パブリックコース」でゴルフを覚え、野田市にある「川間コース」(セルフプレー)でレベルを上げ、チャンピオンコースの「野田コース」や「梅郷コース」でゴルフに燃える――。
 利用者の中には、こんな千葉カントリークラブでの“三段跳び”を夢見ているゴルファーも多いのではないかと想像した。

2010年8月8日日曜日

ニュー・セントアンドリュース ゴルフクラブ・ジャパン=緑いっぱい。本場とは違う丘陵コース。難度は高い

 関東には800ヶ所以上のゴルフ場がある。その中で最もインパクトの強い名前といえば、間違いなくここだろう。正式名称は「ニュー・セントアンド リュース ゴルフクラブ・ジャパン」。場所は栃木県大田原市。都心からは遠い。その分、集客に様々な工夫を凝らしている。ネーミングもしかりだ。コースは那須高原に 近い山間部で、本場英国の荒涼としたリンクスとはだいぶ雰囲気が違うが、戦略性豊かな難コースであることに変わりはなかった。
 「今度“日本のセントアンドリュース”でプレーしてみないか」。そんな呼びかけに、ゴルフ好きがサッと集まった。 「一度プレーしてみたかった コースだ」「あの有名な石の橋はあるのかな」「トミーズバンカーを体験してみたい」――。名前だけでこんなに話が盛り上がるゴルフ場は、そうそうないだろ う。
 
 コースは全部で27ホール。「ニューコース」(OUT,IN)と「オールドコース」(9ホール)からなり、開場は1975年5月。名前とは逆で、最初に「ニューコース」が誕生し、後から「オールドコース」が加わったという。
 「ニューコース」はバックティから6718ヤード、ハンディキャップ72.6。レギュラーティから6232ヤード、同70.2。「オールドコース」はバックティから3392ヤード、同72.8、レギュラーティから3159ヤード、同70.3。
 レギュラーティからでもハンディキャップが70を超えると、アベレージゴルファーには結構、難しく感じる。
 「ニューコース」はあのジャック・ニクラウスとデズモンド・ミュアヘッドの設計。ホームページには「J・ニクラウス自身が少しハードに設計しすぎたと省みた程のタフなホールが連続します」とある。なかなかの脅し文句だ。
 各ホールにユニークな名前が付いているのも特徴。今回ラウンドした「ニューコース」(IN)の場合、例えば14番のショートホールは「事件」、18番の最終ホールは「勝利」。
 「事件」は開業当時、あまりの難しさから最高16組が待たされた事件があったことに由来する。「勝利」は往年の名プレーヤー、トム・ワイスコフが「ここで4日間パーが取れればトーナメントでも勝てる」と言った話から命名されたという。
 
 そんな“予備知識”をたっぷりと仕込んで、いざゴルフ場へと出発した。道中、同伴者は「今日は大叩きしそうだ」と不安がっていたが、冷静に考えれば、全 長距離が特に長いわけではなく、「グリーンも速くない」と聞いていたので、「気持ちがプッツンしなければ案外、好スコアで回れるかも」と内心、希望も抱い ていた。
 朝の練習では調子が良かった。300ヤードもある広々としたドライビングレンジ。練習ボールが全て黄色のカラーボールだったのにはびっくりしたが、「今日は曲がりが少ない」と確信。
 スタートのINコース10番ホールのティインググランドに立つ。レギュラーティから480ヤードの短めのパー5。ホール全体が豊かな緑に囲まれ、フェアウエーのゼブラカットも美しい。ラフも綺麗に刈り込んである。
 テレビ中継で目に焼きついているあの「セントアンドリュース」とはまったく別世界だ。「綺麗な丘陵コース」。それが最初の印象だった。

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(狭いフェアウエーが難度を高める12番ロングホール)

 難しさを強く感じ始めたのは12番のロングホールから。打ち出しが狭く、その先のフェアウエーもうねりが大きい。遠くのグリーンを眺めているだけで、肩に力が入る。妙な緊張感。
 「あれっ」。練習場で真っ直ぐ飛んでいたボールが曲がり始める。
 グリーン近くに来てさらにコースの難しさを実感した。アゴの高いバンカーがしっかりと配され、グリーン上もアンジュレーションがきつくて、簡単には寄らないし、入らない。
 広さに驚いていたら、同じグリーン上にもう一つピンが立っていた。15番のグリーンとつながっているのだ。これは珍しい。
 
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(13番のティインググランドから見た箱庭的な景観)

 13番ホールでさらにもう一つ、不安要素が加わった。池だ。「絶景ホール」と呼んでも良いくらいの美しいホールだが、右側に長く延びた湖面がトラブルを予感させる。

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(美景と戦略性が同居する16番ホール。後ろに見えるのはクラブハウス)

 その池の周りをぐるっと回るように14番から16番までが続く。特に池に隣接している16番ホールは「The World Greatest Golf Course」に選出されたこともある美しいホール。「美しいほど難しい」という格言がそのまま当てはまる名物ホールである。
 ただ、奇妙な体験もした。難しい池越えの16番砲台グリーンを見て、2打目を冷静にレイアップした。残り100ヤード弱。ところがほぼ同じ地点に「前3」のアドバンスティがあり、一打目を池に落とした同伴者が直ぐ後ろで同じ3打目を打っているのだ。
 「えっ、こんな前からなの」。プレー進行のためとはいえ前過ぎる「前4」や「前3」は、やはりゲームをつまらなくする。
 レディースティがレギュラーティより100ヤードも前に設定されている個所もあった。難コースなのでこれはやむを得ないと思うし、短すぎると思う女性は後ろのフロントティやレギュラーティから打てば良い。しかし、前過ぎるアドバンスティの位置は再考できないだろうか。

068
 (豪快に打ち下ろす17番ショートホール。ティインググランドはやや荒れ気味だった)

 17番は山岳コースを思わせる豪快な打ち下ろしのショートホール。18番ではグリーン周りのバンカーの多さに目を丸くしながらも、「耐えるゴルフ」で午前のプレーを終了した。
 昼食を挟んで、午後はいよいよ「オールドコース」に挑戦する。同コースはクラブハウスから約2kmも離れている。クラブバスで移動するのかと思っていたら「モノレールに乗って行きます」とキャディマスター室のスタッフさん。「モノレール?」。

076
(「オールドコース」へ向かうモノレール)

 そのモノレールは本格的なものだった。田園地帯の空中を一本のレールが走り、時速35kmのスピードで特製車両が行ったり来たり。以前、「日本珍 百景」としてテレビ番組でも紹介されたそうだ。栃木県のゴルフ場に来てモノレールに乗るとは夢にも思わなかった。同伴者も「凄い、凄い」を連発。みなコー ス以上に強い衝撃を受けたようだった。

079
(田園地帯を走るモノレールはまさに“珍景”)

 3分半ほどでオールドコースの「モノレール駅」に到着。新しい乗用カートに乗り換えて1番ホールに移動する。モノレールに乗っていたのは我々1組 だけ。もう前の組の姿はまったく見えない。同様に、後ろの組もしばらくはやってこない。「ほとんど貸し切り状態ですね」。みんな嬉しそうだ。
 この「オールドコース」はスコットランドの技術者やコースデザイナーなどの協力を得て設計されたという。先に石川遼プロらが活躍した全英オープンの会場が同じ「オールドコース」だった。
 荒々しい景観、深いラフ、強い風、寒さ、目まぐるしく変わる天候・・・。そんなイメージが強いが、ここは豊かな緑、照りつける真夏の太陽、良く手入れされた綺麗なフェアウエー、人工的な池とクリーク、打ち上げ、打ち下ろしと状況はかなり異なる。
 「自然を巧みに取り入れた」点は共通しているが、「リンクスを彷彿とさせるコースです」といわれると、ちょっと首を傾げたくなる。
 
105
(アゴの高いバンカーには悩まされ続けた)

 それでも「オールドコース風」のしつらえは随所に見られた。最も目立ったのがバンカー。直径2mから3mの小さくて深いタコツボ型がグリーン周りにボコボコと造られている。
 1978年、全英に初挑戦した中島常幸プロが3日目、17番ミドルホールでパーオンしながらファーストパットをミス。深いバンカーにつかまり、脱 出に4打を要して結果「9」。優勝戦線から一気に脱落したことにちなんで名付けられた『トミーズバンカー』も、そっくりさんが8番ホールにあった。

097
(本場の「スウェルケンブリッジ」を再現。第一打が橋の手前まで飛び、思わず記念写真)

 1つ前の7番ホールにはあの有名な「スウェルケンブリッジ」がある。今回、珍しく第一打が会心の当たり。そのブリッジの直ぐ手前まで飛んだのは最 高の思い出になった。それまでは難コースに翻弄され、気持ちも落ち込んでいたが、たった1打で元気に。これこそアベレージゴルファーである。
 「地形をそのまま生かした」というのは確かなようで、「ニューコース」に比べるとマウンドが多く、変則的な部分も目に付いた。3番と5番のフェア ウエーは途中でクロスしているし、5番は「ドライバー禁止」。今回はセルフプレーだったので、余計にトリッキーなコース設計に戸惑った。
 このゴルフ場は「キャディ付」と「セルフプレー」とを選択できるので、初めての場合は経費を惜しまずに「キャディ付」を選んだほうが賢いだろう。また詳細な「コースガイド」も用意されているので、これも必携だ。
 帰りも同じモノレールに乗ってクラブハウスまで戻る。男性的な「オールドコース」でプレーした後に見る「ニューコース」は午前中の印象とは違って、穏やかでゆったりしているように見えた。
 どちらのコースもホールごとの変化が大きく、ラウンドしていて飽きない。スコアは悪かったが、「もう少し東京に近ければ、何度でも来て挑戦したいね」というのが全員の正直な感想。地元のゴルファーがとても羨ましく思えた。
 順序が逆になったが、交通アクセスとクラブハウスなどの施設についても紹介したい。
 まずアクセス。電車の場合、東京駅から東北新幹線で那須塩原駅まで約1時間15分。そこからクラブバスで30分。ただしクラブバスは8:10発1 本しかなく、今回、私たちは時間が合わなかったので東北新幹線の宇都宮駅でJR宇都宮線に乗り換えて矢板駅で下車、タクシーで向かった。所要時間は約30 分。料金は4,490円。同伴者との相乗りでなければ出費がかさむ。
 クルマでも東北自動車道を北上して矢板ICへ。そこから20分近くかかる。東京の都心部からだと3時間はみておかなければならない。「高速道路が渋滞する前、早朝5時台に家を出ようか」とか「矢板駅周辺のホテルに前泊しようか」と悩むような距離である。
 到着したクラブハウスの玄関は平凡。拍子抜けといってもいいくらいだった。やや広めの「通路」の右側に売店と受付。左側にバッグ置き場。だが、その先が充実していた。
 1階「通路」の突き当たり左奥がレストラン。明るく開放的で、黒の制服を着た男性スタッフが笑顔で迎えてくれる。女性スタッフさんもテキパキと動く。680円の「朝食バイキング」を頼む。和洋のメニューはごく一般的なものだが、飲み物付きでこの値段は安い。
 昼食メニューは14種類。1260円から1980円まで。ビール(生中)は680円。「昼食付きプラン」が多く、その場合は1260円のメニュー の中からの選択。他も差額を支払えば注文できる。窓の外は手前にパッティング練習場、その先にドライビングレンジ、遠くにコースが見え、ゴルフ場の雰囲気 を満喫できる。
 レストラン入り口で「お土産用・特製パイ」の看板が出ていた。1個1260円。聞けば「注文を受けてから丹念に焼き上げています。とても美味しいですよ」。思わず買ってしまった。
 受付とラウンジの間の階段を地下に降りて、ちょっと驚いた。右側を見ると乗用カートが何台も並び、ここがスターティングテラスであることがわかる。「1階から降りてきて、ここがまた1階・・・」。山の斜面を巧みに利用している。
 正面には大きな売店。ゴルフ関連商品がズラリと並ぶ。なかなか壮観だ。左奥がロッカールームと浴室。ロッカーは木製で高級感がある。横幅も広く、使いやすかった。
 トイレは“1階”の受付近くとこの階の2ヶ所にあり、個室は計8つ。中はゆったりとした設計で、こちらも快適だった。敷地にゆとりがあり、全体的に洗練された、落ち着きのある造りだ。
 そうした中で、浴室は意外にこじんまりとしていた。清潔感があって明るいのだが他の施設が広々していたので、つい豪華なものを期待してしまってい た。脱衣場も広い感じはしなかった。なぜ、窓を設けなかったのだろう。不思議だ。多少でも外の景色が見えれば、爽快感がだいぶ違うと思うのだが。
 そういえばバンカーがこれだけ多いゴルフ場なのに、バンカー練習場がないもの疑問。アプローチ練習場もない。ドライビングレンジのボールも1コイン(25球)でビジターは420円と高い。
 営業熱心で、各種割引パックが豊富に用意されている。例えば、夏季料金を見ると平日で6,000円、休日でも1万円ちょっとでプレーが可能。「前 泊プラン」や「27ホールアスリートプラン」なども充実しており、利用者のニーズに沿って料金を工夫していることが分かる。その意味で、この練習ボールの 価格設定はチグハグな感じだ。
 チグハグといえばもう一つ不満があった。帰りのクラブバスの時間である。新幹線の那須塩原駅行きは4:30分発の次が6:00発。片道30分はか かるので間隔が空くのは理解できる。しかし、乗車したクラブバスが6:30分過ぎに那須塩原駅に到着した時、6:32分発の上り新幹線がちょうどホームに 入ってきた。もう間に合わない。
運転手さんに尋ねたら「次の7時発の新幹線に合わせて運行しているんですよ」。
 あと10分、せめて5分繰り上げて運行していれば、駅で30分も無駄に待たずに済んだのに。ゴルフ場にも事情があるのだろうが、利用者本位をもう少し徹底してもらえたら有り難いと感じた。

2010年8月7日土曜日

アローエースゴルフクラブ=素直でフラットな丘陵コース。「矢板で一番」

 「なぜアローエースという名前なんですか?」。ずっと気になっていたので、受付で尋ねてみた。「アローは英語で『矢』の意味。エースは一番。つま り矢板地区でNO1のゴルフ場になるぞという心意気なんです」と女性スタッフさん。確かにここ栃木県矢板市周辺は個性的なゴルフ場が密集、全国でも有数の 激戦地となっている。では今、何を売り物に「エース」を目指しているのだろう。期待してコースに向かった。

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(ユニークなデザインのクラブハウス。中央の丸い屋根は「明かり取りの窓」)

 先ず練習場に直行。クラブハウスのバッグ置き場からは200mほど離れていて、ちょっと歩く。途中、コース側から見たクラブハウスは斬新なデザイ ンだった。「大きな鳥が翼を広げたような優雅さでしょう」と言われたが、ピンと来ない。中央に太陽光パネルを思わせる円筒形の屋根があり、どちらかといえ ば近代的なイメージ。ハウスの周囲を噴水付きの人工池が囲んでいる。
 
 ドライビングレンジは15打席。距離200ヤードで、広さはまずまず。看板に「コースボールを使用」と書いてあったが、実際には新旧のボールが混ざっていて、綺麗なボールばかりではなかった。1カゴ35球で420円。
 不満だったのはボールを置くマットだ。細長く小さいので、1球打つたびに動いてしまい、セットし直さなければならない。どうしてこんな小さなマットを使用しているのだろう。これでは「地域一番」を目指すのも容易ではないぞと思った。
 バンカーやアプローチの専用練習場はない。スタート時間まで入念にパッティング練習をしてコースへ。最初はINコースの10番ロングホール。
 ティインググランドに立って練習場で抱いた不安はかなり解消した。山間部なのにフェアウエーが広く、フラットで美しい。コース中央にある樹木が適度の緊張感を与え、グリーン左側の池が正確なショットを要求している。グリーンは綺麗だが、良くできていて気が抜けない。
 「あっ!」。いきなり痛恨の3パットだ。「今朝はいつも以上にパット練習したのに」とぼやきが出る。

 
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(全体にアンジュレーションの少ないフラットなコース)

 コース全体の雰囲気もスタートホールでの印象とほぼ同じものだった。まずフラットなのに驚かされる。アップダウンはほとんど感じない。ティショットの落とし所もしっかり見え、きちんと打てさえすれば平坦な場所から第2打が打てる。
 「ありのままの地形を生かしたコースがベスト」と考えるゴルファーなら、違和感を持ちそうなくらいの設計だ。

014
(池の淵からグリーンまで距離があり、ハザードとしての迫力は少ない)

 コース上の立木や池、バンカーが戦略性を高めている。しかし、池については一部を除くと強烈なハザードにはなっていない。大きく曲げさえしなければ大丈夫。むしろ美しい景観を演出する“素材”として配されているように思えた。
 好天に恵まれれば「雄大な那須連山と日光男体山が眺められる」そうだが、残念ながらこの日はやや曇っていたこともあり、遠景を楽しむことはできなかった。それでも近景は十分に楽しめた。

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(日本庭園のような佇まいを見せるショートホール周辺)
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(炎天下に「さるすべり」が綺麗な花を咲かせていた)

 例えばショートホールは日本庭園風の佇まい。「ポーチュラカ(通称;花滑り)」が白やピンクの鮮やかな花を咲かせ、8月の炎天下でもその存在をしっかりアピールしている。
 「コースメンテナンスには特に力を入れています」とキャディマスターさんが言う通り、芝の状態は良好。「グリーン上でピッチマークが多く、ちょっと気になりました」と伝えると一瞬、戸惑ったような表情を見せた。芝の管理にはかなり自信を持っているのだろう。
 全体に景観が美しく、素直でプレーしやすいコースというのが実際にラウンドしてみての感想。その意味では女性や初心者にも優しく、喜ばれそうだ。ティインググランドは5つほどあって、レディスティが随分と前に置かれていた。これも女性客を意識したものか。
 ただ、逆に言えば、印象に残るような個性的ホールが少なく、アスリート系の上級者は飽きるかもしれない。バックティからプレーすれば事情はだいぶ変わるのかもしれないが・・・。
 4つあるショートホールの距離に大きな違いがなかったのも物足りなかった。長めのホールでもティマークが表示板より前に出ていて、レギュラーティ から打つと、実質150ヤードから170ヤードと似たような距離。もう少し変化があった方が面白い。ミドルホールについては最長406ヤード、最短271 ヤードとアクセントが付いていた。
 「前4」のアドバンスティが置かれていたのは4ホールのみ。バンカーは砂の量が多くフワッとして打ちにくかったが、これは好き嫌いの問題。「こういうバンカーにも慣れて、もっと上手にならなければいけない」と思った。
 売店はOUTとINに1ヶ所づつ。ただし、INコースは無人で自動販売機が並んでいるだけ。クーラーは稼動し、冷水も美味しかった。OUTコースの売店の女性スタッフさんが「INコースは4、5年前から誰もいなくなっちゃったんですよ」と教えてくれた。
 乗用カートには「コースレイアウト図」があったが、細かい距離表示がなく、書かれているコメントも平凡なもので、実戦ではあまり役に立たなかっ た。14番や18番などドッグレッグしているホールのティインググランド脇にはさすがにきちんとしたレイアウト図が置かれていた。セルフプレーヤーが多い ので、乗用カートにより詳しい戦略図があると嬉しい。
 小さくて見にくいが、「スコアカード」にはコースレイアウトが書かれていた。合わせて「防雷ハウス」の位置が丁寧に記載されているのは助かる。北関東は夏場、雷が発生しやすい。どこに避難小屋があるかが分かれば、それだけでも安心してプレーできる。
 総じて素直なコース設定なので、アベレージゴルファーでも好スコアが期待でき、快適度は高いはず。今回はセルフプレーだったが、希望すれば「キャディ付」も選択できる。プレー料金もかなり良心的だ。
 ホームページで8月の「ビジター様 予約カレンダー」を見ると大半が1万円以下。夏季のスペシャルプランとはいえ「平日、早朝、1ラウンド、乗用カートのセルフプレー」料金は「2サム保証」でなんと3,500円という安さだ。これにはびっくりした。
 「通常プラン」でも「月曜セルフデー」なら1ラウンド3,600円。高い土日曜日のプランでも11,800円(昼食、1ドリンク付き)。近所に住んでいたら毎週来たくなってしまいそうな価格水準である。
 前半のプレーが終了。一旦、クラブハウスに戻る。外から見たときは奇抜に見えた建物も、中から見ると雰囲気がだいぶ違う。
 中央のドームには最初、太陽光パネルに見えた天井の「明かり取り窓」から柔らかな自然光が降り注ぎ、レンガと木を用いた内装は「モダンな山小屋風」といった趣き。上質かつ落ち着いたデザインで全体が統一されており、コースの美しさ、雰囲気とも良くマッチしている。

021
(モダンな山小屋風のレストラン)

 1階のレストランは、窓いっぱいに見えるコースの美景と手前の人工池が印象的。同伴者は内装や照明を見て、「モダン・クラシックな造りですね」と感想を漏らしていた。
 メニューは10種類で1品1,050円が基本。昼食付きの割安パックを利用した場合、これに400円から900円までの追加料金を払うと別メニューが選べ、小さな贅沢が楽しめる。
 ビール(生中)の790円は高い。凝ったグラスで出てきたのは嬉しかったが「生小(530円)と中の容量はあまり変わらないね」と同伴者に指摘され、この時だけは面白くなかった。
 レストラン脇のラウンジは豪華だった。高級そうなソファーが並び、時間があればゆっくり寛ぎたかった。同じ様なラウンジが中央のエントランスホール周縁部にもあり、なかなか贅沢な設計になっている。
 ただ、どちらも私たちが見た限りでは、利用者は誰もいなかった。プレーヤーは朝も昼食時も慌しいので、なかなかゆっくり寛いでいられないというのが実態ではないか。もったいない気もする。
 そのエントランスホールで目立ったのが大量のパンフレット類だ。専用ラックに「アローエース ハーフオープンコンペ 毎月開催」「NEW バス パック」「NEW 早朝プレー」「宿泊パック」「料理長杯ゴルフコンペ」などの案内が並ぶ。館内の一等地に置いてあることからみても、手に取る人が多いの だろう。営業にはかなり熱心である。
 ロッカールームやトイレもレストランと同じ落ち着いた雰囲気。ロッカーは凝ったデザインを施した木をふんだんに用い、良い意味で年季も感じさせ、ゲストを温かく迎えてくれる。トイレは清潔だが個室(8室)はドアが内側に開く構造でやや狭いのが難。
 浴場も比較的小ぶり。明るいが、窓に「曇り」が入っていて外の景観はあまり望めない。丸いジャグジー風呂があったが、スイッチを入れてみても稼動しなかった。経費節約のあおりなのだろうか。
 脱衣場も鏡の隙間にチラッと外が見える程度で、開放感はない。これは構造的なもの。余談だが、最近は「外から中は見えず、中からは外の景色が見える」特殊なガラスが普及している。ゴルフ場にも、これがもっと増えたら良いのにと思う。
 ラウンド中に同伴者の1人がロッカーキーの付いた「スコアカードホルダー」を紛失した。ポケットに入れそこなったか、プレー中に落としたか・・・
 「大変だ」となったのは、貴重品ボックスの番号と鍵がロッカーと同じものを使うシステムになっていたことを思い出したからだ。ホルダーを拾えば、貴重品ボックスの番号が分かり、鍵も開けられる仕組みだ。これはまずい。
 幸い後ろの組の方が拾ってくれ、走って戻った同伴者に手渡してくれたので事なきを得たが、一瞬、ヒヤリとした。あとで受付のスタッフさんに尋ねると、「昼食時などに置き忘れないようにして下さいね」とのこと。大きな事故は起きていないようだが、くれぐれも注意が必要だ。
 受付、キャディマスター室、レストランなどのスタッフさんはホスピタリティがあり、言葉遣いもみな丁寧だった。
 朝、受付スタッフに帰りのクラブバスをお願いすると、こちらの都合を聞いて気持ち良く時間を設定してくれた。キャディマスター室でプレースタイル などを尋ねた際も「2サムはいつでもOKです。午後2:30分までにスタートできれば1・5ラウンドもできます。スループレーもその日の事情次第ですが、 十分に可能です」と親切。
 最後に重要な「アクセス」について。電車の場合、利用する新幹線や乗り継ぎ時間によっても多少異なるが、東京駅から東北新幹線で宇都宮駅まで約 50分。同駅でJR宇都宮線に乗り継いで約30分、矢板駅下車。そこからクラブバス、ないしタクシーで8分。所要時間は合計で1時間50分弱。
 料金は新幹線の指定席分を加えると電車代が5,630円。タクシー代が約1,700円で合計7,300円ほど。往復では15,000円近くかかる。これはプレー代以上で、懐に痛い。
 クラブバスは原則、土曜日、日曜日だけの運行だが、平日でも人数次第では予約が可能。ただし「時間を朝8:40分頃の出発に限らせていただいています」。駅前のタクシー会社と提携していて、同時刻のタクシー利用なら料金をゴルフ場が負担してくれるそうだ。
 ではクルマの場合はどうか。パンフレットでは「川口JCTから約1時間20分」と記されている。しかし交通事情にもよるが、川口JCTからでも1 時間40分、東京駅周辺からなら2時間半は見ておいた方が良いと思われる。実際、クルマで来た同伴者は「もっと時間がかかった」と話していた。
 エントランスホールのラックに「宿泊パック」や「バスパック」のご案内があったのを思い出す。那須町にある「りんどう湖ロイヤルホテル」はグループホテルだが、特別のゴルフ割引パックはない。
 東京から行くなら、近場(矢板市)のシティホテルに宿泊して2日間、ゆったりプレーを楽しむのがベストかもしれない。