2010年11月28日日曜日

ラ・ヴィスタゴルフリゾート=千葉県で味わえる南欧リゾート。コースはお遊び気分では攻略できない本格派

 「いつの日か海外のリゾート地に出かけ、ゴルフ漬けの日々を過ごしてみたい」――。そんな熱い思いを抱いているゴルフ愛好家も多いに違いない。こ の「ラ・ヴィスタゴルフリゾート」は房総半島のほぼ中央にあって都心に比較的近く、長期休暇をとらなくても週末、手軽にリゾートゴルフが楽しめるという。
 そこで早速、11月の日曜日のプレーを予約。後日、前泊できそうな仲間を集めて併設する「ホテル ラ・ヴィスタ」に電話すると、「もう土曜日は満室です」。「えっ!」と絶句。やむなく今回は宿泊を断念し、ゴルフプレーに専念することにした。

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(ゴルフと一緒に、南欧のリゾート気分を楽しめるのが魅力)

 当日は朝早起きして、東京駅からJRの特急電車「わかしお1号(安房鴨川行)」に乗車、目的地である茂原駅(外房線)に向かう。所要時間は約1時間。「意外に時間距離は近い」と感じる。
 駅南口にあるスーパー「ジャスコ」裏の駐車場に行くと、周辺のゴルフ場から集まったクラブバスがズラリ。「ラ・ヴィスタ」の名前を探すのにひと苦労するほどの賑わいだ。
 「この駐車場は周辺ゴルファーの間では大型発着場として有名なんですよ」と今回同伴してくれた知人がニコニコしながら教えてくれた。
 平凡な町並みと山村風景の中を走ること約20分。右前方に突然、“異空間”が出現した。「パームツリーに彩られた、リゾート感溢れるパブリックコース」とホームページ(HP)に書いてあったが、まさにその通り。別世界だ。

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(表から見たクラブハウス。最初は異国情緒にびっくりする)

 アースカラーで統一したユニークな建物。「地中海リゾートをイメージした」というだけあって、南欧ムードはクラブハウス周辺にも漂う。高く伸びたパームツリー(やしの木)、太いソテツ、綺麗なホテル・・・。ここが千葉県とはとても思えない不思議な光景である。
 男性スタッフの出迎えを受けながら、送迎バスを降りる。クラブハウスの中はどうなっているのだろう。ワクワクしながらロビーに足を踏み入れる。正面に螺旋状の下り階段。右奥にレストラン。左手前が受付。
 静かな環境音楽が流れ、内装に南欧風のデザインが施されて入るものの、外観ほどの圧倒的リゾート感はない。
 受付は意外にコンパクトで控え目。提携している「太平洋クラブ」の新規会員募集の案内板やパンフレット類も多く、中の雰囲気は他のゴルフ場とそう変わらない。
 
 受付隣に「自動精算機」が2台並び、レンタル用「GPSゴルフナビゲーション」端末機(530円)も置かれるなど、「日常の世界」に直結した小道具も目立つ。

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(螺旋階段の周りには様々な関連商品が並んでいた)

 中央の螺旋階段を降りると、下はもっと現実的だった。さほど広くないスペースにゴルフ関連商品がぎっしりと並び、飲料用の自動販売機が設置され、窓際には椅子とテーブルを1つ置いただけの簡素な「宅配便受付」コーナーが準備されていた。

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(ロッカールームに向かう通路。壁の写真が高級感を醸し出す)

 リゾート感覚を呼び戻してくれたのはロッカールームだった。通路の壁には美しいコース写真が展示され、ロッカー自体も幅広で使いやすく、高級感があった。

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(池、それともプール? 南欧リゾート風の演出が随所に)

 最も感動したのは、スターティングテラスから眺めた景観だった。「地中海リゾート」のイメージ通りで、思わず「おぉ~良いじゃない」と声を出してしまった。

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(パッティング練習場側から見たクラブハウス)

 大小2面あるパター練習場の緑がまぶしく光る。その脇にプールと高いパームツリー。裏側から見たクラブハウスもなかなかのものだ。宿泊はできなかったが、リゾート気分には十分浸れる。

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(ドライビングレンジ。距離は十分だが幅はさほどでもない)

 「今日はゴルフに来たんだ」と気を引き締め、まず向かったのは「ドライビングレンジ」。クラブハウスからちょっと離れた場所にあるが、距離は十分にあり、「50」ヤードの看板などアプローチ練習を意識させる工夫もなされている。
 ボールは縦に線の入った練習場専用のもので、多くが中古品。価格は25球で300円。ドライバーの練習用に「高め」のティを探したがない。平均的な高さのティばかりで打ちにくく、早々に切り上げた。
 細かいことだが、好きなティの高さには個人差があるので、「高め」「低め」といろいろなタイプを用意してもらえると有り難い。
 プレースタイルはリゾートっぽく「乗用カート利用のセルフプレー」のみ。乗用カートの中にはコースガイドやピンの位置を示すグリーン案内図が用意されていたが、特に詳しいと言うほどの内容ではなかった。
 
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(コース途中にある売店も同じデザインで統一されていた)
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(店の内部。以前、スタッフが働いていた様子が感じられる)

 「コースにある売店は無人。自販機しかないので、小銭を用意しておいた方が良いですよ」と同伴者にアドバイスをもらう。
 この日はOUTコース1番ミドルホールからのスタート。行ってみるとクラブハウス周辺にあった南欧風のムードはすっかり消え、ごく普通の日本的丘陵コースが広がる。
 
 250ヤードほど先に1打目の狙い場所となる「吹き流し」があるくらいで、平凡なレイアウト。景観的には拍子抜けした。

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(レギュラーティは「白」ではなく「青」マークから)

 ティインググランドは4つほどあって、レディースティはかなり前。フェアウエーは平坦で、距離も314 ヤード(レギュラーティ)しかない。「やっぱりリゾートゴルフ場。カップルで楽しめるよう易しく設計されているんだな」と思った。
 2番ロングホール。緩やかに左にカーブしている2打目地点に立って、第一印象が間違いではないかと思い始めた。
 左右2段に分かれたフェアウエー。真ん中に打つと、ちょうど傾斜地になっていて3打目が打ちにくい。しかも、かなり打ち上げの砲台グリーン。距離も546ヤード(同)とたっぷり。苦戦する。

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(3番ホール。パームツリーがあるだけで、印象がだいぶ違う)

 「これは手強いコースかもしれないぞ」と考え直して向かった3番ホール。今度は一転してリゾート感覚にあふれた池越えのショートホールだ。細いパームツリーの葉が風に揺れ、実に美しい。思わず何枚も写真を撮ってしまった。
 同様のリゾートコースがこの先も続くのかと期待したら、4番ホールは再び普通の丘陵コースに逆戻り。ティインググランド周辺には竹林があり、むしろ和風の趣だ。

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(大きく印象的なバンカー。右上にプレーヤーが小さく見える)
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(6番のショートホールはマウンドだらけ)

 その後も、大きな丸いバンカーが強烈な印象を残す5番ホール、小さなマウンドが連続し、スコットランドのゴルフ場を連想させる6番ホール、S字に 曲がった距離の長い7番ホール、グリーン右手前の谷が曲者の8番ホール、クラブハウスの借景が見事な9番ホールと、個性的なホールが続く。
 それぞれのホールが異なった顔を持ち、変化に富んでいてプレーヤーを飽きさせないのは、このコースの大きな特徴である。

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(山を削り取ってコースを造成したと思われる所も)

 山を削り、無理して造成したのではないかと思わせる個所がないわけではないが、ここはそうした疑問より戦略性、面白さの方に軍配を上げたい。

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(14番の名物ホール。美しく、難しい)

 一番美しく、印象に残ったホールは午後に回った14番ホールだった。クラブハウスの近くにティインググランドがあり、建物の美しさに見とれていたら、同伴者が「このホールは難しいですよ」と警告する。
 第2打地点に行って、警告の意味が分かった。左サイドに大きな池があり、その池に沿ってフェアウエーが左にカーブ。グリーンを狙うには池越えの会心ショットを放たないといけない設計になっているのだ。
 HPやパンフレットにこの14番ホールの写真が大きく載っているので、改めて見ていただきたい。「ラ・ヴィスタ」の顔として人工的演出を尽くした“看板ホール”である。
 ここはグリーンも難しかった。グリーンコンディションは「3.5mmカット、9フィート」に設定されているが、傾斜がきつく、グリーン奥に乗ったボールは加速してカップを大きくオーバー。それを見た同伴者は、今度は打ち切れずにショート。
 INコースでは2段グリーンも数ヶ所あり、パットの巧拙がそのままスコア差に繋がりやすいゴルフ場だと実感した。たまたまパットが好調だった同伴者は『ゴルフはパットだ。パットは勇気だ!』と得意げだったが・・・。
 ラウンド中は風にも悩まされた。「九十九里海岸からの海風なんでしょうね」と仲間同士で話し合っていたら、クルマでコース内を巡回していた男性スタッフが「普段、風はあまり吹かないのですけどね」と申し訳なさそうに呟いた。
 
 「冬でも暖かいんですか」と尋ねたら、「館山や千倉方面は暖かいですが、ここはちょっと内陸に入っているので、東京と同じくらいでしょうか」という。正直な人だ。

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(15番ショートホール。手前は谷、バンカーも多く、視覚的プレッシャーがある)

 HPのコースレイアウト図を見た時、池の多さに驚いたが、実際にラウンドしてみると、明らかな池越えは3番、14番、15番くらいで、他の池はコースサイドやホール間に配置されていて、心配したほどは気にならなかった。
 予想外だったのはワングリーンの大きさ。とにかく広い。ファーストパットの距離感を間違えると3パットの罰が待っている。繰り返しになるが、パットの出来不出来がスコアを大きく左右するコースである。
 グリーン上にピッチマークが多いのはグリーンが比較的軟らかいためだろう。気になったマークは極力直しながらラウンドしたが、プレーヤーにはマナー厳守を望みたい。
 特に「ラ・ヴィスタGR」のようにセルフプレーのみのゴルフ場は、バンカー均しなど基本的マナーをもっと利用者に訴え、実行させる努力が必要だと感じた。

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(紅葉真っ盛り。赤や黄色の葉が目を楽しませてくれた)
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(コースの所々にこんな「壁」がある。意味不明)

 ちょっと横道にそれたが、コース内のメンテナンスはまずまず。11月という季節柄、芝が枯れ始めていたが、これはしょうがない。むしろ他のコースに比べれば良好といえる状態だった。
 全体としてみると、コースは要所でリゾート的演出が施されながらも、思った以上に本格的、戦略的なものだった。
 チャンピオンティから6,990ヤード(コースレート72.5)、バックティからは6,532ヤード(同70.3)、レギュラーティからでも6,248ヤード(同69・3)。
 「遊び気分では好スコアが望めないコース」というのが実際にプレーしてみての感想である。

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(レストランから眺めた外の様子。よく見ると和洋混在で微妙な景観)
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(レストラン内部。昼食は1,500円程度のメニューが多かった)

 クラブハウスに戻る。レストランの内部は写真で見ていただいた通り。思ったよりは狭かったが、明るく、内装にもリゾート的雰囲気が漂う。外の景色も美しい。
 レストランを出た右側にラウンジ風の丸い特別コーナーがあり、食事後はここで外の美景を楽しみながら、ゆっくり寛ぐことが出来る。もっとも私たちは昼食時間が40分余りしかなく、素通りしてしまったが。
 また、館内のちょっとした空間に人形などの置き物や絵画があったのは、ゆとりを感じさせて好印象。
 浴室と脱衣場は、どちらかといえば機能的でコンパクトな設計。南国情緒溢れる装飾やデザインの数々を期待していたが、そうした遊び心はあまりない。
 トイレも同様。清潔で備品や機能が整っていれば十分との判断かもしれない。洗面所にはハンドソープとうがい薬が常備されていた。トイレの個室(7つ)内には「プレー料金表」と「太平洋クラブ新規会員募集中」の貼り紙があった。
 「太平洋クラブ」といえば、関連コースのHPはどこも素晴らしい。「3Dムービー」という呼び方で「グラウンドビュー」「スカイビュー」の2通りのコース紹介がなされている。
 各ホールの様子が「地上から」と「空中から」動画で楽しめ、見ているだけでも楽しい。
 開場から既に12年が経過し、建物もピカピカというわけではない。同伴者は「南欧のリゾートに似せて造っただけ」と手厳しかったが、それでも全体のコンセプトが明確で、強烈な印象を残す面白いゴルフ場だった。
 最後に気になるプレー料金について。HPの「料金表」を見ると「平日が12,100円」「土日祝日が21,100円」とある。
 しかし、トップページの「News Topics」で紹介されている「カレンダー料金」では、11月のハイシーズンで「平日が9,500円」「土日祝日が18,000円」。1月からのオフ シーズンでは「平日が9,000円」「土日祝日が15,000円」となっている。カレンダー料金が“実勢価格”ということだろう。
 この料金表を丹念に見ると、毎週月曜日が「サンクスデー」で、松花堂弁当とドリンクが付いて他の平日よりも数百円安い。また同様のサービスが付いた「感謝デー」も時々設けられているなど、集客にきめ細かく知恵を絞っている様子が伺われる。
 「ラ・ヴィスタクラブ」という組織もあり、この会員になれば割安料金でプレーできるなどの特典が付く。
 だが、周辺には低価格を売り物にしたゴルフ場も多い。施設面で差別化できているとはいえ、通常価格だけで比較すると、季節や日によっては割高感も残る。利用する際には「割引プラン」を小まめにチェックし、コストパフォーマンスをより高めたい。
 仲間が集まるならコンペパックも有力な選択肢。3組10人以上という条件はあるが、「秋のコンペパック」の場合、「プラス1,500円で昼食+1ドリンク付」など様々な特典がある。
 「キャンセル料は取らない」し、「賞品プレゼントのサービスもある」というから幹事さんは事前に相談してみるといい。
 このほか、昼食が付いた「ランチパック」、毎月のように開催されている「オープンコンペ」、さらに「バスパック(コンペチャーターバス)」などもあり、営業努力を強く感じる。
 ちなみにゲストの「宿泊パック料金」は平日が18,000円(1泊+1ラウンド+朝食+昼食代込み)、土日祝日が25,000円(同)である。
 最も不満に感じたのは「送迎バス」の本数の少なさ。朝は茂原駅8:20分発のバスを利用したが、実は平日、土日祝日ともこの1本しかない。しかも予約制。
 
 帰りも4:50分発の1本だけだ。乗り遅れればタクシーしかない。片道3,500円ほどかかる。
 最近は「クルマだと(アルコール類が)飲めない」との理由から電車を利用する人が増えている。クルマでの来場が多い“リゾート”とはいえ、再考の余地は十分にありそうだ。

2010年11月14日日曜日

本千葉カントリークラブ=伊達ではなかった40年の歴史。距離短いが、コースマネジメント力が必要な丘陵コース

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(クラブハウス前から見た景観)

 住所は千葉県千葉市緑区。北に「袖ヶ浦カンツリークラブ」、南に「浜野ゴルフクラブ」という名門に挟まれた激戦地にあって、「本千葉」という強い 名前のゴルフ場は以前から気になっていた。今回、知人に「一度、ぜひ」と声を掛けられ即、飛びついた。丘陵コースとしては比較的フラットのように思え、距 離も短い。万全を期し、好スコアを狙ってスタートしたが、しっぺ返しが痛かった。
 事前のチェックはいつも以上に念入りに行った。まずホームページ(HP)でコースを調べた。
 「コース案内」に『詳しい写真付きコース紹介は、コチラ』との表示があり、クリックしてみると確かに西コース、中コース、東コースの順で、全ホールが大きな写真で紹介されている。

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(パソコン画面で見た東コース1番ホール)

 ティインググランドから見た時の景観だけでなく、コースの中間点やグリーン周辺の様子なども把握できる。ホールごとの攻略法、俯瞰図も付いていて、なかなかの力作だ。
 写真はアップにしたり引いたりと調整でき、左右上下に動かして見ることも可能。初体験のコースだがレイアウトが良く分かり、イメージをしっかりつかむことができた。
 HPでこうした画像が見られるのは、とても有り難い。早晩、他のゴルフ場でも同様の「コース紹介」が当たり前になり、やがて写真が動画へと変わっていくのだろう。音声付き紹介なども登場してきそうだ。

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(「東コース」と「中コース」をラウンドした)

 今回ラウンドするのは「東コース」と「中コース」。プレーの前日、就寝前にもう一度、自宅パソコンでコースを確認、イメージを固め、気合を入れた。
 翌朝、軽く練習を済ませ、9時過ぎには「東コース1番ミドルホール」のティインググランドに立つ。
 緩やかなS字カーブを描いたロングホール。HPで見た景観と全く同じだ。「ティショットは右目狙い、セカンドは左目狙い」。覚えてきた攻略法を小さな声で唱える。「よし」。
 ところが「想定外」のことが次々に起こった。素振りをしていると、ティインググランド近くにいたカメラマンさんが寄ってきて「写真撮ります」。
 プレーヤー4人の集合写真とスイングの連続写真を撮るという。1枚にまとめてプリントアウトしたものを後で販売する仕組み。1枚1,500円という。ちょっと高い。
 「今は自分のデジカメでも連続写真は撮れるし、緊張する朝イチのティショットで写真撮影は嫌だな」と思ったが、生真面目そうな方だったのでそのまま撮影を了解した。
 「あっ!やっぱり」。集中力を欠いたのかボールは攻略法とは逆の左サイドへ。第2打も逆の右サイドへ飛ぶ。3打目は目の前の立ち木が邪魔をして、グリーンが狙えない。「こんな予定じゃなかったのに」。
 動揺したまま2番ホールへ。ティショットを左サイドに打つと、またしても大きな木に前方が遮られる。「あっ、ここは右目狙いだったんだ」。結局、ボールはグリーン手前の深いバンカー。
 昨夜のイメージトレーニングが全然、役に立たない。同伴者も「思っていたよりもトリッキーですね」と戸惑いを見せる。
 HPの写真を見て比較的フラットなコースと思い込んでいたが、実際には結構、アップダウンがある。「想定外」続きだ。
 スタート前、キャディマスター室近くで、男性スタッフさんと交わした会話を思い出す。
 「お客さん、このコース初めてですか。ならばキャディ付を選んだ方が絶対、良いですよ。最近は安くプレーできるセルフを希望する方が多いですけどねぇ」。「えっ、でも今日はもうセルフで予約してしまったんです」。
 順序が前後するが、1番ホールではもう一つ、HPに書かれていない「想定外」があった。左斜め前方に「中コース1番」のティインググランドがあり、なんと東コースと中コースのフェアウエーが、ほぼ直角にクロスしているのだ。

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(手前が「東コース」1番、左奥が「中コース」の1番ティインググランド)

 ティショットは双方で合図しながら交互に打つ。もちろん打球がぶつかり合うことはないのだが、漫画の世界のようなコース設計に思わず目をむいた。

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(東コースの4番ショートホール。左手前の池と深いガードバンカーがプレッシャーになる)

 3番ホール以降も印象的なホールが続いた。大きな池が強いプレッシャーを掛ける4番、7番の両ショートホール、左に大きくドッグレッグした6番ロングホール・・・。

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(池がらみの戦略的なホールが多い)

 HPの画像に嘘はなかったが、やはり実際のコースに出てみると、感覚がだいぶ違う。
 そもそもここは、イメージトレーニングだけで好スコアが出るようなヤワなコースではなかったのだ。そうでなければ「ゴルフ場激戦地」で40年もの間、事業を継続できているわけがない。

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(フェアウエーでは円形に芝が枯れ、珍しい模様を描いていた)
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(ゴルフ場の直ぐ近くまで住宅街が迫っている)

 午前中にラウンドした「東コース」は高麗グリーンで3,068ヤード(レギュラーティ)、ベントグリーンで3184ヤード(同)。決して長くはない。しかも、この日はレギュラーのティマーカーがレディースティの近くに置かれていて、距離的にはかなり楽なはずだった。

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(所々にこうした深いバンカーがあり、プレーヤーを悩ませる)

 だが、改めて振り返ってみると、フェアウエーバンカーやマウンド、立ち木の配置が巧妙で、想像以上に戦略性の高いコースだった。いやらしい傾斜のあるグリーン(速さは9フィート)にも手こずった。
 打ち上げや砲台型のグリーンに「ラッキー」でボールが乗ることは少なく、嫌でも自分の実力通りのスコアが出てしまうコース。40年の歴史は伊達ではなかった。
 午後に回った「中コース」も似たような感じ。「東コース」よりさらにフェアウエーが絞られていて、ティショットでのボールの打ち出しが狭い。
 「ドライバーを思い切り振り回したい」人や「ボールが曲がりやすい」人には辛いコースと言えるかもしれない。

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(高圧電線がグリーンの上を通過する)
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(中コースの3番ミドルホール。池が苦手な人には景観を楽しむ余裕がないかもしれない)
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(中コースの7番。S字に曲がったロングホール。左サイドの1本の木が戦略性を高めている)
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(太い木が並ぶと壮観。歴史を感じさせる)
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(外観、内装ともシンプルだった茶店)
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(中コースは特に防球ネットが目に付いた)

 ただ「キャディさんにコース戦略をアドバイスしてもらっていれば、もう少し違ったスコアになったかも」という思いは残った。
 今回、「本千葉」は初めてのラウンド。しかもセルフプレー。必要以上にハザードに脅かされ、無駄に力んだという悔いがあるからだ。
 ちなみに、スコアカードに書いてあるコースレート(レギュラーティ)は、今日の「東→中コース」の場合(高麗グリーン)で67.2。
 思いのほか低い数字だったので、プレー終了後、キャディマスター室で確認したところ、男性スタッフさんから「(同じ条件で)70.0です」という答えが返ってきた。
 スコアカードのデータが古いのか、スタッフの方が疲れた表情の私たちに同情して高めの数字を言ってくれたのかは分からないが、「慣れ」と「テクニック」と「コースマネジメント力」が求められるコースであることは確かだ。
 ラウンド中に気になった点が4つある。1つはグリーン上にピッチマークが目立ったこと。「硬さを計測していないので数字では言えない」そうだが、プレーしてみた感じではグリーンは軟らかく、確かに落ちたボールの跡が付きやすかった。
 本来、プレーヤーがマナーを守り、自分の付けた跡はきちんと修復しておくべきなのだが、どうやら一部、不心得者が紛れていたようだ。

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(こんな紅葉が楽しめるところがもう少しあればいいのだが)

 2つ目が季節感を演出する仕掛けが少なかったこと。松、杉などの樹木が多く、綺麗に紅葉したもみじを鑑賞できたのは1ヶ所だけだった。大きな花壇などもなく、全般的に飾り気の少ない“硬派なコース”との印象が強い。
 3つ目はグリーンまでの残り距離を示す「100ヤード」「150ヤード」の標識が見にくかった点だ。数字を書いた杭が細い上、洒落た明朝体で書かれているので、遠くからは判読しにくい。これはぜひ改善して欲しいと思った。
 
 最後がコースの状態。11月半ばという季節柄、芝が枯れ始めるのは仕方ないにしても、やはり落ち葉などが多く「ありのまま」の状態が目に付いた。
 「ゴルフは自然との戦い」だし、手入れが行き届き過ぎるのも不自然だが、どこまで整備するか、この辺の兼ね合いは難しい。
 バンカーなど全体としてのコースメンテナンスは良好で、季節が変わればもっと美しさが増すに違いない。
 
 話題を施設や営業面に移そう。冒頭に紹介した『写真付きコース紹介』の最後に「パッティンググリーン」と「練習場」「レストラン」「その他(浴室)」の写真がおまけ風に掲載されている。まず、そちらをご覧頂きたい。
 コースの場合と違って、施設の写真は実際と違わず、雰囲気も良く伝わっている。ここでは写真では見えにくい部分を中心に紹介したい。

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(パター練習場側から見たクラブハウス)

 まずクラブハウス。朝、玄関を入った時の印象は「ちょっと雑然としているな」というものだった。
すっきりしていない理由は直ぐに分かった。比較的狭いスペースに、ゴルフクラブやウエア類、さらに「銚子電鉄・ぬれ煎餅」等の土産物が通路へはみ出すほどに並べられていたからだ。
 休息用の椅子やテーブルはそれらの裏手に置かれている。小物類を扱うプロショップも近くにあり、さらにフロア中央にテレビや自転車が鎮座している。
 良く見ると「ロングランコンペ開催!」の大型パネル。「11月13日~23日まで実施し、参加費500円で豪華景品が当たるんですよ」とスーツ姿の男性が説明してくれた。プロショップにいた女性もニコニコしながら「ぜひ参加しませんか」と声を掛けてきた。

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(レストランの中から見える景色。綺麗で気持ちがいい)
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(パソコン画面で見たレストラン)

 レストランもここでは1階右奥にあった。「和定食、洋定食(1,260円)」「モーニングコーヒー(200円)おかわり自由」「そば、おにぎりクイックメニュー(500円)」などの写真付き案内板が入り口に置かれている。とにかく賑やかなのだ。
 豪華で格調高いクラブハウスには非日常的魅力を感じるが、こうした気取らない雰囲気も、これはこれで悪くないのかもしれない。
 レストランの内部は意外に広かった。HPの写真で見て頂いた通りで、コースに面した窓から陽光が差し込み、天井は高く、木材を効果的に使ったデザイン。手前にあるラウンジは広く、夕方にはテレビ放送中の男子ゴルフツアーの模様を観戦する客で賑わっていた。
 レストラン入り口右側には地酒や落花生など特産品の販売コーナーがあり、随所で営業の熱心さが感じられた。
 ランチなどのメニュー、料金もHPに詳しく載っているので、気になる人は見て欲しい。この日はちょうど「北海道フェア」の開催中。私たちの間で人 気を集めたのは「味噌バターコーンラーメン」だった。1,500円は割高と思ったが、同伴者はがどう感じたろうか。聞きそこなった。

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(パソコン画面で見た浴室)

 浴室もHPに大きな写真があるのでご覧頂きたい。円形の洗い場とその内側に同じく円形の湯船が配されたユニークな設計。写真では裏側しか見えないが、手前にライオンの顔をした置き物があり、開いた口からお湯が流れ出ていた。
 全体に清潔で広々としているが、ひと昔前の雰囲気が漂う。“レトロ調の浴室”と割り切って楽しむのが賢明かもしれない。機能重視の脱衣場からは外の景色が見えず、開放感に欠ける。
 ロッカーはスチール製。横幅がやや狭いのが気になった。トイレはリニューアルしてあったが一部パイプがむき出しで、厚化粧の感が否めない。個室は6つ、すべて洋式。
 貴重品ボックスは「カードホルダー」についているバーコードを読み取らせて使う方式。これが使いにくい。なかなか作動せずイライラしているゲストに、スタッフさんが近づいて「すみません。ちょっと要領が必要なんです」と手助けしているシーンも見掛けた。

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(パソコン画面で見た練習場)

 HPにはもう一つ、練習場の写真が掲載されている。見ての通りの「鳥カゴ」で9打席、30ヤード。ボールは30球210円と安いが、ロストボールを集めたようなものが多かった。

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(奥に鳥カゴの練習場。アプローチ練習場はピンが立っているだけ)

 HPとは別にもう一枚掲載した写真は、「鳥カゴ」の奥に設けられているアプローチ練習場側から撮影したもの。感じがだいぶ違うのがお分かりいただけると思う。
 ピンフラッグは雑草の中に立ててあるだけ。バンカーもきちんと整備されているとは言い難い状態だった。せっかく造ったのにもったいないと感じた。

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(パター練習場は全部で3つ。手前は「CLOSE」)

 パター練習所は3つあり、そのうちの東コースと西コース脇の2つが使えた。こちらの整備状況はかなり良く、ボールの転がりがいい。近くのキャディさんに思わず「コースのグリーンもこんなに速いんですか」と聞いてしまったほどだ。周囲の景観も素晴らしい。
 さて料金だ。私たちがプレーした11月はセルフプレーで、平日が9,200円(別途ロッカーフィーが210円必要)、土日曜日が18,500円(キャディ付は別途3,675円のフィーが必要)。
 オフシーズンの1月、2月は同じ条件で、平日が8,000円、土日曜日が15,200円。日によって若干の違いがあり、特に月曜日はハイシーズンで8,700円、オフシーズンで7,500円と安い。
 「都心からの近さ」や「コースの面白さ」を考えると、まずまずの価格水準といえるのではないか。クラブハウスや練習場など施設・設備面に華やかさを求めている人には不満かもしれないが・・・。
 キャディフィの3,675円はやや高め。「カレンダー料金」表に乗用カート代を加えながらロッカーフィー(210円)だけ外すなど、価格設定に苦労している様子も伺える。
 「レディースデイ」の設置、「オープンコンペ」毎月開催、「バスパック」の導入など集客を図るための努力は多くなされており、その点は利用者の立場から評価したい。
 最後に交通アクセスについて。今回は東京駅発7:15分のJR京葉線特急電車「わかしお1号」(安房鴨川行)に乗車して蘇我駅で下車。同駅東口から接続しているクラブバスを利用してゴルフ場に向かった。
 JRの運賃は740円+特急料金500円。乗車時間は36分で、クラブバスは8:00発、ゴルフ場には8:15分過ぎに到着した。ちょうど東京駅から1時間である。
 クラブバスは7時、8時、9時の3本。ただし、7時発の便は土日祝日のみの運行となる。帰りのバスは4本あるが、蘇我駅でなく外房線の鎌取駅に向かう便も含まれているので要注意。
 クルマ利用の場合は、京葉道路の蘇我ICで下りて一般道を約10分。東京駅八重洲口からの距離は50km強で、渋滞がなければ1時間ちょっとで到着する。
 パンフレットに書かれた「都心より60分でティオフ」のキャッチコピーは、あながちオーバーでもない。交通アクセスは比較的良好と言ってよいだろう。
 ここは会員制クラブではあるが、実質、誰でも予約が可能だ。仲間内でコンペをする時には有力な候補地となる。次回幹事が回ってくる時まで「本千葉」と覚えておこう。

2010年11月6日土曜日

八千代ゴルフクラブ=都心に近いパブリックゴルフ場、コンパクトで上質な林間コース

 「パブリックゴルフ場」と分かっていたので、大きな期待はしていなかった。しかし実際にプレーしてみると、会員制のゴルフ場と比べても遜色のな い、とても綺麗な林間コースだった。設計は名匠、安田幸吉氏。全長距離が短いという弱点はあるものの、その分、様々な仕掛けや工夫が施され、上級者でも結 構、楽しめる。場所は千葉県八千代市。都心に近く、若者の姿が目立つゴルフ場だった。

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(広々とした1番ホール。中央の木がプレッシャーを与える)

 パブリックなのでプレーは誰でも可能。予約は6ヶ月先まででき、大型コンペで日程を早く決定したい幹事さんには有り難い。キャンセル料は原則、取らない。
 ただし、ホームページ(HP)に掲載されている「料金表」は4バッグでプレーする際のもの。キャンセルが発生して3バッグに変更になった時には1人当り588円の追加料金が必要となる。
 まず、その「料金表」を見て「おやっ」と思った。同じコースを回るのに季節や曜日などの条件によって目まぐるしく変化するからだ。しかも、価格差が大きい。
 年間は「トップシーズン」「セミ オフシーズン」「オフシーズン」の3段階に分かれる。
 例えば、今回プレーした11月は「トップシーズン」で、土曜日のプレー代(キャディ付)が24,150円。日曜日(同)は22,050円。平日は15,750円(同)。毎週月曜日の「セルフデー」は9,900円(昼食付)といった具合だ。
 同じ時期、同じコースで9,900円は安い。セルフプレーとはいえ昼食付だ。最も高い土曜日料金(キャディ付、昼食別)の半分以下である。
 1、2月の「オフシーズン」になると、土日曜日とも同額で18,900円(キャディ付)。平日(同)が13,650円となる。
 また「コンペパック」と名付けた別の料金体系もある。これを11月の日曜日に利用すると、1人当りの料金は24,150円(キャディ付、4バッ グ、2~9組の場合)。これには昼食代、1ドリンク代(アルコール類可)のほか、プレー終了後のパーティ代(オードブル5品と1ドリンク)まで含まれてい るので、それなりにお得感がある。
 これが「オフシーズン」の1月に入ると、土日曜日で21,000円、平日で15,750円。ここまで下がると結構、お得だ。
 コンペパックの料金表には「10~19組」「20組~」といった表記もある。大型コンペの開催を想定しているのだ。上記料金にプラス1,050円すれば飲み放題プランにもなる。
 さらに無料で登録できる「Web会員」向けにはまた別の割引料金システムがあるなど、ゴルフ場側が料金を相当きめ細かく設定していることが分かる。
 となれば、後は実際のコース、施設、サービス等がどうなのかという点だ。そんなテーマを持って、小春日和に恵まれた11月の土曜日、ゴルフ場へと向かった。
 東京都心から直線距離なら約35Kmの場所にあり、アクセスは比較的良好。電車を利用する場合は地下鉄東西線が延長された東葉高速線の「勝田台駅」か、京成電鉄の「京成勝田台駅」で下車し、タクシーで約10分。料金は1610円。
 送迎用のクラブバスが無いのが玉にキズだ。駅北口のロータリーに出ると、近隣のゴルフ場行きクラブバスが走っているので、送迎バスの不在に余計、不満が募る。
 HPには「路線バス」がありますと記載され、ゴルフ場の入り口近くには停留場もある。しかし,土曜日/休日には7時台のバスは7:42分発の1本しかなく、8時台はゼロと運転本数が少ない。よほどスタート時間のタイミングを合わせないと、利用は難しい。
 クルマの場合は千葉北ICから約20分。順調に走れば、都心からでも1時間ほどで着くことができる。柏IC経由でも約60分かかる。柏方面からは渋滞しがちな国道16号線を長く走るので、時間にゆとりを持って行動しないと心配だ。
 到着したクラブハウスは「パブリックゴルフ場」とは思えない立派さ。「ゴルフの発祥地、英国の雰囲気を大切にし、紳士の社交場をイメージした」そうで、玄関の壁に用いられた重厚な石材と大きな屋根も印象的。

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(「英国の伝統的ハーフティンバー風」のデザインという。外観の美しさはとても印象に残った)

 内部も華やかさには欠けるものの無駄がなく、必要なスペースはしっかり確保されている。所々に大きな絵画が掲げられていて、文化性もさりげなくアピール。
 この日は土曜日ということもあって50組余りが利用。このため貴重品ボックスは満杯で、財布などは受付に預けた。受付スタッフに同伴者の到着状況などを尋ねてみたが、対応はスムーズだった。
 売店は広く、クラブやゴルフ関連用品が豊富。さらに地元産の漬物や落花生、各種洋菓子などがズラリ。また冷凍庫には地元産の「特選干物」と一緒に、なぜか「下関ふぐ一夜干」と「大宮ぎょうざ」が並んでいた。
 ラウンジは1階と2階の食堂脇にあり、いずれもゆったりとした設計。籐製の椅子が心地良い。

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(練習場は狭く小さい。練習しようと意気込んで来場すると、ガッカリする)

 ドライビングレンジは完全な「鳥かご」だった。打席数はわずか8席。しかも正面のネットまで10ヤードほどしかなく、打つ感触を確かめるくらいしかできない。
 キャディマスター室でコインを買うのを忘れてしまったが、練習場の近くにいたキャディさんが「コインあるよ。カードナンバー教えて」と言って気軽にコインを1枚手渡してくれた。
 ボール代は30球で315円と安い。アプローチ、バンカーの練習場はない。パター練習場は大小3ヶ所。貸しクラブ(1セット3150円)は男女用ともあるが新しいモデルではなかった。貸しシューズは1,050円。

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(左側がOUTの1番、右側がINの10番。若者たちの組や大型コンペが目に付いた)

 いよいよプレー開始だ。スタートホールはOUT、INともクラブハウスから少し離れたところにあり、それぞれの組が並んで同時スタートする。これは珍しい形。
 1番ホールと10番ホールが平行してコース設計されているためで、安全にプレーできるようキャディさんが大声を張り上げて、スタートのタイミングを図っていた。
 コースは適度のアップダウンがあり、ひと言で言うと「コンパクトで上質な林間コース」。難点は距離が短いこと。スコアカードに掲載された距離はAグリーンが6,096ヤード、Bグリーンは5,925ヤードしかない。
 しかも、実際にラウンドしてみて分かったが、記載されている距離はバックティからのもの。レギュラーティからだとさらに短いわけで、他のコースに比べ2打目に持つクラブがだいぶ違った。
 コースレートはバックティから69.1、レギュラーティから68.0(ともにAグリーンの場合)。フェアウエー中央に樹木が立っていたり、ホールによってはうねっていたりとスコアを乱す仕掛けは多々あるものの、やはり距離が短い分だけ易しく感じられる。
 グリーンの速さは「9.0フィート」、刈高は「3.8mm」との表示があった。同伴者は「そんなに速くは感じないなぁ」と首をかしげていた。バンカーはさほど多くない印象。
 コースメンテナンスはパブリックコースとは思えないほど良好だった。多少軟らかいのか、グリーン上に残されたピッチマークが目に付いたくらいで、同伴者からも不満の声は漏れなかった。
 堂々とした松林には50年近い歴史を感じる。ただ、全体的に平坦で遠景が見えにくいだけに「景観の美しいホール」より、池越えやドッグレックなど「印象に残るホール」の方が多いように思われた。
 OUTコースは比較的素直なレイアウト。4番と5番ホールはフェアウエーのアップダウンと傾斜に手こずったが、最後の3ホールは共に短めで、真っ直ぐ。攻略しやすいミドルホールが続いた。

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(池があると景観にアクセントがついて美しい。ただ近づいて見ると、水質が今ひとつだった)
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(特にOUTコースでは「防球ネット」が目に付いた。安全面を考えればあった方が良いのだが・・・)
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(4番ホールのグリーン。年季の入った松林がコースを巧みにセパレートしている)
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(5番ホールのティインググランド近くにある売店。屋根のデザインがユニーク)
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(2つの池には噴水装置が未使用の状態で残されていた。バブル期には綺麗に水を吹き出していたに違いない)

 逆にINコースは異なる顔を持ったホールが続き、かなり変化が楽しめる。キャディさんは「INコースの方がトリッキーで少し難しい」と話していた。
 確かにOUTでは目に付かなかった「前4」の黄色いティーマークがINではほとんどのホールに設置されていた。

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(11番ロングホール。ティショットを飛ばしても。第2打地点からは立ち木がボールの邪魔をする)
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(13番ミドルホール。グリーン近くは急な坂。途中に並んだ3つのバンカーがプレーヤーを苦しめる)
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(送電用の鉄塔と高圧線がせっかくの自然美を損なう。「鉄塔は目印になって良いんですよ」とキャディさん)
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(18番ショートホール。100ヤード前後の距離しかないが、池とバンカーと植栽の配置が美しく、名物ホールと言っていいい)

 プレーした日、関東各地では紅葉が見ごろを迎えていたが、ここは松や桜、梅、藤、竹など紅葉しない樹木が多く、期待していた紅葉美は楽しめなかった。
 キャディさんも「紅葉はあまりないんです。桜がとても綺麗なホールがあるので、春にまた来て下さいね」という。そういえばHPでも桜の花の見事さをしきりに強調していた。景観的には「秋より春」のコースなのだろう。
 8番のティインググランド前にある池では泳いでいるヘビの姿を目撃した。なかなかの“大物”で、「野生の元気なヘビを見たのは何年ぶりだろう」と仲間内で話が盛り上がった。
 キャディさんも「ここには野うさぎ、リス、タヌキ、青大将と何でもいますよ」と話の輪に加わってきた。自然が大切にされているゴルフ場だと感じた。

007
(セルフプレーを選択する人も多く、各ホールに丁寧なコースレイアウト図が設置されていた)

 セルフプレーでも回れ、ブラインドホールも多いことから、各ホールには必ず「コースレイアウト図」が設置されていた。
 ただ、バンカーなど途中のハザードまでの距離が記載されてなく、やや不親切。「使用するティインググランドによって距離が変ってくるから」との説明を受けたが、一考の余地はありそうだ。
 フェアウエー上には所々に「赤」と「黄」の丸いマークが埋め込まれている。何だろうと疑問に思って尋ねたところ「赤はAグリーンの手前エッジまで残り100ヤード。黄は同じく残り150ヤードです」とキャディさんが説明してくれた。

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(コース内に埋め込まれた距離表示板。とても便利だ)

 他にもA、Bグリーンの中央までの距離を表示した小さな白いマークがあった。セルフプレーの時は貴重な情報源となる。

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(随所に設けられた「避雷小屋」。横風が強いと濡れてしまいそうで心配になる)

 ゴルフ場の立地場所がちょうど雷の通り道になっているらしく、「避雷所」も数多く設けられていた。「最近は少なくなったが、それでも年に数回、雷でプレーが中断することがある」そうだ。コース内の茶店やトイレはきちんとしていて問題なかった。
 乗用カートは3台あるが特別の場合に使用するだけで、基本的には「歩き」。このため、ホール間の移動距離は比較的短い。勢い防球ネットが目立つことになる。
 
 セルフプレーは月曜日と早朝・薄暮プレー(0.5ラウンド、手引きカート利用)のみで、原則は「キャディ付」。レディースを対象にした割引制度はなく、「ツーサム」でのプレーも不可。

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(茶店近くにある自動販売機。「早朝にセルフで回られる方用です」と言われ納得)
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(IN、OUTとも最後の2ホールには夜間照明の設備がある。他のホールで暗くなってしまったら「トラックを動員します」)
 
 しかし、冬場でも2:00までにスタートできれば1.5ラウンドは可能。スルーでのプレーも、当日の込み具合次第ではOKなので、希望者は問い合わせてみると良いだろう
 この日、私たちの組についてくれたキャディさんは若い男性だった。ハウスキャディではなく「派遣会社から来ている」そうだ。パートさんを含め約60人のキャディさんがいて、うち20人ほどが男性の“派遣キャディ”さんだという。
 「大丈夫だろうか」――。ちょっと心配したが、このキャディさんは思った以上にレベルが高かった。残りの距離を素早く伝え、ボールの行方は必ず確 認。グリーン上でも自信を持ってラインをアドバイス。わざと難しいゴルフルールを尋ねてみたが、確信を持って正確に答えてくれた。
 ラウンドの途中でクラブを置き忘れた時、すぐに気づいて走って取りに行ってくれた姿が特に印象に残る。
 さて昼食。山小屋風のレストランは天井が高くて気持ちいい。外の景観は平凡だが内部は明るく、開放感がある。運営は「レストラン・アラスカ」が受託。
 女性客を意識してか、スイーツのメニューが充実。さらにソフトクリームの自動販売機を設けたり、特産の焼酎を用意するなど、飲食面でも様々な工夫が見られた。外の広いテラスは利用されている様子がなかった。
 1階に置かれた自販機で売られているソフトドリンクが1本300円というのはさすがに儲け過ぎだろう。自販機は利用者が多いだけに、この値付けは残念だった。

002
(右側がロッカー。左側が浴室。脱衣場はない。手前の左側に椅子が置かれてあった)

 浴室はロッカー室に隣接している。プレーが終わってロッカー室に戻ると、各ロッカーの前にタオルとビニール袋が置いてあった。その場で脱ぎ、タオルを持って浴室に向かうスタイル。
 浴室は明るく、浴槽脇に並べられた植木の間から18番の美しいショートホールが眺められる。洗い場がパーティションで区切られているのもいい。浴槽は2つに分かれていたが、同じ湯温だった。
 HPを見ると、女性用には「プライバシーを重視したパウダールーム」が設けられているそうだ。女性客重視は最近のゴルフ場の大きなトレンドである。
 コンペルームは2階に6室。さらに、それとは別に「特別室」(2室)が3階にあった。そっと覗くと1室は浴室付きで、いかにもVIP御用達という雰囲気。「接待で時々利用される」らしい。室料は1万円。

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(スターティングテラスとバッグ置き場。宅配便の受付(正面奥)と一体化し、使いやすい)

 宅配便の手配はスムーズだった。年配の方が少ない人数で奮戦し、手際よく対応してくれた。ここはスペースが比較的広く、場所も玄関に近いので使い勝手がいい。ゴルフバッグは「1週間や10日なら無料」で預かってくれるという。
 ここのコースは無理攻めをしなければ好スコアが出やすく、初心者にも楽しめる。誰でも参加できるスポンサー付イベント(オープンコンペ)が頻繁に開催されており、小まめに料金やプランを調べて利用すれば、かなりのコストパフォーマンスが得られそうだ。
 さらに早朝プレーや薄暮プレーなどの割引サービスも豊富。大型コンペ用に「一日貸し切り」も可能だ。こうしたきめ細かな価格設定や営業面での柔軟な対応は名門コースには見られない点で評価したい。
 プレー代が2万円を越えるとさすがに高い気がするが、実質1万円台で楽しめるプランも多く、「お得感」はありそうだ。「都心に近い」というだけで高額なプレー代を取るゴルフ場も多い中で、貴重な存在ともいえる。
 クラブバスがないので帰りもタクシーを利用した。乗ると「送迎代はいただきません」と運転手さん。ゴルフ場と特別契約し、常にそうした割引をしているのだという。最後でもう一度、嬉しくなった。