2011年11月6日日曜日

富貴ゴルフ倶楽部=埼玉県のほぼ中央に位置する河川敷コース。「池」の多さと「豪華クラブハウス」に仰天

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(最近の商業施設を連想させるロビー)
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(クラブハウスとコースの間には土手がある。コース側からだと2階部分しか見えない)
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(英国のリンクスコースを連想させるレンガ造りのブリッジ)

 11月上旬の休日。ゴルフ仲間と一緒に、初めて「富貴ゴルフ倶楽部」(埼玉県比企郡吉見町)を訪れた。名前は聞いていたが、予備知識はゼロに近 い。そのため、驚きの連続だった。荒川から離れているので林間か丘陵コースと思っていたら、荒川支流、市野川沿いの河川敷コース。畑の中にドーンと建つ豪 華クラブハウス。コースから川の様子は見えず、現れるのは池、池、池、池。強烈な印象を残すゴルフ場だった。
 東京・池袋駅を7:07分発の東武東上線(小川町行)急行に乗って約1時間。8:02分に東松山駅に着く。仲間と待ち合わせてタクシーでゴルフ場へと向かう。クラブバスはない。
 町並みはすぐに途絶え、あたり一面に広がる田園風景。やがて周囲を圧するような豪華クラブハウスが現れる。

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(クラブハウスの玄関。周囲は一面の田園風景)
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(玄関脇には様々なオブジェがあった)

 駅からは12分で到着、タクシー料金は1,880円。重厚な屋根が突き出た玄関。そばには石で作られたオブジェ。
 近くの土手に遮られて、ゴルフコースは全く見えない。「畑の真ん中に・・・」。何とも不思議な光景だ。
 出迎えてくれた男性スタッフさんに「立派なクラブハウスですね」と声を掛けると、間髪入れず「バブルの時に造りましたから」。
 
 開場は1992年(平成4年)10月。通常、ゴルフ場を造るには計画段階から数年を要するので、開発時期はまさにバブル経済の真っ盛り。接待需要も旺盛だったはずだ。
 しかし、バブルはあっけなく崩壊。開発を中断するわけにも行かず、ゴルフ場はそのまま完成へ。そんな経緯が想像つく。
 それでも関越自動車道の東松山ICや圏央道の川島ICから共に10分あまりとアクセスが良いことから人気が出て、1998年頃までは売り上げも伸びた。
 だが開発資金の負担は重く、プレー代の値下がりもあって赤字経営が続く。2003年には東京地裁に民事再生法を申請。その後、ローンスター・グループの支援を受けて再生を目指し、現在はPGMグループの傘下で営業している。
 ここ20年の「日本のゴルフ史」の典型だが、経営破たん後に残ったものは立派なクラブハウスと、河川敷コースとは思えない戦略性に富んだ美しいコースだった――。
 玄関を入ると、すぐ右側と正面にラウンジが2ヵ所。広い空間に、いかにも高級そうなソファーが並ぶ。壁の棚には販売用の帆船(模型)やインテリアグリーン(植物)、ガラス製品など。

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(石を基調にした高級感ある受付)

 左側が受付。黒い石のカウンターが高級感を演出している。女性スタッフの親しみやすい笑顔に少し気持が落ち着く。
 受付の先の通路が圧巻だった。高い天井。奥には白いソファー、幅広の階段。左右、中央にゴルフ用品やウエア類が多数並べられているのは、いかにも営業熱心なPGMグループらしいが、その点を割り引いても高級な商業施設といった雰囲気だ。

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(ロッカールームは「半個室」風に分かれ、高級感があった)

 窓の外の田園風景とのミスマッチが凄い。ロッカールームもバブリーだった。半個室のコーナーがズラリと並ぶ。ロッカー本体は木製で高級感があり、扉の裏側には大きな鏡。

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(脱衣場はコンパクト。椅子や冷水設備があり、籐製の床や籠も感じがよかった)

 続けて水まわりの施設まで紹介すると、脱衣場はコンパクトだが、床や椅子、カゴが籐製で統一されて心地いい。浴場も黒い石を基調にした高級感ある造り。狭いながらサウナや水風呂もある。
 外の景色は柵で囲まれて全く見えない。見えても外は土手と畑ばかりのはず。このまま異空間に身を置いていられる方が幸せかもしれない。

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(トイレでは各個室の中に手洗い設備とゴミ箱が完備)

 クラブハウスの中で最も驚いたのが、実はトイレの個室(1階で6室)だった。広いだけではない。すべての個室の中に洗面台などがセットされているのだ。もちろん、外にも立派な洗面台はある。とにかく豪華。
 「ゴルフ場に贅沢な設備は不要」という意見があることは承知している。だが同じ料金を支払うなら、やはり豪華で快適な方がいい。利用者にとって「バブルの遺産」は正直、嬉しい。

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(パター練習場は広く、3面が使えた。ドライビングレンジがないのは不満だ)
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(スタートホール近くには「素振り場」があった)
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(キャディマスター室のあるスターティングテラス。天井のデザインがバブリー)

 さて外に出て、いよいよラウンド開始だ。ドライビングレンジがないので、練習はパターだけ。プレースタイルは「乗用カート利用のセルフプレー」。
ホームページ(HP)には「キャディ・セルフ選択性」とあり、キャディ付のプレーを希望する場合は「+3,500円」との案内もあった。
 しかし、ラウンド中、キャディさんの姿を見かけてことは一度もなく、実際には大半がセルフプレーのように思われた。
 乗用カートに揺られて土手を越え、やっとコースに到着。ゴルフ場に着いてから30分。「やっとグリーンが見えましたね」と同伴者もひと安心の様子だ。

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(1番ホールのグリーン近くに立つ鉄塔。コースの上を高圧線が通る)

 スタートはOUTコースの1番ミドルホールから。正面左奥に大きな鉄塔。左手前に池。平坦なフェアウエー。230ヤード先に目印となる細いポールが立つ。
 距離はレギュラーティから339ヤード。バックティからでも373ヤードと長くはない。ティインググランドは4つ。ゆったりと造られている印象だ。
 コースの全長距離は、バックティ利用だと6,666ヤードあるが、レギュラーティからだと6,017ヤードしかない。飛ばし屋にはちょっともの足りない長さだ。
 キャディマスター室で尋ねたら「混んでなければバックティからでも打てますよ。特にハンディキャップなどの制限はありません」とのことだった。

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(平行して造られたホールが多く、他の組の姿を良く見かける)
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(紅葉の季節の中で、白い花びらが目を引いた)
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(1番と10番は隣接。「ローカルルールで隣のホールに行った球は無罰で戻せる」とか)

 「寄せワンのパー」で順調なスタート。気分を良くし、平坦で距離が短いことに慢心して「今日は自己ベスト更新を狙う」と大言したのがいけなかった。
 
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(乗用カートに搭載されていた「コースガイド」。ピン位置は「手前」「中央」「奥」の3つで表示)
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(230ヤード地点に、目標となるポールが立つ)
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(フェアウエーの各所で見かけた芝の修理地)
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(右サイドに大きな池が続く2番ホール。美しい景観だが当日は曇天で、見栄えは今ひとつ)

 2番ホールからは右、左、右と、まさに池のオンパレード。「河川敷コースなのに何でこんなに池が多いんだ」とボヤキも始まった。

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(ティマーカーは独特のデザイン)
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(同じ水路の上を何度も行ったり来たりする)
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(4番ミドルホール。第2打は右サイドの池を越えてグリーンを狙う。印象的な看板ホールだ)

 最初にボールを池入れたのは4番ミドルホールだった。ティショットはフェアウエーの左サイド。しかも当たりが悪く、2打目に距離を残す。
 ピンは右サイドの大きな池の先。勇気を出して打ったボールはグリーンにわずか届かず、池ポチャ。
 
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(どんなシーンを撮っても、池が入ってくる)

 その後も全部で11ある池にいじめられ続けた。コースによってはもっと池数の多いゴルフ場もあるが、ここは池の周りを回るレイアウトもあるため、大半のホールで池に遭遇することになる。
 ある男性スタッフさんは「グリーン周りが池に向かって傾斜していたり、マウンドでボールが池の方向に跳ねやすく、結構、皆さん入れちゃうんですよね」と同情してくれた。
 「池」は厳しいハザードになるが、景観的にはプラス面が大きい。この日はあいにく小雨の降る天気で写真写りが良くないが、青空の下であれば、かなり美しいコースに見えたはずだ。

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(グリーンまでの残り距離を表示。植え込みの木はどこも切られていた)
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(落ち葉と紅葉。秋景色を楽しむ余裕が欲しい)
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(トイレはスタートホール近くだけでなく、コース内にも設置されていた)
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(ティインググランド脇に並んだ様々な表示板)
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(フェアウエーセンターの立ち木が厳しい。左サイドには池、右サイドにはOBゾーンが待ち構える)
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(所々に迫力ある老木が立っていった)
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(3番ショートホール。池とバンカーがプレッシャーを掛ける)

 楽天がゴルフ場の写真を並べた「ゴルフ場フォトギャラリー」をネット上で展開している(http://gora.golf.rakuten.co.jp/doc/guide/ria/saitama02.html)。美しい写真を見たい方は、そちらを参照して頂きたい。
 コースの設計は黒沢長夫氏。HPのコース紹介には「監修 岡本綾子」とある。
 岡本プロがこれほど池好きだったとは知らなかった。
 このコースのもう一つの特徴は「バンカー」だ。河川敷の割には本格的なバンカーが多い。

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(バンカーにも色々と工夫が凝らされていた)
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(グリーン手前に様々な形状のバンカーが並ぶ。「転がし」では寄らない)

 一つひとつの配置や形状にも意味が感じられる。ホールによってはグリーン周辺がバンカーだらけといった名所もある。岡本プロがバンカーの名手だったことを思い出す。

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(景観が美しく、女性にも人気がある)

 池とバンカーの存在が戦略性を高め、景観を美しくしていることは確かだ。綺麗なホールが多いので、女性に好かれるコースでもある。

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(注意板を出しただけでは、事故を防げない)

 難点は各ホールが隣接し、隣のコースから時々ボールが飛んで来ることだ。これは危ない。
 ティインググランドに「ティショット注意!」とか、「隣接ホールへボールが行った場合には“フォアー”の掛け声をお願いします」と書かれたボードが置かれていたが、どんなに注意してもミスショットは起こりうる。
 実際、仲間の1人が打ったボールが大きく曲がり、後続の組の女性ゴルファーの足に当るという事故が発生した。
 幸い大きなけがにはならなかったが、同組の男性ゴルファーは「さっき、別のボールが手に持っていたクラブに当たり、ヒヤッとさせられた」と強く訴えていた。

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(一部には防球ネットがあった)

 コース内に防球ネットはあまりない。景観は多少悪くなっても「安全第一」でお願いしたい。
 コースレートはバックティから71.6、レギュラーティから68.0。キャディマスター室で「グリーンの速さはどの位ですか」と尋ねると、女性スタッフが「11(フィート)です」。
 「えっ、11フィートですか? それはプロのトーナメント級の数字ですよ」と首を傾げると、別のスタッフに電話して修正。「9から10フィートだそうです」。
 小雨が降って遅くなっている点を考慮しても、そんなに速くはない。実感では8フィートあるかないかだ。ズレを感じた。
 ちなみにグリーンは「高麗」と「ベント」の2つ。しかし「高麗」は未使用で、実質は「ベント」の1グリーン。
 ラフが短く刈ってあるので、距離を欲張らず、堅実なプレーを心掛ければ「自己ベスト」とまでは行かなくても、それなりの好スコアでまとめられたかもしれない。全ては後の祭りだったが・・・。

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(INコース内の売店。狭い店内で女性スタッフが一生懸命、サービスしてくれた)

 ラウンド中に感じたことを他に3つ書き加えたい。1つは売店。INコース13番ショートホール手前にある売店は外見こそプレハブ造りで簡素だが、女性スタッフさんが常駐していて、愛想が良く、ホスピタリティも高かった。
 内部には椅子、テーブルがあり寛げる。河川敷コースとしては充実している。ちなみに同スタッフさんによれば、「このコースは大雨が降るとすぐに冠水してしまい、メンテナンスが大変なんです」。
    
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(ティインググランドにも一部、荒れた所があった)
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(グリーン上では一部、芝が変色している個所があった)
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(池の周囲は綺麗に縁取られている所が多かった)
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(池が多いため、カモもたくさんいる。コース内を悠然と散歩中)
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(河川敷コースは芝の手入れが大変だ)
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(フェアウエーでも水の溜まりやすい所は芝が傷む)
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(皆でボールを捜索。足元に気をつけないと滑る)
 その割にはコースのコンディションは悪くなかった。もちろん、写真に見るように所々にベアグランドがあり、水の溜まりやすい窪地などに修理地も目立ったが、全体としてはまずまずの状態。

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(ゴルフ場のほぼ中央を道路が走る。1ラウンドで4回、この陸橋をくぐる)

 3つ目が印象的な景観が多かった点だ。例えば、コースのほぼ中央を高架式の道路が通っている。上をひっきりなしにクルマが走る。高架道路の下はアーチ状になっていて、そのアーチの中を1ラウンド中、4回も通過する。

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(「アメリカンスタイル」のコースだが、日本情緒を感じさせる景観もしばしば見られた)
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(池の周囲は石や木で綺麗に整備されている。日本庭園風の趣がある)

 池の周囲が日本庭園風に凝って造られた所も目立った。大きな石を配したり、小さめの石を並べたり。河川敷コースであることを忘れさせるほどの美しさだ。約20年の歴史を経て、太く立派な木も多い。
 クリークの上には英国のゴルフ場を想起させるようなレンガ造りの橋が架かった場所があり一瞬、河川敷にいることを忘れさせる。

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(一部の池では水の汚れが気になった)

 半面、ドブと言ってもおかしくないくらい汚れたクリークもあった。池の水も同様。綺麗に整備されている所と、そうでもない所が混在する。
 この辺のメンテナンスがもう少し良ければ、印象がさらに良くなったはずだ。ちょっと惜しい。
 昼食は2階のレストランで。階段途中に「本日のおすすめランチ」として海鮮丼のサンプルが置かれていた。その上の壁にはハンバーグステーキの写真や地元産漬ものの案内チラシ。

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(レストラン入り口には「中華の鉄人 陳建一氏」監修のスペシャルメニューの看板が出ていた)

 レストラン入り口にはPGMグループの看板である「鉄人シェフプロデュースによるスペシャルメニュー」の紹介パネル。今日は中華の鉄人による麻婆豆腐だ。

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(明るく、上質な感じのレストラン。外の景色はあまり良くない)

 内装は豪華というよりスッキリとした感じ。天井はやや低い。大きな窓からは土手とコースの一部が見えるが、大した景観ではない。
 室内にツマミ類(1品100円)を販売して回るワゴンが用意されていたが、稼動はしていなかった。
 ランチメニューは豊富で19種類の中から選択できる。最も高いのが「うな重膳」で1,980円。安いのはチャーシュー麺やそば(うどん)の1,080円。ビール(生中)は600円。「ゴルフ場価格」としてはリーズナブルな水準か。
 朝食には牛丼、おにぎりセット、洋定食などがワンコイン(500円)で食べられる「朝FuKi@500」サービスがある。
 周囲を見渡すと、比較的若い人が目立つ。大型コンペもあるようだ。開場当時に想定していた客層とはだいぶ違うのかもしれない。

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(2階の「メンバーズルーム」。この日、利用者は見かけなかった) 

 レストランの隣には「メンバーズ ルーム」とパーティ用の「コンペルーム」6室。1階よりは小さいが豪華トイレもあり、やはり設備は充実している。
 ちょっと気になったのが「写真の販売」。実はスタート前に女性カメラマンさんがティインググランドに上がって来て、全員の集合写真と各自のティショットをパチリ。それを短時間で印刷し、即売しているのだ。
 価格は集合写真と個人のショット写真を組み合わせたものが2,100円。集合写真のみが1,050円。あまり売れているようには見えなかった。
 午前中に回ったOUTコースと午後にラウンドしたINコースとではコースレイアウトなどに大きな差は感じなかった。
 ただ、最初は刺激的だった池やバンカーも次第に目が慣れ、「あっ、また池か」という気持になってきたのは事実。3番と13番のように似た景観のホールもある。
 14番ホールでも「午前中にも、似たような感じのホールがあったね」という会話が自然に飛び出した。
 プレー料金(セルフ、乗用カート利用)は、「ハイシーズン」で平日が11,000円~11,500円、休日が17,500円~19,500円。「OFFシーズン」で平日が8,500円~9,500円、休日が13,000円~15,500円。
 日によっては、これよりさらに安かったり、高かったりと目まぐるしく変わる。「昼食付」の日もある。木曜日は「レディースDAY」。火曜日は「シニアDAY」。
 1人でも参加できる「オープンコンペ」は毎月開催。9ホールだけ回る「トワイライトハーフプレー」は平日が4,000円、休日が7,000円。
 全般的に平日と休日との価格差が大きい。
 PGMグループ入りしてからは各種割引プランが増え、利用しやすくなったようだ。予約の受付はプレー日の2ヵ月前から。「メンバーズコースですが、どなた様でもご利用いただけます」(受付のスタッフさん)と門戸も広い。
 「豪華施設」に「美しいコース」そして「多様な割引プラン」の組み合わせはアマチュアゴルファーにとっては嬉しい条件。
 結局、1日のラウンドでボールを4個池に入れ、平凡過ぎるスコアで終わった。
 「もう一度来たら絶対、自己ベストで回ってみせるぞ」という意気込みと、「こんなにボールを無くすコースはもういい」という思いとが複雑に交差する。
 答えはまだ出ていない。