「千葉カントリークラブ」は50年の歴史を誇る関東でも有数の人気ゴルフ場だ。日本オープン選手権を開催した実績を持つ「梅郷コース」のほか、林
間の美しい「野田コース」「川間コース」の計3コースからなると思い込んでいた。ところが、この「北越谷パブリックコース」も実は同じ系列のゴルフ場だっ
た。昭和41年に同クラブがゴルフの大衆化と健全なスポーツとしての振興を目的に開場したのだという。東京に近い。プレー代は安い。「これは穴場かもしれ
ない」と勇んで出かけた。
(土手の上から見た景色。典型的な河川敷コースだ)
住所は埼玉県吉川市。江戸川を挟んで千葉県野田市に接する埼玉県の東端だ。最近はその吉川市の北に位置する松伏町の方が有名かもしれない。石川遼プロの出身地だからだ。
実際、コースは松伏町に隣接。ゴルフ場でも「石川遼がまだ小さい頃、お父さんとここで薄暮プレーなどをされていたようです」と話す。想像するだけでもウキウキする。
今回は夏休みの1日を利用し、クルマでゴルフ場へと向かった。常盤自動車道の流山ICで降りて一般道を15分。江戸川の土手伝いにクルマを走らせると、左側に大きな屋根のクラブハウスが見えてくる。建物の周辺は駐車場。男性スタッフ2人が笑顔で出迎えてくれた。
(クラブハウス。ゴルフ場らしいデザインで、遠くからでも目立つ)
クラブハウスに入ると右手が受付。奥に簡素なソファーが置かれたラウンジ。左手に貴重品ボックスと2階に上る階段という構成。階段周辺とラウンジ手前の2ヶ所に販売用のゴルフ用品が並び、狭いスペースを少しでも有効に使いたいというゴルフ場側の意図が伝わってくる。
コースに向かう出口に自動販売機が並んでいるのが目に付いた。「ここでの支払いはみな現金かもしれない」。そう直感して受付のスタッフに尋ねて見ると、「はい、そうです。必ず現金をお持ち下さい」。
ロッカーはスチール製でサイズは普通。100円を投入して施錠。鍵を開けると100円が戻ってくる仕組み。早速、現金が必要になった。
自販機で飲み物を購入し、歩いてコースへと向かう。クラブハウスとコースのちょうど中間にある土手(堤防)の上から全体を眺める。想像していた通りの広々とした河川敷コースである。
(広々とした練習場。屋根がないのでラウンド前から汗びっしょりに)
土手を下りる階段の先に、乗用カートと手引きカートがズラリ並んでいる。右側がドライビングレンジ。打席数は40。距離も250ヤードある。左側はかなり遠くまでコースが続く。
目に入ってくるのは江戸川にかかる大きな「野田橋」と直線的に並んだ柳の木、グリーン上のピンフラッグ。他の河川敷コースに比べても樹木が少なく、ちょっと殺風景な印象も受ける。
(ここで練習ボールを購入、飲み物も販売していた)
プレハブ工法で造られた簡素な建物がプレーの前線基地。練習ボールもそこで買う。「はい。200円です」。1箱24球。ボールの印字がバラバラだったので紛失球を集めたものと思われるが、そんなひどいボールはなかった。
ドライビングレンジの隣に小さなパター練習場。河川敷コースのグリーンは重く、パター感覚が他とは違うので練習に時間を費やした方が良いと思い、長めに練習した。
「ちょっとボールが跳ねる感じ」。芝のせいか、打ち方が悪いのか・・・。
アプローチやバンカーの練習場はない。後で分かったが、実はこのコース、バンカーが一つもない。「バンカー0」のコースは初めてだ。バンカー練習場がないのも当然である。
プレーは全てセルフ方式。乗用カートか手引きカートかは選択制。乗用カート利用の場合は、通常のプレー料金にプラス1,000円が必要。
(10番ホール脇の池には古い小船があった。河川の雰囲気づくりを狙ったものなのだろうか?)
この日はINコース10番ホールからのスタートだった。順番待ちをしていると男性スタッフがティインググランド近くにやって来て、何か話を始めた。
「ローカルルールの説明をします。隣のコースに行ったボールはペナルティなしで元のコースに戻して下さい。乗用カートはコース内に乗り入れOKです。ホールとホールの間にある溝は滑りやすいのでご注意下さい」
同伴者は「見渡したところOB杭はほとんどないし、ボールを曲げて隣のホールに打ち込んでも、ペナルティなしで戻せるんですって」とニコニコ。早くも楽勝ムードだ。
確かにストレスは少なかった。河川敷コースの割にはフェアウエーが広い。というよりラフの部分が溝近くまで綺麗に刈られている。
(所々に池を配してあるが、あまり綺麗な池ではなかった)
樹木は柳の木が点在しているくらい。池はあるが、なぜかホールとホールの間に設けられていることが多く、ショットの邪魔にはほとんどならない。江戸川もコース内からは見えない。当たり前だが、全ホールフラット。
これだけハザードが少なければ、初心者でも十分に楽しめる。ラウンド中、若者や女性客の姿が目立ったのも納得できた。ただ、初心者が多いたためだろうが進行は遅れ気味で、ショットする際に何度も待たされた。この点では少しイライラした。
また、INコースはパー3のショートホールが4つもある変則的なレイアウト(パー34)。全体の距離も短く、レギュラーティからだと2,605ヤードしかない。
河川敷コース特有の小さな砲台グリーン(2つ)と、芝目の強さ、重さには手こずったが、それでも皆“ローカルルール”にも救われ、今年の自己ベストに近いスコアで前半戦を終了することができた。
(ティインググランドの中には荒れ気味な所もあった)
コースメンテナンスに対する不満が出るのではと心配していたが、「河川敷だから、こんなもんだよ」と同伴者。スコアが良ければみな、気も大きくなる。
後半に回ったOUTコースは、INとは逆にパー5のロングホールが3つあり、距離も3180ヤード(バックティからだと3400ヤード)とやや長め(パー37)。
昼食を挟んですっかり気持ちが緩んでしまったこともあり、同伴者たちはみな「後半はダメだ。調子が悪い」。一転してスコアが伸び悩んだ。
「ここはコース途中に休憩所(売店)もないし、自販機もない。トイレも簡易型が1ヶ所あるだけだ」。午前中は出なかった不満もこぼれる。
「緊張感のあった午前中にOUTコースを、疲れの出てくる午後にINコースを回ればもっと良いスコアで上がれたのではないか」とぼやいたが、すでに時遅し。
「スコアをコースのせいにしてはいけない」と先輩格の同伴者にたしなめられてしまった。
一般的に河川敷コースはハザードが少なく簡単そうに見えるが、狭いフェアウエーや砲台グリーンに悩まされ、意外にスコアがまとまらないと言われる。
このコースも変則的なコース設計、変則的なローカルルール下ではあったが、やはり同じように「河川敷の罠」にはまってしまった。
次回は最後まで気を引き締めて回り、ぜひとも「今年の自己ベスト」を出したい。
(ホールごとに距離が違うだけで、景観はみな同じ。番号を示す大きな看板が印象的)
(ティショットで池が視界に入る8番ロングホール。記憶に残った数少ないホールだ)
写真を見て頂ければ分かるが、景観は平凡で、単調なホールが続く。目の前に池があった8番ロングホールが印象に残ったくらいで、後は「利根川か荒川の河川敷でも見たことがあるようなホール」と錯覚するほど。
(太い柳の木が並みの河川敷コースではないことをアピール)
唯一、太くて立派な老柳が40年を越える歴史の長さを誇っているように見えた。
全部ではないが、ホール間の移動距離が長いところがあり、手引きカートでは回るのが大変かもしれないと感じた。その点、移動だけでなくコース内を自由に走れ回れる乗用カートは楽で、ほとんどのプレーヤーが追加料金を支払って乗用カートを利用していた。
コースレイアウト図はティインググランドにはもちろん、乗用カート内にも置いてなかった。特に厄介なハザードがあるわけではないし、見晴らしが良く、ドッグレックもないのだから不要との判断だろう。
ボールは思いのほか無くした。各ホールの両サイドにある溝にボールを落とすと、見つけても足元が不安定で拾えない。溝周辺の草むらに消えてしまったケースもあった。
「あぁ~、新品ボールだったのに・・・」。後でゴルフ場のスタッフに拾ってもらい、朝の練習場で復活してくれることを願うばかりだ。
クラブハウスはハード面もソフト面も、合理的かつ効率的にできていた。例えば2階のレストラン。長方形のスペースに椅子とテーブルが2列に並び、一方の端に厨房が設けられている。その側には食券の自動販売機。
「ビール(生中)500円」の他、昼食用には500円の「ラーメン」から1300円の「うな重定食」までごく一般的なメニューが15種類。「カレー」「ハンバーグ」「ヒレカツ定食」・・・。
HPには「味と値段を見事に両立させたレストラン」と紹介されているが、ちょっと自慢し過ぎのような気がする。
朝食メニューは「和定食」「洋定食」(ともに700円)など4種類。モーニングコーヒーは150円でお替り自由。さらにアフターメニューとして300円から600円のツマミ類が各種。
みな自販機で食券を購入し、厨房の女性スタッフに手渡す。その際に番号札を受け取り、しばらく席で待っていると番号が呼ばれ、注文品を取りに行くという仕組み。返却も全てセルフサービスだ。
レストランからの景観は期待できない。窓は大きいのだが、クラブハウスに平行して走る土手の側面が見えるだけ。クラブハウスと土手の間に比較的スペースがあり、圧迫感がないのが救いだ。
浴室も清潔で必要な機能こそ揃っているものの、贅沢感を求めると肩透かしを食う。窓の外には「目隠し」のパネルが置かれているため、どんな場所に面しているのかも中からは分からない。
脱衣場には窓がなく、扇風機も置いてなかった。天井には埋め込み式のクーラーがあるが、スペースが狭いのでラッシュ時には混雑し、湯上りの熱気にクーラーが力負けしているように感じた。
何より驚いたのは、小さなフェースタオルだけでバスタオルがなかったこと。そういえば洗面所にも布製の小タオルがなく、ペーパータオルだけだった。
もう一つなかったのが「スコアカード ホルダー」。カードを裸のまま使い続けたので、終盤ではヨレヨレになってしまった。経費削減のためというのは分かるが、やはりバスタオルとカードホルダーは欲しい。
料金は安い。自信があるのだろう。HPには「平日、土日祝ともに首都圏随一の低料金。コストパフォーマンスの良さは多くのお客様に定評があります」と堂々と謳っている。さらに「2サム保証」「1・5ラウンドへの追加が無料」と安さを強調している。
通常料金は年間を通し、平日で4500円、土日、祝日で8000円。このほか「学生割引」(学生証を持参すれば年齢不問)や日没まで回れる「薄暮プレー」(施設の利用不可)など、特別料金でのプレーも可能だ。
10月から2月までの「薄暮プレー」は平日、何と「2500円」。冬場という条件付とはいえ、首都圏でこの料金は確かに安い。
料金は朝の受付時に支払う前金制。予約は3ヶ月前の1日から受け付ける。
交通アクセスは、クルマだとかなり便利。都心からも高速道路が空いていれば1時間足らずだ。電車だとJR武蔵野線の「吉川駅から定期バスを利用する」とHPの案内にはある。
が、定期バスは運行本数が少なく、結局は駅からタクシーを利用することになりそうだ。所要時間は20分強、料金は約2,700円。クラブバスはない。
どうせタクシーを利用するなら東武野田線の野田駅からの方が近い。ここからなら約10分、1500円程度で到着できる。
(江戸川とコースをまたぐ大きな橋。一日中、クルマの往来が途切れることがない)
ただし「朝は江戸川を渡る橋の所が混むので注意が必要」(受付スタッフ)。東京駅からは吉川駅も野田駅も所要時間はさほど変わらない。
この「北越谷パブリックコース」でゴルフを覚え、野田市にある「川間コース」(セルフプレー)でレベルを上げ、チャンピオンコースの「野田コース」や「梅郷コース」でゴルフに燃える――。
利用者の中には、こんな千葉カントリークラブでの“三段跳び”を夢見ているゴルファーも多いのではないかと想像した。
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