2010年8月7日土曜日

アローエースゴルフクラブ=素直でフラットな丘陵コース。「矢板で一番」

 「なぜアローエースという名前なんですか?」。ずっと気になっていたので、受付で尋ねてみた。「アローは英語で『矢』の意味。エースは一番。つま り矢板地区でNO1のゴルフ場になるぞという心意気なんです」と女性スタッフさん。確かにここ栃木県矢板市周辺は個性的なゴルフ場が密集、全国でも有数の 激戦地となっている。では今、何を売り物に「エース」を目指しているのだろう。期待してコースに向かった。

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(ユニークなデザインのクラブハウス。中央の丸い屋根は「明かり取りの窓」)

 先ず練習場に直行。クラブハウスのバッグ置き場からは200mほど離れていて、ちょっと歩く。途中、コース側から見たクラブハウスは斬新なデザイ ンだった。「大きな鳥が翼を広げたような優雅さでしょう」と言われたが、ピンと来ない。中央に太陽光パネルを思わせる円筒形の屋根があり、どちらかといえ ば近代的なイメージ。ハウスの周囲を噴水付きの人工池が囲んでいる。
 
 ドライビングレンジは15打席。距離200ヤードで、広さはまずまず。看板に「コースボールを使用」と書いてあったが、実際には新旧のボールが混ざっていて、綺麗なボールばかりではなかった。1カゴ35球で420円。
 不満だったのはボールを置くマットだ。細長く小さいので、1球打つたびに動いてしまい、セットし直さなければならない。どうしてこんな小さなマットを使用しているのだろう。これでは「地域一番」を目指すのも容易ではないぞと思った。
 バンカーやアプローチの専用練習場はない。スタート時間まで入念にパッティング練習をしてコースへ。最初はINコースの10番ロングホール。
 ティインググランドに立って練習場で抱いた不安はかなり解消した。山間部なのにフェアウエーが広く、フラットで美しい。コース中央にある樹木が適度の緊張感を与え、グリーン左側の池が正確なショットを要求している。グリーンは綺麗だが、良くできていて気が抜けない。
 「あっ!」。いきなり痛恨の3パットだ。「今朝はいつも以上にパット練習したのに」とぼやきが出る。

 
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(全体にアンジュレーションの少ないフラットなコース)

 コース全体の雰囲気もスタートホールでの印象とほぼ同じものだった。まずフラットなのに驚かされる。アップダウンはほとんど感じない。ティショットの落とし所もしっかり見え、きちんと打てさえすれば平坦な場所から第2打が打てる。
 「ありのままの地形を生かしたコースがベスト」と考えるゴルファーなら、違和感を持ちそうなくらいの設計だ。

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(池の淵からグリーンまで距離があり、ハザードとしての迫力は少ない)

 コース上の立木や池、バンカーが戦略性を高めている。しかし、池については一部を除くと強烈なハザードにはなっていない。大きく曲げさえしなければ大丈夫。むしろ美しい景観を演出する“素材”として配されているように思えた。
 好天に恵まれれば「雄大な那須連山と日光男体山が眺められる」そうだが、残念ながらこの日はやや曇っていたこともあり、遠景を楽しむことはできなかった。それでも近景は十分に楽しめた。

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(日本庭園のような佇まいを見せるショートホール周辺)
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(炎天下に「さるすべり」が綺麗な花を咲かせていた)

 例えばショートホールは日本庭園風の佇まい。「ポーチュラカ(通称;花滑り)」が白やピンクの鮮やかな花を咲かせ、8月の炎天下でもその存在をしっかりアピールしている。
 「コースメンテナンスには特に力を入れています」とキャディマスターさんが言う通り、芝の状態は良好。「グリーン上でピッチマークが多く、ちょっと気になりました」と伝えると一瞬、戸惑ったような表情を見せた。芝の管理にはかなり自信を持っているのだろう。
 全体に景観が美しく、素直でプレーしやすいコースというのが実際にラウンドしてみての感想。その意味では女性や初心者にも優しく、喜ばれそうだ。ティインググランドは5つほどあって、レディスティが随分と前に置かれていた。これも女性客を意識したものか。
 ただ、逆に言えば、印象に残るような個性的ホールが少なく、アスリート系の上級者は飽きるかもしれない。バックティからプレーすれば事情はだいぶ変わるのかもしれないが・・・。
 4つあるショートホールの距離に大きな違いがなかったのも物足りなかった。長めのホールでもティマークが表示板より前に出ていて、レギュラーティ から打つと、実質150ヤードから170ヤードと似たような距離。もう少し変化があった方が面白い。ミドルホールについては最長406ヤード、最短271 ヤードとアクセントが付いていた。
 「前4」のアドバンスティが置かれていたのは4ホールのみ。バンカーは砂の量が多くフワッとして打ちにくかったが、これは好き嫌いの問題。「こういうバンカーにも慣れて、もっと上手にならなければいけない」と思った。
 売店はOUTとINに1ヶ所づつ。ただし、INコースは無人で自動販売機が並んでいるだけ。クーラーは稼動し、冷水も美味しかった。OUTコースの売店の女性スタッフさんが「INコースは4、5年前から誰もいなくなっちゃったんですよ」と教えてくれた。
 乗用カートには「コースレイアウト図」があったが、細かい距離表示がなく、書かれているコメントも平凡なもので、実戦ではあまり役に立たなかっ た。14番や18番などドッグレッグしているホールのティインググランド脇にはさすがにきちんとしたレイアウト図が置かれていた。セルフプレーヤーが多い ので、乗用カートにより詳しい戦略図があると嬉しい。
 小さくて見にくいが、「スコアカード」にはコースレイアウトが書かれていた。合わせて「防雷ハウス」の位置が丁寧に記載されているのは助かる。北関東は夏場、雷が発生しやすい。どこに避難小屋があるかが分かれば、それだけでも安心してプレーできる。
 総じて素直なコース設定なので、アベレージゴルファーでも好スコアが期待でき、快適度は高いはず。今回はセルフプレーだったが、希望すれば「キャディ付」も選択できる。プレー料金もかなり良心的だ。
 ホームページで8月の「ビジター様 予約カレンダー」を見ると大半が1万円以下。夏季のスペシャルプランとはいえ「平日、早朝、1ラウンド、乗用カートのセルフプレー」料金は「2サム保証」でなんと3,500円という安さだ。これにはびっくりした。
 「通常プラン」でも「月曜セルフデー」なら1ラウンド3,600円。高い土日曜日のプランでも11,800円(昼食、1ドリンク付き)。近所に住んでいたら毎週来たくなってしまいそうな価格水準である。
 前半のプレーが終了。一旦、クラブハウスに戻る。外から見たときは奇抜に見えた建物も、中から見ると雰囲気がだいぶ違う。
 中央のドームには最初、太陽光パネルに見えた天井の「明かり取り窓」から柔らかな自然光が降り注ぎ、レンガと木を用いた内装は「モダンな山小屋風」といった趣き。上質かつ落ち着いたデザインで全体が統一されており、コースの美しさ、雰囲気とも良くマッチしている。

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(モダンな山小屋風のレストラン)

 1階のレストランは、窓いっぱいに見えるコースの美景と手前の人工池が印象的。同伴者は内装や照明を見て、「モダン・クラシックな造りですね」と感想を漏らしていた。
 メニューは10種類で1品1,050円が基本。昼食付きの割安パックを利用した場合、これに400円から900円までの追加料金を払うと別メニューが選べ、小さな贅沢が楽しめる。
 ビール(生中)の790円は高い。凝ったグラスで出てきたのは嬉しかったが「生小(530円)と中の容量はあまり変わらないね」と同伴者に指摘され、この時だけは面白くなかった。
 レストラン脇のラウンジは豪華だった。高級そうなソファーが並び、時間があればゆっくり寛ぎたかった。同じ様なラウンジが中央のエントランスホール周縁部にもあり、なかなか贅沢な設計になっている。
 ただ、どちらも私たちが見た限りでは、利用者は誰もいなかった。プレーヤーは朝も昼食時も慌しいので、なかなかゆっくり寛いでいられないというのが実態ではないか。もったいない気もする。
 そのエントランスホールで目立ったのが大量のパンフレット類だ。専用ラックに「アローエース ハーフオープンコンペ 毎月開催」「NEW バス パック」「NEW 早朝プレー」「宿泊パック」「料理長杯ゴルフコンペ」などの案内が並ぶ。館内の一等地に置いてあることからみても、手に取る人が多いの だろう。営業にはかなり熱心である。
 ロッカールームやトイレもレストランと同じ落ち着いた雰囲気。ロッカーは凝ったデザインを施した木をふんだんに用い、良い意味で年季も感じさせ、ゲストを温かく迎えてくれる。トイレは清潔だが個室(8室)はドアが内側に開く構造でやや狭いのが難。
 浴場も比較的小ぶり。明るいが、窓に「曇り」が入っていて外の景観はあまり望めない。丸いジャグジー風呂があったが、スイッチを入れてみても稼動しなかった。経費節約のあおりなのだろうか。
 脱衣場も鏡の隙間にチラッと外が見える程度で、開放感はない。これは構造的なもの。余談だが、最近は「外から中は見えず、中からは外の景色が見える」特殊なガラスが普及している。ゴルフ場にも、これがもっと増えたら良いのにと思う。
 ラウンド中に同伴者の1人がロッカーキーの付いた「スコアカードホルダー」を紛失した。ポケットに入れそこなったか、プレー中に落としたか・・・
 「大変だ」となったのは、貴重品ボックスの番号と鍵がロッカーと同じものを使うシステムになっていたことを思い出したからだ。ホルダーを拾えば、貴重品ボックスの番号が分かり、鍵も開けられる仕組みだ。これはまずい。
 幸い後ろの組の方が拾ってくれ、走って戻った同伴者に手渡してくれたので事なきを得たが、一瞬、ヒヤリとした。あとで受付のスタッフさんに尋ねると、「昼食時などに置き忘れないようにして下さいね」とのこと。大きな事故は起きていないようだが、くれぐれも注意が必要だ。
 受付、キャディマスター室、レストランなどのスタッフさんはホスピタリティがあり、言葉遣いもみな丁寧だった。
 朝、受付スタッフに帰りのクラブバスをお願いすると、こちらの都合を聞いて気持ち良く時間を設定してくれた。キャディマスター室でプレースタイル などを尋ねた際も「2サムはいつでもOKです。午後2:30分までにスタートできれば1・5ラウンドもできます。スループレーもその日の事情次第ですが、 十分に可能です」と親切。
 最後に重要な「アクセス」について。電車の場合、利用する新幹線や乗り継ぎ時間によっても多少異なるが、東京駅から東北新幹線で宇都宮駅まで約 50分。同駅でJR宇都宮線に乗り継いで約30分、矢板駅下車。そこからクラブバス、ないしタクシーで8分。所要時間は合計で1時間50分弱。
 料金は新幹線の指定席分を加えると電車代が5,630円。タクシー代が約1,700円で合計7,300円ほど。往復では15,000円近くかかる。これはプレー代以上で、懐に痛い。
 クラブバスは原則、土曜日、日曜日だけの運行だが、平日でも人数次第では予約が可能。ただし「時間を朝8:40分頃の出発に限らせていただいています」。駅前のタクシー会社と提携していて、同時刻のタクシー利用なら料金をゴルフ場が負担してくれるそうだ。
 ではクルマの場合はどうか。パンフレットでは「川口JCTから約1時間20分」と記されている。しかし交通事情にもよるが、川口JCTからでも1 時間40分、東京駅周辺からなら2時間半は見ておいた方が良いと思われる。実際、クルマで来た同伴者は「もっと時間がかかった」と話していた。
 エントランスホールのラックに「宿泊パック」や「バスパック」のご案内があったのを思い出す。那須町にある「りんどう湖ロイヤルホテル」はグループホテルだが、特別のゴルフ割引パックはない。
 東京から行くなら、近場(矢板市)のシティホテルに宿泊して2日間、ゆったりプレーを楽しむのがベストかもしれない。

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