2011年2月19日土曜日
習志野カントリークラブ キング・クイーンコース=長い距離、多いバンカー、砲台グリーン‥‥ 難しいが、飽きないコース
(美しくも難しい林間コース。設計は「霞が関CC東コース」などを手がけた藤田欽哉氏)
「習志野カントリークラブ」には以前から良いイメージを抱いていた。「なぜだろう」と考えてみた。自分がゴルフを始めた頃、男子プロのトーナメン ト会場として「習志野」の名前を何度も見聞きし、憧れを抱き続けてきたことがその理由だと気が付いた。そして「もっと早く、ここでプレーしたかった」との 後悔も。初めて訪れた「習志野」は期待以上に手強く、面白いコースだった。
記憶に残る男子プロのトーナメントとは「サントリーオープン」のことだ。1974年から1997年まで延べ24回、習志野カントリークラブを舞台に名勝負が繰り広げられてきた。
ちょうど尾崎3兄弟が全盛だった頃。中島常幸や倉本昌弘といった名前も歴代優勝者に名を連ねている。藤田寛之も同大会でプロ初優勝を遂げた。
ちょっと古いが、セベ・バレステロスが優勝した第42回「日本オープン」(1977年)もここで開催された。
2007年と2008年には女子プロの公式トーナメントである「フィランソロピー・LPGAプレイヤーズ・チャンピオンシップ」の舞台となり、テレビ中継されたので覚えておられる方も多いに違いない。
開発・運営してきた日東興業㈱が1997年に経営破たん。その後、アコーディアゴルフグループ入りして再建を図ってきた。上記の女子プロトーナメントもスポンサー探しが難航して08年大会を最後に終了。現在、大きなプロの大会は開かれていない。
古くからの会員さんは「アコーディアグループ入りしてからバンカーの数が減り、レディースティが新設され、乗用カートでコース内に乗り入れられるようになって、趣がだいぶ違ってしまった」と嘆く。
しかし、往時にプレーしたことのない者にとっては、今でも十分に風格のある、魅力的なコースと映る。
(駐車場はクラブハウスに近く、広い。この日も満車に近い状態だった)
(練習を終えてクラブハウスに戻る。建物の外観は思ったよりも地味な印象)
(クラブハウスを出ていざ、コースへ。右奥にキャディマスター室。スタッフは親切だった)
(INコースに向かうにはこの橋を渡る。桜の咲く頃は綺麗な景色が楽しめそうだ)
(ティインググランド周辺の植栽は手入れも行き届き、上質感が漂っていた)
(梅の花が咲き、春近しを感じさせた)
(INコースの10番スタートホール。正面に「NCC」の文字。左を狙い過ぎるとクリークにつかまる)
この日(2月中旬の土曜日)はINコース10番ホールからのスタート。プレースタイルは「キャディ付の乗用カート利用」。正面に見える「NCC」の文字を目がけて、朝イチのティショットを放つ。
第2打地点からは左へドッグレッグし、フェアウエーがグリーンに向かってグッとせり上がっている。下からグリーン面はまったく見えない。手前と奥にバンカー、左サイドにはクリーク。最初から美しくも厄介なホールだ。
(コース内の茶店。「女子プロトーナメントを開催する時に建て替えました」)
(ショートホールではピンまでの距離が1ヤード刻みで表示されていた)
(数々のエピソードを教えてくれたキャディさん。背中の「ACCORDIA GOLF」が目立った)
(16番のショートホール。「戦略性」より「美しさ」の方が印象に残った)
(各ホールのティインググランドに、こんな高級感あるプレートが埋め込んであった。)
(OUTの1番ホール。正面の鉄塔が目に付く。「狙い目はあの鉄塔です」とキャディさん)
(茶店とは別に独立したトイレが整備されていた。体が冷えても安心してプレーできた)
(次のホールへ移動する際に、こんなトンネルを通過した。珍しい光景)
(フェアウエー内にある排水溝にもグリーン中央までの残り距離表示があった)
午後に回ったOUTコースを含めて、ラウンド中に気づいた点をまとめると、以下の8つになる。
① 「距離が長い」。
バックティからだと全長7,011ヤード。レギュラーティからでも6,601ヤードある。
ショートホールは150ヤード前後(レギュラーティから、以下同)と長くないが、500ヤードを超えるロングホーが3つもある。特に4番ホールは583ヤードと長く(バックティからは608ヤード)強烈な印象を残す。
(立ち木さえなければ、何の変哲もないホールなのだが・・・)
(2本の立ち木が効いている。同じ様なシーンに何度か遭遇した)
② 「フェアウエーに立ち木が多い」。
例えば、12番ミドルホール。ティインググランド近くの左サイドに大きな木が1本そびえ立つ。
ティマークが同じく左側に置かれていたため、木の右側スレスレか、うまくドローボールを打たないとフェアウエーキープが難しい。
アベレージゴルファーにそんな芸当ができるわけもなく、みんな揃って右の林に打ち込み、首をうな垂れた。
③ 「グリーンが砲台型で、難しい」。
珍しく平凡なレイアウトだと思っていた15番ミドルホール。グリーンに乗って驚いた。右奥にマウンドがあり、傾斜がきつい。ピン位置次第で、いくらでも難しくできるグリーンだ。
キャディさんが「08年の女子プロの大会で優勝した全美貞プロがここで4パットして、優勝がもつれるきっかけになったんですよ」と教えてくれた。
キャディマスター室には「刈り高4.2mm、8.7フィート」の表示が出ていた。昼休み、男性スタッフに「数字よりも難しく感じました」と話しかけると「明日、月例会なのでグリーンが少し硬くなっています」と同情してくれた。
④ 「物語が多い」。
全美貞プロの話もそうだが、数多くの名勝負を繰り広げてきたコースだけに、随所にエピソードが残っている。続く16番ショートホールではキャディさんが「ここも大変だったんですよ」と話し始めた。
「金子柱憲プロがここで池ポチャし、そのまま水中のボールを打とうとして大トラブル。結局、優勝を逃したんです」。
⑤ 「桜並木が目立つ」。
真冬のこの時期、さすがに花は咲いていないが、それでもひと目で桜と分かる古木が何本も並んでいる。特に1番、5番、14番などの並木は壮観。満開時の美しさはさぞ見事だろうと、春に思いを馳せる。
「山茶花や椿、藤などいろいろな木があって、1年中、何らかの花が咲くようになっています」とキャディマスター室のスタッフさん。そういえば10番のスタートホール脇では綺麗な梅の花を見かけた。
⑥ 「実はアップダウンがある」。
場所は千葉県北部。東京に近い習志野市のイメージがあったせいか「フラットな林間コース」と思い込んでいた。
実際は、総じて平坦ながら所々にアップダウンがあり、谷越えなど丘陵コースかと思うような景観にも出合う。
長く、緩やかな上り。乗用カートでサッと移動してしまうと分からないが、歩いてみると結構、きついホールもある。
(バンカーでがっちりガードされたグリーン。「バンカー恐怖症」は早く卒業したい)
⑦ 「多く、深いバンカー」。
バンカーが苦手な人には辛いコースだ。キャディさんは「全部で125個くらいのバンカーがある」と話す。それでもアコーディアゴルフに経営が変わってから数を減らしたそうだから、以前の凄さが想像できるというものだ。
しかも、アゴの高い立派なバンカーが多い。今回も「バンカーからバンカーへ」渡り歩いている姿を何度か目撃した。バンカーが二重、三重にガードしているグリーンを見たら、「もう開き直るしかない」。
(狭い花道。立ち木とバンカーのプレッシャーに負けるな)
⑧ 「オーソドックスな設計」。
ハザードを列記すると、癖のある難コースと思われるかもしれないが、決してトリッキーではない。攻め方を間違えなければ花道は使えるし、むしろオーソドックスで、フェアな造りだ。
隣の「クイーンコース」に比べると池やクリークは少なく、男性的なイメージ。フェアウエーも堂々としている。
開場は1965年(昭和40年) 11月。既に50年近い歴史を持つ。特に言及しなかったが、落ち着いた風格やコースメンテナンスの良さは評判通りだった。
不満に感じた点を挙げれば、コース全体を俯瞰したレイアウト図も各ホールごとのレイアウト図も見当たらなかったことだ。
キャディさんには「私たちが付いているから要らないんですよ」と反論された。しかし、コース全体の俯瞰図は見たいし、ハザードまでの距離を逐一、キャディさんに聞くのも正直、面倒だ。
今回400ヤードを越すような長いミドルホールでは、『刻み千両』『刻み千両』と唱えながら“レイアップ作戦”を心掛けた。そんな時も「レイアウト図があったら良かったのに」と思った。
もう一つ“難点”を挙げるとすれば、アベレージゴルファーにはやや難しいということか。「コースレート」はレギュラーティからでも71.0(バックティからは72.7)。
もちろん「難しい方が飽きないし、挑戦し甲斐があって好きだ」という人はたくさんいる。しかし、必ずしも上級者でなく、「気楽にゴルフを楽しみたい」「もう少し良いスコアで回りたい」と願うアベレージゴルファーには厳しい設定だ。
ふだん90台でラウンドしている同伴者も、今回は100が切れず「今年のワースト記録を更新だ」とぼやいていた。
他の平均的難易度のコースに比べ3~4打スコアを崩すことを覚悟して挑むのが良いかもしれない。
(練習用のボールは左手前の建物で購入できる。女性スタッフがテキパキと対応してくれた)
(リニューアルされたドライビングレンジ。「ACCORDIA GOLF」の文字がズラリ)
練習場には満足した。ドライビングレンジはリニューアルしたばかりで快適。16打席あり、距離は200ヤード弱。右サイドから正面に高いネットが設けられ、正面のネット中段に「250ヤード」の標識。「250ヤード飛ばしても大丈夫ですよ」という意味だろう。
50ヤード、100ヤード、150ヤード地点に特設グリーンがあり、ティも高さの異なるものが3種類用意されていて完璧だった。全打席に「ACCORDIA GOLF」表示があったのには、驚くというより感心した。
パター練習場は2面。うち1面は半分が「CLOSED」。それでも各面が広いので、ラッシュ時にも特に混雑は感じなかった。
(バンカー練習場。これだけ本格的なものは、あまりない)
(アプローチ専用の練習場も整備されている。奥に見えるのはパター練習場)
アプローチとバンカーの専用練習場も近くにあり、スタートまでの時間を持て余すことは全くない。
クラブハウス内は随所にアコーディアグループらしさが目立っていた。エントランスを入ると、床いっぱいに並んだゴルフ関連商品が目に飛び込んでくる。
最新クラブあり、華やかなウエア類あり・・・。2階のレストランに続く階段には一段ごとにキャディバッグが置かれ、まるで展示会のよう。
良くも悪くも商魂の逞しさを感じる。その分、文化性や豪華さは犠牲になっている。ホームページ(HP)には「アコーディアグループ内最大級の品揃え」と紹介されていた。
1階フロアの一角には現金・クレジットカードの両方に対応する自動清算機が3台。合理化もしっかりと進んでいる。
(上品な感じのロッカールーム。間隔が狭いのだけが腑に落ちなかった)
ロッカールームは意外と窮屈だった。ロッカーそのものは木製の扉が綺麗で、高級感を醸し出す。しかし、なぜかロッカー間の距離が狭く、側を通るたびに「すみません。通らせてください」と他の利用者に声を掛けなければならない。
1階のトイレは個室が9つあり、清潔で快適。特に洗面台は明るく、使い勝手が良かった。
レストランは朝食メニューが充実していた。和洋の定食、フレンチトーストセットが1,050円。他に470円のオムレツや310円のトーストと選 択肢が広い。昼食時に注文したビール(生中)は780円。2,000円未満のメニューが多いが、全般に市中価格よりはやや高め。
「どうしてゴルフ場では皆、こうした高めの価格設定をするのだろう」と同伴者も不満顔。「プチ贅沢をしたいからさ」「接待需要の名残では」「美味しいから文句は言わない」「単純に収益性の問題さ」と仲間内でも意見はいろいろ。
レストランのスペースは比較的ゆったりし、窓も大きく、スタッフの対応もスムーズだった。コンペルームは4室。他にカンファレンスルームもある。
階段脇には落花生や菓子、うどん、醤油などの土産品が並ぶ。「少しでも商機は逃さないぞ」という強い意志が垣間見える。
浴室はちょっと古いつくりなのか、温泉旅館にある大浴場のような雰囲気。中央に太く四角い柱。その周辺が浴槽。さらにその周辺に、ぐるりと壁に向かって洗い場のパーティションが並ぶ。窓の外は塀が近く、景観はほとんど見えない。
脱衣場は明るく使いやすいが窓がなく、やはり開放感には欠ける。
都心からのアクセスは比較的楽だ。住所は千葉県印西市。京成本線「京成高砂駅」と印西市の「印旛日本医大駅」を結ぶ北総線「千葉ニュータウン中央駅」からクラブバスが出ている。
地元の人以外には聞きなれない路線、駅名だが、2,010年7月に開通した空港行き「成田スカイアクセス」の新型スカイライナーが走っている路線といえば、思い当たる人も多いのではないか。
東京駅から同駅までの所要時間は約1時間。クラブバスの本数は朝晩合わせて13本と多い。乗車時間も10分弱。タクシーなら1,200円前後。
クルマで向かう場合は、東京都心からなら京葉道路などを東に走って1時間20分程度。東関東自動車道の千葉北ICからは約19Km、常磐道の柏ICからなら約25Km。
最後に予約とプレー料金について。まず、予約についてスタッフさんに尋ねると「平日であればどなたでも予約できますが、土日祝日に限っては会員さんの紹介か、同伴が必要です」という。
では、知人に会員さんがいない人はプレーできないかといえば、そうでもない。例外がある。
HPの「カレンダー料金」をチェックすると、割安プランの中に、わずかだが土日祝日を対象としたプランがあり、空いてさえいれば、そのままネット予約が可能なのだ。
そのネット予約を対象にした「Webユーザー料金」表を見ると、平日のセルフプレーを中心に「緊急特別企画プラン」「スタート時間限定 早め・遅め」「組数限定プラン」「AGサイト限定プラン」など、様々な割安プランが並ぶ。
季節や混み具合などにもよるが、オフシーズンで、空いている平日のセルフプレーなら1万円(昼食付)程度でのプレーが可能。キャディ付プレーでも昼食代込みで13,000円から16,000円の水準だ。
では、「割安プラン」の対象日以外の日にプレーすると、料金はどのくらいなのだろうか。まだ寒い3月と、ハイシーズンに入る4月のそれぞれ平日と休日の料金を聞いてみた。
日によって多少の違いはあるが、3月は平日で16,000円(昼食代込み)、休日で19,000円(昼食代なし)。4月は平日で17,000円(昼食代込み)、休日で26,500円(昼食代なし)とのことだった。
やはり良い季節の休日料金は高い。プレー日が決まったらHPなどの各予約サイトを小まめにチェックしたい。
まったく別料金だが、所属プロによる「ラウンドレッスン」や「1DAYゴルフスクール」など、レッスンプログラムが充実しているのもここの特徴だ。
歴史と風格があり、変化に富んだ面白いコースで、都心からも比較的近い。
会員の方々には申し訳ないが、そうした有名ゴルフ場で経営主体が変わり、合理化が進んで、利用者本位のサービス、料金体系が導入されることは一般ゲストには有り難い。
今回のラウンドで、憧れだった「習志野CC」が急に身近な存在に感じられるようになった。
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