2011年6月4日土曜日
花咲カントリー倶楽部=初心者に優しい丘陵コース。OBなし。広いフェアウエー、少ないバンカー
(クラブハウス2階から見たINコース)
(コース内から見える大月市。アクセスはいい)
住所は山梨県大月市大月町花咲。山梨県と聞くと埼玉県や千葉県在住の方は「遠い」と敬遠しがちだが、新宿駅を起点に考えれば、県東部の大月市まで は特急電車で1時間。クルマでも渋滞さえなければ1時間ちょっとで到着する。しかも「花咲CCはフェアウエーが広く、好スコアが出やすい」との評判。今回 は初心者が「易しそうだから、私も一緒に行きたい」と言ってついて来た。
電車の場合、朝7時、新宿駅発のJR特急「スーパーあずさ1号」(松本行)が便利だ。大月駅に7:55分に到着する。自由席利用で運賃は 2,180円。クラブバスはなく、大月駅からはタクシー。約10分。所要時間は短いが、特急運賃とタクシー代合わせると、交通費は片道で4,000円近く かかる。
ゴルフ場のホームページ(HP)には「大月インターチェンジを下りたら、そこはもうゴルフ場の入り口。(中略)この好アクセスがなによりの魅力です」と書かれている。
交通費などを考え、6月の土曜日、新宿駅南口から仲間3人と一緒にクルマで向かうことに決めた。
HPにはもう一つ気になる言葉が掲載されていた。「大自然を満喫できるフラットな都市型ゴルフコース」――。
到着後、受付を済ませ、男性スタッフに聞いてみた。「都市型って何ですか」。
「まあ、言葉のアヤですね。都心に近いですし、乗用カートで回れるアメリカンスタイルということで・・・」。
深い意味はなさそうだ。何か革新的な工夫があるのかなと期待していたので、ちょっと肩透かしを食らった感じ。
それでも「21世紀を先取りする首都圏の花園」(パンフレットより)を目指す取り組みはいくつか見られた。
まず料金体系。ゲストのプレー代は「平日7,950円、休日13,200円」と年間を通して常に一定。その上で「OFFシーズンには同じ料金のまま、1,000円程度の昼食を付けてサービスする」ことにしている。
ただし、震災のあった今夏だけは例外で「特別に11,800円(昼食付)という新価格を設定、集客増を図ることにした」という。
適用期間は7月16日から9月16日まで。「シンプルなワンプライス」を看板にしてきたゴルフ場としては異例の措置である。
(ドライビングレンジはない。パター練習場はさすがに広かった)
低価格を実現させるために“無駄”も思い切って省いている。何とドライビングレンジがない。もちろんバンカーやアプローチの練習場もない(パター練習場はある)。
(スターティングテラスには乗用カートが並び壮観)
(OUT、IN両コースに2ヶ所づつトイレと自動販売機。トイレを改善してもらえると、印象がぐっと良くなるのだ・・・)
キャディは不在で、全て「乗用カート利用のセルフプレー」。コース内に売店はなく、置かれているのは自動販売機のみ。併設されているトイレも高級感とは遠く実用本位。一部は急用でなければ使いたくないような外観だった。
クラブハウスの受付脇には自動精算機が2台。こうしたコスト削減努力の跡は随所に見られる。
良くも悪くも業界常識に拘らず、割り切った運営スタイルで一貫している。来場者に若者の姿が目立ったが、料金の安さと、この割り切ったスタイルが受け入れられているのだろう。
どんな会社が経営しているのか気になって、男性スタッフに尋ねてみると、「市川(造園土木)グループなんです」という。
造園業からゴルフ場の造成・経営までを手がけ、全国で28カ所のゴルフ場を展開している業界では有名な企業グループだ。会長の市川金次郎氏は「ゴルフ場の再生請負人」として知られる実業家。
そんな説明を聞いて、思い切りのいい、割り切った運営手法にも「そうか、なるほど」と合点が行った。
HPも充実している。「ゴルフコース」のページを開き「コース写真はこちら」をクリックすると、各ホールの写真が掲載されている。
「ティインググランドから見た景観」「第2打地点の様子」「グリーン周辺の状況」をビジュアルに楽しむことが出来るので、コースに興味のある方はまず、そちらをご覧頂きたい。
(5番ショートホールでは「ワンオンチャレンジ」を実施中。参加費は1人1,000円)
今回のリポートでは「コース写真」をあまり掲載していないが、理由はこのHPの写真と重複すると判断したからだ。
その上で、実際にラウンドしてみて初めて分かったことや、感想などを以下に列挙してみたい。
①会員制は取っているが、プレーは誰でも可能。3ヶ月前から予約を受付け、キャンセル料は取らないなど、利用者の立場に立った良心的なシステム。「空いていれば」2サムでも回れる。「早朝スルー」「薄暮ハーフ」といったプレーも選択できる。
(乗用カートにはGPS方式のナビゲーションシステムを搭載)
②乗用カートにはGPS機能付ナビシステムが搭載され、各ホールのレイアウトやグリーンまでの残り距離が自動表示される。これは便利。
(終日、OB杭を目にすることはなかった)
③コースには「OBゾーン」がない。ラウンド中に「白杭」を見かけることはなかった。その代わり両サイドに「黄杭」が目立ち、ボールを曲げてしまった場合は1ペナで中に戻せるルールを採用。
(1番ミドルホール。フラットで真っ直ぐ。最初の数ホールはこんな景観のホールが続く)
④各ホールは総じて真っ直ぐ。ティインググランドからピンが見え、いわゆるブラインドホールは殆どない。フェアウエーも広く、安心してティショットが打てる。
(バンカーは数が少なく、アゴも高くなかった)
⑤谷越えのホールはあるが、池越えはなく、クリークも出だしの1番ホールで目にしたくらい。
サイドバンカーやクロスバンカーは全く気にならず、ガードバンカーはあってもアゴの低いものばかり。どのグリーンも花道が広い。結局、この日は一度もバンカーに入れなかった。
(グリーンは1つ。どれも大きく、パットの巧拙がスコアに直結する)
⑥全てベント芝の1グリーン。「巨大グリーン」と言って良く、パーオンしても場所によっては3パットの危険が付きまとう。ロングパットの巧拙がスコアを決定づけるコースだ。
⑦距離はレギュラーティからは6,201ヤード。ティマーカーが表示よりも前に置かれているホールがあり、実際はもう少し短いかもしれない。
⑧こうした状況から「自己ベストを出しやすいコース」「女性や初心者向けのコース」「悩めるゴルファー向けのリハビリコース」などと呼ぶ愛好者もいる。
(バックティに置かれたティ・マーカーはちょっと洒落ていた)
⑨今回はゴルフ場の許可を得て、初心者以外はバックティからプレーした。「進行に気をつけてもらえれば(ハンディキャップに関係なく)後ろからプレーして構わない」そうだ。
⑩バックティからだと全長距離は6,823ヤードに伸びる。さすがに難度が増す。もう「リハビリコース」などと甘く見てはいけない。
(バックティからは400ヤードを超えるミドルホールが6つあった)
400ヤードを超えるミドルホールがOUT、IN、それぞれに3つ出現する。特に11番のミドルは455ヤード。ロングホールは全て500ヤードを越す。
(平成13年(2001年)9月の開場。歴史が浅いせいか、まだ細い木が目立った)
⑪開場からまだ10年。植えた樹木もまだ細いなど、単調な景観が続くと不満を感じていたら、所々に刺激的なホールが用意されていた。
(7番ミドルホール。第2打地点から急速に下る)
7番ホールは第2打地点から急激に下るトリッキーなレイアウト。8番、14番はバックティから530ヤード前後と特に距離のあるロングホール。
(12番ショートホール。レディースティからの景観。所々にこうした谷越えホールが待ち構える)
12番は同じく186ヤードと長い谷超えのショートで、このコースの「名物ホール」と言っていい。グリーンの手前まで谷が迫っている。
(のんびりプレーしていると、ドキッとさせられる看板)
(レギュラーティでは人工マットが目に付いた)
⑫レギュラーのティインググランドに人工マットが敷かれていたのは残念。これも「割り切り」の一つなのだろうが、どうしても街中の練習場を連想してしまう。
(10番ホール。クラブハウス周辺のホールは、みな平坦で、広い)
(直ぐ側をJR中央線と中央自動車道が走る)
(高圧線の鉄塔が大自然の景観を損ないがちだった)
⑬後半回ったINコースでは、ゴルフ場の南側を走る中央自動車道やJR中央線、さらに大月市の市街地が目に飛び込んでくる。
まさに「豊かな自然」と「現代社会」の接点に位置するゴルフ場。高圧線の鉄塔が並ぶ山の景観からも、同じ様な印象を受けた。
(フェアウエーには時々、芝が変色している箇所があった)
(まだ芝の貼り直しをしている所もあった)
(グリーン上では「ボールマーク」が目に付いた。自分で付けた跡は自分で直す習慣をつけたい)
⑭全体にメンテナンスはもう一歩という感じだ。特に気になったのがグリーン上のボールマークの多さ。完全セルフプレーなので、マナーを知らないプレーヤーが自分の付けた凹みを直さないのだろう。
ゴルフ場側もポスターを貼るとか、グリーンフォークを必ず持たせるとか、もっと指導を徹底した方がいい。
⑮キャディマスター室でグリーンの速さを尋ねると「2m70cmです」という返事。普通はフィートで表現するので戸惑う。後で計算してみると、8.86フィートに相当する速さだ。実際にプレーした感覚では「もう少し遅い」と感じた。
⑯同じスタッフにコースレートも聞いてみたが「測っていない」とのこと。「(レギュラーティからだと)67くらいでしょうか」と重ねて聞くと、「短いので易しいですよ」という抽象的な答え。普段、数字を気にするゲストなどいないのかもしれない。
⑰ 「首都圏の花園」という割にはラウンド中、四季の変化を感じさせてくれるような草花が見当たらなかった。時季が悪かっただけなのだろうか。
以上、HPの写真と合わせてお読みいただければ、このコースの実像が大体、ご理解いただけるのではないだろうか。
中級以上のゴルファーにはやや物足りない面はあるものの、バックティからプレーすればそれなりの手ごたえがあり、コストパフォーマンスの良いコースというのが実感である。
同伴した初心者も「谷越えホールは大変だったけど、また来たいコース」と気に入った様子だった。
ではコース以外の施設や運用面はどうだろうか。リポートを朝のゴルフ場、到着場面に戻したい。
(派手さはないが、どっしりした構えのクラブハウス)
クラブハウスの外観は派手さこそないが、オーソドックスな造りの2階建て。どっしりとした重厚感がある。
受付の女性スタッフは「決して豪華ではありませんが、皆様に気持ち良く過ごしていただければ嬉しいですよね」と微笑む。
(1階のラウンジ。正面が受付。その左奥がプロショップ)
ここに掲載した館内の写真はエントランス左側のラウンジから撮影したもので、正面奥のプロショップが思いのほか充実していた。
アパレル類を含めゴルフ関連商品が揃い、さらに山梨特産の「ほうとう」や「ぶどうクッキー」などの土産物も並ぶ。これらはコンペの賞品としても重宝しそうだ。
(1階には自分で測れる血圧計が常備されている)
また、エントランスの一角に「自動精算機」と「全自動血圧計」が置かれているのが目に付いた。「GPS端末」の貸し出しサービスも実施中で、レンタル料金は1台520円。
(ゆったりしたロッカールーム。ちょっと殺風景な印象も)
ロッカールームは、たまたま混雑していなかったせいか、簡素な印象。スチール製のロッカーが並び、高級感や贅沢感はない。
(脱衣場はコンパクトで清潔感があった)
浴室はそのロッカールームから直接、2階に上がった所にある。途中の通路が狭かったので、どんな浴室か心配になったが、まずまずだった。脱衣場はコンパクトながら清潔感があり、明るく快適。
(浴室は簡素な設計。窓からは周囲の山々と綺麗なコースが眺められた)
浴室は内部のデザインこそひと昔風だが、窓から眺められる景色が良かった。OUTコースの一部が眺められ、周囲の山々とともに自然の恵みを感じ取ることが出来る。
(周囲は山、また山、山)
(フェアウエーだけ見ていると、なだらかな丘陵コースだ)
(山の南斜面をひな壇のように登っていく設計。スイッチバック式の鉄道を連想した)
浴室の窓からのんびりと外を眺めていたある若者は「こんな山あいなのに、ゴルフ場だけがやけにフラット。設計者(㈱市川造園土木)が知恵を絞り、相当頑張って造ったに違いない」と感想を漏らしていた。
(レストランはテーブル間の間隔が広く、寛げる)
同じクラブハウス2階のINコース側にはレストランがある。スペースにゆとりがあった。窓も大きく、はるか遠くまでゴルフ場を一望できる。
メニューは豊富。昼食は1,160円の「カツサンド(スープ付)」から1,370円の「そばと握り寿司季節の天ぷら付」など10種類。値段も街中のレストランより気持ち高い程度だ。「ポークカツカレー(サラダ付)」も1,370円。ビール(生中)は600円。
朝食も充実していた。840円の「オムレツセット」が最も高く、普通の「トーストセット」は500円。「富士納豆セット」や「白つゆうどんセット」などみな500円前後。モーニングコーヒーは210円。
クリームあんみつやアイスクリームなどのデザート類が豊富なのは女性客を意識した結果か。焼酎などのアルコール類とツマミ類も充実し、価格も他のゴルフ場に比べるとかなり抑えている感じがした。
コンペなどの際に利用するパーティメニューは1人1,050円、1,580円、2,100円の3コース。今回は4人1組のラウンドだったので注文しなかったが、メニューの写真を見るとボリュームがあり、若いゴルファーの満足度は高そうだ。
ネット上の書き込みには「距離表示が甘い」「隣のホールからの打ち込みに注意」「ロングホールでは(距離が短いので)2オンを狙う人が多く、詰まりやすい」などの不満が載っていた。
しかし、欲を言えば切りがない。利用する側も、ここでは割り切って楽しみたい。同伴者は「ハザードが少ないコースなので、スランプに陥った時にまた来たい」という。
そんな“花咲クリニック”としての利用方法も確かにある。
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