2011年12月25日日曜日
佐野ゴルフクラブ=栃木県南部に位置する丘陵コース。距離短く、技巧派向け。ホスピタリティには課題も
(山と谷が迫り、フェアウエーがとても狭く感じた18番ミドルホール)
(クルマでの来場者が大半。駐車場は広かった)
2011年も押し詰まった12月下旬の休日。ゴルフ仲間と一緒にクルマで栃木県南部にある「佐野ゴルフクラブ」に向かった。朝日を背に一路、東北 自動車道を北進する。都心を出てから約1時間半。関東平野が終わりを告げ、山並み迫る国道293号線沿いにゴルフ場の大きな看板を見つけた。クラブハウス はそこから坂道を少し登った高台にある。堂々たる構えだ。第一印象は良かった。
(「出流コース」と「駒コース」からなる大型ゴルフ場だ)
全部で36ホール。「出流(いづる)コース」と「駒コース」からなる。予約時に電話で双方の違いを尋ねると、「駒コースはアップダウンが多くト リッキー。出流コースの方がオーソドックスで、値段は少し高いですけど人気があります」と男性スタッフさん。「出流コース」を予約する。
当日の朝、受付でスタッフさんに「いづるとは読みにくいですね」と声を掛けると「ハイ」。ちょっと素っ気ない返事。
代わりにバッグ置き場にいた年配の男性スタッフさんが親切に教えてくれた。「出流というのは近くにある観光スポットの地名で、出流山満願寺や出流そばが有名。民宿もありますよ」。
なるほどと納得した。「佐野厄除大師」(正式には惣宗寺)以外にもいろいろ人気スポットのある地域なのだ。
(ロッカールームの窓からはコースが良く見えた)
(トイレに貼ってあった「スロープレー防止標語」。実行したいことばかりだ)
(INコースの10番ミドルホール。「飛ばし屋は右側の木の上を狙う」そうだが・・・)
スタートはINコース10番から。ティインググランドに立って目をむいた。右に直角にドッグレッグしたミドルホール。手前右半分が深い谷。ドライバーで谷越えを狙うか、アイアンで手堅くコーナーに刻むか。
寒い朝。体がまだ固い。「オーソドックスなレイアウト」と聞いていただけに、いきなりの谷越えホールに心もこわばる。
(11番ロングホールでは、左足下がりのショットがカギを握る)
続く11番ロングも忘れられないホールとなった。第2打地点から急激な下り。見下ろすと左側には大きな池。池とグリーンの間には白砂が眩しいバンカー。バンカー内には日本庭園風の庭石が3つ。
かなり人工的な造りだ。「自然の地形をそのまま生かした丘陵コース」と案内されて来たが、決してそれだけではない。
設計は小林光昭氏。ハザードに池などを大胆に取り入れ、関係者の間では“水の小林”と呼ばれる設計家だ。
山間のコースになぜ突然、池が現れるのか不思議に思ったが、名前を聞いて合点がいった。
(11番グリーンから見た12番ホール。手前の池は綺麗に整備されていた)
(12番ホールは長いクリークがあり要注意。13番のティインググランドからは関東平野が望めた)
続く12番ホールで出現したのは長い「クリーク」だった。グリーン側からフェアウエーの右サイドを通り、ティインググランド手前で左へ横切る。水が流れ落ちやすいように、高台にあるグリーンから手前に向かって下り勾配が続く。
クリーク内には大小の石が転がり、ボールが当ると、跳ねてどこに行ってしまうか分からない危うさをはらむ。景観的にも、戦略的にも印象に残るホールだ。
(13番ホールは左側に谷が続く。OBが出やすい)
(14番脇のコース売店。ここには女性スタッフさんがいた)
(14番グリーン手前の窪地。「以前は池だった」と同伴者が教えてくれた)
だがINコースではその後、池やクリークは姿を消してしまう。
14番のグリーン手前には、かつて池があったことをうかがわせる窪地があったが、今は単なるラフで、戦略的には何の刺激もない。
本物の池なら景観的にも美しく、厳しいハザードになっていたであろうに、どうして水を抜いてしまったのか。設計者の理念が歪められているようで、とても残念な気がした。
水の消えたコースでは「山と谷」が主役になった。INコースの場合、急激なアップダウンは先ほどの11番ホールを除くと殆どなく、フェアウエーは意外にも平坦。
その代わり「右側が山、左側が谷」(あるいはその逆)というシーンが増えてくる。
(一見、簡単そうに見えた15番ショートホール。バンカーがしっかりガードし、難度を高めていた)
(17番ショートホール。右は山。左は谷)
(周囲には田園風景も広がる)
18番ホールのように、実際のフェアウエーはそこそこ広いのに、「山と谷」の景観に脅かされて、ティインググランドからはとても狭く感じられる。そんなホールが目に付く。
初体験のラウンドと2回目以降のラウンドでは、受けるプレッシャーもスコアもかなり違ってくるのではないか。「慣れ」が必要なコースだ。
(「S字」にレイアウトされた16番ホール)
INコースでもう一つ記憶に残ったのは16番のロングホールだった。コース全体が「S字」に曲がり、グリーン手前で下りが入る。
ティインググランドからも、第2打地点からもグリーンが見えず、セルフプレーでは最初、戸惑う。
ここでのプレースタイルは「乗用カート利用のセルフプレー」が中心。キャディ付プレーも予約時に依頼しておけば可能で、キャディフィは1人2,625円。これは安い。
午前中、INコースを回ってみて気づいたことが、他にも幾つかある。まずOBゾーンが多い。このため大半のホールに「前方特設ティ」が設けられている。
二番目はコース内のヤード表示の複雑さだ。残り100ヤード、150ヤード、200ヤードを示す木杭などは基本的に「グリーン フロントエッジ」までの距離を示す。
ただし、ホームページ(HP)で確認すると、12番、15番、17番のティインググランド表示板の数字は「グリーンセンター」まで。
ティインググランドは概ね4つあるが、スコアカードには「チャンピオン」「フロント」「レディス」の3つしか記載されてなく、しかも、当日のティマークの設置場所が表示板とずれていることが多い。
(乗用カートに搭載されたGPSナビシステムの端末機)
ラウンド中は乗用カートに搭載された「GPSゴルフナビシステム」の端末機でピンまでの残り距離を正確に把握することが出来る。
ただし、他のコースでもそうだが、乗用カートが自分のボールと離れた場所に停車している場合、逐一、移動して確認までしていられない。進行が遅れ、後続の組に迷惑が掛かるからだ。
結局、目測で打つことが多くなる。「自分の目でピンまでの距離を判断して打つのが本来のゴルフの姿」(同伴者)とはいえ、不安を抱いたままのショットではミスも起きやすい。
「そんなに不満があるなら、キャディさんを頼めばいい」と叱られそうなので、もう止めよう。でも、ちょっとややこしかったのは事実だ。
グリーンはホールによって数が違う。10番、12番、17番は1グリーン。他は2グリーン。今回同伴してくれた常連さんが「2グリーンを順次、1グリーンに改造中なんです」とつぶやく。
そのグリーンは一部を除けば素直で、嫌らしい感じはしなかった。キャディマスター室の男性スタッフさんは「今朝は冷え込んだので9.0フィートくらいの速さ。午後になれば8.5フィートくらいになるでしょう」と説明。
確かに午前中、木陰のグリーンは表面が凍っていて芝目どころではなかった。逆に日なたのグリーンにはピッチマークが多く残り、比較的軟らかいグリーンであることが分かる。
HPには「メンテナンスレポート」という新着情報が掲載され、グリーンを含めたコースメンテナンスに力を入れていることが強調されている。
しかし、無頓着なセルフプレーヤーが多いためか、12月という季節のせいか、この日、コンディションが特に優れているという感じはしなかった。
コースの距離は短い。INコースの場合、フロントティからだと左グリーン使用で全長2,837ヤード(チャンピオンティで3,223ヤード)。OUTコースと合算しても同5,665ヤード(同6,447ヤード)。
それでもコースレートが「レギュラーティで68.4、バックティで70.4」(キャディマスター室の男性スタッフさん)と比較的高いのは、「山と谷」という条件によるものだろう。
「山岳コースに近い丘陵コースですね」と同伴者と総括しながら一端、昼食。
(レストランからはコースが良く見える)
クラブハウス2階にあるレストランは周囲3面が大きな窓。眼下にはコースの美しい景色が望める。なかなか快適だ。
選べるメニューは12種類。一番高いのが「十勝和牛ステーキ御膳」で1,995円。他は「特選まぐろ漬け丼」などの1,470円メニューと、「きのこ入りポークカレー」などの1,260円メニューが主体。最安値は1,050円で「ざるうどん」など。
(佐野ラーメンセットはボリューム感があった)
迷わず「佐野ラーメンセット」(1,260円)を注文。価格は市中相場よりやや高めの「ゴルフ場料金」。ビール(生中)は700円だった。
ちなみに「おしぼり」はセルフサービス。レストラン中央のケースから取り出して使う。女性スタッフさんの対応も素っ気なく、特段のホスピタリティは感じられなかった。
(OUTコース1番ミドルホール。広々としてホッとした)
午後に回ったOUTコースは様相が違った。1番ミドルホールのティインググランドでは「オッ、広いじゃないか」と思わず喜んでしまった。全体に平坦で、よほど曲げない限りボールを谷に落とす心配がない。
見上げれば、空も広い。右手には広々とした関東平野が広がる。圧迫感がないと心にも余裕が生まれる。「先にOUTコースから回る方が楽だったですね」と佐野GC初ラウンド組の同伴者もうなずく。
(2番ショートホールでは側に立派な桜並木。「満開時にまた来たい」と思わせる)
(冬場のコースメンテナンスは難しい)
(ティショットの狙い場所には黄色い旗が置かれていた。遠くからでも良く見えた)
2番も比較的フラットなショートホール。右側にはじっと春を待つ桜並木。「満開時はさぞ壮観でしょうね」と仲間と談笑しながら移動。スコアも順調だ。
(3番ミドルホールは第2打が池越えになる。安全のため浮き輪を常備)
そんな中で迎えた3番ミドルホール。緊張が走った。フェアウエーが第2打地点から大きく右にカーブし、急激に下る。その先に橋の掛かる美しい池と4つのバンカー。
朝、11番ホールで感じたのと同じ箱庭的な美景。「山と谷」のイメージが強いこのコースで、ここは明らかに異質な空間である。
「池」に遭遇したのも久々だった。その池は続く4番ホールティインググランド近くにもあり、日本庭園風の美しさを演出する。ここが景観的に「出流コース」のハイライトシーンであることは間違いない。
(コース内に埋め込まれた距離表示。数はあまり多くなかった)
(4番ホールはフェアウエー右サイドの立ち木が印象的)
(6番ロングホール。左は池。右の斜面は木が無く、うねりのあるのり面。狭い)
(左サイドはボールがネットを越えたらOB。こんなOBゾーンが多い)
OUTコースでは6番ロングホールにも左サイドに大きな池が登場するが、これは戦略的に配された池というよりは巨大な貯水池。フェアウエーからも少し離れていて、ハザードという感じではない。
この3番以外のホールは、午前中にラウンドしたINコース同様、「山と谷」が主役のコースだった。結局、平坦で広々とした印象を抱いたのはOUTコースでも最初だけ。中盤からは狭く感じるフェアウエーに苦戦を強いられた。
(7番は左サイドが谷。ボールが止まるようにバンカーがグリーン近くまで並んでいた)
(各コースの後半には夜間照明設備があった)
(8番ホール側にある「ログハウス」。以前は有人の売店だったようだが、今は無人)
(ホール間は赤松林などで、しっかりセパレートされている)
(9番ミドルホール。右が山。左が谷。こんなコースレイアウトが最も多かった)
ここはやはり飛距離よりも正確性が求められるコース。技巧派でないと攻略が難しいというのが結論だ。
(クラブハウスの正面には水が流れるように設計された庭園がある)
場面を朝に戻したい。到着したクラブハウスはどっしりとした造り。玄関前には和洋折衷風の庭園が設けられ、高級感を醸し出す。
(玄関=右側=から入ると、ゴルフ用品がズラリ。HPを見て抱いたイメージと違い、ちょっと驚いた)
が、館内に入ると印象は一変する。HPでは広々としていたはずの「ロビー」にはゴルフ関連商品が大量陳列され、“実利重視”の姿勢が鮮明。洋菓子の「とちおとめロール」や地元名物の餃子など土産物類も豊富。
受付カウンターに置かれた携帯用カイロは無料サービスではなく「1個50円」で販売。2階廊下には開催中の「ロングランコンペ賞品」が並べられ、参加者を募っている。
受付脇には自動精算機が4台。その隣には12月に導入したばかりという「指静脈認証式」の貴重品ボックス3台。
(1階のラウンジ。閑散としていた)
右手奥のラウンジはシンプルなソファーが並べられているだけで、フロア全体に豪華さは感じられない。側の「喫煙室」も狭くて気の毒な感じさえした。
トイレは1階と2階にあり、ともに清潔で問題なし。ただし、1階は個室が4室のみ(2階は8室)で小さい。ロッカールームは窓からコースの一部が眺められ明るかった。ロッカーは「暗証番号式」。
(朝の日差しがたっぷり入る、明るいレストラン)
営業色の強い1階部分に対し、2階はまだ高級感が残っていた。「松」「竹」「梅」「桜」「桐」のパーティルームに加え、角には明るい「貴賓室」。
廊下の壁には大きな絵画が飾りつけられ、文化性もしっかりアピールしている。
施設以上に戸惑ったのが、実はソフト面だった。チェックインする利用者のいない時を見計らい受付スタッフにいろいろ尋ねてみたのだが、つれない返事が多かった。
「ビジネスホテルのパンフレットが置いてありますが、提携しているのですか」「いえ、特に」といった調子。
外の車寄せで客を迎えていたベテランの男性スタッフさんや、キャディマスター室の男女スタッフさん、清掃担当の女性スタッフさんなどが皆、ホスピタリティを感じさせる対応をしてくれただけに、余計に気になった。
(近くにある「佐野厄除大師」を思い出した。左奥が「鳥カゴ」の練習場)
練習場にはガッカリした。立地条件からして用地に余裕がないのは理解できるが、打席数はわずか7(うち1つは左うち専用)。正面まで20ヤードもなさそうな「鳥カゴ」だ。使用クラブはアイアンのみ。
近くの自販機に現金100円を投入。出てきた20球は殆どが使い古されたもの。その大半に青字で太く「SGC」と記されている。
(パター練習場は1面。右奥は旧クラブハウス)
バンカーやアプローチの練習場はない。パター練習場も旧クラブハウス前に造られた1面のみ。
困ったのは練習場周辺に時計がなかったことだ。「スタート時間まであと何分あるのだろう」。不安と不満が募る。
乗用カートにバッグを積み込んでくれていた男性スタッフさんも「そうなんですよね。時計がないんですよね」と言って自分の腕時計を見ながら時間を教えてくれた。
開場は1974年(昭和49年)10月で37年の歴史を持つ。最初は27ホールのコースだったが、その後9ホールが追加され、現在の36ホールになったという。クラブハウスは1991年(平成3年)に新設された。
「高度成長期」「バブル経済」「不況」「長引くデフレ」と経済の荒波に揉まれ、その都度、軌道修正を加えながら逞しく生き残ってきたのだと思えば、多少のチグハグさも仕方ないか、という気持になってくる。
最近では追い風も吹いている。2011年3月19日に北関東自動車道が開通、クルマでのアクセスがぐっと楽になったのだ。
東京方面から向かう場合、従来なら東北自動車道の佐野藤岡ICで高速道路を下り、一般道を30分ほど走らなければならなかったが、今回の開通により、佐野田沼ICまで高速道路が使えるため、同ICから10分ほどで到着できるようになった。
ただし、電車利用の場合は相変わらず面倒。クラブバスはなく、JR両毛線佐野駅で下車しても、東武伊勢崎線の足利市駅で下車しても、タクシーで20分ほど掛かる。
夕方4時前、波乱に満ちたプレーが終了した。冬至を過ぎたばかりとあって陽の沈むのも早い。木々の影が急に長く伸び、吹く風も一段と冷たく感じられる。
(脱衣場の入り口。正面ドアの奥が浴室)
「早く温まりたい」と向かった浴室は、期待以上に快適だった。広さや設備は普通だが、窓からコースが美しく見える。思い切り手足を伸ばし1日のラウンドを振り返る。正面の山の稜線に沈む西日が眩しい。
脱衣場に窓はなかったが、籐製の床と脱衣カゴが心地よい。出入り口に「名水百選」と書かれた案内板が置かれていた。
読むと「この湯がゴルフ場近くの出流原弁天池という湧き水を利用している」旨が書かれている。環境庁が指定した「日本の名水百選」に選ばれているのだという。
直接見ることは出来なかったが、PR資料には「女性の設備も充実」とあり、HPには綺麗な「婦人浴室」の写真が掲載されている。
最後に大切な「プレースタイル」と「料金体系」について記しておきたい。
元来は会員制のゴルフクラブだが、現在はネットなどを通じて誰でも予約できる。「オープンコンペ」も極めて盛んで、土・日曜日の開催も珍しくない。予約は3ヵ月前から受け付ける。
希望者はバックティからでもプレーできる。「ハンディキャップなどの制約は特にありません。渋滞にだけ気をつけていただければ」とキャディマスター室の女性スタッフさん。
2サムも曜日や混雑状況によって違ってくるが「基本的にはOKです」。ネット検索すると「保証プラン」もある。また季節によるが、「早朝スループレー」や「アフタヌーンプレー」(2月1日~12月30日)もあり、この辺の対応はかなり柔軟。
18歳未満の人を対象にした「ジュニア応援プラン」や「平日コンペパック優待プラン」なども多く、精算時には「1月6日(金)~3月31日(土)優待券」を手渡してくれた。
それによると、「昼食代(1260円の限定メニュー)込みのセルフプレー」という条件で、「出流コース」が平日7,900円、休日11,900円。「駒コース」が平日6,900円、休日が10,900円。人気のある「出流コース」の方が1,000円高い。
この優待券は誰でも簡単に手に入るので、おそらくこれが実勢価格だと思われる。
優待券を利用した場合、4月1日から6月末までのハイシーズンでも同じ条件で、平日8,480円(出流コース)、休日13,980円(同)でプレーできる。
他にもネット上には様々な特別プランが並んでいるので、実際にプレーする際には丹念に検索するか、直接電話でゴルフ場に問い合わせてみるのが賢明だろう。
帰り際、同伴してくれた常連さんに「次回は駒コースにチャレンジですね」と声を掛けられた。「出流コースよりもっとトリッキーなんですよね。う~ん」と一瞬、言い淀む。
今は、手頃な料金なので、暖かくなってからもう一度、考えてみることにしようと思っている。
2011年12月11日日曜日
ザ・オーシャンゴルフクラブ=茨城県北部に立地。全ホールから海が見える美しいコース。難しいグリーンに手こずる
(美しい景観に、ついつい見とれてしまう)
(そのまま「絵はがき」にも使えそうな光景)
(景観とグリーンに関心が集まりがちだが、バンカーも厄介。特にフェアウエーバンカー)
「全ホールから太平洋を一望できる。そんな絶景コースがあるんだ」と11月下旬、ゴルフ仲間から声を掛けられた。場所は茨城県日立市の北部。東京 からは遠い。ためらっていると「土曜日に前泊し、日曜日にプレーすればゆっくり楽しめるよ」と思いがけない提案。クラブハウスにホテルが併設されていて、 宿泊代を入れても比較的安く済むというのだ。12月の週末、「ザ・オーシャンゴルフクラブ」に4人が集った。
当日、仲間2人とともに上野発14:00ちょうどのJR常磐線の特急電車「スーパーひたち31号(いわき行)」に乗車。日立駅で乗り換えて、海沿いの小さな「小木津(おぎつ)駅」へ。運賃は片道2,520円(自由席利用)。
駅前にはタクシーが1台。ゴルフ場までは約10分。「道路にまだ震災の影響が残っていて、少し遠回りします」と運転手さん。料金は1,560円だった。クラブバスはない。
もう一人はクルマで来場した。「茨城県で一番ICから近いゴルフ場」とホームページ(HP)に書いてある通り、最寄りの常盤自動車道日立北ICからは5分程で来ることができたという。思ったより便利だ。
(ゴルフ場入り口にある立派なゲート。開いているのは朝のうちだけ)
クラブハウスから1㎞以上も手前に立派なゲートがあり、タクシーの運転手さんがイヤホンでゴルフ場の担当者さんに連絡、ドアを開けてもらうシステム。「暴走族などが入ってくると困るから」だという。
(クラブハウス3階にあるホテルのツインルーム)
ゴルフ場に到着したのは夕方4時。約2時間の小旅行だった。宿泊予約した「HOTEL MAGNOLIA(マグノリア)」はクラブハウスの3階。玄関脇の扉を開けてもらい、エレベーターで部屋へと向かう。
宿泊料金は1人一泊2食付で10,500円(シングル、ツインとも同額)。部屋は小ぎれいなビジネスホテルといった感じ。ちょっと狭い。ツインルームは窓からコースが望めるが、シングルルームでは、そうはいかない。
「8時から10時まで1,500円でカラオケが出来ます」と女性スタッフさん。だが「男4人でカラオケでもないだろう」とひたすら飲む。ゴルフ談義で盛り上がる前夜祭。
(スコアカード。センターにレイアウト図があり便利)
(INコース10番のスタートホールに向かう)
翌朝、軽く食事と練習を済ませコースへ出る。スタートはINコースの10番ロングホール。左サイド(東側)に太平洋。海面に朝の日差しが眩しく光る。冬晴れの好天。
すでに多くの樹木が葉を落とし、細い枝の間から海がよりはっきりと見える。
来場するまでは「海沿いのコース」と思っていたが、実際は山の中腹。海岸からは意外と離れている。
それでも「全ホールから海が見える」のはコースが山の斜面に沿って段々畑のように造成されているからだ。
(フェアウエーは思った以上に平坦。片側が山、もう一方が谷というレイアウトが多い)
(乗用カートにはレイアウトとピン位置を示す案内図があった)
(冬は葉の落ちた木が多く、海がよりはっきりと見える)
(グリーンは「ベンクロスベント」の1グリーン)
INコースよりも午後に回ったOUTコースの方がさらに上にあり、海景色を堪能することが出来た。普段、関東平野で丘陵、林間コースをラウンドすることの多い身に「海」はとても魅力的に映る。
「風の強い日は海に白波が立ち、プレーも相当影響を受けるのですが、今日は最高ですね」と常連の同伴者さんも楽しそう。
曇天や雨の日でなくて、本当にラッキーだった。「週間天気予報を見てから予約したいコースですね」ともう一人の同伴者。
景観を楽しんでいるうちに、肝心のスコアがおかしくなってきた。全長距離はバックティから6,830ヤード、レギュラーティから6379ヤード。コースレートは同じく72.3と70.4。
しっかり距離はあるし、易しい“リゾートコース”でないことは、この数字からも読み取れる。
(傾斜がきつかった12番ショートホールのグリーン)
「なんだ、これは」と声を上げてしまったのが12番のショートホールだった。グリーンの端にワンオンしたものの、グリーンはうねりのきつい“ポテトチップス”。
ファーストパットを大きくショート、セカンドパットをオーバー。急な傾斜に幻惑され、迷いが消えないまま打つとこうなる。
15番のショートホールも同様、グリーンにいじめられた。ここはベント芝のワングリーンで、比較的大きく、パターが上手でないとスコアがまとまらないコースである。
(グリーン整備には自信を持っているようだ)
スターティングテラス前に「本日のグリーンコンディション」として「刈高5㎜、速さ9・5ft」と表示されていたことを思い出す。
グリーンとは別にINコースで特に印象に残ったのが13番、16番、18番の3つのミドルホールだった。
(右に直角に曲がる13番ミドルホール。ハンディキャップは「2」)
(13番グリーン。砲台型なので、遠くの海が良く見えた)
13番は左サイドが浅いOBゾーン。第2打地点から右に直角にドッグレッグしているので、右の林に入れたらグリーンが狙えない。
正面のランディングポイントには大きなバンカーが控える。ティッショットの落とし所が極めて狭い。
グリーンに向かって上り傾斜。しかも砲台グリーンのため、2打目地点からはピンフラッグの天辺しか見えない。
(16番ミドルホール。左は深い谷、その先にバンカー群。右側は林。視覚的に強い圧迫感を受けた)
(コースに沿って続く岩場。開発時に原型をそのまま残したという)
16番もティッショットにプレッシャーが掛かるホールだった。左サイドからフェアウエーに食い込んだ谷が恐怖心をあおる。右側は林。谷を越えても左側にはバンカーが続く。
(17番ロングホール。曲げるとリカバリーで苦労する)
(平坦なコースだが、時にはうねったフェアウエーも現れる。手前の「前4」ティからは、残り140ヤードしかなかった)
(「海」「グリーン」「池」「石橋」・・。自然と人工物が同居)
(コース側から見たクラブハウス。綺麗だ)
(板で縁取られたフェアウエーバンカー。ボールが縁に止まると、なんとも打ちにくい)
18番ホールはグリーン手前、左サイドにある大きな池が面倒だった。正面に綺麗なクラブハウス。右側には太平洋の広がるとても美しいホールだが、美景に酔っている余裕はない。
(午後からはちょっと風が出てきた。海風は要注意だ)
(コース内にあった太陽光パネル。新しい時代を感じる)
(無人の売店内部。外の美しい景観が楽しめるはずだったが・・)
(海に向かって打つ4番ショートホール。苦戦しやすく、2組も詰まっていた)
(藤棚の下に置かれた木製のベンチ。老朽化し壊れそうで座れなかった)
(山の上に上がってくると、海が一段と大きく見えてきた)
コース紹介をもう少し続けさせてほしい。OUTコースでは最後の4ホールが強烈だった。
それまで難しいレイアウトやグリーンに耐えながら、悪いなりに凌いできたのだが、この最後の4ホールでスコアが崩壊したのだ。
6番は緩やかに右ドッグレッグした細めのロングホール。ティショットは安全策を取って左サイド狙い。
が、第2打で一瞬早く体が開いた。ボールは右側の山の斜面へ。リカバリーショットが木に当たり、無理した4打目がグリーン手前のバンカーにつかまる。5打目でトップ。グリーン上では3パット・・・。茫然自失。
常連の同伴者さんが「このホール、ハンディキャップ1の理由が分かったでしょう。ちょっとしたミスが大タタキになるよう設計されているんです」。
(7番ティインググランドからは太平洋が一望できる。仲間同士、しばし見惚れる)
<
(この辺が一番高い。海から意外に離れていることが分かる)
(7番ミドルホールは池越え。立ち木もあり難しい。これでハンディキャップ「17」というのは信じられなかった)
7番のティインググランドで雄大な太平洋を眺め、平静を取り戻したはずだったが、ここでは立ち木と池が心を乱した。
第1打はフェアウエーのほぼセンター。仲間から「グッドショット」の声が掛かる。だが、正面に立ち木。右側から華麗なドローボールを打とうと一瞬、夢を抱いたのがいけなかった。
ボールは曲がらず、右サイドのカート道で跳ね、崖下のOBゾーンへ。打ち直しの4打目がショートし、池ポチャ。夢は夢でも悪夢。
(池はグリーンに引き寄せられていて、ボールが入りやすい。大きめに打つと、今度は返しが難しくなる)
(眼下には日立市の一部がくっきりと見えた)
8番ショートホールはグリーンやや奥にワンオンに成功。ホッとしていると、常連さんがまた「上に乗せたらダメなんですよね」。
前進して見ると、かなりの2段グリーンだ。ピンは下の段。「一番難しい所に乗せちゃいましたね」と追い討ちを掛けられる。久々に4パット。
(クラブハウスに戻る9番ホールは左サイドから池が入り込み、プレッシャーが掛かる)
最終9番ホールは18番ホールと同じ池を抱えた、とても美しいホール。だが「綺麗なバラにはトゲがある」の言葉通り、見栄と欲望に負け、仕掛けられたワナにはまってしまった。
(冬は日の暮れるのが早い。気温も急に下がってきた)
「海が見たい」「海が素晴らしい」と感激、集中力を欠いたのがいけなかった。ここは遊び半分では攻略できない、本格的なコースだったのだ。今は悔しさだけが残る。
(堂々とした構えのクラブハウス。近くの駐車場はクルマでいっぱいだった)
「比較的易しいリゾートコースだろう」と誤解したのには訳があった。豪華なクラブハウスの存在である。
(エントランスを入ったところ。高い天井とシャンデリアが印象的)
狛犬(こまいぬ)の置き物が鎮座する玄関を入ると、大きなシャンデリアが目に飛び込んで来る。その下にはソファーが並び、ゆったりとしたラウンジ。白い木製の自動ドアが左右に開くたび、エグゼクティブ感に浸れる。スタッフの対応も丁寧で、気持ちがいい。
階段の壁には「応援している」という諸見里しのぶプロの記念写真などが貼られ、キャディマスター室にはサイン入り色紙が置かれている。
(上質な感じのロッカールーム。洗面台(正面)が併設されているのがユニーク)
ロッカールームも高級感に溢れていた。大きな窓から朝の柔らかな光が降り注ぎ、幅広の木製ロッカーが美しい。
通路に洗面台が備え付けられているのも珍しい。「さすが、リゾートコース」とこの時、思い込んでしまった。
(清潔感のあるトイレ。布製ではなくペーパータオルを使用)
壁に大理石を使ったトイレも快適。個室は6つ(うち和式が1)と少な目だが、ひとつ一つが大きい。特に横幅がたっぷり取ってあって楽に動ける。
(レストランからは「池、コース、海」が良く見えた)
(陽光がレストランの中央にまで差し込んでいた)
朝のレストランも快適だった。利用客こそ少なかったが、東南の角から目いっぱい陽光が入って、室内は温室のような暖かさ。
窓の外には太平洋。眼下に長い10番ホールと大きな池。白を基調とした内装はメルヘンチックでもある。
「そんなゴージャスなだけのゴルフ場ではない」と冷静になれるチャンスはあった。ドライビングレンジである。
(ドライビングレンジは「鳥かご」)
完全な「鳥カゴ」で、正面奥に「145」ヤードの標識。打席数は8。足元のマットも滑りやすい。
(打席そばにあったバンカー。練習する気にはなれなかった)
側のバンカーは丸い窪地に砂を入れただけのもの。ボールは新旧の中古品。25球で315円。各打席に白い椅子こそあるものの、贅沢さを感じさせない「並」の練習場である。
ここで現実を直視し、気合を入れ直すべきだった。
ドライビングレンジで抱いた違和感は、次に向かった「美しいパター練習場」で簡単に消えてしまっていた。そして海の美しさに見惚れつつ、スタートホールに向かった。
繰り返すが、本格的な難しいコースである。昼食時、キャディマスター室のスタッフさんに聞くと、「このほど関東ゴルフ連盟 倶楽部対抗・茨城県予選(2012年5月)の開催コースに決まった」という。
県内のトップクラスのアマチュア選手が各ゴルフ場の名誉を掛けて真剣勝負する大会。ここはそうした競技を行う資格を備えた舞台でもあるのだ。
コースコンディションは芝の枯れた冬場であることを考慮すれば、決して悪い状態ではない。特にグリーンは上質さを保っている。
6月の大会までにどう仕上げるのか、グリーンキーパーさんの腕の見せ所だろう。
この他にも実際にラウンドしてみて気付いた点があるので、簡潔に3点だけ紹介しておきたい。
(売店は無人。鍵が掛かっていて、中には入れなかった)
1つは「売店」。OUTコース、INコースとも無人である。中に椅子などは並べてあるが、鍵が掛かっていて入室は出来ない。
(レギュラーティから201ヤードの表示。実際のティマーカーは179ヤード地点に)
2つ目は「ティ・マーカー」。注意してみると、かなり右(あるいは左)を向いている場合がある。置かれた場所も表示よりかなり前。
例えば、海に向かって打つ名物のショートホール(4番)は、レギュラーティから201ヤードの表示だが、この日は179ヤード地点に置かれていた。
ちなみに「前方特設ティ」も多く、しかも、かなり前。具体的には2番、3番、4番、5番、6番、11番、13番、16番、17番にあり、OBを打ってもボギーで上がれる可能性がある。
(冬場でも植木の手入れは欠かせない。右側の案内板には「本日のティーマーク」の表示)
3つ目が樹木の種類が多いこと。毎月開催しているオープンコンペに名前を付けていることからも、花木が自慢であることが分かる。
1月「くすのき杯」、2月「寒つばき杯」、3月「こぶし杯」、4月「山桜杯」、5月「山つつじ杯」、6月「あじさい杯」・・・。
グリーンまでの残り距離を示す表示板の脇にもツバキなどが植えられ、赤や白の花がコースに彩を加えていた。コース内には山桜が1,500本あるという。
コース内に造られた花壇の小花が疲れ気味だったのは残念だが、全体としてみると、植栽への手入れはかなり行き届いている。
さて、場面を再びクラブハウスに戻す。まずレストラン。内装や外の景色は前述した通り素晴らしいが、食事は総じて地味に感じた。
ランチメニューは8種類。「シェフの手作りグラタン」(1,260円、休日限定)が目玉商品。楽しみにしていた海鮮丼などはなかった。
売れ筋は「天ぷら付きのそば、うどん」や「坦坦麺」で、いずれも1,110円。注文したカツカレーは1,480円。ビール(生中)は661円。
リゾート施設のイメージから予想していた値段よりは、低く抑えられている印象。接待需要は少なく、価格に厳しい地元客が多いためだろう。
浴室はロッカールームの奥にあった。入り口に「太陽の湯」と書かれた暖簾が掛かっている。敷地内の源泉から引き湯した天然温泉で、売り物の一つになっている。
広さは普通。大理石を使用した浴槽は高級感がある。窓の外は庭園風だが、特別の工夫はなく、やや期待外れ。
併設されたサウナは節電のためか休止中。水風呂も浴槽はカラ状態だった。
(正面奥が浴室。右手前のカウンターで冷水のサービス)
脱衣場からはコースの一部が見えて綺麗。出入り口近くに設けられたカウンターでは冷水のサービスを実施。
ただ、全体としてはスペースに余裕がなく、ゆっくり寛げる場所も備品も十分とはいえなかった。
こう見るとハード面は豪華だが、ポイント、ポイントで様々な“運営努力”がなされていることが分かる。
プレー終了後、受付近くで男性スタッフさんに感想を伝え、話を聞いた。
「開場は1992年(平成4年)5月。完全にバブルが崩壊した後だったんです」。
確かにバブリーな建物は、今でも「計画」当時の雰囲気をよく物語っている。東京から富裕層がどんどん来場して賑わう。接待需要も旺盛。会員権相場は上昇の一途という前提。駐車場にはヘリポートまで準備されていたという。
当然、その計画は狂い、預託金償還問題などが深刻化。来場者数も減少する。平成21年4月、ついに水戸地裁日立支部に特別精算を申請。
事業を引き継いだ朝日観光開発㈱の下で経費削減に努め、再建の道を歩んでいるというのが現状だ。
だが、通常通りの運営を続けているゴルフ場から、暗さを感じることはない。豪華なクラブハウスは今でも素敵だし、「全ホールから海が見える」コースの魅力も何ら変わっていない。
むしろ料金が安くなり、プレースタイルも多様化したことで、地元ゴルファーには利用しやすくなったのではないか。
「東京からのお客様は少ないですが、地元の方にはとても人気があるんです」と同スタッフさん。
現在のプレー料金(昼食代込み)は平日6,500円(4バッグ、セルフプレー)、休日12,500円(同)。これは電話予約した際の金額で、「WEB予約」なら平日5,500円とさらに1,000円安い。
多くは乗用カート利用のセルフプレーだが、キャディ付プレーを選択することもできる。その場合は上記料金にプラス4,200円。
ただし「今はキャディが10人もいないので、予約時に必ず確認してください」とのことだった。
なお、これらの料金は10月1日から12月28日までを対象にしたのもので、年末年始は別料金。また冬季の1、2月は「WEB・早割予約」を利用すれば、休日でも10,000円(セルフ、昼食代込み)でプレーが可能だ。
「メンバーさんの紹介があれば、曜日によって500円から1,000円の割引が受けられる」など、集客力アップのため様々工夫を凝らしている。
「このプレー代は東京近郊の有力ゴルフ場の半額以下。もう高額コースではやる気になれないですね」と同伴者。地方在住のメリットを痛感した様子だ。
「2サムプレーは休日でも原則、OK」で、午後に1ラウンドをスルーで回れる「アフタヌーンプレー」やハーフだけ回る「薄暮プレー」も割安料金で受け付けている。
今回は深く考えずのんびり来場したが、次回はもう少し早く東京を出発し、午後のプレーを楽しむ。そんな「1泊2ラウンド」のプランを真剣に考えたい。
その時は「現金」をしっかり用意することを忘れずに。なにせ「カード決済ができない」という落とし穴が、最後の最後に待っていたのだから。