2012年1月29日日曜日
CPGカントリークラブ=名匠・安田幸吉が残した貴重なパブリックコース。50年の歴史が大樹を育て、数々のドラマ生む
(古い樹木が並ぶ光景。このコースの大きな魅力だ)
(眼前に大きな窪地が待ち構える16番ロングホール)
(下に落とすとこんな光景。傷口が広がりそうだ)
地味な名前だ。覚えにくい。「CPG」とは「千葉パブリックゴルフコース」の略で、千葉県市原市のほぼ中央に位置する。周囲は“ゴルフ場銀座”と 呼ばれる日本最大の激戦地。そんな厳しい条件を抱えながら1961年(昭和36年)の開場以来、すでに50年余を逞しく生き抜いてきた。何がゴルファーを 引き付けているのだろう。ラウンドを始めてみて、その理由が直ぐに分かった。
(スタート時点では平坦なコースと思っていたが・・・)
コースが面白いのだ。北風吹く1月下旬の休日とあって眼前の丘陵コースに花木は乏しく殺風景な印象。スタート時点では正直、多くを期待していなかった。「易しいパブリックコースだろう」という勝手な思い込みもあった。
(スタートホール脇の看板。これだけは妙にお洒落だった)
OUTコースの1番は緩やかに左にカーブしたロングホール。フェアウエーセンター近くに立つ杉の木が全体の景観にアクセントを付けている。
コースには巧妙なアンジュレーションがあり、ハンディキャップは「3」。スタートホールにしては厳しい設定だ。
常連の同伴者さんが「このコースはフェアウエーが馬の背になっていたり、大きく傾斜したりして、思った以上に難しいですよ」と最初の警鐘を鳴らす。
スライス気味に飛び出たボールは枯れた芝の上をどんどん右に転がり、白杭の手前でかろうじて止まった。なるほど馬の背だ。
(2番ミドルホール。右から左へ下りの傾斜が続く)
(「コースガイド」は乗用カートのカゴに取り付けてあった)
続く2番ホールは右側にマウンドがあり、コース全体が左傾斜。ティインググランドから眺めると、グリーン手前まで全体がうねっているように感じる。狭くはないが、起伏に特徴のあるコースのようだ。
設計・監修は名門「小樽カントリー倶楽部」や「千葉カントリークラブ梅郷コース」など全国で50コース以上を手がけた安田幸吉氏。
埼玉県の「川口市浮間ゴルフ場」など初心者向きのコースも設計しているが、作品の中には今でも人気を誇る名ゴルフ場が少なくない。
(約30mの打ち下ろし。距離感の難しい3番ホール)
(防球ネットでしっかりガードされた3番のティインググランド)
(ティショットの狙い場所には赤い旗が立つ。ティインググランドからの距離はホールによってマチマチ)
グッと身が引き締まったのは3番ショートホールだった。30mの大きな打ち下ろし。ベント芝の巨大なワングリーンがはるか下方に見える。
同伴者さんは「グリーンセンターまでは135ヤードですが、強烈なアゲンストの風が吹いているので、155ヤード打っても大丈夫」と2度目のアドバイス。
勢い良く打ち出されたボールはピンに向かって真っ直ぐ。が、一瞬、風が止んだのか、グリーンをオーバー。奥からの返しは2m以上の難しい打ち上げとなった。
(4番はブラインドホール。「打ち込み注意」の看板が目立つ)
(トリッキーなホールには大きなレイアウト図が置かれていた)
(木陰には雪が残り、白いボールはとても探しにくかった)
ホールを重ねるごと、新しい課題を突きつけられる感じだ。4番ミドルホールのティインググランド脇には様々な案内板が並んでいた。
右ドッグレッグのブラインドホールなので、特別にレイアウト図が設置されている。脇には「赤色回転灯が消灯後にティショットして下さい」の注意書き。「打ち込み注意」とも。
足元には「赤旗まで200Y」の表示。防球ネットの側には「左に工場あり。ティショット注意」の看板。情報を頭に入れるだけでも忙しい。
回転灯が消えた。ティッショットは左ラフか。稜線の先が下り傾斜になっているので落下地点が見えない。
行ってみると、グリーンまで200ヤード以上も残っている。目印の赤旗が立っていたのは、ボールの位置とは反対側のフェアウエー右サイド。狙った場所へ正確に打たないと、どんどん難しくなるコース設定である。
(5番ホールでつかまったバンカー。力量が試される場面だ)
5番ホールの課題はバンカーだった。深く右傾斜したフェアウエーの中央から放った第2打は明らかなミス。ボールはグリーン右のガードバンカーを直撃。砲台グリーンだったこともあり、アゴが垂直に立っている。
「あのバンカーは絶対に入れてはダメなんだ」。同伴者さんが3度目のアドバイスをしてくれたが、すでに時遅し。
「ホールごとに変化があり、どこも丁寧に、しっかり、厳しく設計してある」というのがラウンドしてみての感想。パブリックコースと言えども、お手軽な感じは全くしない。
(コース売店は簡素。花壇には綺麗な花が咲いていた)
(グリーン回りに立っている老木。雰囲気が良い)
6番ホール近くの売店で一服し、少し落ち着く。見渡せば樹木が凄い。どの木も太く、逞しく、風格がある。年輪を重ねた老木がコースを伴走する様には、自然が育んだ懐の深さを感じる。
特に素晴らしかったのが樅(もみ)の巨木。それも1本や2本ではない。あちらこちらに威容を誇って立ち並ぶ。
「伊達に50年の歴史を刻んでいませんね。こんなに本格的なコースだとは思いませんでした」とやはり今回が初めての来場という別の同伴者さん。同感だ。
(7番ショートホールでは「ワンオンチャレンジ」を開催。厳冬の中、女性スタッフが笑顔を振りまいていた)
(年季の入った巨木の樹皮には迫力がある)
(遠くを眺めると、かなりの高地に居ることを実感する)
(大きく打ち上げる8番ミドルホール。ハンディキャップ「1」の難コースだ)
(屋根付きの休憩所。老朽化が進んでいた)
コースの紹介ばかりしていてはマズイと思いながらも、午後に回ったINコースに衝撃的なホールがあったので簡単に触れておきたい。10番、13番、17番である。
(10番ホールではまず、この木を避けなければならない)
(10番ロングホール。フェアウエーの右サイドが深くえぐれていた)
10番ロングホールはフェアウエー右側に枝ぶりの美しい2本の立ち木。それだけでも十分に刺激的なのだが、驚いたのはその先のフェアウエー。右半分大きくえぐれ、深い谷になっているのだ。
(ミスショットと「まむし」のWパンチ)
うかつにもコースレイアウトを確認せずショット。ボールは谷の最深部に転がり落ちた。側には「まむしに注意!」の看板。設計者の仕掛けたトラップに完全にはまってしまった。
(当日のピン位置は旗の色で識別。「赤が手前、白が中央、黄色が奥」と乗用カートに掲示)
(コースが隣接、防球ネットは随所にあった)
(13番ホールのティショットは谷越え)
(続く第2打は豪快な打ち下ろし。安全確認のためにフォアキャディさんが待機していた)
(遥か下に見えるグリーン。印象的な光景だ)
(13番ホール。振り返ってみると傾斜の厳しさが分かる)
13番は谷越えのミドルホールだ。4人ともこの谷は難なくクリア。第2打を打とうとすると、黄色い制服を着たフォアキャディさんが「まだダメですよ」と声を張り上げる。
グリーンに向かって急激に下っていて、前の組へ打ち込む心配があるからだ。午前中に回った3番ホールの打ち下ろしも凄かったが、それを思い起こさせる景観である。
(最もトリッキーに感じた17番。ここが第2打のベストポジション)
(長い歴史を重ね、フェアウエーに立つ木の枝ぶりも見事になった)
17番はレギュラーティからは285ヤードしかない短いミドルホール。同伴者さんの「180ヤードでちょうど良いですよ」とのアドバイスを素直に聞いて、ティショットはフェアウエーセンターへ。
第2打地点で左を向いてビックリした。山の斜面を整地して、強引に造ったようなグリーンが下の方に見える。
グリーンの左は山、右は谷、手前はバンカー。ベストポジションからでも難儀な地形だ。このホールでも4者4様のドラマが繰り広げられた。
(グリーンまでの残り距離を示すヤード表示。ちょっとくたびれた感じも)
(コース内の売店はひと昔前の造り)
(「しまったぁ~」。気持は分かる)
(年輪を重ねた樹木が多い)
(避雷小屋はコース内に計6つ。ここでも太い樹木が目を引く)
スタート前、近くにいた男性スタッフさんが「池は殆どないし、普通の丘陵コースですよ」と話していたが、結構トリッキーである。
数ホールとはいえ、これだけアップダウンがあると、プレーヤーによって好き嫌いが分かれそうだ。
「挑戦意欲が沸く。面白い」という常連さん。「ボールはなくすし、大変だ。もう少し平坦なコースの方がいい」ともう一人の同伴者さん。
ただ、50年も続いてきたということは前者のようなゴルファーが多いからに違いない。確かに癖になるというか、妙にはまってしまいそうな不思議な魅力がある。
「今ならこんな手の込んだコース、造れないですね」という同伴者さんの言葉に一同、うなずく。
(コースメンテナンスは良好。整備にも力が入っている)
コースメンテナンスもこの時季にしては良好だった。細かいことを言えば切りがないが、アベレージゴルファーが楽しむには支障のないレベルを保っている。
(ティインググランド近くには、ピン位置を示す青いボードが置かれていた)
各ティインググランド脇に当日のピン位置を示す青いボードが必ず置かれている。また旗の色でもおおよそのピン位置が分かる仕組み。
成田国際空港に向かう飛行機が時々上空を通過するが、騒音はまったく聞こえない。高圧線や鉄塔の存在も思ったほどは気にならない。
常連さんは「方向性よりタテの距離感が問われるコース。砲台グリーンが幾つもあり、ワンクラブ大き目に打つと上手くいくことが多い」と総括、アドバイスを締めくくった。
ラウンド終了後、キャディマスター室でコースレートを尋ねた。「測っていません」。これはちょっと意外な返事。コース自慢のゴルフ場がどうして――。
実はこの“節約モード”、コース以外のシーンでは随所で見られた。朝、到着した時のクラブハウスの印象がまさにそうだった。
(クラブハウスの正面玄関。ゴルフ場の名前が目立つ)
(スタッフさんの対応にはホスピタリティを感じた)
(エントランスは、どこか閑散とした印象)
「平成元年に建て替えた」(受付の女性スタッフさん)建物の外観はシンプルながらまずまず。ところが中に入った途端、「あっ、これは、やっぱり」と思った。
質素で、気取らない雰囲気というのか、高級感や贅沢感とは明らかに一線を画した内装だ。
左側に受付。右側に売店。中央の柱の奥に白い平らな椅子が並んでいるが、全体にガランとした印象。
広いフロアには様々なゴルフ用品が置かれているのに華やかな感じはしない。売店の女性スタッフさんも手持ち無沙汰な様子。
(天井にたくさんの蛍光灯。ロッカーの間隔は広かった)
ロッカーは階段を降りた先にある。と言っても敷地自体に大きな段差があり、下のフロアがそのままコースへとつながっている。
(「1階」のロビーから階段を降りたところにあるラウンジ。もう少し高級感があると嬉しい)
角にはテーブルとソファーを並べた飾り気のないラウンジ。飲料の自動販売機ばかりが目を引く。
ロッカーは木製のようなデザインだが、素材はスチール。トイレも一般的なレベルで個室は8つ。
(コンパクトな造りの洗面所)
(鳥カゴの練習場。白く見えるのはボールではなく雪)
一番残念だったのが練習場だ。「ドライバーも使えますよ」と男性スタッフさんに声を掛けられて向かったところは、小さな鳥かごだった。
打席数8(打ち左利き用が1)。正面のネットまで15ヤード弱。料金は25球で210円。ほとんどが疲れた中古ボールだ。
パター練習場はOUTコース近くに大型のものが1面、INコース側に小ぶりのものが2面と比較的充実。アプローチやバンカーの専用練習場はない。
(キャディマスター室周辺。朝はいつも賑わう)
全体に地味な造りが多い施設の中で、比較的目立ったのがキャディマスター室。
ただ「グリーンの速さは何フィートくらいですか」と尋ねたところ、「そういう数字は出していません」と言われたのには、内心ガッカリ。
「ポテトチップスのような所もあるし、ここのグリーンは難しいですよ」とスタッフさんはにこやかに言うのだが・・・
(レストランは窓が大きく、開放感がある。椅子やテーブルに豪華さはない)
レストランも大衆的というか、比較的簡素な造りだった。出入り口からは厨房が丸見えで、側のテーブルには「開場50周年フェア焼酎スタンプラリー」の乙類焼酎の大型瓶が30本近く並ぶ。
昼食メニューは12種類から選べ、選択肢は豊富。特に名物料理と言えそうなものはなく一般的なメニュー。冷えた体を温めたいと注文した「坦々麺セット」は1,500円。意外に高いと感じた。
メニュー表を見ると、日本酒、焼酎、デザートの品揃えが充実。ビール(生中)は690円。
女性スタッフさんが「美味しいですよ」と勧めてくれた「北海道産ソフトクリーム」(350円)はこの季節、さすがに手が出なかった。
(レストランからは美しいコースが良く見えた)
素晴らしかったのは、むしろ外の景観だ。正面と側面の大きな窓から9番、18番ホールのグリーンが見える。10番ホールのティインググランドの様子も眺められ、ティショットに一喜一憂するプレーヤーの様子が楽しい。
(浴室や脱衣場には、やや古さを感じた)
施設ついでに浴室についても紹介しておきたい。脱衣場はちょっと狭目で、窓が小さい。天井の蛍光灯の明かりが頼りだ。
浴場にも大きな窓がない。中央に楕円形の湯船がある、昔の温泉などで良く見られたタイプだ。湯温が熱く感じたのは。寒風の中で1日を過ごし体が冷え切っていたためか。
ホームページ(HP)を見ると、「女性浴場は改装したばかりです」とPR。「女性洗面台」の写真も掲載されていることから、女性客を増やそうと一生懸命、努力している様子が伺われる。
ソフト面もまずまずだった。館内のスタッフさんは派手さこそないが、みな丁寧で、きちんとした対応。受付では使い捨てタイプのカイロを無料で渡してくれた。
レストランでも若いスタッフさんはテキパキと動いていた。宅配便を担当していた年配の男性スタッフさんも愛想が良く好印象。
HPに「パブリックならではのフレンドリーな運営」と書かれていたが、そうした指導がなされているのだろう。クラブハウス内には終日、静かに音楽が流れていた。
プレー料金がOFFシーズンを中心に安いのも、利用者にとっては有り難い。プラス3,200円で「キャディ付きプレー」を楽しむことも出来るが、今では「乗用カート利用のセルフプレー」が多い。
そこで「乗用カート利用のセルフプレー」での料金体系をチェックしてみた。
ラウンドした1月末の休日のプレー代は11,500円。週によって細かく替わり12,500円という週もある。土曜日の方が1,000円高い。
2月が最も安く、平日は5,900円まで値下がりする。昼食付きで7,000円。休日も概ね11,500円だ。コース内容と都心からの距離を考えると、この価格には割安感がある。
3月以降、春に向かって徐々に水準が切り上がり、4月の平日料金は9,000円となる。休日は土曜日で17,700円~18,700円とそれなりに高い。
シニア(60歳以上)とレディースには割引料金が適用される。いずれも平日なのが残念だが、冬場は5,600円(セルフプレー)、4月でも6,800円(同)で可能。キャディ付きはやはりプラス3,200円。
プレースタイルに対してはかなり柔軟だ。2サムは「混んでいなければ土日曜日でも基本的にはOK」(受付の女性スタッフさん)。特に火曜日と金曜日は「2サム割増料金なし」で営業している。
バックティからは「比較的空いている日で、事前にキャディマスター室で4人のトータルハンディを申告してもらえればプレーできる」(同)。
具体的な数字を尋ねたが「オフィシャルハンディを持っていない人もいるので」と、ちょっと曖昧な返事だった。
夏場を中心に、朝6時からの「早朝ハーフプレー」を実施。午後2時からの「薄暮ハーフプレー」は通年実施している。料金は平日で3,500円~4,000円、休日で5,000円。
コンペプラン(3組9人以上)を利用すれば、平日は1,000円、休日は500円の割引。他の人と同伴になるが、最近人気の出てきた「1人予約」制度もある。
1人でも参加できるオープンコンペは実施していない。
予約はHPには「2ヶ月前から」とあるが、実質は3ヶ月前から。ただし、休日の場合、「プレー日5日前以降は1人当り5,000円のキャンセル料金が掛かる」から注意が必要である。
最後に「アクセス」。比較的便利なのはクルマでの来場だ。東京からの場合、首都高→京葉道路経由で館山自動車道の市原ICへ。同ICからは一般道を走って20分と掛からない。同伴者さんの1人は「東京から1時間10分で到着。思ったより近い」と安心した様子だった。
電車組は3人。うち2人は東京駅発7:15分の「わかしお1号」(安房鴨川行)に乗車。途中、蘇我駅で内房線に乗り換えて8:06分にクラブバスの出ている五井駅に到着。
もう一人の常連さんは千葉駅発8:06分の内房線(東京駅発7:18分の総武線快速と連絡)に乗車し、五井駅に8:26分に到着した。
クラブバス(予約制)の出発時間が8:30分。五井駅のロータリーには周辺ゴルフ場行きのクラブバスが密集しているので、初めてだと探すのに戸惑う。
クラブバスはこの1本しかなく、乗り遅れてタクシーを使うと3,500円は掛かる。慣れるまでは特急電車を利用し、早めに到着した方が無難だろう。
また15人以上がまとまって大コンペを開催する場合には「バスプラン」を検討しても良いかもしれない。帰りのバスの中で「表彰式」や「反省会」ができ、時間の節約になる。幹事さんも楽だ。
様々なドラマを体験でき、何かと印象に残るシーンの多いゴルフ場だった。
「CPG」――。最初、地味で覚えにくいと思っていたゴルフ場の名前が、夕方にはしっかりと脳裏に焼き付けられていた。
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