2011年4月17日日曜日
小川カントリークラブ=「飛ばし屋」より「業師」向きの丘陵コース。トリッキーなホールにどう挑むか
(中コース1番のミドルホール。大きな打ち下ろしで、遠景が美しい)
「小川カントリークラブ」のある小川町(埼玉県)へは東京・池袋駅から東武東上線の急行で約1時間15分。運賃は片道780円だ。「秩父の手前」 と聞くと遠いような気がするが、都心からも意外と近い。「朝は池袋駅始発、帰りは小川町駅始発の電車に乗れるので、クルマより楽ですよ」と言われ、4月の 休日、電車で向かった。コースは予想以上にトリッキー。思わぬ苦戦を強いられ、電車のようにスイスイとはいかなかった。
(スターティングテラス。小さな花壇に草花が植えられ、綺麗だった)
(「東」「中」「西」の3コースからなる)
開場は昭和41年(1966年)11月。既に45年近い歴史を持つ。予約したのは「一番人気がある」(受付スタッフ)という「東コース」→「中コース」。
両コースをあわせた距離は「フロントティ」(レギュラーティ)から5933ヤード。6000ヤードを切る短いコースでのプレーは久しぶりだ。
しかも、事前に調べたコースレートは同じ条件で67.3(ベントグリーン)。67台というのも珍しく、当日は「自己ベストが出るかもしれない」と期待して出かけた。
メンバーさん同伴なのでセルフプレーを選択することも出来たが、トリッキーな場所があると聞き、「キャディ付プレー」を予約してもらって、万全を期した。
この季節、東京はもう葉桜になっていたが、小川CCではまだ桜花が残り、景観も天気も「さあ、頑張れ」と応援してくれているようだった。
(東コース1番のミドルホール。左右の桜と新緑が綺麗だった)
練習を済ませ「東コース」の1番ティインググランドへ。「オー!」と思わず歓声を上げた。
豪快に打ち下ろす派手なミドルホールだ。グリーンの先に小川町の中心街、そして遠くに秩父の連山。一度見たら忘れられない雄大な光景である。
「左はOBです。右の斜面を狙って下さい」とキャディさん。「丘陵コースというより山岳コースですね」と感想を漏らすと、「大丈夫です。2番ホールから平坦になりますから」。
(アップダウンはあるが、緑が豊か。コースには落ち着いた風格も漂っていた)
同伴の会員さんは「いや、他のホールもアップダウンがあるので、斜面で打つことが多いですよ。平らな所で打てるのはティインググランドくらいかもね」と脅かす。自己ベストを目指すのは大変かもと、気を引き締めてスタート。
(東コース2番ロングホール。ティインググランドは撮影場所のずっと右奥にある)
続く2番は短めのロングホール。しかし、目の前に池。フェアウエーが右にカーブしているので左サイドを狙うと、そこにもまた池。右サイドは池に沿って木々がせり出し、狙い目がぐっと絞られている。
力む。右肩が下がる。顔が上がる。体が開く。ダフる。欠点をさらけ出し、ボールは手前の池に直行・・・。
「先の方に前4の特設ティがありますよ」と声を掛けられたが、「いや、ここから打ち直します」。
冷静さも失い、2ホール目にして早くも自己ベスト更新に危険信号が灯る。
同伴者さんに『石川遼だってミスをする。諦めよう。さあ、次だ』と元気付けられ、次のショートホールへと進む。
キャディさんが「ここはハンディキャップ9です。東コースで一番楽なホールですので、頑張りましょう」と応援してくれる。
が、前ホールのミスを悔やむ気持を切り替えられず、結局、乗らず入らずで、ズルズルとスコアを崩す。
(東コース6番は大きく打ち下ろし、大きく打ち上げる。距離は短いのだが、難しく感じてしまう)
4番ホールはフェアウエーのアンジュレーション苦戦。5番ホールも途中で左に直角に曲がるレイアウトに対応できず、6番は大きく打ち下ろし、大きく打ち上げるダイナミックな設計に翻弄された。
(東京より1週間遅く、桜が満開だった。東コース8番のティインググランド脇で)
7番はフロント(レギュラー)ティからでも191ヤードある難しいショートホール。8番も同じく500ヤードを越えるロングホール。
(東コース9番ホール。グリーン手前に並んだ松の木々)
最終9番のミドルホールは会心のティショットを放ったものの、グリーン手前に松の木が並ぶ意地悪なレイアウトに立ち往生。クラブハウスを背景にした美しい景観を鑑賞する余裕もないまま、午前のプレーを終えた。
(最終ホールには夜間照明が設置されていた)
(東コース脇から見えた煙突。「ゴミの焼却場」とか)
「トリッキーなコース設計に幻惑され、必要以上に力み、自滅」――。これが正直な感想だ。確かにOBゾーンを示す白杭は目立ったが、グリーンがそんなに速いわけではなく、花道もあった。もっとプレッシャーに強くならなければ。気持の弱さが出た。
負け惜しみに聞こえるかもしれないが、コースに慣れ、飛距離を欲張らず、コンパクトなスイングを心がけていれば、好スコアの出るコースだったかもしれない。
キャディさんが最初、「会員さんは東コースを回りたがりますね」と言ったのも分かる気がする。トリッキーなだけに変化があって、戦略的で面白いのだ。
今回は早々に自己ベスト更新を断念したが、次回、このゴルフ場に来たら、また「東コース」を選択し、挑戦したいと思う。
45年近い歴史を支えてきた人気の秘密も、この「コースの飽きない面白さ」にあると感じた。
ランチタイムが格好の気分転換になった。クラブハウスの内部は歴史を感じさせる、やや古めかしい造り。
レストランも普通の広さ、普通のデザイン。太い柱、高い天井の割に地味な印象を受けたのは照明が抑え目だったせいだろうか。テラスから眺められる遠景の美しさに緊張がほぐれる。
着席すると、スーツ姿の年配の方が同伴してくれた会員さんに挨拶に来た。スタッフさんの対応を含め、全体にアットホームな感じが漂うレストランだ。
感心したのは昼食料金がリーズナブルだったこと。メニューは主な物だけでも14種類。
「うな重」(1680円)や「サーロインステーキ定食」(1580円)もあるが、カレーライス(750円)やそば(630円)もあり、選択の自由度は高い。ビール(生中)は650円。注文した「石焼ビビンバ」は1,100円で美味しかった。
(正面が売店。その奥にラウンジ。朝食コーナーはラウンジ脇にあった)
朝、1階の正面に「朝食ラウンジ」があったのを思い出す。珍しいので覗いてみたが、「めざメシたまごセット」(300円)と「ミニ山菜うどんセット」(400円)が準備され、ホットコーヒーやアイスコーヒーが150円で「おかわり自由」という嬉しいサービス。
午後のスタート前に立ち寄った売店には、数種類の野菜が並んでいた。
「今朝はなかったように思いますが・・・」と販売スタッフさんに話し掛けると、「休日だけ昼前に届きます。地元で取れた新鮮な野菜で、ご自宅へのお土産用にも人気があるんですよ」。
「お土産に地元の野菜」――。格好つけない、気取らない。クラブハウスにはそんな居心地の良さが感じられる。
午後に回った「中コース」も1番ホールは景観の美しいミドルだった。フェアウエー右サイドとグリーン奥に池があり、全体に左傾斜がきつい。真っ直ぐに飛び出たボールはフェアウエーセンターに落下し、転がって左サイドのバンカーまで行ってしまった。
(「中コース」は比較的素直なホールが多かった)
(中コース4番ホールは谷越えのミドル。谷といってもプレッシャは少ない)
(中コース5番ミドルホール。フェアウエーが右傾斜し、油断できない)
(「中コース」9番のグリーン。背後にクラブハウスが見え、印象的)
「こちらもトリッキーか」と覚悟したが、その後は「東コース」に比べると、オーソドックスなレイアウトに徐々に変わってきた。戦略的で印象に残ったのは3番、4番、5番と最後の9番ホールくらい。
その分、落ち着いてプレーでき、スコアも午前中よりかなり改善した。コース内の美しい花々を観賞する余裕も生まれた。
(白い「雪柳」の花が満開だった)
(黄色い「連翹(れんぎょう)」の花が鮮やかだった)
(左側のモクレンの花も目を楽しませてくれた)
(キャディさんが教えてくれた「緑の桜」)
真っ白い小さな花が雪のように見える「雪柳」。黄色い花が鮮やかな「連翹 (れんぎょう)」。
6番ホールではキャディさんが「緑色の花が咲く、とても珍しい桜があるんですよ」と言って、その近くまで連れて行ってくれた。8番ホールでは紫色のあでやかなモクレンの花が出迎えてくれた。
「まだ桜が残っていますが、5月に入ればツツジや金木犀(きんもくせい)が咲いて見事ですよ」。四季を通じて様々な草花が楽しめるよう工夫されたゴルフ場である。
(当日のピン位置を示す貼り紙。グリーンを4分割しただけで、ちょっと大雑把)
(グリーンはやや重く感じた)
フェアウエーやグリーンのメンテナンスは良好。グリーンはベントとコーライの2グリーン。この日はベントグリーンを使用したが、キャディさんは芝目を結構、気に掛けていた。
「傾斜ではスライスですが、芝目が逆なのでほとんど曲がりません」「逆目なので、そこからはかなり重いですよ」といった具合だ。
(同伴したメンバーさんは「ここは優秀なキャディさんが多い」という)
コースやグリーンを熟知した優秀なキャディさんだったが、ラウンド途中から“ため口”が増えたのは、いただけなかった。
「~してもいいよ」「~だけどね」――。ホスピタリティは重要だが、馴れ馴れし過ぎると逆効果。言葉遣いは難しい。
(無人の売店。ちょっと寂しい雰囲気)
ラウンド中、気になったことがもう一つ。無人の売店である。鍵は掛かっておらず、中に入って休むことは出来る。店内には自動販売機が1台。現金を持っていなければキャディさんが立て替えてくれる。
カウンターがあるので、以前は女性スタッフが接客していたのに間違いない。経費節減で無人化したのだろう。最近はそんなゴルフ場が増えている。
廃墟のようで寂しいが、「もうかつてのような売店サービスはないのが普通」と割り切ってラウンドした方が、ガッカリしないで良いのかもしれない。
(松のある日本的風情。2つのグリーンの間にしっかりバンカーがある)
(ホールが隣接し、防球ネットが必要なところも)
(ティインググランド脇にはこんなベンチも。椅子には大手飲料メーカー名が書かれていた)
時間を朝に戻す。小川町駅からのクラブバスは休日8本、平日7本。帰りのバス便はさらに充実しており、午後1時から5時まで休日、平日とも20分ごとに運行されている。所要時間が6~7分という近さがなせる業だ。
(ロッカールームは窮屈だった。残念)
ロッカーは木製とスチール製の2種類。利用したのは木製のロッカー。横幅が狭く、大き目のバッグは出し入れが大変。ロッカー間の幅も狭く、利用者が集中した時は窮屈だった。
トイレは個室が7室。「便座除菌クリーナー」が設置されているのは好感が持てたが、水の流れが悪い。
たまたまかと思って清掃スタッフさんに「流れにくかったですよ」と話したところ、「私も(会社に)言っているんですがねぇ」という。たまたまではなかったらしい。
洗面所には歯ブラシやうがい薬が置かれるなど、備品には配慮が行き届いていた。
(山の斜面を利用した練習場。ネットが気になり、開放感はない)
練習場もいまひとつだった。打席数は8つ。ネットを張った「鳥かご」だが、天井のネットが緩んで下がり気味になっているので、直ぐにボールが当たってしまう。山すそに造られていて、飛距離も分かりにくい。ボールは新旧混合。
ドライビングレンジ近くの小屋(無人)に用紙が置かれ、名前と番号と利用ケース数(1ケース24球)を記入、勝手にボールを打つ。値段が分からなかったが、清算した際に受け取った領収書には「練習場 158円」と記載されていた。この値段なら不満はいえないか。
打席数が少ないので、ラッシュ時には数人のプレーヤーが順番待ちをしていた。打席の近くの洗い場に洗濯機が置いてあったのは奇妙な光景。
(2面あるパッティング練習場。小ぶりで、混み合う場面も見られた)
アプローチ練習所はないが、小さなバンカー練習場はある。パター練習場は2面。
キャディマスター室のスタッフに「今日のグリーンの速さはどのくらいですか」と尋ねたところ「測っていません。練習グリーンよりは少し遅いと思いますよ」という返事。
「バックティからのプレーは希望すれば可能。2サムは混雑する休日は無理だが、平日は可能」という。いずれも状況次第で変更もありうるという条件付きだ。
浴室、脱衣所の造りは一般的なレベル。脱衣場の窓越しに見えた「しだれ桜」がちょうど満開で、見惚れてしまった。室内にはマッサージチェアなどが備えられ、リラックスできるよう工夫がなされていた。
プレー料金は時季や曜日によって、小まめに変わる。
ホームページ(HP)の「予約案内」を見ると、「ゲスト基本料金」として「平日18,900円、土曜日25,200円、日・祭日23,100円」と記載されている。
同じHPの「営業案内」にはゲストの「プレー料金表」があり、例えば4月の平日の料金は14,940円(月曜日、昼食付き)から16,940円(下旬の水曜日と木曜日)までとバラツキがある。でも、この水準が“実勢価格”のようだ。
この表には土・日曜日の料金が記入されていなかったので不思議に思い、スタッフに尋ねると「休日料金は会員さんだけが見られるようになっています」とのこと。
「ゲストはいくらなんですか」と聞くと、「(5月のハイシーズンで)土曜日が20,940円、日曜日が1,000円安く19,940円でプレーできる」という。
いずれにしても、最初の「ゲスト基本料金」よりはかなり安い。ちなみに今回(4月中旬の日曜日)の領収書を見ると、「特別ご優待」と印字され、プレー代は16,940円で済んでいた。
ネット予約は受け付けておらず、全て電話での申し込みなので、プレー日が決まったらとにかく電話して、当日の料金を聞いてみるのが一番だ。
毎週ではないが、火曜日には「セルフデー」があり、割安な「アフタヌーンハーフセルフプレー」やジュニア(18歳未満、セルフプレー)料金も用意されている。
最後に大切なことを一つ。実はHPに「プレーは原則として会員の紹介が必要」とあったので、帰り際、受付でスタッフさんに小声で尋ねてみた。
「(会員さんの)紹介なしでは無理ですか」。スタッフさんも小声で「空いていれば、休日でも大丈夫ですよ」。
会員さんには怒られそうだが、門戸が開いているのは会員権を持たない一般ゴルファーにとっては有り難い。
こうした柔軟な営業姿勢とコースの面白さ・風格が長い間、多くのファンを引き付けきた理由だろう。飛ばし屋より技巧派がはまりそうな個性的ゴルフ場だった。
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