2011年8月26日金曜日
高坂カントリークラブ=『フジサンケイ クラシック』開催実績のある丘陵コース。若手キャディの投入でイメージ一新
(堂々としたフェアウエー。挑戦意欲が沸く)
(クラブハウス周辺には落ち着いた風格があった)
(木が1本あるだけで印象は大きく変わる)
(走るキャディさん)
高坂カントリークラブは埼玉県のほぼ中央、東松山市高坂にある。東武東上線高坂駅までは池袋駅から急行で1時間弱。同駅からクラブバスで5分とい う好立地だ。男子プロトーナメントの「フジサンケイクラシック」を第一回大会(1973年)から6年連続で開催し、全国的に脚光を浴びた。「米山コース」 と「岩殿コース」の2コースからなり、大会の舞台となったのは「米山コース」。今回(8月下旬)も「ぜひ米山コースで」と同伴してくれた会員氏にお願いし た。
実は過去に数回、同じコースでプレーしたことがある。現在「フジサンケイクラシック」が開催されている「富士桜カントリー倶楽部」(山梨県)や、 その前の「川奈ホテルゴルフコース・富士コース」(静岡県)に比べると、華やかさこそないものの、起伏の少ない穏やかな丘陵コースという印象が強い。
(雨宿りするにも、これではちょっと辛い)
(雷避小屋はかなり老朽化)
ただ、その一方で施設が古く、キャディさんもベテランが多いと感じていた。特に前回は動きの鈍いキャディさんに少々、苛ついた記憶がある。
今回は違った。朝スターティングテラスに出ると、若いキャディさんに大きな声で「おはようございます」と声を掛けられ、まずビックリ。
会員氏は「アンケート調査などを実施して関係者の意見を聞き、スタッフをかなり入れ替えたようだ」と事情を明かす。
実際、この日一緒に回ったキャディさんは素晴らしかった。「今春の採用で、まだ経験は半年ぐらい」だそうだが、スタート前のクラブ確認、挨拶、進行管理、安全チェック、クラブの受け渡し、ボールの行方確認、目土など、基本動作を的確に、しかも機敏に実行してくれた。
(走るキャディさん)
「米山コース」でのプレースタイルは原則「キャディ付、乗用カート利用」。しかし、キャディさんが客と一緒に乗用カートに乗る場面はほとんどなく、常に走る、走る、走る。砂袋を持って走る。パターを抱えて走る。
「元気だねぇ」「疲れないのかねぇ」「若いんだねぇ」。中年ゴルファーたちは感心することしきりだ。キャディさんの動きが早いとプレーにもリズムが出てきて、スコアまで良くなる。
本人は「見習いの時、しっかり教えてもらいましたから」と言うが、グリーンの芝目を正確に読み切っていたのには舌を巻いた。
「傾斜は右からですが、芝目が左からなので、ほとんど曲がりません」。ベテランでも読みにくいラインを自信を持ってアドバイスする。
アベレージゴルファーは何年プレーしていてもグリーン上で悩む。「後で芝目の読み方を教えてよ」とお願いしたら、ニコッと微笑んだ。
若い方なのに言葉遣いも極めて丁寧。クラブを手渡すと、必ず「お預かりします」。第2打地点に立つと「ハイ、ここからでしたら、上りを入れてピンまで残り165ヤードです」といった具合。
日常の話し方まではどうか知らないが、教育の成果はしっかり出ている。ベテラン組にも良さはあるが、やはり「ひたむきさ」が前面に出る若手には好感を抱く。
他のキャディさんはどうなのだろう。偶然、良いキャディさんに当っただけなのだろうか。インターネットで高坂CCの「プレーヤーコメント」を読んでみた。
7月にラウンドした埼玉県在住のDさんは「抜群のキャディでした。残りヤード、グリーン上の読みもばっちりで、スコアが5つは違っていたと思います」。
全く同じ様な体験をしている。偶然ではなかったようだ。
後で気が付いたのだが、宅配便担当スタッフの胸にも「研修生」の文字があった。
やはり若い女性だったが、バッグの「送り状」を書き始めると、ゴルフ場ガイドブックを開いて、自発的にゴルフ場の住所、電話番号を読み上げてくれた。手抜きせず、何事にも一生懸命なのが若手のいいところだ。
スタッフの入れ替えが進んでいる一方で、施設は古いままだった。開場は1958年(昭和33年)秋。すでに53年が経過した老舗である。
(受付は一般的なデザイン)
エントランスに入ると右手に受付。左手奥にプロショップ。その手前にあるスペースは時代を感じさせるような古い造りだった。節電のためもあるのだろうが薄暗く、奥に置かれた重厚なソファーもどことなく寂しげな様子に見える。
(ゲスト用ロッカーは会員専用ロッカーより高級感があった)
会員用の細いスチール製ロッカーが並ぶ通路を歩いて階段を降りた先に、ゲスト用のロッカールームがある。会員用より立派なロッカーで有り難いのだが、途中の通路の床にはシミがたくさんあり、「あらら」という感じだった。
(外にはテラスなどがあり、景観はあまり楽しめない)
2階のレストランはごく普通の内装、雰囲気。外の景色も1階の屋根とテラスに遮られて、あまり良く見えない。
(クラシックで落ち着いた感じの2階ラウンジ)
むしろ隣にある広いラウンジの方が魅力的だった。落ち着いたデザインで、調度品も上質。前回、プレー終了後、ここで女子プロ大会のテレビ中継を見ながらビールを味わった記憶が蘇った。
「ゆったりとしたラウンジを設け、メンバー同士の懇親を深める」――。それが開場当時に目指したクラブライフだったのだろう。
1階の貴重品ボックスに最新の「静脈認証式」を導入したり、大型液晶テレビを設置したりと営業努力の跡も見られる。それでも全体に時代遅れの感は否めない。
(スターティングテラスには「岩殿コース」に向かうバスが待機。奥に工事用のクレーンが見える)
肝心のコースや練習場はどうだろう。こちらはあまり変わっていて欲しくない。スターティングテラスの正面に小ぶりのパター練習場。「岩殿コース」に向かうバスも、いつもの場所で待機している。雰囲気は同じだ。
(ドライビングレンジ。ネットはあるが、コースに近い景観)
キャディマスター室でコインを買い、クラブハウス横のドライビングレンジに向かった。
打席の左半分がシートでふさがれ、使用できるのは右側6打席のみ。階段を降りて下階の打席を見ると、やはり奥半分が工事中。9打席のみが利用可能な状態だった。
ボールは線の入った練習用のもので、黄ばんだものも含まれていたが、30球で210円と安い。正面のヤード表示は150ヤードまで。
約200ヤード先のネットに「打」「込」「禁」「止」の4文字が並んでいる。
練習を済ませてクラブハウスを見ると、奥に高いクレーンが1本立っている。目を凝らすと、なんとクラブハウスの建て替え工事が行われていた。
朝、クラブバスで到着し、そのまま入館してしまったので、この工事には全く気が付かなかった。すでにゴルフ場側も老朽化対策に動き始めていたのだ。
(側では新しいクラブハウスの建築工事が進んでいた)
「運営を続けながら3期に分けて工事するので、完成までにまだ2年ぐらいかかりそう」(受付スタッフ)だが、どう生まれ変わるのか。一転、リニューアル後の来場が楽しみになってきた。
いよいよコースに出る。結論から先に申し上げると、穏やかな起伏を持ち、手入れの行き届いた名コースぶりは少しも変わっていなかった。
全長距離は「バックティ」からが6,773ヤード、「レギュラーティ」が6,328ヤード、「レディースティ」が5,480ヤード。
コースレートは「バックティ」で72.1(Aグリーンの場合、以下同)、「レギュラーティ」で70.3、「レディースティ」で70.6(女子コースレート)。
(当日のピン位置はグリーンを6分割して表示)
(1番スタートホール。曇天で見えにくいが、前方に市街地が見える)
印象的なホールをいくつか紹介したい。最初はスタートホールの1番ミドル。緩やかな下り傾斜が続き、正面に高坂の市街地が望める。軽い馬の背のフェアウエーで、曲げるとボールが坂を転げ落ち、後が大変になる。
(池越えの4番ホール。周りの樹木は良く手入れされていた)
4番ショートホール。レギュラーティからでも184ヤードと長く、ティインググランドの前には池。景観の美しさや池越えのプレッシャーに気を奪われていると、グリーン手前のバンカーに捕まりやすい。
(5番ホール。突然、クルマの騒音が聞こえてきたのには驚いた)
関越自動車道がコースの左側を通り、クルマの騒音に戸惑う5番ホール。332ヤードと短いミドルなのにハンディキャップが「1」。
難しい理由はすぐに分かった。右サイドに置かれた樹木がティショットの狙い場所を狭め、2打地点からはグリーン面が見えないほど高い砲台グリーン。
ショットの方向性と距離感が2つ同時に揃わないと攻略できないホールなのだ。
(桜、イチョウ、藤、カシ、ハナミズキ・・・。コース内には様々な種類の木があった)
(グリーンまで距離のあるバンカーショットは難しい)
(売店の内部は普通。女性スタッフは対応に好感が持てた)
(高低差の大きいショートホールは距離感が第一)
コース売店側の6番ショートホールも谷越えで、距離感がつかみにくい。「ピンまで150ヤード弱?そんなにあるのかなぁ」と疑った3人はみなショート。クラブを持ち替えた4人目は逆にオーバー。
(7番ロングホールは左サイドが危険)
(各ホールの間にはこんな斜面が続く)
(所々に残り距離を示す数字があり、便利だった)
(高圧線や鉄塔は景観的には好ましくないが、やむを得ない)
(ティマークにはひと工夫)
(10番ミドルホール。時にはアップダウンもある)
(比較的距離のある11番ショートホール)
(コース内の立ち木が攻略ルートを狭める)
(バンカーを苦にしていてはスコアがまとまらないコースだ)
(乗用カートに設置された無線装置)
(14番ロングホール。池の周りは日本庭園風に整備されていた)
(これは夜間照明でなく、芝を保護するための扇風機)
(樹木には名前を書いたプレートがあった)
後半のINコースでは11番のショートホールと14番のロングホールが「景観の美しさ」で強く記憶に残っている。
特に14番はグリーン左手前の池が景観的にも、戦略的にも存在感を発揮している。
(「馬の背」の17番ホールフェアウエー右サイド。曲げたら大変だ)
最後にもう一つ。最も手強いと感じたのが17番のロングホールだった。距離はレギュラーティから469ヤードと短いのだが、フェアウエーが馬の背状態になっていて、1番ホール同様、左右に曲げるとリカバリーが厳しくになる。
このコースは一見、平坦で簡単そうに見えるが、両サイドあるいは片側が下に傾斜していることが多く、正確にフェアウエーセンターを捉えていかないと、常に余分な一打を強要される。
「調子はいいのにスコアがまとまらない」というケースが多いのも、このためだろう。
設計は赤星四郎、井上誠一、安田幸吉らと並んで日本のゴルフ黎明期を支えた富澤誠造氏。簡単そうに見えても「ワナ」は存分に仕掛けてある。
ただ、変化があって刺激的なINコースに比べると、OUTコースは似たような印象のホールもあって、やや単調な嫌いがあった。
(夏場にもかかわらず、コースメンテナンスは概ね良好だった)
コースコンディションは猛暑が続いたのにもかかわらず良好。フェアウエーは一部にベアグランドがあったが、気にする程ではない。
(グリーンはやや軟らかめ)
平成16年の改修工事で「高麗」を「ベント」に変え、ベント芝2つになったグリーンも多少軟らかく感じた程度で、コンディションに問題はなかった。
「通常は9.5フィートの速さで営業していますが、この暑さなので芝が傷まないよう少し伸ばし、今日は8.5フィートです」とキャディマスター室の男性スタッフさん。
前日に雨が降ったので、実際はさらに遅めだったのではないかと思われる。
ラフも適度に刈り込んであり、「コースに打ちのめされる」という感じではなかった。
イベント開催時にはまた、厳しいセッティングに仕上げるのだろうが、この日は景観同様、穏やかで上質なコースという印象だった。
ちなみに前回(5月)に来場した時は新緑の季節で、ツツジや八重桜が咲き、売店周辺の花壇には小さなパンジーの花がたくさん植えられていた。池の側では可愛いカルガモの隊列とも出会った。
春と秋を中心に、季節の変化も楽しめるコースになっている。
料金は「米山」「岩殿」とも同じで、ゲストの「通常料金」は「平日」が23,037円、「土日祝日」が30,125円。夏冬のOFFシーズンの「季節料金」は「平日」が17,052円、「土曜日」が25,452円、「日曜日」が24,402円。
(他に「通常料金」の場合、火・金曜日は2,100円の割引、夏冬は逆に210円の「季節手当」が必要)
ハイシーズンの休日とはいえ、3万円を越えるプレーフィは、さすがに高い。交通費や飲食代、雑費などを加えると、35,000円近い出費を覚悟しなければならない。
老舗の「会員制ゴルフ場」ではあるが、ゲストだけでもプレーする道はある。
「平日なら、同伴プレーヤーの中に以前、高坂CCでプレーした経験者がいればOKです。いらっしゃらなくても、空いていれば(予約を)お受けしますので、無理にメンバーさんを探さなくても大丈夫ですよ」と営業スタッフさん。
休日の場合はどうか。「混んでいる日は無理ですが、空き具合によっては可能です。3ヵ月前から予約を受け付けているので、早めに申し込んでいただければ取れます。一度お受けすれば、後で混んできても『やめて』とは言いませんので」。
アクセスの良さは冒頭に記した通りだが、最寄りの高坂駅からクラブバスが朝夕とも10本以上出ているので、近年は電車での来場者が増えているという。
同伴者は「飲酒運転厳禁なので、最近は駅から近く、必ずクラブバスのあるゴルフ場を選んでいる」と話す。
ただ「高坂CC」はクルマでの来場も比較的便利だ。東京方面からなら関越自動車道を北上、鶴ヶ島ICで一般道に下り約20分で到着できる。
都心からでも1時間半と掛からない近さ。この交通事情の良さも上記のプレーフィを下支えしている大きな要因だろう。
レストラン紹介の際にリポートし忘れたが、食事面はまずまず。この日のランチメニューは10種類。10月から5月までは名物「高坂タンメン」(950円)が人気。夏場は「冷し中華そば」(1,050円)などに取って代わる。ビール(生中)は600円。
朝食は和洋定食が850円。コーヒー350円。パーティルームは7つ。パーティメニューは1人2,000円からで「相談に応じます」とのこと。
高坂CCにはもう一つ「岩殿コース」がある。
ホームページ(HP=)を見ると「各ホール樹木でセパレートされており、フェアウエーは多少のアンジュレーションはあるが広く、距離は米山コースより若干短めです」と紹介されている。
会員氏も「フェアウエー、グリーンとも起伏があって、米山とはまた違う面白さがある」と話す。
「月曜日(休場日)セルフプレー」や「オープンコンペ」「早朝スループレー」などは皆、こちらの「岩殿コース」で行われており、ゴルフ場側も上手に使い分けているようだ。
最後に、細かなことだが「良かった点」と「まずかった点」を1つずつ。
(脱衣場はやや狭かった)
「良かった点」は浴室。内装や外の景観は大したことはないのだが、湯船が「39℃-41℃」と「41℃-43℃」に分けられ、自分の好みで使い分けられる。
「まずかった点」は受付での対応。帰りに「近くで1泊するとしたら、どこがいいですか」と尋ねた。
男性スタッフさんが坂戸市にあるホテルの「特別ご宿泊金券(1,000円分)」を渡してくれたのは嬉しかったのだが、裏を見ると「2011年7月31日まで」で既に有効期限切れ。
丁寧な言葉遣いやテキパキした動作など、他の面ではホスピタリティの高さを感じていただけに、券が使えないのはやはり残念だった。
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