複合スポーツ施設「日本エアロビクスセンター」(千葉県長生郡長柄町)を核にした「生命の森リゾート」内にある大型のゴルフ場。リゾート事業を全
国展開する「リソル」(旧ミサワリゾート)が運営している。「真名コース」(27ホール)と「ゲーリープレーヤーコース」(18ホール)の2つのコースか
らなり、真名コースの方が全体にゆったりとした設計だという。今回は真名コースを選択。折角だからと欲張って「つつじ」「くすの木」「こぶし」の3コー
ス、すべてを回ることにした。
プレーに先立って予約の電話を入れると「ここはメンバーズコースですが、どなたでも自由にご利用いただけます」と女性の明るい声で案内される。
(手入れの良く行き届いた植栽。日本庭園風の佇まいが特徴だ)
真名コースの場合、予約時に希望すれば状況次第でセルフプレーも可能だが、基本は「キャディ付の歩き」で乗用カートの利用は予約制。カード代はプ
ラス1,575円。ゲーリープレーヤーコースの場合は逆で、基本が「セルフプレーの乗用カート利用」。キャディ付が予約制になっている。
真名コースのプレー代(4バッグ)はハイシーズンが土曜日で22,500円(キャディ付、乗用カート代込み)、平日で14,000円(同)。オフシーズンはこれより2,000円程度安くなる。
さらにフロントで「優待券」を配っているほか、独自の「FAXクラブ」や「モバイルクラブ」など、登録するだけで割安にプレーできる仕組みも用意されている。日によっては同じ料金で「昼食付」の場合もある。
「宿泊施設があるそうですね」と水を向けると「施設内にコテージとホテルがあります。お得な宿泊ゴルフパックをご用意しており、コテージ(食事な
し)を利用されれば、1ラウンドのプレー代(キャディ付)を含め、平日は16,000円前後、休日でも23,500円程度で済みます。さらにこの料金に
2,100円プラスしていただければ、ホテル『トリニティ書斎』をご利用いただけます」。女性スタッフが淀みなく説明してくれた。
(コースに隣接して、森の中にエアロビックスセンターの施設が点在する)
場所は房総半島中央の緩やかな丘陵地帯の一角。周辺に高い山がないため、天気が良ければくすの木コースの高所から外房の九十九里海岸が望めるという。残念ながらプレー日は晴れ時々曇り。遠景の素晴らしさは想像するしかなかった。
県外からのアクセスはちょっとややこしい。都心からクルマで首都高速湾岸線を利用した場合、京葉道路を経て千葉東金有料道路に入り、大宮ICからさらに千葉外房有料道路を約15分走り、大沢終点で下りて5分で到着というコース。
有料道路を避け蘇我ICから茂原街道を走るルートもあるが、蘇我ICからでも約30分はかかる。東京湾アクアラインを経て木更津JCTから館山自動車道を回っても同じくらいの時間を要する。
電車の場合はJR京葉線を利用し、東京駅発7:30分の特急「ビューさざなみ1号」に乗って蘇我駅へ。同駅で外房線の普通電車に乗り換えると、クラブバ
スの出ている誉田(ほんだ)駅に8:15分に到着。バスの乗車時間が20分強。8:40分過ぎにはゴルフ場へ到着できる。
しかし平日の送迎バスはこの1本しかなく、スタート時間が早い場合はタクシーを利用するしか手がない。土日祝日なら東京駅発6:12分の総武線快速電車を利用し、誉田駅7:35分発のクラブバスに乗り換え8:00にゴルフ場に到着できるが、かなりの早起きを強いられる。
到着したクラブハウスには「2012年茂原北IC開通予定」とポスターが掲示してあった。開通すれば確かに便利になる。
しかし、確か1年ほど前に来場した際にも「2010年、圏央道に茂原北(仮称)ICが開通する予定です」と大書されたポスターがあったと記憶する。ズルズルと遅れているのだろうか?
クラブハウスの外観は、レンガを積み重ねたような落ち着いたデザインで、どっしりとした構え。内部も広々として格調の高さを感じる。
受付カウンター周辺には「生命の森リゾート」関連のほか「ゴルフレッスン」「ウオーキングゴルフ大会」「オープンコンペ」など様々なパンフレットや案内パネルが置かれ、建物の上質な雰囲気と賑やかな営業ぶりとが交じり合って、微妙な雰囲気を醸し出している。
受付に隣接したプロショップにはパターの試打スペースがあるほか、各種ゴルフ用品も充実。さらに地元で採れた野菜や果物などがスーパーの店頭風に並べられている。「おいしいお米あります」と書かれたのぼりも立つ。
担当スタッフさんに尋ねると「自宅へのお土産やコンペの賞品用に購入される方が多い」そうだ。
ロッカーは扉を青色で統一した細身のスチール製。数が多いのでゆったり利用できると思っていたら、とんでもなかった。
(シンプルなデザインのロッカールーム。全体の広さは十分なのだが・・・)
ほぼ同時刻にチェックインを済ませた客が同じ列のロッカーに集中し、通路はかなりの混雑。特定のスペースに客を集めた方がメンテナンス上は好都合なのかもしれないが、利用勝手は良くない。
せめて客の多い週末は利用者を大きく分散させ、ゆったりと使わせて欲しい。この日の混雑は、たまたまだったと思いたい。
トイレの個室(7室)は比較的広く、使いやすかった。洗面台には液体のハンドクリームを常備。コースに向かう通路沿いには高級感あるソファーが並び、ラウンジとして利用者も多いように感じられた。
(リゾート感覚のドライビングレンジ。遠くの山並みが綺麗で、開放感がある)
クラブハウス近くにあるドライビングレンジは2階建て。リゾート感覚あふれる白い屋根が印象的だ。全部で48席あり、距離も230ヤードと充実している。
前方に立てられたピンまでの距離が座席ごとに細かく表示されているので、アプローチ練習にはもってこいだ。ボールは線の入った練習場専用ボールだが、1カゴ30球で300円は良心的。
ただ、敷地がフラットではないため、打席によってはボールの落ち所が見えないことがある。
ドライビングレンジの近くには「ゲーリープレーヤー」という店名のゴルフショップがあり、ゴルフ関連商品を販売していた。打席脇には飲料の自動販売機も並んでいて、街中の本格的練習場と見間違うほど整った設備である。
別の場所にアプローチ練習場はあるが、バンカー練習場はない。軽くパター練習をして、いざコースへ。キャディマスター室にはグリーンの整備状況が
「刈り高4mm、8.7フィート」と表示されていた。速くはないが、遅くもない。アベレージゴルファーにはちょうどいい感じだ。
最初に回ったのは「つつじ」コース。ティグランドは3~4つ。レギュラーに相当する「グリーン」ティからだと全長3045ヤード。
「くすの木」コースなど他の2コースともほとんど似たような距離で、どこも短めだ。飛距離自慢にはちょっと物足りないかもしれない。
キャディさんも「真名コースは短いので、本格的な競技会には不向き。開催する時はゲーリープレーヤーコースの方を使います」という。
(距離が短い分、バンカーがたっぷりと配されていた。花道の狭いホールは難易度が高い)
(要所に配されたフェアウエーバンカー。バンカーショットが苦手な人には厳しいコース設定だ)
「短い分、180ヤードから230ヤードまでの間に必ずフェアウエーバンカーを設け、さらに谷越えや池越え、ドッグレッグなどもあって戦略性を高めています」とも。
(つつじコースの2番、谷(池)越えのホール。距離は短いが、隠れたワナも多い)
確かに出だしの1番ホールは広々としていたが、谷越えの2番ホール以降はガラリと景色が変わった。OBゾーンを示す白杭が目に付き始め、バンカーの数も増えてきた。グリーンの周りをバンカーがぐるりと囲み、花道のほとんどないショートホールもある。
「ボールを高く上げて、グリーンに上から落とす」――。そんなアイアンのテクニックがないと、ここではスコアがまとまらないかもしれない。
真名コースの一番の魅力は、日本庭園風の美しさにある。植栽は隅々まで手入れが行き届き、大小の池と太い立ち木が随所に美しい景観を作り出している。フェアウエーも丘陵地帯の割には総じてフラットで、打ちやすい。
多少荒っぽくても自然の景観をそのまま生かしたコースが良いか、箱庭的に作り込んだコースが良いかは判断の分かれるところ。
(太く、立派なくすの木に圧倒される。珍しい樹木も多く、キャディさんとの会話が弾んだ)
だが、このゴルフ場は既に30年以上の歴史を経ていることもあって、樹木は太く、高く、人工的であっても不自然な感じはあまりしなかった。特に看板の「くすの木」は一本一本が逞しく、美しい。
「前のオーナーが木が大好きで、いろいろな種類の木を植え、今では見事に育っています」とキャディさんも自慢げだ。良く見ると、目ぼしい木にはプレートが付けられ、樹木の名前が分かるように工夫されている。
「アンズ」「ツバキ」「シダレウメ」「ヤマモモ」「マテバシイ」「メタセコイヤ」・・。知らない名前も多かった。
プレー日が10月だったこともあり、足元にはドングリがいっぱい落ちていた。かわいらしいリスにも遭遇した。ティインググランド周辺には藤棚も多く、プレーヤーに四季の変化を楽しんでもらいたいという配慮を感じる。
午後に回ったこぶしコースの2番ホールには左右に桜の並木があった。満開の時はさぞ美しいに違いないと想像した。
困ったのが木々に張り巡らされている大量のクモの巣だった。「今年は猛暑のせいか、異常にクモが発生した」(キャディさん)という。
ボールを曲げて林に入ると、ボールを見つける前にクモの巣に引っかかる。極彩色の立派なクモで「女郎グモ」だそうだ。
男性スタッフ2人が細い竹を使って一生懸命に取り除き作業をしている姿を目撃した。黙々と頑張っていたが、取り切るのは容易ではないだろう。
もう一つ、ラウンド中に気づいた点がある。どのホールも「100ヤード」「150ヤード」の表示杭が、ホールの片側にしかないのだ。
2グリーン(高麗グリーンとベントグリーン)なので、通常は使用しているグリーンサイドのヤード表示を参考にプレーする。片側しかないというのは、いったいどういうことなのか?
キャディさんに確認したところ「(芝目の強い)高麗グリーンを嫌がるメンバーさんが多く、高麗は年に数回、特別な日にしか使っていない」のだそうだ。
つまり、通常はベントグリーンしか使用しないので、高麗グリーン側の表示杭はすべて撤去してしまったというわけだ。
同伴者は「もったいない。高麗グリーンだって面白いのに。軟弱な人が多いんだなぁ」とあきれていた。
そのままスルーで「くすの木」コースも回った。スタートホールに到着すると、ティグランド脇に3本の見慣れない鉄製の棒が腰と膝の高さほどにセッティングされている。準備運動をするための「ストレッチバー」だという。
使ってみたが、結構いい。ここが「日本エアロビクスセンター」を核にしたスポーツ施設の中のゴルフ場であることを改めて思い起こした。
(くすの木コースの方が池が多い。その分、美しい景観が随所に見られた)
(こんな風景を見ると、気持ちが和む)
「くすの木コース」は「つつじコース」よりも池がらみのホールが目立ち、それだけ景観の美しいホールも多いように思われた。
(池に沿って回る3番ロングホール。キャディさんが熱心に攻略法をアドバイスしてくれた)
そうした中で、3番のロングホールと7番のショートホールに挟まれた大きな池では、ある種の異様さを感じた。
池の周辺がグルッと青色のコンクリートで固められ、まるで市民プールのような雰囲気になっているのだ。
(池の淵をコンクリート製の青い帯がグルッと取り囲む。「まだ白い方が良いですよね」とキャディさん)
「こんな美しいホールなのに、何か変だと思いませんか」とキャディさんに尋ねると「私たちも変だと言っているんですけど」と苦笑い。デザインの好き嫌いは感覚の問題なので断定的なことはいえないが、この色には何か特別の理由があるに違いない。
(名物の7番、池越えのショートホール。藻らしきものが大量発生し、美しい景観を損ねていた)
また猛暑のためか、この湖面には藻らしきものが大量に浮かび、せっかくの景観を毀損してしまっていたのが残念だった。湖面から水が溢れ出し、ラフがぬかるんでいるところもあった。
この池の周辺はとりわけ景観が素晴らしいだけに、いかにも人工的な色のデザインと水質の管理状態が気になった。
担当してくれたキャディさんはボールの行方をしっかり確認するなど基本に忠実で、ホスピタリティにも優れていた。
まずスタート時に「4つのお願いがあります」と切り出し、素振り場所などの注意を喚起。ラウンドが始まると、フェアウエーを歩く時には必ず目土を心がけ、グリーン上でのアドバイスも的確だった。
「視力は1.2で普通ですよ」と言いながらもボールの行方はしっかり見届けていた。「動体視力が良いんだね」と同伴者も関心しきりだった。
また別の同伴者は「前回ここでプレーした時のキャディさんは動きが鈍かった。今日は良かった」と証言する。
プレーヤーがキャディさんを選べず、しかも常に同額のキャディフィを支払う以上、本来、基本動作レベルに個人差があってはいけないはずなのだが・・・。
(コース内の売店。今は無人で自販機が置かれていた)
コース内の茶店は無人。中に自動販売機が置かれていたが、無人とは知らず、肝心の現金を持ち合わせていなかった。
戸惑っていると、キャディさんが「私が一人二役で販売員もやりますから、欲しい商品を言ってください」と言って奥の冷蔵庫を開ける。
良く見ると、カウンターに小さな用紙が置いてあり、それに番号と氏名を書けば、キャディさん経由で好きな飲み物が買える仕組み。「そういうことだったのか」と合点がいった。
一旦休んで昼食。レストランは豪華で、重厚な造りだった。籐製の椅子と天井の細かい照明が印象に残る。窓の外にはテラス席が設けられ、特に白い椅子がリゾート感覚を演出。遠くの眺めもまずまずだった。
飲み物を注文すると、すぐに女性スタッフがワゴンにつまみ類を乗せて販売に回ってきた。このレストランの女性スタッフはみな笑顔で、接客態度が素晴らしい。普段から言葉遣いなどをしっかり教育されている感じだ。
予約の際に「昼食、ワンドリンク付き」プランを頼んでいたため、メニューの選択は4種類の中からと限定的。ワンドリンクで付いてきたビールはグラスサイズ。中ジョッキサイズに変更するには「プラス390円が必要」とのことだった。
(スタートホールにあるストレッチ用のポール。結構、便利だった)
昼食後、気合を入れ直して「こぶしコース」へ。全体的にフラットで景観が美しいのは他の2コースと同じ。3コースともグリーンを含め、芝のメンテナンスは良好。荒れているなという印象を抱く個所はほとんどなかった。
「こぶしコース」は3コースの中で最も日本エアロビックスセンターの施設に近い。このため木々の間から同センターの建物が見え、リゾートらしさを感じることがある。
(第2打地点で振り向くと、こんなリゾート風の景観も。関連施設がアクセントになっている)
「(ラウンド中に)後ろを振り向くと綺麗なホールが多いんですよ」とキャディさん。確かに7番ミドルホールなど、ティインググランドからは平凡に見えた景観が、振り向くと一変してリゾート風に見える所があった。
4番ホールのティインググランドで「エアロビックス」施設から女性の元気な掛け声が聞こえてきたのはご愛嬌。
(クラブハウスは周囲に溶け込み、落ち着いた佇まい)
夕方近く、さすがに疲れてクラブハウスに戻る。さっそく向かった浴室はコンパクトな設計。真ん中に楕円形の湯船があって、その周りが洗い場。パーティションはなく、シャワーが浴槽に入っている方にかからないかと用心しながら利用した。浴室から眺める外の景観は今ひとつ。
コンペルームは大小合わせて9室。バブル時代を思い出させるような内装で、結構、豪華だった。一番奥には和室の「特別室」まであり、これには驚いた。
そんなハード面だけでなく、ソフト面でも嬉しいサービスが数多くあった。専属プロによる「ゴルフレッスン」や「ベストボール
ペアマッチ」などのイベントが充実。誰でも参加できる「オープンコンペ」は毎月のように開催され、女性初心者のための「プチゴルフ&スイーツビュフェ」プ
ランも用意されている。こうしたプラン、工夫は有り難い。
20人以上集まれば「送迎バスサービスプラン」(往復料金1人2,500円)も利用できる。ただ、プレーのキャンセル料は1週間以内になると1人2,500円(土日祝日の場合)かかるので注意が必要だ。
クラブハウス内のレストランは、ゴルフをしない方でもパーティに利用でき、結婚式も行うことが可能。いろいろな意味で近隣の方には使い勝手が良く、魅力的なゴルフ場といえる。
次回は桜の花が咲く頃、ロッジなど周辺の宿泊施設をフルに活用して、「ゲーリープレーヤーコース」も回る“ゴルフ合宿”に挑戦してみたい。