2011年10月30日日曜日
クリアビューゴルフクラブ&ホテル=グリーンが手ごわい河川敷コース。「アクセスの良さ」と「ランチバイキング」が売り物
(典型的な河川敷ゴルフ場の景観)
(このコースでしばしば見られた光景。綺麗なのか、汚いのか微妙)
(左前方の池が気になる。遠くに気持を集中させたら、視界から消えた・・・)
(ホールが隣接。カート道路にはこんな標示も)
(ホテルの正面玄関。クラブハウスという感じは全くしない)
(ゴルフバッグ置き場はホテルを挟んで、コースの反対側に独立してあった)
名前が変わっている。ゴルフ場とホテルが一体になったリゾート的響きがある。だが住所は千葉県野田市。利根川の河川敷だ。リゾート地ではない。川 原の枯れススキが風になびく10月下旬の休日、ゴルフ仲間と一緒にクルマで出かけた。都心からでも50分足らず。名門「千葉カントリークラブ梅郷コース」 のすぐ側だ。不安と期待が高まる。
日常のありふれた光景が続く道を右折すると突然、目の前に8階建ての立派な建物が見えてきた。窓の形からして明らかにホテルの造り。玄関前には多くのクルマが整然と並ぶ。
「えっ、これがゴルフクラブなの?」。同伴者と顔を見合わせる。中に入っても雰囲気は同じだった。完全にホテルである。目に止まった左奥の受付へと進む。
(ホテルのエントランス。正面は宿泊者用の受付)
「ここはホテルの受付です。ゴルフの方は反対側にお回り下さい」と男性スタッフさん。確かにエントランスに案内板は出ていたが、初めての来場だと戸惑うレイアウトだ。
(トロフィーが並ぶゴルフ場らしい雰囲気とホテルらしいエレベーター=正面=が同居)
(ラウンジは広いが、豪華さはない)
(左側がゴルフ専用の受付。周辺には関連商品がたくさん並んでいた)
(受付の側に置かれた自動精算機。担当スタッフさんが丁寧に使い方を教えてくれた)
ゴルフ用品が窮屈そうに並んだショップの奥に、ゴルフ専用の受付があった。カジュアルな雰囲気。ホテルとはまるで様子が違う。どうしてこんな設計になったのか――。男性スタッフさんが理由を説明してくれた。
「このゴルフ場は以前、大利根チサンカントリークラブという名前でした。平成14年に運営会社の㈱地産が経営破たん。跡を継いだ米投資会社の判断で、隣接するこのホテル内にクラブハウスを移設、今の“ホテル兼クラブハウス”が誕生したのです」
ホテルの会議室などを改造して、ゴルフ専用の受付やプロショップを開設。レストランもホテル宿泊客と一緒に使えるよう模様替えし、名前もその時に「クリアビューゴルフクラブ&ホテル」に変更したのだという(現在はPGMグループが運営)。
「なるほど」と合点がいった。老朽化していた旧クラブハウスは取り壊し、再建のために綺麗なホテルに同居することにしたというわけだ。
経緯は分かった。さて ゴルフ準備を急ごうと気持を切り替え、階段を降りてロッカールームへ。
(ホテルの裏口に造られた「マスター室」。GPSゴルフナビゲーション用の端末を1台525円でレンタルしていた)
(ホテルの裏口からコースへ向かう)
だが、そこでまた奇妙な光景を見た。てっきり窓のない地階に降りるのかと思っていたら、陽光がたっぷりと差し込み、室内が明るい。外を見ると乗用カートが何台も並んでいる。「あれ、また1階だ」。
実はホテルが傾斜地に建てられていて、先ほどまで1階と信じ込んでいた正面入り口が、実は2階部分だったということにやっと気付く。
コースに出る前に、何とも珍しい体験をすることの多いゴルフ場である。
(9番ホール近くには「ベント」と「高麗」、2つの練習グリーンがあった)
(アプローチ練習場はないが、空きスペースは土手近くに十分あり、小技の練習ならいくらでもできる)
練習場(ドライビングレンジ)はない。その分、パター練習に時間を費やす。30分後、スタート時間が迫り、男性スタッフから大きな声で名前を呼ばれる。
(ホテルからは乗用カートでコースに向かう)
プレースタイルは「乗用カート利用のセルフプレー」のみ。使用したのは2011年3月に導入したという4人乗り新型車だった。
(スタート地点にあった案内所。スタッフさんが手際よく客をさばいていた)
(真っ直ぐに伸びる1番ホール)
(レギュラーティからでも軽く400ヤードを超える11番ミドルホール)
(乗用カートに積まれていたコースガイド。表面に全体図。裏面に「ホール別攻略図ガイド」)
(当日のピン位置を示す紙がハンドルに挟んであった)
(ティショットの狙い目地点に置かれたポール)
この日はINコース、10番ミドルホールからのスタート。左隣にOUTコースの3番ホールがほぼ平行して走る。2つ並んだティインググランド上に8人が集合。結構、賑やかだ。
横幅の狭い河川敷ではホールが並んでいることが多く、こんなシーンに時々、遭遇する。
(ホテル、土手、コースが平行して造られている)
(各ホールは意外に入り組んで配置されている)
(コース内で唯一、見かけた花壇。「美しい」と言うほどではなかった)
(大空を飛ぶパラグライダー。意外に騒音がうるさい)
(コース内には古木、巨木が多く、長い歴史を感じさてくれた)
(利根川の方向に目を向けると、殺風景な草むらが続いていた)
(「利根の川原の枯れすすき」「同じお前も枯れすすき」)
(ホール間に造られた溝。河川敷コースによく見られる光景)
(一部、傾斜のきついグリーンに手こずらされた)
(ラフには様々な雑草がいっぱい)
(ホールごとに距離の変化が大きく、使用クラブも多様に)
(距離感と方向性には常に注意が必要)
(2人用の乗用カートも走っていた)
コースは大半が真っ直ぐ。そして完璧にフラット。太い柳の木でセパレートされていることが多い。
所々で逞しく育ったユーカリの木に出合った。はがれやすく白っぽい樹皮が特徴。ユーカリの大木は、このコースの1つの「顔」でもある。
開場は1964年(昭和39年)11月。すでに47年が経過した。良く見ると、柳やユーカリ以外にも様々種類の樹木があり、開場当時、景観が単調にならないように工夫したことが理解できる。
今ではみな高く、太く育ち、歴史の重みを感じさせる。落葉樹もまだこの時季は葉が茂り、日本的な秋景色を楽しむことができた。
グリーンは2つ。芝は「ベント」と「高麗」に分かれ、ともに小さめ。「本日の使用グリーンは高麗」との看板を発見。同伴者が「高麗は苦手だなぁ」とつぶやく。
(グリーンの多くが「お碗型」。ボールがこぼれやすかった)
これも河川敷ゴルフ場の特性だが、砲台グリーンが多い。しかも、ここでは中央部分が高い“お椀型”が少なくない。
そんなホールでは、得てしてグリーン周辺が良く刈り込まれて、ボールがエッジで止まらず下まで転げ落ちてしまうことが多い。
高麗グリーン特有の芝目にも悩まされた。上りが重く、下りは意外に速い。アンジュレーションもある。「このコースはグリーンが難しい」というのが仲間4人の実感だった。
グリーンコンディションは河川敷コースとしては一般的なレベル。未使用の「ベントグリーン」の方がフワフワ感があって良好な状態に思えた。
グリーンの難しさは想定内だったが、他に河川敷ゴルフ場らしからぬハザードが2つあった。「バンカー」と「池」である。
(河川敷コースとは思えないような本格的なバンカーに驚く)
「本格的なバンカーがある。入れたら大変そう」。そんな話で、最初に盛り上がったのが14番のショートホール。グリーン周辺の景観が他のコースと違い、距離感にも迷う。
「右側のグリーン。レギュラーティから140ヤード。そんなにあるのかなぁ」と疑問を抱きながらティショット。2人が手前の深いバンカーにボールを入れた。
他のホールでも、しっかり造られたガードバンカーやフェアウエーバンカーが目に止まった。真剣にプレーしないとスコアがまとまらない。
コース設計は日本のゴルフ黎明期に活躍した春日井薫氏。「河川敷ゴルフ場といえども戦略性に富んだ一流コースにしたい」という志の高さが伝わってくる。
(コース内では、いたるところに池がある。中には「沼地」と呼んだ方がふさわしい場所も)
「池」も随所にあった。11番、12番のようにティインググランドからグリーン脇まで細く、長く続く池もあれば、ホールとホールの間に佇む池もある。
プレーヤーに圧迫感を抱かせる目障りな池。グリーン近くにポッカリ開いた池もある。
(コース脇にある大きな池。景観的にはほとんどプラスにならない)
残念なのは、そのほとんどが景観的にはあまりプラスに働いていないことだ。中には「美しい池」というより「泥沼」と呼んだ方がふさわしいものもある。
(中には比較的綺麗な池もある)
自然のままの状態を維持していると言えば聞こえは良いが、もう少し整備すればいいのに、と残念な気がした。それとも英国風リンクスのコースづくりを目指しているのだろうか。
(コース内にある“高床式”のトイレ。これなら水没の恐れもない)
コース内に置かれた人工物でも、他のコースとは違うものが2つあった。1つはトイレだ。
写真でご覧頂いているように、高床式の木造建築。男女別々に左右の階段を登って利用する。これだけの高さがあれば、洪水が襲ってきても水没する心配はない。
(グリーンまでの残り距離を示す表示板。板が薄く、横からでは数字が全く見えない)
もう一つがグリーンまでの残り距離を書いた表示板。100ヤード、150ヤード、200ヤード地点に立っているのだが、薄い板で作られているので、横からでは肝心の数字が見えない。これは不便だ。
「念のため」と思い、近くまで行って距離を確認する。余分な時間が掛かる。ラウンド中、早めの進行を促す乗用カートが巡回してきたが、プレーを急がせるよりも、表示板を改める方が効果的ではないかと、その時は思った。
先ほど、景観が単調にならないように多様な樹木が植えてあると記したが、その点を除けは、全体の景観は河川敷コースそのもので、特に美しさが記憶に残るようなホールはなかった。
関東平野の真ん中。天気は午前中が晴れ、午後は曇り。多少、霞んでいたこともあり、遠方の山々は見えず、利根川方面は殺風景にさえ感じた。
川の反対側に目を移しても、土手と柏市環境部の「北部クリーンセンター」の排気塔が目立つくらいで、やはり平凡な日常風景だった。
(珍しくドッグレッグした3番ミドルホール。レイアウトの案内板が立っていた)
(9番ショートは池越え。普通に打てば、なんてことのないホールのはずだが)
景観美はともかく、戦略性があり「強く印象に残ったホール」は5つあった。やや右ドッグレッグし、途中にクリークのある3番、ショートで200ヤード近い距離のある4番、池越えの9番、本格的なバンカーに感心した14番、グリーンの傾斜がきつかった18番などだ。
ゴルフ場激戦地の千葉県北部で50年近く生き残ってこられたのも、こうした個性的ホールがあればこそだろう。
フェアウエーのメンテナンスはあまり良いとはいえない。目土がなされていない個所が目に付くし、ラフの雑草は多種多様。ベアグランドもある。池周辺では足が「ズボッ」と泥の中に沈み込みそうで怖かった。
ただ、ある同伴者は「フェアウエーは思った以上に良好。他の河川敷コースよりはしっかり整備されている」と評価。もう一人は「(自然環境の厳しい)河川敷コースなので、最初から高望みしていなかった」と、最後まで不満は口にしなかった。
距離はバックティから「ベントグリーン」使用の場合で6,769ヤード、「高麗グリーン」の場合で6,652ヤード。レギュラーティからは同じく6,401ヤードと同6,286ヤード。
コースレートはレギュラーティからで「ベントグリーン」の場合が70.0。「高麗グリーン」の場合が69.7(バックティの場合はそれぞれ71.5、71.3)。
河川敷コースとしては高い数字だが、これは全長距離の長さよりも、前述したようにグリーン周りの難しさが大きな理由のように思われた。
コース以上に記憶に残ったのが、実はクラブハウスでの「ランチバイキング」だった。
(レストラン。真ん中のテーブルにバイキング用の料理が並ぶ)
レストランのほぼ中央に置かれたテーブルの上に、小鉢がたくさん並ぶ。和風惣菜と野菜サラダ。周辺には寿司と麺類用のカウンター。隣には「ドリンクバー」。別のテーブルには果物とショートケーキといった具合で、種類は豊富。
女性スタッフさんが「メニューは和洋中あり、毎週、替わります。今日は和ですね」と紹介。カレーを見つけたら「カレーも和食です」と屈託がない。
この昼食バイキングは「薄暮プレー」などを除き、大半のプランとセットになっており、別メニューを頼む客は皆無だった。
ただ、和風惣菜は揚げ物など一般的メニューなものが多く、贅沢という感じはしなかった。
好きな物を選べる点は嬉しいが、それだけに食べ過ぎには注意が必要。アルコール類は別料金。ビール(生中)は682円。
ホームページ(HP)に ある「昼食バイキング」を含む「カレンダー料金」(4バッグ、乗用カートのセルフプレー)は、ハイシーズンの平日が12,400円~12,900円、休日 が18,900円~19,900円。OFFシーズンの平日が9,900円~11,900円、休日が15,900円~18,900円。
900円という数字が目立つのは、何とか大台に乗せずに割安感を出そうという努力の表れと見ることも出来るし、「昼食バイキング」を付けることによって、河川敷ゴルフ場としては比較的高めの料金設定を実現させていると読み取ることも出来る。
きっと両面作戦なのだろうが、今どき低価格料金でプレーできるイメージの強い河川敷ゴルフ場で、ハイシーズンの休日(土曜日)とはいえ、2万円近い料金設定には度胸も必要だったに違いない。
なお、この「カレンダー料金」は月によって、週によって、あるいは日曜日と土曜日によっても細かく変動し、同じ時期でも上記の料金の範囲を超える場合がある。
さらに「早朝プレー」や「コンペパック(2組7人以上)」「宿泊パック」「レディースデー」など多様なプランがあるので、利用する際には電話で担当者に直接尋ねた方が間違いない。
(ロッカーは細身。扉の内側には大きめの鏡が付いていた)
リポートを施設関連に戻す。ロッカーは木目調で高級感があるが、やや細身なのが残念。ロッカールームに窓はなく、外の景色は見えない。「1階」のラウンジも普通の造りで、河川敷ゴルフ場に良く見られるパターン。
(そっけない感じの浴室。窓の外はブロックの塀)
ゴルフ客用の浴室も期待外れだった。スペースは広く確保されているが、内部には飾り気がなく、ホテル内の施設とは思えない寂しさ。
(明るく清潔感のある脱衣場。正面が浴室への入り口。やや狭く、開放感は乏しい)
窓の外側に小石は敷かれているものの、その外縁をコンクリートブロックの壁が取り囲み、閉塞感さえ漂う。さすがに脱衣場は清潔感があり、感じも良かったが・・・。
このホテルは企業の研修用等に重宝されているそうで、そもそも豪華さを誇るシティホテルとは前提条件が違う。またゴルフ場も河川敷にあり、接待需要等は想定しにくい。
厳しい経営環境や再建という条件を考えれば、ゴルフ客向けの設備に特別の投資は難しかったのかもしれない。
豪華さを期待するのではなく、仲間同士で「宿泊」し、「パーティー」を楽しみ、「気軽にラウンド」するなら、実質的ですごく都合の良いゴルフ場である。
嬉しいのはアクセスの良さだ。冒頭、「都心からでも(クルマで)50分足らず」と書いたが、電車でも便利だ。
秋葉原駅から「つくばエクスプレス」で「柏の葉キャンパス」駅まで約30分。同駅からクラブバスが3便出ていて、所要時間は15分ほど。
このバスはJR常磐線の柏駅始発で、柏の葉キャンパス駅を経由してゴルフ場に行くため、柏駅からでも利用が可能だ。プレー料金の設定には、このアクセスの良さも考慮されているはずだ。
ただ朝、ホテル前に並んでいたクルマを見ると、実際には比較的近場の方が気軽な気持で多数、来場しているように思えた。
そうした人の中には自宅でゴルフウエアに着替え、ロッカーを利用しないでそのままプレー。汗をかかない限り入浴も省略して帰宅する人もいるに違いない。
そう考えれば簡素な浴室にも納得がいく。「ロッカーご利用の場合は+315円」という料金表示を見て、勝手にそんな想像をしてしまった。
2011年10月16日日曜日
源氏山ゴルフクラブ=房総半島中央の丘陵地帯に展開する“古き良きゴルフ場”。不満残るドライビングレンジ
(6番ミドルホール。堂々とした丘陵コースだ)
(高い所から遠方を眺める。特に高い山は見えない)
(どっしりとした構えのクラブハウス。手前にバンカー練習場)
(スターティングテラスにあった「聖火ランナー」の彫像。男性スタッフさんに由来を尋ねたが、返事は「?」)
「源氏山ゴルフクラブ」と聞いて最初に思ったのは「なぜ、千葉県で源氏の名前が出てくるのか」ということだった。「源頼朝公が安房より北上して下 総国に進軍するに当たり、山に旗を掲げて兵を募ったので、その山を“源氏山”と呼ぶようになったのです」と受付のスタッフさん。開場は1977年(昭和 52年)。地名からして由緒ありそうなゴルフ場だ。
(10月にしては気温が上昇。芝の手入れには気が抜けない)
ラウンドしたのは10月中旬の休日、ベストシーズンだ。本日はアウトコースからのスタート。気合を入れて1番ミドルホールのティインググランドへと向かう。
「乗用カート利用のセルフプレー」を選択したので、キャディさんはいない。じっと前方を眺め、コース戦略を練る。
「右側が山、左側は谷」の丘陵コース。しかし、フェアウエーは思った以上に広く平坦で、朝一のプレッシャーは少ない。右にドッグレッグし、グリーンが見えないのが不安材料。
バックティから431ヤード、レギュラーティから399ヤードと距離は十分。この日はレギュラーティからプレーしたが、ティマークがフロントティ(357ヤード)近くに置かれていたので、実際の距離は表示よりも短い。
フェアウエーを包み込むように濃い緑の林が続き、景観的には「地味な印象」を受ける。230ヤード先に目印となる小さなフラッグがあり、まずはそれを目がけてティショット。同伴者共々、無難にスタートを切る。
(乗用カートに搭載された「コースガイド」。あまり詳しくないが、イラストが雰囲気を出していた)
2打目地点からはダラダラとした上り傾斜。グリーン面が良く見えないので乗用カートに戻り、搭載されている「コース案内図」などを改めてチェック。
グリーン手前に3つのバンカーが口を開けている。大き目のクラブを握る。
グリーンはやや遅め。朝、キャディマスター室近くにいた男性スタッフさんに速さを尋ねたところ「測っていません。8フィートから9フィートでしょう」という大雑把な返事。
朝方まで降雨だったこともあり、感覚としては8フィートもないくらいではないかと思った。
(OUTコースの2番ミドルホール。思わぬ打ち下ろしに一瞬、緊張)
2番ホールは様相がガラリと変わった。大きな打ち下ろしで始まるミドルホールで、思わぬ起伏に「おぉ、これは大変だ」。
「OUTコースは起伏が緩やか。INコースの方がスリリング」(同スタッフさん)と聞いていただけに、予想外の展開に戸惑う。
動揺していたら「丘陵コースなので、この位のアップダウンは普通ですよ」と同伴の会員氏に軽くたしなめられた。
確かに2打目以降は下り勾配も緩やかに。むしろグリーン周辺のガードバンカーの方が厄介で、飛ばし屋の同伴者もグリーン周りで苦戦を強いられていた。
実はこの1番ホールと2番ホールにコース全体の特徴が良くに表れていた。「丘陵コースらしい大小の起伏」「しっかり造られたバンカー」、それに「砲台グリーン」である。
全長距離はバックティから6,577ヤード、レギュラーティから6,173ヤード。一部500ヤードを超すロングホールや200ヤード近いショートホールもあるが、全体としてはやはり短め。
ここは距離よりも起伏の面白さが印象に残るコース。それだけにショットの正確性と距離感の勝負になる。
特にピンの根元が見えない砲台グリーンでは、アプローチの距離感が何よりも重要。残り距離を読み間違えたり、ミスショットすれば、すぐ3パットや厳しいバンカーの餌食になる。
典型は6番ホールだった。323ヤードしかない短いミドルなのだが、グリーンに向かって長い上り斜面が続く。2打目地点からは旗の天辺しか見えない。
(当日のピン位置はハンドルに付けられた印刷物でチェック)
乗用カートのハンドルに「ピンポジション」を示す図が付いているので、面倒でも小まめに確認するしかない。
(15番ロングホール。ティショットの狙い目は左バンカーの右サイド)
(15番ホールを終えて振り返る。グリーンに向かって大きく打ち上げる難ホールだった)
ホームページ(HP)で「オーガスタ風の地形と風景」と書かれていた15番ロングホールも、やはりグリーン手前が急激な上りで、グリーン面が全く見えない。
アプローチショットを打つ前にグリーンに上って、ピンまでの距離を実感した方がいい。「この手間を省くと、それだけで1打損する」と反省。
グリーンやフェアウエーのメンテナンスは比較的良好。気になった遅めのグリーン(ベント)は天候の影響もあるので、別の日ならもっと速いのかも知れない。
1番、2番ホールでは感じなかったが、ラウンドを重ねるにつれて、新たなコースの特徴も見えてきた。
(OUTコース5番ミドルホール。左サイドの一本の木が刺激的)
1つが「コース設計」の妙だ。例えば5番ホールはティインググランドから見て左サイドに1本の高い木が立つ。「あの木に当てろ」と言われればまず当たりそうもないのに、当たる。
右サイドから林がせり出してきているので打ち出しが狭く、どうしても左を向きがちになるせいだ。
そう考えると“良く出来たホール”が多いのに気づく。総距離が短いだけに、簡単に攻略できないよう様々なトラップが用意されているのだ。
もう一つが「景観」面での工夫だ。1番ホールで「地味な印象」と記したが、一帯は丘陵地で、周囲は木々ばかり。それも松、杉、竹、楠・・・と一般的なものがほとんど。
桜木はこの季節、まだ眠ったままで、紅葉もこれから。景観はどうしても華やかさに欠ける。
パンフレットに「西方に富士山を望み」と書かれていたので探してみたが、ラウンド中は発見できず。よほどの好条件が揃わないと難しそうだ。
(8番ミドルホール=402ヤード=では目の前に池。「前4」の特設ティは残り170ヤード付近に置かれていた)
そんな景観上の弱点を補うように設けられているのが「池」だった。最初に姿を見せたのが8番ミドルホール。ティインググランド近くに造られているので、ハザードというよりは単調になりがちな景観に刺激を与えるのが目的のように感じられた。
(12番ロングホール。右サイドにある噴水の出る池。このコースの「顔」の一つだ)
池はINコースの方が多く、12番ロングホールはフェアウエー右サイドに比較的大きな池が登場する。噴水が出ていることから、これも主として景観を美しく見せるための工夫だろう。
(池が配された17番ショートホール。グリーン上からティインググランドを振り返る)
17番ショートホールの池はそれまでとは違い、明らかに難度を高めるためのハザードだった。グリーン近くに配されているので、特に左グリーンを使う場合は正確な方向性と距離感が必須となる。
ティインググランドに立った時はさほど感じなかったが、この17番のグリーン上で後ろを振り返ってみると、池と林と芝が輝いて見えた。
夕日だ。ちょうど太陽がホール全体を照らし、秋の自然美を浮き上がらせている。
(INコースの終盤では、夕日が目に入ってボールが見にくいホールがあった)
ただ、同伴者の1人は「15番や17番は(プレー中、正面に夕日を見ることになるので)眩しくて、前が全然見えない」と不満を漏らしていた。「そもそもコース設計に問題がある」とも。
景観の美しさはOUT、INとも最終ホールが際立っていた。「利用者に好印象を持ってプレーを終わって貰いたい」という設計者の狙いが伝わってくる。
(9番ホールはクラブハウスに向かって上り斜面が続く。三角形の屋根が印象的)
9番は長い上り傾斜の続くロングホール。グリーンに近づくにつれ、“頂上”にあるクラブハウスが大きく迫ってくる。このクラブハウス、横から見ると屋根の三角形が意外にかわいらしく、なかなかチャーミングだ。
18番ミドルホールは、フィナーレに相応しい演出がたっぷりと施されていた。
まずフェアウエー左サイドに立ち木が数本。それを過ぎると一転、下り斜面。先には小石を敷き詰めたクリークが走り、最後、グリーン周辺には深いバンカーが並ぶ。正面に美しいクラブハウス――。用意周到。なかなか「絵になるホール」である。
こうみると、最初は地味に感じたコースも意外に個性的で、正統派コースだったことに気付く。
(現在は「乗用カート利用のセルフプレー」が中心)
(ティインググランドは一部、荒れ気味の所もあった)
(8番ホール左サイドには大きな防球ネット。打ちっ放しの練習場が近くにあるためだ)
(アゴのしっかりあるバンカーが多かった)
(打ち下ろしの10番ミドルホール。豪快なショットが期待される。右サイドは「1ペナ」)
(11番ミドルホールは砲台グリーンが特徴。手前のバンカーには要注意だ)
(自然は十分にある)
(フェアウエーのメンテナンスは比較的良好だった)
(午後は強風に悩まされた)
(ティインググランドもしっかり、大きく造られていた)
(修理地を示す白線。かなり細かく書いてあった)
(視界に高圧線や鉄塔がなく、美しい樹林が楽しめる)
(多くのバンカーに囲まれいるグリーン。「バンカーは得意なんだ」と自分に言い聞かせて頑張る)
(13番ミドルホール。グリーン奥に立っていた、気になる木)
(「茶店」はOUT、INにそれぞれ1ヶ所ずつ)
(無人でコンパクトな設計)
(14番ショートホールにはグラスバンカーが待ち構えていた)
(大きな傾斜と微妙なうねり。普段から斜面でのショットをしっかり練習しておきたい)
(成田国際空港へ向かう飛行機が頻繁に上空を通る。高度が高いので、騒音は気にならない)
(見栄えはあまり良くないが、冷水が飲める。夏場は有り難い)
(桜が満開になったシーンを想像。春にも来場してみたい)
(グリーンは正面のクラブハウス手前。小石を敷きしめたクリークが曲者)
開場は今から34年前の1977年。王貞治選手がホームランの世界記録を達成、ピンクレディーが大活躍した年だ。ゴルフ界では「三菱ギャラントーナメント」がスタート、ゴルフブームが一段と盛り上がる。
当時、ゴルフ場は全国で年間100ヵ所近く造られ、大型重機の導入で強引なゴルフ場開発も目立ち始めていた。
そうした時代背景を考えると、「源氏山ゴルフクラブ」もブームに乗った面はあるのだろう。
だが、コース設計に「小山ゴルフクラブ」や「戸塚カントリー倶楽部(東コース)」などを手掛けた名設計家、間野貞吉氏を起用した事業主(塚本總業)の判断には、大きな意味があった。
(2つのグリーンの間に本格的なバンカーがある。日本の歴史ある名門コースでしばしば見られる設計)
(等間隔に並んだ樹木。いかにも人工的だが、長い年月を経て不自然な感じは消えていた)
(カート道路沿いに並んだ樹木。歴史を感じる)
当時主流だった2グリーン、地形を生かした様々なうねり、傾斜、要所に配されたバンカー、砲台グリーンなどの特徴に、今では太く育った樹木が風格を添えて、古き良き日本のゴルフ場の趣を現在に伝えている。
ゴルフ場設計者の役割は大きい。同時期に乱開発されたゴルフ場の中で、バブル崩壊後に経営破たん、事業主が代ったゴルフ場は枚挙に暇がない。優れたコース設計は、やはりゴルフ場の命である。
では、源氏山ゴルフクラブの場合、コース以外の「施設」や「アクセス」、「料金」「サービス」面はどうだろうか。最近の利用者はコースが良いだけでは満足しないのも事実である。
まず「施設」面から。クラブハウスの外観は18番ホールの写真でご覧頂いた通りオーソドックスな造りで、コースに面した長い窓が印象的。
(ゆったりした感じのエントランス。受付の女性スタッフさんは丁寧に対応してくれた)
(洗面所はコンパクトだが清潔で問題なし)
1階のエントランスは、豪華さや高級感、文化性こそあまり感じないが、空間は広く、ゆとりがある。左サイドに受付。右手奥にロッカールームやトイレ、浴室。
(ロッカー間に椅子はなく、下部にある台に腰掛ける。台の中にはスリッパが入っていた)
ロッカールームに向かう通路の途中に「キー ステーション」。貴重品ボックスは静脈認証方式。
(広くて重厚感のあるラウンジ。入り口近くには立派な胸像と水槽が置かれていた)
(レストラン。天井はやや低めだが、外光が入って明るい)
(レストランからは正面に18番ホールが見える。外の景色は綺麗だ)
小さな階段を上った左手奥にラウンジとレストラン。共にゆったりとした造りで感じがいい。ラウンジには「重厚感」、レストランには「透明感」があった。
空間を贅沢に使った設計はキャパシティの確保と同時に、当時、まだ旺盛だった接待需要を意識したものに違いない。
半面、浴室は比較的小ぶりで、薄暗い。浴槽、座椅子、桶などに木が多用され、どこか山の中の古い温泉を思わせる佇まい。窓外には竹の柵がめぐらされていて、遠景は楽しめない。
(脱衣場。窓の外には竹で作った塀。右側のドアが浴室への入り口)
脱衣場もコンパクトな造り。大きなカゴに中にタオルが小さく丸めて並べられていたのが目に留まった。
トイレは個室が5つ(うち和式が1つ)。朝のラッシュ時にこれで足りるだろうかと心配になる。
(かなり変則的な造りのドライビングレンジ。朝方までの雨による水溜りが残っていた)
ドライビングレンジはお粗末だった。クラブハウス脇の山の斜面を「練習場」の案内板に従って下る。滑り止めのマットが敷かれた長い斜面と階段(全部で93段)が続く。
現れたドライビングレンジの打席は山の一部を削って整地したような造り。8打席と4打席に分かれ、さらに目の前の一段低い場所にもう3打席。
後ろからボールが飛んできても大丈夫なように、この3打席は屋根とネットでガードされている。それでも屋根はボールが当って傷つき、痛々しい姿。
丘陵地帯で適地を確保しにくいことは分かるが、もう少し“普通の練習場”が造れなかったのかと惜しまれる。
足元のマットもボロボロだった。相当に使い込んだもので、中央部分が完全に磨り減っている。ボールも線の入った練習専用の中古品。30球で315円。
おまけに「8:30分以降はドライバー禁止」だ。正面の林までは200ヤードほどあるのだが、その先に8番ホールがあり、練習ボールがプレーヤーに当る恐れがあるためだという。
(スターティングテラス正面のパター練習場。練習場にしては傾斜がきつく、本番に向けて自信より不安が高まった)
何度もこのゴルフ場に来ている同伴者は、ドライビングレンジには姿を現さず、バンカー練習とパター練習に励んでいた。
2番目の「アクセス」は東京からの場合、「遠くもなし、近くもなし」といったところだ。
(JR内房線五井駅には周辺ゴルフ場に向かうクラブバスが10台以上並び、目的のバスを探し出すのが一仕事)
この日は東京駅発7:15分のJR特急「わかしお1号」(安房鴨川行)に乗車。途中、蘇我駅で内房線に乗り換え、五井駅に8:06分に到着。8:20分発のクラブバスに乗って24分。8:44分にゴルフ場に到着した。
東京駅からの所要時間は約1時間半。首都圏ではこの位の移動時間は珍しくない。料金は特急料金(自由席利用)込みで片道1,450円。
クラブバスは朝2便(8:20分と9:20分)、夕方2便(16:15分と17:15分)。注意しなければならないのは、クラブバスの運行が土日祝日に限定されていることだ。タクシー利用だと片道約4000円の出費を強いられる。
仲間3人はクルマで来場した。都心から高速館山自動車道市原ICまで約1時間。同ICからゴルフ場まで20分ちょっとだったので、所要時間は電車の場合と似た様なものだ。
横浜方面からなら「東京湾アクアライン高速バス」を利用して五井駅まで来る手もある(料金は片道1,600円)。ただし、8:20分発のクラブバスに乗るには横浜駅を7:05分の高速バスで出発しなければならず、ちょっと時間が掛かる。
3番目の「料金」体系(ビジターの場合)はかなり複雑だった。「セルフプレー」と「キャディ付プレー」の選択制のため、料金体系も2通り。「キャディ付」の方が3,150円高い。
同じ休日でも「土曜日」と「日曜休日」ではプレー料金が異なる。差額は月によって違い、概ね土曜日の方が1,000円から2,000円高い。
平日料金にはA、B、2つのプランがある。「Aプラン」は昼食とドリンクバー付き。「Bプラン」は限定昼食付だ。
「限定昼食」というのは「選べるメニューが数品目に限られている」(女性スタッフさん)からだという。
時季によってもきめ細かく変動し、例えば「土曜日にセルフプレー」を希望した場合、10月なら18,000円、11月は20,000円で、12月には再び18,000円に戻るといった具合。
さらに季節(月)によって変わるが、「平日限定 早起きプラン(7時台のスタート)」や60歳以上の方が入ると適用される「平日限定 シニア優待プラン」などの特別プランもある。
目安とすれば、「セルフプレー」で休日が18,000円から20,000円(昼食代別)。平日が9100円から9,800円。この平日料金には「限定昼食」代が含まれているため、実質的には8,000円前後と考えて良いだろう。
休日と平日とでかなりの差があり、平日料金には割安感がある。ちなみに、以前の料金体系を見ると、「秋季(10月~11月)」の場合で「平日13,000円、土曜日22,000円、日祭日20,000円」という料金体系だった。
最後の「サービス」面はどうだろう。受付のスタッフさんは面倒な質問にも丁寧に答えてくれ、ホスピタリティの高さを感じた。
例えば「今日はメンバーさんと一緒ですが、次回はゲスト組だけでプレーできますか」。
「今回、一度ご利用になられているので、電話で申し込まれる際に『利用したことがある』とおっしゃっていただければ、紹介なしでもご利用できます」と、にこやかに返答。
「その時はこの番号を言ってください」と7桁の数字を書いたメモを手渡してくれた。
ネット情報を検索すると「従業員の皆さんは、明るく礼儀正しい方ばかり」
などの書き込みが見られた。同様の感想を持った人が他にも多いようだ。
同伴者のひとりは無料で貸し出してくれる「試打クラブ」を利用していた。レンタルクラブは一式で2,100円(ブランドは「XEIO」)。
なお「コンペパック」の利用条件は、HPには「3組11人以上でお引き受けします」と記載されているが、最近は「2組7人以上」に条件が緩和されているので、覚えておきたい。
昼食も大切な要素だ。女性スタッフが「お薦めです」と言ったのは「源氏山名物のまぐろ漬丼」(1,575円)。メニューは季節によって変わるが、和食と洋食が中心で、選べる種類は多い。ビール(生中)は630円。
ちなみに朝食は、和定食・洋定食が735円、たぬきうどん・そばが525円、トーストが210円、モーニングコーヒーが180円(通常は315円)。
コンペ用のパーティ料理も選択肢が広く、全体に飲食部門には力を入れているように思えた。
ラウンドした日から、早くも1週間が経過した。
「(房総は冬でも暖かいので)年末に割安な平日を利用して、また行こうか」と今、仲間同士で話し合っている。
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