2012年2月19日日曜日
勝浦東急ゴルフコース=南房総の大型リゾート施設。美しく本格的なコースだが、海がほとんど見えないのは期待外れ
(クラブハウス周辺では「パームツリー」が南国ムードを演出)
(ハザードとして立つパームツリー。太くて立派なものが目立った)
「真冬にゴルフするなら絶対、南房総がいい」――。ゴルフ仲間と意気投合。2月中旬、勝浦東急ゴルフコースでプレーすることにした。前週末に今 シーズン最強の寒波が到来。東京でも雪が舞った。念のため朝、ゴルフ場に電話すると、「まったく問題ありません」と嬉しい返事。暖かい気候と好スコアに夢 を膨らませ、日曜日の朝、勝浦駅に降り立った。
今回は東京駅7:15分発のJR外房線「わかしお1号(安房鴨川行)」を利用した。五井や茂原方面のゴルフ場に行く際、しばしば乗っている特急電車だ。
勝浦駅到着8:46分。1時間半の小旅行。抱いていたイメージより時間距離は短い。8:55分発のクラブバス「東急タウンバス」で移動。ゴルフ場に着いたのは9:15分だった。
(「宿泊パック」で利用するホテル「東急ハーヴェストクラブ勝浦」)
(全室オーシャンビューだが、ロビーにはカジュアルな雰囲気も漂う)
10時近いスタート時間だったので、慌てる必要はない。片道乗車賃(自由席)3,190円を考えなければ、東京からでも何とか日帰り行動圏といえる立地である。
クルマを利用、東京湾アクアライン経由で来場した同伴者は「(高速道路の)木更津北ICを降りてからが長く、2時間半かかった」とやや疲れた表情でゴルフ場に現れた。
(「東急リゾートタウン勝浦」内に造られたコース。マリンレジャーと海の幸も楽しめる)
(コース周辺には別荘が立ち並ぶ)
千葉県の南房総に位置し、海に面した勝浦市は別荘の多い人気リゾート地。太平洋を望む高台にあるゴルフ場は「東急リゾートタウン勝浦」(東急グループ運営)の中でも中核を占める大型施設だ。
開場は1977年(昭和52年)7月。設計は「日本ゴルフコース設計者協会」の副理事長を務めた宮澤長平氏。「東急セブンハンドレッドクラブ」(千葉県)など東急グループのゴルフ場を数多く手掛けている。
(スターティングテラス周辺にはリゾート気分が漂う)
(乗用カートに大きな時計が付いていた。これは珍しい。スロープレーが多いのだろうか)
(コースレイアウト図の説明は比較的詳しかった)
軽く練習を済ませ、乗用カートに乗ってOUTコースの1番ホールへと向かう。高級イメージのある東急リゾートコースだが、キャディはいない。全てセルフプレー。
セルフという言葉に「あれっ」と思うと同時に「高級感とカジュアル感の微妙なバランス」がこのゴルフ場の特徴かと直感する。
(スタートのOUTコース1番ミドルホール。パームツリー1本で印象が大きく変わる)
ティインググランドに立ち、最初に目に飛び込んできたのがフェアウエー左サイドに立つ大きなパームツリー(やしの木)だった。
この木はクラブハウス周辺にも多数植えられ、南国ムードを演出していたが、コース内でもまさにシンボルとして君臨している。
「あの木さえなければ、何てことのない平凡なホールなのに、1本あるだけで随分、印象が違うものですね」と同伴者さん。
(パームツリーを配したホールが次々に出てくる)
同じパームツリーは3番や5番、6番、9番、12番、17番の各ホールでも登場した。
10番や13番などフェアウエー上でなく、ティインググランド周辺に植えられている分まで含めれば、2ホールに1本は姿を見せる勘定だ。
このゴルフ場は丘陵地帯にある割に平坦で横幅も広い。周囲は似た感じの小高い山ばかり。そんな変化に乏しい条件の中で、この木の存在がコースの難易度を高め、景観を引き締めている。やはり「顔」である。
(紅梅が綺麗。やはり暖かい)
(4番ロングホール。太平洋が望める貴重な景観。手前に池。このコースの売り物のシーンだ)
「海が見えないなぁ」とぼやいていたら、4番ホールのティインググランドで、初めて太平洋を見ることができた。でも遠い。はるか彼方に水平線が見える程度だ。
来場途中、クラブバスの車窓から美しい勝浦湾を眺め、白波と海岸美にうっとりとして来ただけに、この距離の遠さは残念だった。
6番ホールのグリーン上でも遠方に海が見えたが、感動するほどではなかった。「勝浦のゴルフ場=シーサイド」ではないのだ。
(避雷小屋。窓からの眺めは良かった)
(グリーンまでの残り距離を示すフラッグ。分かりやすいが、カジュアル感もある)
(中にはバンカーにしっかりガードされたグリーンも)
(丘陵地に造られているが、アップダウンは少なく、回りやすい)
(5番ミドルホール。パームツリーがないと普通の丘陵コース)
(メンテナンスは概ね良好。温暖な気候がありがたい)
(6番ホールのグリーン近くでまた、海が見えた。かなり離れていて、ちょっと残念)
海景色の代わりにコースを美しく、面白くさせていたのは「池」だった。いかにも人工的な造りの池が多いが、どれも巧みに、効果的に配されている。
(7番ミドルホールはハンディキャップ「1」。第2打で左サイドの池を越える名物ホールだ)
象徴は7番ホールだ。左サイドに突然、大き目の池が現れる。コースは途中で左にドッグレッグており、第2打がその池越えとなる。
(池の縁は木で綺麗に縁取られていた)
このホールではフェアウエーに大小のアンジュレーションがあり、池の重圧と合わせ神経を使うショットを強いられる。
近くに置かれた看板に目をやると「第1打OBの場合は前方の特設ティからプレーイング4にて、2打目の場合はプレーイング5、3打目の場合はプレーイング6」と記されている。
「OBが出やすいんだね」と同伴者さんが冷静に解説。いや、人ごとではなかった。直後に“OBの競演”。2人ともぶ然とせざるを得なかったのだから。
橋を渡ると、100ヤード手前から上り勾配の続く砲台グリーンが待っていた。ベント芝の2グリーン。右か左かによって残り距離がかなり違ってくる。ハンディキャップ「1」に相応しい印象的なホールである。
(8番ホールのグリーンからは7番ホールの橋が良く見えた。美しい光景)
(INコースは池が多く、絵になるシーンが多かった)
「池」は午後に回ったINコースでさらに数を増した。何と9ホール中、5ホールが池がらみである。
(池越え、打ち下ろしの11番ミドルホール。左奥にホテルが見える)
(やや右ドッグレッグした13番ミドルホール。池がプレッシャーを掛ける)
例えば、13番ミドルホールは大きな池を半周するレイアウトで、景観的にも戦略的にも刺激が強い。この日は「海水」でなく、「真水」にボールを2つも入れてしまった。
「パームツリー」「池」と並びもう一つ、コースの顔になっていたのが「老木」だった。開場から約35年が経過し、多くの木に年季が入ってきた。
(INコース10番。低いボールで木の間を抜ければグリーン近くまで届く。「さあ、どうする」)
10番ロングホールではフェアウエーに立つ太い樹木の手前にボールが止まり、どう打つか、悩ましい判断を迫られた。
老木はコース脇など随所に立つ。必ずしもハザードではないが、コースに落ち着きと重厚感を醸し出すので、見ていて嬉しくなる。
ラウンドの前半は正直、池のプレッシャーさえ克服すれば、そう難しくないコースと感じていた。
(フラットで、花道の使えるホールが多い)
多くのホールが予想以上に平坦で、フェアウエーも広い。無理攻めさえしなければ、バンカーを避けながら花道から寄せられる。
グリーンも一部、2段になった個所があるものの、全体としては素直な造りでコンディションも良好。
キャディマスター室近くのタテ看板に「グリーン刈高3.2㎜、標準速度9.5ft(280㎝)、コンパクション(硬さ)11」と表示されていた。実際には9.5フィートまでの速さはなく、もう少し遅いと感じていた。
にもかかわらず、上がってみるとスコアはいつもとあまり変わらなかった。プレー終了後、クラブを拭いてくれていた男性スタッフさんに「何ででしょう」と言葉を掛けてみた。
「曲がっているホールが多いからですよ」。意外な返事に驚いた。振り返ってみると、確かにドッグレッグしたホールが多い。
苦戦した4番、7番、10番、13番、18番。みんなドッグレッグホールだ。中でも最後の18番で大タタキしたのがスコアに響いた。
この18番ホールには珍しくアップダウンがあり、ドッグレッグした林の先の様子が分かりにくい。不安を抱えたまま漠然とショットし、ミスの連鎖反応を起こしてしまった。
全長距離はバックティから6,615ヤード、レギュラーティから6,240ヤード。短目ながら、「コースレート」はバックティで70.9、レギュラーティで69.2。改めて数字を見ると、本格的なコースであることが分かる。
ここで好スコアを出すには何度かプレーし、レイアウトに慣れることが必要かもしれない。
(高圧線の鉄塔が、せっかくの美景の邪魔になる)
(コースの表示板はちょっとお洒落)
(大半のバンカーはアゴが低く、脱出しやすかった)
(太く逞しい木が多くあるのは意外だった)
(奇妙な形をした立ち木。コース内でしばしば目撃した)
(17番ミドルホール。左サイドに高いパームツリー。「とにかくセンター狙いで」と決断)
(春を待つ桜。1ヵ月後には綺麗に咲きそろいそうだ)
なお、ホームページ(HP)を見ると、バックティからプレーするには「4人の合計ハンディキャップが100以内(事前申告)」でなければならないと書かれている。
が、キャディマスター室の側にいた男性スタッフさんは、「ハンディキャップ制限は特にありません。前の組と空き過ぎないようにお願いします」と鷹揚な説明だった。100以内という条件は緩いし、運用も厳格にはしていないようだ。この辺はリゾートコース。
ラウンドしてみて気づいた点を他に3つ紹介したい。
(OUTコースの売店。無人で自販機が並んでいた)
(INコースの売店。立派な外観だが、中は無人でガランとしていた)
1つは「売店」。OUT、INコースとも外観はしっかり出来ているのに中は無人で、自販機が並べられているだけ。経費削減の大波をヒシヒシと感じる。
(「青200ヤード」「白150ヤード」「赤100ヤード」。乗用カートのガラスにフラッグの案内が貼られていた)
2つ目がコース上に立てられた小さな旗。青、白、赤と色分けされ、グリーンセンターまでの距離が200Y、150Y、100Yと表示されている。
分かりやすいが、小旗は重厚感に欠け、何かゲームをしているような軽い感覚を覚える。
(ティインググランドに「打込事故多発」の注意看板。同様の看板を何度か目にした)
(「右側 隣グリーン近し 打球注意!」の看板。防球ネットを設けた方が良いのでは)
3つ目が「注意看板」の多さだ。「打球事故防止のため隣ホールへの打球にはフォアー!のかけ声を」「打込事故多発」「隣ホールからの飛球にご注意下さい」「右側グリーン近し。打球注意」といった具合。
コース内には防球ネットも多く設けられているので、念には念を入れての呼びかけなのだろうか。それとも防球ネットがまだまだ足りないということなのだろうか。
総敷地面積は72万㎡。池を多く配したことで一部、ホール間が窮屈になっているのは事実のようだ。
(鳥かご練習場。年配のご夫婦が熱心に練習していた)
窮屈と言えば、練習場も狭かった。リゾートコースらしからぬ「鳥かご」で、バンカーやアプローチの練習場はない。
「鳥かご」は13打席(うち1打席は左利き用)、前方のネットまでは約50ヤード。ボールは30球315円。クラブハウスから歩いて3分近くかかる。
(パッティング練習場は2面)
練習ボールの自販機も老朽化が目立ち、リゾートコースらしい高級感や優雅さは皆無。その分、パター練習場はしっかり整備され利用者も多かった。
(2階のレストラン。斜めの天井が印象)
練習場とともに強く記憶に残ったのがクラブハウス2階にあるレストランだった。まず、大きな傾斜の付いた天井のデザインが目を引く。
窓の外はテラスと駐車場。遠くに太平洋が望めるが、コース同様、かなり離れていて見惚れるようなレベルではない。
地元で水揚げされた新鮮な魚介類が売り物と思いつつ、一応「ランチのお薦めは何ですか」と尋ねてみた。女性スタッフさんは迷わず「勝浦坦々麺です」。
「坦々麺?」。怪訝そうな顔をしていると、「勝浦はB級グルメで有名な坦々麺の町なんです。市内に40軒近くあり、昔、海女さんが冷えた体を温めるために食べ始めたそうです」と丁寧に教えてくれた。
結局、4人全員が注文。ラー油とニラがたくさん入った独特の味だ。ただし、シュウマイ2個付きとはいえ、1,470円というのは立派な値段だ。
後日、市内の有力店数店に電話で聞いてみたが、いずれも1杯700円前後で、「その値段は高い」との辛口コメントだった。
他のメニューでは、最も安いものがチキンカツサンドの1,365円、最も高いのが鰻重の2,310円。定番のカツカレーは1,785円、天婦羅うどん・そばが1,575円という水準。
選べるメニューが13種類と多いのはいいが、全般に値段はやや高め。ビール(生中)は767円。ちなみに朝食は、とん汁朝食(525円)から和朝食(1,260円)まで6種類。
また、女性スタッフ陣のキビキビした動きと男性スタッフさんの丁寧な物腰には好感が持てた。ビンビールを注文したら、一杯目を注いでくれた。
ホスピタリティは他の部署のスタッフさんも概ね良好だった。リゾート地のゴルフ場だけに、この辺は良く教育されていると感じた。
(浴室は窓が大きく、外の光が十分に入ってきた)
(脱衣場はコンパクトながら明るく快適)
浴室は明るく、快適だった。側面の窓が大きく開放感がある。外は玉石を敷いた日本庭園風のスペース。周囲に良く手入れされた植栽。その先は山の樹木。
(右手が受付、左手前がラウンジ。奥の両サイドにはゴルフ関連商品がズラリと並んでいた)
リゾートゴルフ場なのでクラブハウスのエントランスには高い文化性や贅沢感を期待していたが、実際はそれほどでもなかった。
受付前のラウンジはテーブルとソファーを並べただけで、実用性重視の構え。奥のプロショップも品数こそ豊富だが、やや雑然とした感じ。
(洗面所には高級感があった)
(凝った造りのロッカールーム。狭く感じたのは錯覚か)
トイレの個室は6つ。洗面所には高級感が感じられた。ロッカールームのデザインはメルヘン調で、ちょっと変わっていた。
東京から遠く離れているためだろうか、プレー料金はリゾートゴルフ場にしては思ったより安い。
「Web料金、セルフプレー、乗用カート利用」という条件で1-3月(年初を除く)値段を調べると、平日8,000円、休日13,500円。
別途ロッカーフィ(315円)が必要になるが、昼食が付いた値段なので、純粋なプレー代はその分を考慮する必要がある。
前述したように昼食は1,470円、1,575円といった値段が中心。仮に昼食代を1,500円として差し引くと、平日のプレー代は実質6,815円、休日で12,315円という数字になる。
この水準は3月、4月の料金体系でもあまり変わらない。むしろ、違いが出るのは時季ではなく「プラン」の方だ。
HPで「予約カレンダー」を見ると、「月末月初平日超得プラン」「2月タイムセール」「最終特価、組数時間限定プラン」といった刺激的な言葉が並び、懸命さが伝わる。
とにかく営業熱心。特に集客には知恵を絞っているので、プレー日が固まったらHPを丹念にチェックするのが利用する際のコツだ。
「リゾートゴルフ場らしいな」と感じたのは「ホテル宿泊プラン」と「カップルdeゴルフプラン」を見つけた時だった。
料金は時季によって変動するが、冬季なら「1泊(素泊まり)」代と合わせて、「平日プレー」で12,650円(昼食付)、「休日プレー」で18,150円(同)。4月でも「休日プレー」が18,650円(昼食別)で楽しめる。
ホテルは1室2~4人の利用。シングルユースだと+3,150円掛かる。もちろん素泊まりでなく3食付のプランもあるので、予約の際はやはり細かくチェックしたい。
宿泊するホテルは会員制。本来は「東急ハーヴェストクラブ」に入会していないと利用できない。このため、宿泊するにはゴルフ場経由で申し込むことが条件となる。
初日に「午後ハーフプレー」(平日3,500円、休日6,500円)を選択し、翌日1ラウンドプレーというのが、ゴルフ目的の人には理想的かもしれない。
また、2サム限定の「カップルdeゴルフプラン」は実施日に制限があるが、2人で16,000円(昼食付)と割安。
このゴルフ場は平日なら常に「2サム保証」なので、大切な人とゆっくりゴルフを楽しむには何かと好都合だ。
その代わりシニアやレディース向けの特別な割引サービスはない。「コンペパック」(3組9人から)は充実。平日なら「バスパック」(4組以上)も利用できる。
「割安な各種プランを用意し、少しでも多くの方の来場を促す。来場後は食事やその他の施設・サービスを通じて確実に売り上げ増を図る」――。そう考えるとコース同様、なかなか戦略的なリゾートタウンだ。
後日、気象庁に問い合わせ、勝浦市と東京都心の温度差を調べてみた。2011年の勝浦市の月間平均気温は1月が5・5度(東京5・1度)、2月が7・9度(同7・0度)。確かに東京より暖かい。北関東に比べれば雲泥の差だ。
だが、もっと驚いたのは夏場が意外に涼しいこと。勝浦市の7月の平均気温は24・3度(同27・3度)、8月で26・0(同27・5度)。冬場よりもむしろ都心との差が大きいのだ。海風のためだろうか。
このゴルフ場は会員制ではあるが、会員さんの紹介や同伴がなくても誰でも利用できる。
「夏休みの平日に、宿泊パックを利用してゴルフ三昧」。ゴルフ仲間とまた意気投合してしまった。
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