米国の「ビバリーヒルズ」をもじって“チバリーヒルズ”とも呼ばれた超高級住宅街「あすみが丘ニュータウン」(千葉市緑区)。東急セブンハンド
レッドクラブは、その分譲開始と同じ年の1989年、同ニュータウンの直ぐ南側に誕生した。開発はともに東急グループ。「接待ゴルフ」という言葉が聞かれ
なくなって久しいが、今でも会員は法人のみで、高いクオリティを維持しながら奮戦している。「コースの面白さが逆風に耐える力の源泉」とプレーしながら感
じた。
(美しい池、難しいバンカー。このコースを象徴する景観だ)
最寄り駅はJR外房線の土気(とけ)駅。しかし送迎用のクラブバスはない。
ホームページ(HP)には乗用車でのアクセスルートは詳しく載っているものの、電車利用については「土気駅下車、タクシーにて約10分、約1500円」「大網駅下車、タクシーにて約25分、約2500円」と簡単に記載されているだけだ。
「送迎バスに乗って、みんなでワイワイと来場」という雰囲気ではないのだ。
プレーも会員の紹介か同伴がないと不可。「会員制クラブ」と称しながら、実際には誰でも予約を受け付ける多くのゴルフ場とは一線を画す。良くも悪くも敷居が高い。
玄関前の広い駐車場には黒塗りのクルマが何台も並んでいた。それでも「今日は少ない方ですね」と乗ったタクシーの運転手さん。開場当時はさぞや壮観だったろうと想像する。
(堂々としたクラブハウス。「プレーリーハウス(草原住宅)」をイメージしたという)
「草原の高級住宅」をイメージしたという2階建てのクラブハウス。車寄せも立派だ。女性スタッフ5人が同間隔で一列に並び、丁重に出迎えてくれる。
ゆとりを感じさせるエントランス。「中はどんなに豪華な施設なんだろう」と思って見渡すと、想像していたほどバブリーではない。
左手奥の受付では3人の女性スタッフが手際よく接客。その右隣にあるプロショップには、お土産に重宝しそうな地元産の果物などが数多く並んでいる。いずれも機能的で、どちらかといえばスッキリした感じのスペースだ。
階段を降りてロッカールームへと向かう。途中、ガラスで囲まれた小さな中庭。日本庭園風の凝った造りで一瞬、バブルの残像を見る思いがした。
廊下やトイレ、ロッカーはさすがに高級感があった。トイレは個室が13(うち和式が2つ)もあって充実。洗面所も広く、備品も十分。木製ロッカーは横幅が広く、使いやすい。ラウンジもゆったり設計されていて申し分ない。
近くのソファーに腰掛けていて、急に「料金」のことを思い出した。他のゴルフ場に比べ高額だと思ったからだ。
HPの料金表を見ると、ゲストのグリーンフィは平日が21,000円、土日祝日が29,400円。これにキャディフィ4,200円(4バッグの場
合)、諸経費3,570円、ゴルフ場利用税1150円などが付き、合計では平日で29,970円、土日祝日では38,370円も掛かる。
「セルフデー」「早朝・薄暮割引プレー」「シニア割引」「割安コンペパック」。そんな見慣れた言葉ともまったく無縁の世界だ。
プレー日は12月の日曜日。昼食代や飲料代などを加えれば4万円を大きく超える。会員さんから誘われた当初、「2万円で済むコースを2ヶ所回った方がいいかな」「いや15,000円のコースなら3回分か」と悩んだ記憶が蘇る。
ただ正直に告白すると、食事代などを除いた当日の「プレー料金」は25,780円だった。HPには書かれてなく、会員だけに知らされる「ご同伴者料金」という別の料金体系があり、今回は会員さんのご好意で、その割引価格が適用されたためだ。
その料金表によると、プレー料金が最も高いのは11月で、土日祝日は29,980円(平日は17,380円)、逆に最も安い1、2月は同19,480円(同14,230円)となっている。
また、会員には「会員様平日ご紹介券」等が郵送されてくるので、それらを頂戴できれば、会員同伴でなくてもほぼ同じ平日料金でプレーできる。
接待ゴルフの場合は別にして、会員以外の人が自腹でプレーする場合には最初の「正規料金」ではなく、こうした何らかの割引料金を活用しているケースが多いのではないかと勝手に想像した。
それでも、料金の水準自体は決して低くない。今日も総額で3万円近い出費は覚悟している。「なら、思う存分に楽しもう」。気持を切り替えて外に飛び出す。
すっかり冬景色。しかも、あいにくの曇天だったので写真写りは良くないが、スターティングテラスから眺める景観はさすがだった。
(パターの練習グリーンは3面あり、気持ちよく利用できる)
(練習グリーンの周囲には凝った橋やクリークがある。贅沢というか、ちょっとバブリーな感じも)
手前に大き目のパット練習用グリーンが3面。その周囲をクリークが走り、石造りの橋が架かる。こんな豪華なパッティンググリーンには、めったにお目にかかれない。
その先には名物の「西コース18番ホール」が広がる。緩やかなうねりを見せるフェアウエー、白いバンカー、遠くには池。比較的フラットな丘陵コースというのが第一印象である。
(広々としたドライビングレンジ。50ヤード刻みで距離表示板が設置されていた)
ドライビングレンジはクラブハウスを挟んで反対側。15打席。先端までの距離は約250ヤード。ボールは同じマークが付いた練習場専用ボールだが、24球で525円。これは高い。1球20円以上、ちょっとビックリだ。
ドライバーを打つ際、使用ティが低かったので、そばの小屋にいた男性スタッフに尋ねると「すみません。この長さしか用意してありません」。
一緒に練習していた同伴者も「私も低いと思いました」と話していたので、同じ様な不満を感じている人は他にも結構いるのではないか。
近くにはバンカーとアプローチの練習場があり、設備面での手抜かりはない。
(ティインググランド脇に置かれたコース案内図。綺麗に縁取りされ、高級感があった)
コースは「西」と「東」(合計36ホール)の2つから成り、この日は「西コース」を選んだ。スタートはINの10番ロングホール。さすがに12月に入ると枯れ木が目立ち、コースの景色もちょっと寒々しい感じがする。
景観は楽しめないだろうと考え、思い切って「バックティからプレーしても良いですか」と尋ねてみた。今日は「コースとの戦い」に専念しようと思ったからだ。
意外にもキャディさんは「同伴されているメンバーさんがOKならどうぞ」と即答。ゲスト参加した3人、喜んで気合を入れ直す。
ティインググランドは多いホールで5つ。少ないホールでも4つ。スコアカードを見ると「チャンピオンティ」の場合、全長距離が7,102ヤード
(コースレート72.9)、「バックティ」で6,581ヤード(同70.4)、「レギュラーティ」で6,183ヤード(同68.9)、「レディースティ」
で5,457ヤード(同66.1)といった具合。
当然のことながら、使用するティインググランドによって難易度が大きく変わる。「チャンピオンティ」は使用している様子がなかった。
キャディマスター室で聞いたグリーンの整備状況は「(速さが)10.2フィート、4.0mmカット」でやや速め。グリーンの硬さを示す「コンパクションは計測していない」そうだが、グリーンはかなり難しそうな予感。
ここまでプレー条件にこだわったのは、この「西コース」が毎年10月に開催される人気の女子プロゴルフツアー「富士通レディース」の舞台だからだ。
2010年の大会は韓国のアン ソンジュ選手が圧勝。通算19アンダーの大会新記録だったことを思い出す。
バックティから打てば、距離的にはその女子プロの試合とほとんど同じ条件になる。今日の自分のラウンド結果を覚えておけば、来年のテレビ観戦がまた一層楽しくなる。
スタートしてから気づいたことがある。「ここは全てキャディ付、歩きでのプレー」と聞いていたが、他のホールに「乗用カート組」がいたのだ。
「あれっ」と思ってキャディさんに尋ねると、「以前は確かに歩きのみでしたが、最近は予約時に言っていただければ、乗用カートもご利用いただけます」。
費用は1台6,000円だという。4人で利用すれば1人1,500円の追加負担というわけだ。「夏場は特に希望者が多く、台数にも限りがあるので早めの予約が必要です」とも。
このキャディさんはホスピタリティを前面に出すタイプではかったが、行動は実にキビキビしていた。
プレー中の安全管理、進行管理には十分注意を払い、ボールの行方を常に確認。ラフに入ったボールも率先して探し出してくれた。
クラブの本数確認もしっかり行い、バンカー均しも「いいですよ。私がやります」と大きな声を出して機敏に動いてくれた。
(カートはゴルフバッグとキャディさんを乗せて、「セグウエー」のようにコース内を走り回る)
機敏に見えたのは、キャディさんがカートに乗ってコース内を自在に動き回れたことも大きい。米国生まれの電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」をゴルフ場用に改造したようなカート。これならキャディさんも楽だろう。
ティインググランドも綺麗に整備されていた。「待ち時間ができた時、小まめに(ディボットを)直すようにしています」とキャディさん。
(メンテナンスは良好。芝の密度も高く、ディボットにもきちんと砂が入れられていた)
全体を通じてキャディ教育が行き届いているなと感じた。フェアウエーのディボットにはほとんど砂が入っていたし、グリーン上のピッチマークも気になることがなかった。
ちなみにグリーンはベント芝のワングリーン。かなり大きいがコンディションは良く、グリーンキーパーさんの丹念な仕事ぶりが伺われた。
「夏場のフェアウエーはフワフワしている」(会員さん)という良好なコースコンディション。そしてキャディの質の高さは一流ゴルフ場としての必須条件。
(「灰皿」「ゴミ箱」「コース案内図」。整然と並べられ、管理の行き届いていることを印象付けた)
(「200ヤード」「150ヤード」「100ヤード」地点にあった表示。便利だが、両サイドの表示(小さい木)と重複感もあった)
だが、このゴルフ場がバブル崩壊後の20年、人気を維持してこられたのは、やはり「コースそのものの面白さ」がカギだったのではないかと思った。
(13番のショートホール。池とバンカーがプレッシャーを掛ける)
(14番ミドルホールではグラスバンカーが口を開けて待つ。小さなマウンドも多く、なかなか平らなライから打てない)
(17番ショートホール。ピン位置が奥。バックティからだと「210ヤードあります」とキャディさん)
(18番ホール、グリーン手前の深い名物バンカー。ボールが出ず「泣き出した女子プロがいた」ことで一躍有名に)
(水面に映る樹木が綺麗だった)
やや人工的だが、巧みに池を配し、様々な種類の樹木を植え、景観的に美しく仕上げたホールが少なくない。またレイアウトを工夫し、難易度に変化を持たせた印象に残るホールも多く、ラウンドしていて飽きない。
(4番ホールにある巨大なフェアウエーバンカー。OUTコースには厄介なバンカーが多かった)
(7番ロングホール。立ち木、バンカー、砲台グリーンと難度を高める条件が揃っていた)
(バンカーだらけの8番ショートホール。どこにグリーンがあるのか一瞬、戸惑うほどだ)
特に後半回ったOUTコースは、多彩なバンカーが今でも脳裏に焼き付いている。グリーン周りがバンカーだらけのショートホール、深いバンカー、巨大バンカーがプレッシャーを与えるミドルホール、距離の長いロングホールにもグリーン周りにしっかりバンカーが造られている。
簡単そうに見えるホールでもフェアウエーには小さなマウンドが多数あり、「なかなか平坦な所から打てない」と同伴者もぼやいていた。
バックティからのプレーだとアベレージゴルファーにはパーオンが厳しい。『下手な人ほど乗せたがる』という教訓を思い出しながら、グリーン近くからの“寄せワン作戦”を目指した。
その結果はともかく、やはり「レギュラーティ」と「バックティ」とでは、難易度にかなりの差が出るというのが実感だ。
接待ゴルフの時には易しく感じられる「レギュラーティ」から、女子プロの試合やアスリート向きには「バックティ」からという使い分けを想定した設計なのだろう。
(7番ティインググランド脇に立つ大きな桐の木)
開場は1989年(平成元年)。コースには徐々に風格も出てきた。「造成前からあった木はできるだけ残した」そうで、事実、7番ロングホールには太い桐の木がそびえ立っていた。
葉がすっかり落ちてはいたが、見事な山桜の木も2番ホールのティインググリーン脇など数ヶ所で見かけた。
パンフレットには花の咲いた時期の綺麗なコース写真が掲載されている。春爛漫の頃にまた来てみたいと本気で思う。
樹木と樹木の間隔が空いているなど人工的な雰囲気を感じさせる部分も残り、その意味ではまだ発展途上のコースではあるが、自然の地形を生かした、面白く、美しいコースであることは間違いない。
(15番のティインググランド近くにある売店。池に突き出した構造で、日本庭園を連想させた)
美しいといえばコース内の茶店にも触れておきたい。INコースの終盤にある茶店は池の上に浮かべたような優雅な造り。内装も綺麗で、女性スタッフの愛想も良かった。
併設されたトイレはクラブハウス内のものと同等のレベルを維持。この辺の隠れたクオリティの高さが上質感を強く印象付ける。
(売店からは外の美しい景観を眺めながら一休みできる)
OUTコースの茶店は、カウンター席から次のホールが眺められる設計。雰囲気も良く、ここでの待機なら進行が渋滞してもイライラしないで済みそうだ。
コースから離れ、クラブハウスのレストランに話を移そう。HPに内部の様子が分かる写真載っているので、まずそちらを見て欲しい。
ここの最大の魅力は大きなガラス窓から西コースを一望できることだ。ボーっと眺めているだけでも非日常的な贅沢感に浸れる。サービス重視の姿勢を反映してか女性スタッフが多く、その丁寧な接客も心地良い。
そんなハッピーな気分が動揺したのは、メニュー表を見た時だ。「プレミアムビール」だそうだが、生ビールは中生サイズで一杯800円。
12月の「おもてなし弁当」(3,675円)は別格として、一般的な「おすすめメニュー」は全部で5種類。サンドイッチが一番安くて1,000円。定番のラーメン、うどん、ピラフはどれも1,600円、特製シチュー料理は2,500円だ。
誤解されないように断っておくが、料理は確かに美味しい。ラーメンといっても厚切りの炙りチャーシューが入った豚骨醤油味だ。
「でも、やっぱり高い。メニューの選択肢が乏しい。そういえば練習ボールも割高だった。プレー料金以外でも結構、金がかかる」
「いや、ここは金銭的なことをとやかく言うべきゴルフ場ではない。ステイタスやエレガントさを楽しむ場なのだ。贅沢な時間、空間を堪能できる幸せ。それで良いじゃないか」――。頭の中で様々な思いが錯綜する。
最後に浴室について。構造はやはりHPの写真を見て頂きたいが、そこそこの広さで、外に向かって半円形に突き出したガラス窓があり、その部分は湯船も広くなっていて、外には和風の中庭。
洗い場にパーテーションがないのは、高級感で統一しているはずの施設としては意外だったが、他の設備は充実しリラックスできた。脱衣場も冷水やマッサージチェアーなどが用意されていて快適。
帰り際に受付で「前泊するのに良いホテルありませんか」と尋ねてみた。女性スタッフが「ちょっと古いパンフレットですけど」と言いながら見せてくれたのが「土気ステーションホテル」の案内。一泊6,300円(シングル料金)のビジネスホテルだ。
エントランスでそのパンフレットを眺めていると、突然、社用車らしきクルマの運転手さんを呼び出す館内放送が流れた。
「お車番号・・・」「お車がまいりました」。そんなアナウンスが続く。
「お車」――。いい響きだ。やはりここは黒塗りのクルマでの来場が似合うゴルフ場である。
2010年12月12日日曜日
2010年12月4日土曜日
伊香保カントリークラブ=赤城山などを借景にした群馬県で最も古い名門コース
群馬県といえば温泉。温泉といえば「草津」「水上」「伊香保」の名前がすぐ浮かぶ。今夏、そのうちの一つ、伊香保温泉に旅した際に見かけたのが伊
香保カントリークラブだった。「綺麗なゴルフ場。いつかプレーしてみたい」――。そんな願いが通じたのか、11月下旬、知人から突然、ラウンドの誘いを受
けた。長い歴史を持つゴルフ場だけに、施設面で大きな期待はできないが、「さすが」と思わせるところの多い風格あるコースだった。
(赤城山を望む雄大なコースだ)
「朝7時25分のスタートです」。地元の方には問題ない時間帯でも、東京近郊から出陣するにはちょっと大変だった。まだ真っ暗な午前5時、自宅をクルマで出発。関越自動車道を一路、北へ北へと走る。
渋川伊香保ICで高速道路を降り、目的地の伊香保CCまでは約9km、15分あまり。幸い交通渋滞もなく予定通り6時50分に到着した。
場所は渋川市の西側。「上毛三山パノラマ街道」を走って伊香保温泉郷に入る少し手前。周辺には「グリーン牧場」「上州物産館」「群馬ガラス工芸美術館」といった観光施設も多い。上毛三山の一つである榛名山の裾野に位置し、クラブハウスのある標高はちょうど600m。
開場は昭和34年8月。すでに50年を越える長い歴史を持つ。群馬県下では最も古いゴルフ場で、「関東シニア選手権」や「関東オープンゴルフ選手権」を開催した実績もある。
(朝日を浴びるクラブハウス。堂々とした外観)
到着したクラブハウスは思っていたよりも大きく、堂々とした構え。ただ、内部は良く言えば落ち着いた雰囲気、悪く言えばやや古臭い感じのするものだった。
受付は簡素で一般的なビジネスホテルを連想させる。周囲にゴルフ関連商品が多数並んでいるが、積極的に販売しているという感じでもない。早朝だったためだろうか。
トイレは清掃が行き届き、機能的にも問題ないものの特筆するようなレベルではない。個室が8つ。うち3つは和式。ラウンジもソファとテーブルが並んだだけの地味なもの。
「歴史と風格」を売り物にしたゴルフ場なので、多額の経費を掛けて豪華な施設に造り替えるより、このままの方が「味わいがあっていい」との判断なのかもしれない。
(ロッカーの配列にゆとりがあり、使い勝手がいい。正面が浴室の入り口)
全体の構造は古いまま。しかし所々でリニューアルはなされており、例えばロッカールームは広く、木目調のロッカーは綺麗で使いやすかった。
スタッフの対応もまずまず。受付で「ここは会員制なので、メンバーさんの紹介がないと予約できないんでしょう」と尋ねたところ、ちょっと戸惑ったような表情を見せながらも、女性スタッフが「原則はそうですが、大丈夫です。紹介なしでもプレーできますよ」とニッコリ。
隣の男性スタッフが「今日、メンバーさんとご一緒されたので、もう(名前が)登録されました。また、ぜひお越し下さい」と熱心に来場を促した。
「プレー終了後、近くの温泉に入りたい」と尋ねたら、「黄金の湯館」という日帰り温泉のパンフレットとクーポン券をくれた。
急いで着替えを済ませ、「少し体をほぐしたい」とドライビングレンジへ直行。ボールはコインでなく、現金を自動販売機に直接入れて購入するシステム。100円で15球。打席数は10。
(先端まで300ヤードあり、コースと同じ雰囲気で打てる)
打席の上にかわいらしいデザインの屋根。前を向くと周囲が立派な樹木で囲まれている。コースとまったく同じ景観の中で練習できるのは嬉しい。
(OUTコースの1番ティインググランド周辺。すがすがしい朝。思わず深呼吸した)
パター練習は諦めOUTコースの1番ホールへ急ぐ。昇ったばかりの朝日がまぶしい。フェアウエーに樹木の影が長く伸びる。第一組である。前には誰もいない。ちょっと神聖な気分になる。冷気も気持ちよく感じる。
数日前、「7:25分スタート」と聞かされた時は「何でまた、そんなに早く」とぼやいたが、今はむしろ感謝したい気持ちだ。第一打はフェアウエーセンター。上々のスタートである。
このコースの特徴は周囲の山並みが望めることだ。長く伸びた裾野が美しい「赤城山」。真近にそびえる「水沢山」、北側にデンと構える「子持山」、遠くには雪をかぶった谷川連峰まで見られる。
(1番ホール。正面に赤城山が姿を現した。長く伸びた樹影が美しい)
1番ホールは軽く左へカーブしたロングホール。2打目地点でさっそく、正面に赤城山の雄姿が見えてきた。「いい景色ですね」。同伴者も満足顔だ。
地元の方にとっては見慣れた景色でも、日々、殺伐とした都会生活を送っている身には、真近にこうした名山が眺められるだけでも心が癒される。
しかも伊香保CCの場合、独立した山が東西南北にうまく散らばっているので、ホールごとに違った山が見え、その変化がまた楽しい。
(水沢山の雄姿。近くにある「水沢観音」と名物「水沢うどん」が有名)
(5番ホール。子持山を背にピンフラッグが静かに揺れていた)
(日本庭園の造園技法である「借景」を思い浮かべた。前景のゴルフコース、背景の名山)
(9番ホールから見た赤城山。裾野の美しさは類を見ない)
(コースの途中では渋川の町並みが綺麗に見下ろせた)
しばらくは遠くの山を眺めたり、足元のボールを見つめたりと忙しいゴルフが続いた。
(乗用カートには10・4インチ画面のコースナビゲーションを搭載。コース全体が把握でき、とても便利だ)
同時に、コースの難しさも分かってきた。まず距離がしっかりある。メイングリーンの場合、バックティからだと6794ヤード、レギュラーティからで6424ヤード、フロントティからでも6228ヤードある。
コースレートはバックティから71.8、レギュラーティから70.0。
この日はレギュラーティからプレーしたが、例えば2番ショートホール。表示は192ヤードでも「打ち上げやピンの位置、風などを考えると210ヤードは打って下さい」とキャディさん。
「小さめのクラブでフルショット」か、「大き目のクラブでコンパクトに」か悩む。結局、大き目のクラブを手にしながらインパクトで緩み、かなりショート。そんなミスも出やすいホールだ。
(2グリーンで、Mはメイングリーン、Sはサブグリーン)
400ヤード(レギュラーティから)を越えるミドルホールが3つあることも、「コースが長い」という印象を強めた理由だろう。
グリーンも難しかった。この日の速さは「9フィート、コンパクション10」の設定。数字的には特に速くも硬くもないが、傾斜がきつかった。
中でも8番や13番グリーンは上から打ったボールが止まらない、止まらない。横から打ったボールは大きく曲がり、3パットを強いられた。
男子プロゴルフツアー最終戦が開催された「東京よみうりCC」18番ショートホールの最難関グリーンを一瞬、思い浮かべたほどだ。
ベントグリーンにしては芝目がきつく、時に傾斜に逆らってボールが動く。キャディさんが「全ホールとも水沢山から赤城山に向かって順目なので、覚えておくと良いですよ」と教えてくれた。
ここは「キャディ付プレー」と「セルフプレー」のいずれかを選択できる。最近はセルフプレー希望者も増えているようだが、少なくともコースやグリーンの癖をつかむまでは「キャディ付」を選んだ方が賢明だろうと感じた。
「長い距離」「難しいグリーン」と並んでもう一つ、プレーヤーを悩ませたのがフェアウエーの「アンジュレーション」だ。
(フェアウエーが傾いて見えるのは、錯覚でも撮影ミスでもない。ここではティショットの狙い目が左サイドに限定される)
「周辺のゴルフ場と比べれば緩やかな方」(キャディマスター室のスタッフ)とはいえ、コース全体が榛名山の裾野にあるため、そもそもフラットな敷地ではない。多くのホールで右傾斜、左傾斜があり、そこに微妙なマウンドが絡んでくる。
「平らなライからはまず打てないと思った方が良いですよ」と今回、予約を取ってくれた地元のメンバーさんは、妙に楽しそうだ。
(スターティングテラス周辺は、まさに日本庭園風の佇まい)
(10番のスタートハウス。老朽化が気になった)
特にINコースは10番ホールから16番ホールまで、ほぼジグザグに山を登っていく設計。
(広く、なだらかな傾斜が続くフェアウエー。このコースでしばしば見られる光景だ)
このため、例えば10番と12番は同じ向きに平行してプレーするので、ティインググランドに立った時のコースの印象が似てくる。
共に「右側に水沢山、フェアウエーは左傾斜で、ティショットの狙い目はセンターの右。左サイドは要注意」といった具合だ。
(8番ホール。フェアウエー中央に立つ大木。避けようとするほど、ボールは根元に転がるものらしい)
フェアウエーには要所に大きな立ち木が配され、戦略性を一段と高めている。東京から来た同伴者も時々、木の手前で立ち往生。「上げるのか」「低く打ち出すのか」。ある程度以上のテクニックがないと厳しいコースである。
逆に言うと、中級以上のプレーヤーには面白くてたまらないコースかもしれない。攻略法を常に考えさせられるし、技の見せ場もたくさん出てくる。だからチャレンジングで、飽きない。
(コース内の売店。絞りたてのグレープフルーツジュースが目玉商品)
ショットの正確性が強く求められるコース。だが今回、結果を見ると、苦戦したほどにはスコアが崩れていなかった。救われた最大の理由はフェアウエーが広かったことだ。多少なら曲がってもOBにならない。
山の傾斜地に造成されたコースは往々にして狭く、トリッキーで、OBが続出しやすいもの。だが、ここは全体にゆったりとし、ホール間も松や杉の木で上手にセパレートされているので、OBや紛失球に苛立ったり、気持ちが「プッツン」することもなくプレーできた。
思えば昭和34年の開業。当時、多くの有力候補地の中からゴルフ場としての最適地を探し出し、すべてに余裕を持って開発したのだろう。
地元のメンバーさんは「ここを造成するのにブルドーザーは使用しなかったそうです」と話す。山を削って谷を埋め、無理な造成をしたバブル期のゴルフ場とは雲泥の差である。
「さすがだな」と感心しつつ、前述した10番と12番のような“似た景観”だけが気になっていたが、そのモヤモヤ感も最終17番と18番ホールに来て吹き飛んだ。
(突然現れた箱庭的、人工的な17番ショートホール。打ち下ろしで、距離感が難しかった)
17番は打ち下ろしのショートホール。明らかに日本庭園をイメージした人工的な造りだ。同伴者も「これまでの自然重視のホールとは雰囲気が全然違う。別コースに来たようだ」と驚く。
手前に大きな池が2つ並び。その間を小さな滝が流れ落ちる。池の先に2つのグリーン。奥は林。遠くに上州の山々が連なる。
12月の伊香保CCは全体に地味な感じのコースだったが、ここで一気に華やかさが加わった。コースデザイナーが最後に“絵になるホール”を造りたかったに違いない。
(赤城山に向かってドライバーを打ち抜く快感。飛ばし屋には最高の舞台だ)
続く18番ロングホールも別の意味で記憶に残るホールだった。ティインググランド正面に赤城山。眼下に渋川市の街並みがはっきりと見える。そこを目指して豪快に打ち下ろしていく。
(18番。池の水が濁ったように見えたのはちょっと残念)
途中、左サイドに池、フェアウエーセンターに数本の立ち木があって、景観的にも戦略的にも程よいアクセントになっている。
すでに芝の多くが枯れ、紅葉もピークを過ぎて、コース内には落ち葉が散乱していた。
しかし良く見ると、枯れ木も種類が多いことに気づく。2番ホールの桜並木、9番ホールの梅林。他にもツツジやサツキなどが点在し、歩きながら新緑や満開時の美しさに思いをはせた。
「少し前まで紅葉が綺麗だったんですよ」とキャディさんは残念そう。時期を選んで来場すれば高原の四季も十分に楽しめそうだ。
12月に入って寒さが増し、芝の管理が難しくなる時期だったが、コースメンテナンスは良好だった。ベアグランドは見られず、グリーンの状態も問題なし。各ホール4面ほどあるティインググランドも良く整備されていた。
ただ、セルフプレーを望む人が多いせいか、フェアウエーやグリーン回りにディボットが残り、今回もラウンド中、3回もボールが入ってしまった。注意して見ていると、キャディさんもあまり目土をしていなかった。
今回、同伴してくれたキャディさんは控えめな印象の方だった。動作もさほど機敏とは言えなかった。
ただ、ベテランらしくグリーン上のアドバイスは極めて的確。「スライスラインですよね」と確認すると「いえ、真っ直ぐです。逆目なので強めに」とキッパリ。何度もピンチを救われた。
地元のメンバーさんは「ここは優秀なキャディが多いから」としきりに褒める。老舗ゴルフ場の特徴と言えるかもしれない。
コース内に「避雷舎」が多数設置されていたのも特筆に価する。雷が多いことの裏返しではあるが、数えてみたら売店以外に10ヵ所もあった。
もう一つ、ラウンド中に感心したことを付け加えておきたい。
「前の組がプレー中です。暫くお待ち下さい」「お客様の飛距離を考慮の上、宜しければお打ち下さい」――。ティインググランドで待っていると、時々、そんな女性の声が乗用カートから流れてくるのだ。
実はカートの屋根にアンテナが設置され、前の組との距離を測って、自動的にアナウンスしているのだという。セルフプレーの時にはかなり助かりそうだ。
クラブハウス内にあるレストランと浴室についても簡単に触れておきたい。レストランは2階。1階の屋根がテラスのように窓の外に広がる。その先に美しい山並みが見え、改めて標高600mの地点にいることを実感する。
内部のスペースは建物全体のスケールからすると、やや狭いくらいに感じた。昼食時は多くの客で賑わい、女性スタッフが忙しそうに動き回っていた。
料理長の自慢料理は「チキンカツレツ」。夏場には「中華つけ麺」が人気を集めるとホームページ(HP)で紹介されていたのを思い出す。
手前左側にコンペルームが3室。アコーディオンカーテンで仕切られ、人数によって広さを自在に変えられる仕組みになっている。
浴室はロッカールームのすぐ隣。ロッカールームの写真をご覧いただけると分かりやすいが、正面に昔風の引き戸があり、入った所が脱衣場。その右奥に浴場がある。
戸を開ける時には「かなり老朽化しているのでは」と正直、心配した。が、実際は綺麗にリニューアルされ、浴場を含め心配は杞憂に終わった。
もちろん豪華さや贅沢感はない。そこまでは行かないが、清潔で、機能的にもきちんと整った内容だった。温泉は掛け流し。
廊下ですれ違う女性スタッフが皆「お疲れ様でした」と声を掛けてくれたのには、ホスピタリティの高さを感じた。
料金体系は実に多彩だ。月によって大きく変わるし、平日か休日か、キャディ付プレーかセルフプレーかによっても当然、変わる。
例えば、11月の休日にキャディ付でプレーすれば17,800円、平日にセルフで回れば12,500円。12月に入ると、同じ条件で14,600円、9,400円と変わる。
さらに1月から2月末までのOFFシーズンになると、これが10,900円(日曜日の場合、土曜日は11,900円。いずれも昼食付)、7,800円まで値下がりする。
これらは、いわゆるカレンダー料金だが、別途1ラウンド9,000円でプレーできる「レディース&シニアデー」(セルフ、昼食、ソフトドリンク 付)や「スペシャルデー」(セルフ、昼食付)を開催。高校生以下を対象にした「ジュニア料金」(5,000円)、「午後ハーフプレー」(セルフ、 5,200円)など、いろいろなパックが用意されている。
総じて冬季料金の値下がり幅が大きい。やはり寒い時期の集客には苦労しているのだろう。
「プレー終了後は伊香保温泉にそのまま宿泊。今度はボールでなく、美味しい料理に舌鼓を打つ」。そんな贅沢プランを立てるなら、案外OFFシーズンが狙い目かもしれない。
(赤城山を望む雄大なコースだ)
「朝7時25分のスタートです」。地元の方には問題ない時間帯でも、東京近郊から出陣するにはちょっと大変だった。まだ真っ暗な午前5時、自宅をクルマで出発。関越自動車道を一路、北へ北へと走る。
渋川伊香保ICで高速道路を降り、目的地の伊香保CCまでは約9km、15分あまり。幸い交通渋滞もなく予定通り6時50分に到着した。
場所は渋川市の西側。「上毛三山パノラマ街道」を走って伊香保温泉郷に入る少し手前。周辺には「グリーン牧場」「上州物産館」「群馬ガラス工芸美術館」といった観光施設も多い。上毛三山の一つである榛名山の裾野に位置し、クラブハウスのある標高はちょうど600m。
開場は昭和34年8月。すでに50年を越える長い歴史を持つ。群馬県下では最も古いゴルフ場で、「関東シニア選手権」や「関東オープンゴルフ選手権」を開催した実績もある。
(朝日を浴びるクラブハウス。堂々とした外観)
到着したクラブハウスは思っていたよりも大きく、堂々とした構え。ただ、内部は良く言えば落ち着いた雰囲気、悪く言えばやや古臭い感じのするものだった。
受付は簡素で一般的なビジネスホテルを連想させる。周囲にゴルフ関連商品が多数並んでいるが、積極的に販売しているという感じでもない。早朝だったためだろうか。
トイレは清掃が行き届き、機能的にも問題ないものの特筆するようなレベルではない。個室が8つ。うち3つは和式。ラウンジもソファとテーブルが並んだだけの地味なもの。
「歴史と風格」を売り物にしたゴルフ場なので、多額の経費を掛けて豪華な施設に造り替えるより、このままの方が「味わいがあっていい」との判断なのかもしれない。
(ロッカーの配列にゆとりがあり、使い勝手がいい。正面が浴室の入り口)
全体の構造は古いまま。しかし所々でリニューアルはなされており、例えばロッカールームは広く、木目調のロッカーは綺麗で使いやすかった。
スタッフの対応もまずまず。受付で「ここは会員制なので、メンバーさんの紹介がないと予約できないんでしょう」と尋ねたところ、ちょっと戸惑ったような表情を見せながらも、女性スタッフが「原則はそうですが、大丈夫です。紹介なしでもプレーできますよ」とニッコリ。
隣の男性スタッフが「今日、メンバーさんとご一緒されたので、もう(名前が)登録されました。また、ぜひお越し下さい」と熱心に来場を促した。
「プレー終了後、近くの温泉に入りたい」と尋ねたら、「黄金の湯館」という日帰り温泉のパンフレットとクーポン券をくれた。
急いで着替えを済ませ、「少し体をほぐしたい」とドライビングレンジへ直行。ボールはコインでなく、現金を自動販売機に直接入れて購入するシステム。100円で15球。打席数は10。
(先端まで300ヤードあり、コースと同じ雰囲気で打てる)
打席の上にかわいらしいデザインの屋根。前を向くと周囲が立派な樹木で囲まれている。コースとまったく同じ景観の中で練習できるのは嬉しい。
(OUTコースの1番ティインググランド周辺。すがすがしい朝。思わず深呼吸した)
パター練習は諦めOUTコースの1番ホールへ急ぐ。昇ったばかりの朝日がまぶしい。フェアウエーに樹木の影が長く伸びる。第一組である。前には誰もいない。ちょっと神聖な気分になる。冷気も気持ちよく感じる。
数日前、「7:25分スタート」と聞かされた時は「何でまた、そんなに早く」とぼやいたが、今はむしろ感謝したい気持ちだ。第一打はフェアウエーセンター。上々のスタートである。
このコースの特徴は周囲の山並みが望めることだ。長く伸びた裾野が美しい「赤城山」。真近にそびえる「水沢山」、北側にデンと構える「子持山」、遠くには雪をかぶった谷川連峰まで見られる。
(1番ホール。正面に赤城山が姿を現した。長く伸びた樹影が美しい)
1番ホールは軽く左へカーブしたロングホール。2打目地点でさっそく、正面に赤城山の雄姿が見えてきた。「いい景色ですね」。同伴者も満足顔だ。
地元の方にとっては見慣れた景色でも、日々、殺伐とした都会生活を送っている身には、真近にこうした名山が眺められるだけでも心が癒される。
しかも伊香保CCの場合、独立した山が東西南北にうまく散らばっているので、ホールごとに違った山が見え、その変化がまた楽しい。
(水沢山の雄姿。近くにある「水沢観音」と名物「水沢うどん」が有名)
(5番ホール。子持山を背にピンフラッグが静かに揺れていた)
(日本庭園の造園技法である「借景」を思い浮かべた。前景のゴルフコース、背景の名山)
(9番ホールから見た赤城山。裾野の美しさは類を見ない)
(コースの途中では渋川の町並みが綺麗に見下ろせた)
しばらくは遠くの山を眺めたり、足元のボールを見つめたりと忙しいゴルフが続いた。
(乗用カートには10・4インチ画面のコースナビゲーションを搭載。コース全体が把握でき、とても便利だ)
同時に、コースの難しさも分かってきた。まず距離がしっかりある。メイングリーンの場合、バックティからだと6794ヤード、レギュラーティからで6424ヤード、フロントティからでも6228ヤードある。
コースレートはバックティから71.8、レギュラーティから70.0。
この日はレギュラーティからプレーしたが、例えば2番ショートホール。表示は192ヤードでも「打ち上げやピンの位置、風などを考えると210ヤードは打って下さい」とキャディさん。
「小さめのクラブでフルショット」か、「大き目のクラブでコンパクトに」か悩む。結局、大き目のクラブを手にしながらインパクトで緩み、かなりショート。そんなミスも出やすいホールだ。
(2グリーンで、Mはメイングリーン、Sはサブグリーン)
400ヤード(レギュラーティから)を越えるミドルホールが3つあることも、「コースが長い」という印象を強めた理由だろう。
グリーンも難しかった。この日の速さは「9フィート、コンパクション10」の設定。数字的には特に速くも硬くもないが、傾斜がきつかった。
中でも8番や13番グリーンは上から打ったボールが止まらない、止まらない。横から打ったボールは大きく曲がり、3パットを強いられた。
男子プロゴルフツアー最終戦が開催された「東京よみうりCC」18番ショートホールの最難関グリーンを一瞬、思い浮かべたほどだ。
ベントグリーンにしては芝目がきつく、時に傾斜に逆らってボールが動く。キャディさんが「全ホールとも水沢山から赤城山に向かって順目なので、覚えておくと良いですよ」と教えてくれた。
ここは「キャディ付プレー」と「セルフプレー」のいずれかを選択できる。最近はセルフプレー希望者も増えているようだが、少なくともコースやグリーンの癖をつかむまでは「キャディ付」を選んだ方が賢明だろうと感じた。
「長い距離」「難しいグリーン」と並んでもう一つ、プレーヤーを悩ませたのがフェアウエーの「アンジュレーション」だ。
(フェアウエーが傾いて見えるのは、錯覚でも撮影ミスでもない。ここではティショットの狙い目が左サイドに限定される)
「周辺のゴルフ場と比べれば緩やかな方」(キャディマスター室のスタッフ)とはいえ、コース全体が榛名山の裾野にあるため、そもそもフラットな敷地ではない。多くのホールで右傾斜、左傾斜があり、そこに微妙なマウンドが絡んでくる。
「平らなライからはまず打てないと思った方が良いですよ」と今回、予約を取ってくれた地元のメンバーさんは、妙に楽しそうだ。
(スターティングテラス周辺は、まさに日本庭園風の佇まい)
(10番のスタートハウス。老朽化が気になった)
特にINコースは10番ホールから16番ホールまで、ほぼジグザグに山を登っていく設計。
(広く、なだらかな傾斜が続くフェアウエー。このコースでしばしば見られる光景だ)
このため、例えば10番と12番は同じ向きに平行してプレーするので、ティインググランドに立った時のコースの印象が似てくる。
共に「右側に水沢山、フェアウエーは左傾斜で、ティショットの狙い目はセンターの右。左サイドは要注意」といった具合だ。
(8番ホール。フェアウエー中央に立つ大木。避けようとするほど、ボールは根元に転がるものらしい)
フェアウエーには要所に大きな立ち木が配され、戦略性を一段と高めている。東京から来た同伴者も時々、木の手前で立ち往生。「上げるのか」「低く打ち出すのか」。ある程度以上のテクニックがないと厳しいコースである。
逆に言うと、中級以上のプレーヤーには面白くてたまらないコースかもしれない。攻略法を常に考えさせられるし、技の見せ場もたくさん出てくる。だからチャレンジングで、飽きない。
(コース内の売店。絞りたてのグレープフルーツジュースが目玉商品)
ショットの正確性が強く求められるコース。だが今回、結果を見ると、苦戦したほどにはスコアが崩れていなかった。救われた最大の理由はフェアウエーが広かったことだ。多少なら曲がってもOBにならない。
山の傾斜地に造成されたコースは往々にして狭く、トリッキーで、OBが続出しやすいもの。だが、ここは全体にゆったりとし、ホール間も松や杉の木で上手にセパレートされているので、OBや紛失球に苛立ったり、気持ちが「プッツン」することもなくプレーできた。
思えば昭和34年の開業。当時、多くの有力候補地の中からゴルフ場としての最適地を探し出し、すべてに余裕を持って開発したのだろう。
地元のメンバーさんは「ここを造成するのにブルドーザーは使用しなかったそうです」と話す。山を削って谷を埋め、無理な造成をしたバブル期のゴルフ場とは雲泥の差である。
「さすがだな」と感心しつつ、前述した10番と12番のような“似た景観”だけが気になっていたが、そのモヤモヤ感も最終17番と18番ホールに来て吹き飛んだ。
(突然現れた箱庭的、人工的な17番ショートホール。打ち下ろしで、距離感が難しかった)
17番は打ち下ろしのショートホール。明らかに日本庭園をイメージした人工的な造りだ。同伴者も「これまでの自然重視のホールとは雰囲気が全然違う。別コースに来たようだ」と驚く。
手前に大きな池が2つ並び。その間を小さな滝が流れ落ちる。池の先に2つのグリーン。奥は林。遠くに上州の山々が連なる。
12月の伊香保CCは全体に地味な感じのコースだったが、ここで一気に華やかさが加わった。コースデザイナーが最後に“絵になるホール”を造りたかったに違いない。
(赤城山に向かってドライバーを打ち抜く快感。飛ばし屋には最高の舞台だ)
続く18番ロングホールも別の意味で記憶に残るホールだった。ティインググランド正面に赤城山。眼下に渋川市の街並みがはっきりと見える。そこを目指して豪快に打ち下ろしていく。
(18番。池の水が濁ったように見えたのはちょっと残念)
途中、左サイドに池、フェアウエーセンターに数本の立ち木があって、景観的にも戦略的にも程よいアクセントになっている。
すでに芝の多くが枯れ、紅葉もピークを過ぎて、コース内には落ち葉が散乱していた。
しかし良く見ると、枯れ木も種類が多いことに気づく。2番ホールの桜並木、9番ホールの梅林。他にもツツジやサツキなどが点在し、歩きながら新緑や満開時の美しさに思いをはせた。
「少し前まで紅葉が綺麗だったんですよ」とキャディさんは残念そう。時期を選んで来場すれば高原の四季も十分に楽しめそうだ。
12月に入って寒さが増し、芝の管理が難しくなる時期だったが、コースメンテナンスは良好だった。ベアグランドは見られず、グリーンの状態も問題なし。各ホール4面ほどあるティインググランドも良く整備されていた。
ただ、セルフプレーを望む人が多いせいか、フェアウエーやグリーン回りにディボットが残り、今回もラウンド中、3回もボールが入ってしまった。注意して見ていると、キャディさんもあまり目土をしていなかった。
今回、同伴してくれたキャディさんは控えめな印象の方だった。動作もさほど機敏とは言えなかった。
ただ、ベテランらしくグリーン上のアドバイスは極めて的確。「スライスラインですよね」と確認すると「いえ、真っ直ぐです。逆目なので強めに」とキッパリ。何度もピンチを救われた。
地元のメンバーさんは「ここは優秀なキャディが多いから」としきりに褒める。老舗ゴルフ場の特徴と言えるかもしれない。
コース内に「避雷舎」が多数設置されていたのも特筆に価する。雷が多いことの裏返しではあるが、数えてみたら売店以外に10ヵ所もあった。
もう一つ、ラウンド中に感心したことを付け加えておきたい。
「前の組がプレー中です。暫くお待ち下さい」「お客様の飛距離を考慮の上、宜しければお打ち下さい」――。ティインググランドで待っていると、時々、そんな女性の声が乗用カートから流れてくるのだ。
実はカートの屋根にアンテナが設置され、前の組との距離を測って、自動的にアナウンスしているのだという。セルフプレーの時にはかなり助かりそうだ。
クラブハウス内にあるレストランと浴室についても簡単に触れておきたい。レストランは2階。1階の屋根がテラスのように窓の外に広がる。その先に美しい山並みが見え、改めて標高600mの地点にいることを実感する。
内部のスペースは建物全体のスケールからすると、やや狭いくらいに感じた。昼食時は多くの客で賑わい、女性スタッフが忙しそうに動き回っていた。
料理長の自慢料理は「チキンカツレツ」。夏場には「中華つけ麺」が人気を集めるとホームページ(HP)で紹介されていたのを思い出す。
手前左側にコンペルームが3室。アコーディオンカーテンで仕切られ、人数によって広さを自在に変えられる仕組みになっている。
浴室はロッカールームのすぐ隣。ロッカールームの写真をご覧いただけると分かりやすいが、正面に昔風の引き戸があり、入った所が脱衣場。その右奥に浴場がある。
戸を開ける時には「かなり老朽化しているのでは」と正直、心配した。が、実際は綺麗にリニューアルされ、浴場を含め心配は杞憂に終わった。
もちろん豪華さや贅沢感はない。そこまでは行かないが、清潔で、機能的にもきちんと整った内容だった。温泉は掛け流し。
廊下ですれ違う女性スタッフが皆「お疲れ様でした」と声を掛けてくれたのには、ホスピタリティの高さを感じた。
料金体系は実に多彩だ。月によって大きく変わるし、平日か休日か、キャディ付プレーかセルフプレーかによっても当然、変わる。
例えば、11月の休日にキャディ付でプレーすれば17,800円、平日にセルフで回れば12,500円。12月に入ると、同じ条件で14,600円、9,400円と変わる。
さらに1月から2月末までのOFFシーズンになると、これが10,900円(日曜日の場合、土曜日は11,900円。いずれも昼食付)、7,800円まで値下がりする。
これらは、いわゆるカレンダー料金だが、別途1ラウンド9,000円でプレーできる「レディース&シニアデー」(セルフ、昼食、ソフトドリンク 付)や「スペシャルデー」(セルフ、昼食付)を開催。高校生以下を対象にした「ジュニア料金」(5,000円)、「午後ハーフプレー」(セルフ、 5,200円)など、いろいろなパックが用意されている。
総じて冬季料金の値下がり幅が大きい。やはり寒い時期の集客には苦労しているのだろう。
「プレー終了後は伊香保温泉にそのまま宿泊。今度はボールでなく、美味しい料理に舌鼓を打つ」。そんな贅沢プランを立てるなら、案外OFFシーズンが狙い目かもしれない。
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