2011年8月28日日曜日
筑波東急ゴルフクラブ=筑波山を仰ぎ見る美しい林間コース。高級感とカジュアル感が交差する不思議なバランス
(正面に筑波山。桜などコース内には樹木の種類も豊富だ)
ゴルフ仲間が立て続けに「筑波東急ゴルフクラブ」の会員になった。8月後半の休日、そんな仲間に誘われ、一緒にラウンドした。名前の通り東急グ ループを代表するゴルフ場の一つ。経営は「東急リゾートサービス」。人気の「勝浦東急ゴルフコース」(千葉県)や「ニセコ東急ゴルフコース」(北海道)も 同じグループだ。名前の高級イメージから接待コースを想像したが、意外にも敷居は低かった。
(天井が高く、高級感のあるラウンジ)
クラブハウスを入り、まず驚いたのが正面のラウンジ。一段低いフロアにゆったりとソファが並び、天井まで届く大きな窓からは朝の木漏れ日が差し込む。所々に置かれた和風デザインの照明が、上質な空気感を生み出している。
(正面が玄関。手前はプロショップ。空間が広い)
受付脇のプロショップにはゴルフ関連商品のほか、地元特産の「筑波北条米」や「つくば産 息吹卵」などの土産物が並び、接待需要にも応えられる高級ゴルフ場というのが第一印象だった。
(ロッカーの下部にある狭い台に腰掛け、靴を履き替える)
ロッカールームはちょっと違った。外からの光が入って明るく、閉塞感はないものの、特に高級といった感じではない。ロッカー間に椅子がなく、むしろ不便でさえある。
(バッグ置き場。側のキャディマスター室ではスタッフが宅配便の手続きも担当していた)
スターティングテラスへ出る。乗用カートがズラリと並び、担当スタッフらが慌しくキャディバッグを積み込む。だがバッグ置き場周辺はスペースが狭く、他の乗用カートが側を通るたびに作業が中断する。雰囲気もカジュアル感覚だ。
キャディマスター室でコインを購入。100mほど離れた練習場へと向かう。OUTコース1番ホールの先にあったドライビングレンジは、期待に反して完全な「鳥カゴ」。
(「鳥カゴ」の練習場。6席だけだが、混んではいなかった)
全部で6打席。先のネットまで40ヤードくらいしかない。天井が高めなのが救いだが、1カゴ(30球)も打てば十分。綺麗な白球とやや黄ばんだ中古ボールとが半々。やはり高級ゴルフ場の感覚ではない。
キャディマスター室で「バンカー練習場はありませんか」と尋ねたら、「バンカーはありませんが、アプローチ練習場ならありますよ」。
(アプローチ専用の練習場。これは嬉しかった)
練習場には力を入れていないと思っていただけに、これは意外な返事だった。行ってみると、専用グリーンの周辺で5~6人が熱心に練習している。
皆、ピンを目がけてボールがポンポン打つので、自分のボールを拾うのが大変なくらいだ。
(パター練習場。芝の状態は良かった)
パター練習場は2面。1面は「CLOSED」で使えるのは1面。2段グリーンになっていて本番と同じ感覚で練習できるのがいい。
立派なアプローチ練習場とパター練習場があるのに、なぜドライビングレンジが「鳥カゴ」だったのか。高級感とカジュアル感が交差する微妙なゴルフ場である。
(落ち着いた感じのクラブハウス)
クラブハウスの階段近くで、「選べる お気軽朝食」と書かれた看板を発見。全て500円で8種類の中から好きな朝食が食べられるという。
「朝ラーメン」か「朝カレー」かと迷っていたら、女性スタッフさんが「まかない丼がお薦めですよ」。食べてみたら美味しく、ボリュームもたっぷりだった。
周囲のテーブルは客でいっぱい。隣の席の客は「自家製はちみつレモン」(350円)と「生梅スカッシュ」「(525円)というオリジナル商品を注文していた。この朝食シーンはカジュアル感覚。
「東急」ブランドのイメージから、てっきり「キャディ付プレー」と思っていたら、会員氏が選んだのは「セルフプレー」。「平坦なコースで、あまりトリッキーでないからセルフでも大丈夫」とのこと。
開場は1977年(昭和52年)10月。当時は全て「キャディ付きプレー」だったようだが、その後、「セルフプレー」方式を導入したという。男性スタッフさんにその時期を尋ねたら「だいぶ前から」との返事だった。
今では「キャディ付プレー」と「セルフプレー」とを無条件で選択できる。これも高級感とカジュアル感が混在する表れの一つだが、選択肢があることは利用者にとって良いことだと考える。
ちなみに、会員制ゴルフ場ではあるが「会員の紹介、同伴」がなくてもネットなどを通じて誰でも申し込める。敷居は思った以上に低い。
設計は名匠・井上誠一氏の跡を継いだ宮澤長平氏。30年以上の歴史を経て、樹木は太く、逞しさを増し、端正な林間コースに仕上がっている。
(スタートホール近くには花壇も)
この日のスタートはINコース10番ミドルホールから。前の組は「キャディ付」、後ろの組は「セルフ」だ。
(10番ホールはクリークが走る)
左右の深い林とフェアウエーを横切る2本のクリークが高い戦略性を求める。油断できないスタートホールと直感。
(INコース10番ホール。正面に高い鉄塔)
(ティショットは「鉄塔の右サイド狙い」)
そんな堂々とした林間コースに余計なものが1つあった。正面にそびえ立つ高圧線の鉄塔である。同伴者は「あの鉄塔の右側が狙い目だね」と気にするそぶりを見せなかったが、どう考えても景観的には目障りである。
(派手な色に塗られた鉄塔がしばしば登場する)
こうした鉄塔は他のホールでも時々顔を出し、豊かな自然とのミスマッチを印象づける。
電力の安定供給が最重視される今日、これ以上言うとお叱りを受けそうだが、きっと設計者も同じ気持でいることだろう。
コース内の施設は一部、老朽化が進んでいた。10番ホールでもティインググランド脇にあったスタートハウスはかなり疲れていた。
(売店の外見はさえなかったが、営業は熱心)
(コース内にある「お手洗い」)
コース内の売店では女性スタッフがテキパキと対応。
「お手洗い」と大きな看板の出ていたトイレは外観こそ冴えないが、
内部は綺麗に整備されていた。
コースはバックティからだと全長6,704ヤードあり、申し分ない長さ。レギュラーティからは6,214ヤード、レディースティからだと5,356ヤードに短縮する。
ティインググランドは「バック」「レギュラー」「レデイース」の3面だが、スペースにゆとりがあり、もう一つティマークを置いて、4面としてでも 使える広さ。「4人の合計ハンディキャップが42以内(ホームページでは60以内と表示)ならバックティから打てる」(キャディマスター室のスタッフ)と いうルールだ。
この日もバックティ利用を示す「青い旗」をなびかせて走る乗用カートを何台も見かけた。
コースレートはバックティが71.6(メイングリーンの場合)、レギュラーティが69.7(同)。2グリーンでサブグリーンの方が多少易しい。
(グリーンの状態は悪かった。早く元の状態に戻ってほしい)
(一部のホールでは大型扇風機が活躍)
グリーンといえば、今夏の暑さで相当痛んでいた。メイングリーン養生のため、今回使用していたのはサブグリーン。所々で地肌が露出し「今日は芝目も何もあったもんじゃないね」と同伴者もかなり不満顔だった。
「現在使用しておりますSG(サブグリーン)は、一部コンディションが悪く、ご迷惑をお掛け致します」との貼り紙が出ていたので、ゴルフ場側も事態を深刻に受け止めていることは間違いない。
昼休みに男性スタッフに事情を聞いた。「今年は猛暑にやられ、グリーンが痛んでしまいました。でも去年の方がもっとひどかったので、それよりはマシかと・・・」。
ちょっと疑問が湧いた。クラブハウス前のパター練習場のグリーンは良好な状態を保っていた。同じ茨城県内にはコンディションの良いゴルフ場もたくさんある。同じ気象条件下で、なぜ荒れてしまったのか――。
会員氏は「今年も何回か来ているが、こんな状態は初めて。普段はとても良い状態なんですよ」と懸命にリカバリー。早急な回復を期待したい。
グリーンの問題を除けばコースそのものはハイレベルだった。午前中に回ったINコースは10番以降も戦略性の高いホールが続いた。
(各ホールは樹木でしっかりセパレートされていた)
(残り150ヤードを示す杭)
(ティインググランドから230ヤード地点に置かれたフラッグ。これを狙ってティショット)
(ラフは刈ってあったが、場所によってはかなり伸ばした所も)
(INコースは立ち木のハザードが目に付いた)
各ホールで難易度を高めたのが、フェアウエーに立つ大きな樹木。ティショットを曲げると第2打が必ず枝に引っかかるような場所に巧みに配されている。景観的にも立ち木があると無いとでは大違いだ。
(正面に見える3本の木が厄介)
(左ドッグレッグの14番ホールには案内板が設置されていた)
12番は右サイドに2本、13番は正面に3本の樹木が並ぶ。最も困ったのが池越えの14番ミドルだった。
(14番ホールの第2打地点。木越えで攻めるしかない)
第2打地点から急激に左に曲がる個性的な設計のホールで、真っ直ぐに打ち出されたボールは、目印として置かれているフラッグ近くに着地。だが、そこで左を向くと2本の大樹が立ちふさがって、グリーンを堅くガードしている。
(15番ショートホール。高い松の木がグリーンをガード。左サイドはOBゾーン)
15番ショートホールのグリーンは左。手前の高い木を越すか、右からドローで回さないとワンオンしない設計。16番もフェアウエー右サイドに松林が控え、サブグリーンを狙いにくくしている。
全体にフラットで平凡になりがちなコースを、立ち木を上手く配することでバラエティに富んだ、面白いコースに仕上げている。
(コース正面に見える筑波山。綺麗だ)
立ち木に悩まされたINコースに比べ、午後に回ったOUTコースは雄大な筑波山が眺められ、眺望の良さが際立った。
(乗用カートで「大池」の橋を渡る)
最初に雄姿を見ることが出来たのは、コースのほぼ中央にある「大池」を渡る橋の上から。その後はティインググランドから、フェアウエーから、グリーン上からと何度も楽しむことができた。
事前にホームページ(HP)を見て楽しみにしていた「大池」は大きな貯水池で、ハザードの役割を果たすものではなかった。
ラウンド中はほとんど姿を現さず、景観的にも印象が薄い。やはりこのコースは筑波山が「顔」である。
(クリークの上にはネットが掛けられていて、下の水は見えない)
(メイングリーンとサブグリーンが離れている3番ホールには珍しく「案内板」があった)
(「今年は松くい虫にやられ、けっこう松を切った」という)
(景観によっては、高原にいるような気分になれる)
(突然、巨大なタンクが出現し、ちょっとビックリ)
(立ち木にもいろいろな種類があった)
(7番ショートは池を抱えた美しいホール)
今回は好天にも恵まれ、好スコアで回ったプレーヤーが多かった。感想を聞くと「2グリーンの間に厳しいバンカーがなく、花道が広い」「グリーンも 状態は悪かったが、嫌らしい傾斜はなく、比較的素直」「ラフが刈ってあり、深くて脱出できないという場面はなかった」「OBを打っても “前4”がかなり前で、スコアの大崩れにつながらない」などを理由に挙げていた。
(「前方特設ティ」はかなり前。ライバルからは不満の声が出た)
確かに「前方特設ティ」がティインググランドから280ヤードも先に設けられているホールもあり、「ここからだと楽だなぁ~」という同伴者の呟きを耳にした。
「グリーンは状態の良い時でも比較的遅め」(キャディマスター室スタッフ)だそうで、そうした意味では初心者でも楽しめるコース設定になっている。
宣伝文句風に言えば「上級者から初心者までが楽しめる美しいコース」ということかもしれない。HPの「コース案内」に各ホールのレイアウトと写真があるので、詳しくはそちらを参照して頂きたい。
(乗用カートに搭載されていた「コースガイド」)
プレー中、同伴者の1人が「グリーンまでの残り距離が分かりにくい」とぼやいていたのが気になった。
乗用カート内には「コースガイド」が用意され、ホール全体のイメージはつかめる。しかし、ハザードまでの距離などは書かれていない。「初めてだと、セルフではプレーしにくい」というのだ。
セルフプレーヤーが増えていても、コース案内はまだ「キャディ付プレー」を前提にしたままになっているのかもしれない。
(階段の壁には美しいコースの写真がいっぱい)
冒頭のクラブハウスに場面を戻したい。レストランに向かう階段の壁には、コースの美しいシーンを映した写真が多数展示され、高級感や文化性を演出している。
(レストラン。外のテラスには白い椅子とテーブルが並んでいた)
(時期によっては「ランチバイキング」もある)
レストランの内装はどちらかといえばカジュアル。入り口には地酒「男女川」の樽がデンと置かれ、壁に貼られた「ハイボール、はじめました」のポスターも目を引く。
ランチメニューはざる蕎麦(うどん)1,050円から2,520円の鰻重まで11種類。珍しいので注文した「冷やしカレーうどん」は1,365円。ビール(生中、プレミアムモルツ)は787円。
ビールを飲んでいると、女性スタッフがワゴンを押して「おつまみ」の販売に回ってきた。接待コースに良く見られる光景だ。
メニュー表には「おみやげ」が大書されていた。「ミックスピザ」(1,260円)「コロッケ5つ」(630円)「おはぎ6つ」(同)と、こちらは庶民的である。
(脱衣場。右側の扉が浴場への入り口。外の光が良く入る)
(浴室前には濡れた靴を乾かす機器が備えられていた)
トイレは清潔感があり、個室(6つ)も横幅が広くて使いやすい。脱衣場はちょっと狭い感じ。浴室は周囲の半分以上が大きな窓で明るい。
外には庭園風に植えられた低木が並び、それなりに整備されているが、素晴らしい景観というほどではない。
このゴルフ場のもう一つの特徴はプレー料金の多様性にある。「通常料金」(乗用カート利用のセルフプレーの場合)はハイシーズンの平日で10,900円、休日で21,000円。OFFシーズンは平日が9,500円、休日が17,000円。平日の安さが目立つ。
このほか、プランによっては500円から2,000円近く安くなる「Web料金」の体系がある。
また、同じ料金か、日によってはそれ以下の料金で昼食や朝食が付いたり、季節によっては「昼食バイキング」が付いたりする。
例えば、2月上旬の平日は8,500円で昼食付。実質的なプレー代は7,000円程度とかなり安い。他にも「月曜セルフデー、弁当付」「組割り」 「10時台スタート限定料金」「男女ペア冬季限定カップルプラン」などなど、割安感に訴えるプランは盛りだくさんに用意されている。
(「コンペパック」も充実し、人気がある)
営業スタッフさんに「コンペパック」について尋ねたら「対象は3組10人以上ですが、相談に応じます。パーティメニューも1,050円と 1,575円の2コースありますが、それ以外も予算次第で対応します。パックなら昼食付でお得。昼食時のワンドリンクサービスはアルコールもOKですよ」 と押しまくられた。
営業熱心なので、じっくり調べてプレー日を選べばコストパフォーマンスの良いラウンドが楽しめるはずだ。
なお、キャディフィーは平日が+3,150円、休日が+3,675円と意外に高い。1.5ラウンドする場合も、追加料金はセルフで+3,000円、キャディ付で+5,000円。
早朝プレーは7、8月の2ヶ月間で終了してしまったが、午後プレーなら年間を通じて実施している。
最後に「アクセス」について簡単に触れておきたい。「つくばエクスプレス」利用が便利だ。
休日は秋葉原駅発7:24分の快速電車に乗車すると、つくば駅着8:09分。8:20分発のクラブバスに接続しており、8:50分には到着できる。
クラブバスはもう一本、同駅7:00発の便もあるが、さすがに早い。平日は快速電車の時間に合わせ、出発時間が8:30分に変更になる。いずれにしても、秋葉原駅からの所要時間は1時間半弱。
クルマ利用の場合は常盤自動車道の桜土浦ICからが最も近い。ただし、東京方面からなら手前の谷田部ICで降りても道路が良く整備しているのでスイスイ走れ、所要時間は余り変わらない。約40分。
クルマで来場した同伴者は「高速道路を降りてからが意外に遠い」とぼやいていた。
確かに、各シーンによって多様な表情を見せるゴルフ場だが、複雑に考えず「上質なコースを楽しめる手段が幅広く用意されている」と割り切れば分かりやすい。
ラウンドしてみて、ゴルフ仲間が会員権を購入した理由が分かるような気がした。
2011年8月26日金曜日
高坂カントリークラブ=『フジサンケイ クラシック』開催実績のある丘陵コース。若手キャディの投入でイメージ一新
(堂々としたフェアウエー。挑戦意欲が沸く)
(クラブハウス周辺には落ち着いた風格があった)
(木が1本あるだけで印象は大きく変わる)
(走るキャディさん)
高坂カントリークラブは埼玉県のほぼ中央、東松山市高坂にある。東武東上線高坂駅までは池袋駅から急行で1時間弱。同駅からクラブバスで5分とい う好立地だ。男子プロトーナメントの「フジサンケイクラシック」を第一回大会(1973年)から6年連続で開催し、全国的に脚光を浴びた。「米山コース」 と「岩殿コース」の2コースからなり、大会の舞台となったのは「米山コース」。今回(8月下旬)も「ぜひ米山コースで」と同伴してくれた会員氏にお願いし た。
実は過去に数回、同じコースでプレーしたことがある。現在「フジサンケイクラシック」が開催されている「富士桜カントリー倶楽部」(山梨県)や、 その前の「川奈ホテルゴルフコース・富士コース」(静岡県)に比べると、華やかさこそないものの、起伏の少ない穏やかな丘陵コースという印象が強い。
(雨宿りするにも、これではちょっと辛い)
(雷避小屋はかなり老朽化)
ただ、その一方で施設が古く、キャディさんもベテランが多いと感じていた。特に前回は動きの鈍いキャディさんに少々、苛ついた記憶がある。
今回は違った。朝スターティングテラスに出ると、若いキャディさんに大きな声で「おはようございます」と声を掛けられ、まずビックリ。
会員氏は「アンケート調査などを実施して関係者の意見を聞き、スタッフをかなり入れ替えたようだ」と事情を明かす。
実際、この日一緒に回ったキャディさんは素晴らしかった。「今春の採用で、まだ経験は半年ぐらい」だそうだが、スタート前のクラブ確認、挨拶、進行管理、安全チェック、クラブの受け渡し、ボールの行方確認、目土など、基本動作を的確に、しかも機敏に実行してくれた。
(走るキャディさん)
「米山コース」でのプレースタイルは原則「キャディ付、乗用カート利用」。しかし、キャディさんが客と一緒に乗用カートに乗る場面はほとんどなく、常に走る、走る、走る。砂袋を持って走る。パターを抱えて走る。
「元気だねぇ」「疲れないのかねぇ」「若いんだねぇ」。中年ゴルファーたちは感心することしきりだ。キャディさんの動きが早いとプレーにもリズムが出てきて、スコアまで良くなる。
本人は「見習いの時、しっかり教えてもらいましたから」と言うが、グリーンの芝目を正確に読み切っていたのには舌を巻いた。
「傾斜は右からですが、芝目が左からなので、ほとんど曲がりません」。ベテランでも読みにくいラインを自信を持ってアドバイスする。
アベレージゴルファーは何年プレーしていてもグリーン上で悩む。「後で芝目の読み方を教えてよ」とお願いしたら、ニコッと微笑んだ。
若い方なのに言葉遣いも極めて丁寧。クラブを手渡すと、必ず「お預かりします」。第2打地点に立つと「ハイ、ここからでしたら、上りを入れてピンまで残り165ヤードです」といった具合。
日常の話し方まではどうか知らないが、教育の成果はしっかり出ている。ベテラン組にも良さはあるが、やはり「ひたむきさ」が前面に出る若手には好感を抱く。
他のキャディさんはどうなのだろう。偶然、良いキャディさんに当っただけなのだろうか。インターネットで高坂CCの「プレーヤーコメント」を読んでみた。
7月にラウンドした埼玉県在住のDさんは「抜群のキャディでした。残りヤード、グリーン上の読みもばっちりで、スコアが5つは違っていたと思います」。
全く同じ様な体験をしている。偶然ではなかったようだ。
後で気が付いたのだが、宅配便担当スタッフの胸にも「研修生」の文字があった。
やはり若い女性だったが、バッグの「送り状」を書き始めると、ゴルフ場ガイドブックを開いて、自発的にゴルフ場の住所、電話番号を読み上げてくれた。手抜きせず、何事にも一生懸命なのが若手のいいところだ。
スタッフの入れ替えが進んでいる一方で、施設は古いままだった。開場は1958年(昭和33年)秋。すでに53年が経過した老舗である。
(受付は一般的なデザイン)
エントランスに入ると右手に受付。左手奥にプロショップ。その手前にあるスペースは時代を感じさせるような古い造りだった。節電のためもあるのだろうが薄暗く、奥に置かれた重厚なソファーもどことなく寂しげな様子に見える。
(ゲスト用ロッカーは会員専用ロッカーより高級感があった)
会員用の細いスチール製ロッカーが並ぶ通路を歩いて階段を降りた先に、ゲスト用のロッカールームがある。会員用より立派なロッカーで有り難いのだが、途中の通路の床にはシミがたくさんあり、「あらら」という感じだった。
(外にはテラスなどがあり、景観はあまり楽しめない)
2階のレストランはごく普通の内装、雰囲気。外の景色も1階の屋根とテラスに遮られて、あまり良く見えない。
(クラシックで落ち着いた感じの2階ラウンジ)
むしろ隣にある広いラウンジの方が魅力的だった。落ち着いたデザインで、調度品も上質。前回、プレー終了後、ここで女子プロ大会のテレビ中継を見ながらビールを味わった記憶が蘇った。
「ゆったりとしたラウンジを設け、メンバー同士の懇親を深める」――。それが開場当時に目指したクラブライフだったのだろう。
1階の貴重品ボックスに最新の「静脈認証式」を導入したり、大型液晶テレビを設置したりと営業努力の跡も見られる。それでも全体に時代遅れの感は否めない。
(スターティングテラスには「岩殿コース」に向かうバスが待機。奥に工事用のクレーンが見える)
肝心のコースや練習場はどうだろう。こちらはあまり変わっていて欲しくない。スターティングテラスの正面に小ぶりのパター練習場。「岩殿コース」に向かうバスも、いつもの場所で待機している。雰囲気は同じだ。
(ドライビングレンジ。ネットはあるが、コースに近い景観)
キャディマスター室でコインを買い、クラブハウス横のドライビングレンジに向かった。
打席の左半分がシートでふさがれ、使用できるのは右側6打席のみ。階段を降りて下階の打席を見ると、やはり奥半分が工事中。9打席のみが利用可能な状態だった。
ボールは線の入った練習用のもので、黄ばんだものも含まれていたが、30球で210円と安い。正面のヤード表示は150ヤードまで。
約200ヤード先のネットに「打」「込」「禁」「止」の4文字が並んでいる。
練習を済ませてクラブハウスを見ると、奥に高いクレーンが1本立っている。目を凝らすと、なんとクラブハウスの建て替え工事が行われていた。
朝、クラブバスで到着し、そのまま入館してしまったので、この工事には全く気が付かなかった。すでにゴルフ場側も老朽化対策に動き始めていたのだ。
(側では新しいクラブハウスの建築工事が進んでいた)
「運営を続けながら3期に分けて工事するので、完成までにまだ2年ぐらいかかりそう」(受付スタッフ)だが、どう生まれ変わるのか。一転、リニューアル後の来場が楽しみになってきた。
いよいよコースに出る。結論から先に申し上げると、穏やかな起伏を持ち、手入れの行き届いた名コースぶりは少しも変わっていなかった。
全長距離は「バックティ」からが6,773ヤード、「レギュラーティ」が6,328ヤード、「レディースティ」が5,480ヤード。
コースレートは「バックティ」で72.1(Aグリーンの場合、以下同)、「レギュラーティ」で70.3、「レディースティ」で70.6(女子コースレート)。
(当日のピン位置はグリーンを6分割して表示)
(1番スタートホール。曇天で見えにくいが、前方に市街地が見える)
印象的なホールをいくつか紹介したい。最初はスタートホールの1番ミドル。緩やかな下り傾斜が続き、正面に高坂の市街地が望める。軽い馬の背のフェアウエーで、曲げるとボールが坂を転げ落ち、後が大変になる。
(池越えの4番ホール。周りの樹木は良く手入れされていた)
4番ショートホール。レギュラーティからでも184ヤードと長く、ティインググランドの前には池。景観の美しさや池越えのプレッシャーに気を奪われていると、グリーン手前のバンカーに捕まりやすい。
(5番ホール。突然、クルマの騒音が聞こえてきたのには驚いた)
関越自動車道がコースの左側を通り、クルマの騒音に戸惑う5番ホール。332ヤードと短いミドルなのにハンディキャップが「1」。
難しい理由はすぐに分かった。右サイドに置かれた樹木がティショットの狙い場所を狭め、2打地点からはグリーン面が見えないほど高い砲台グリーン。
ショットの方向性と距離感が2つ同時に揃わないと攻略できないホールなのだ。
(桜、イチョウ、藤、カシ、ハナミズキ・・・。コース内には様々な種類の木があった)
(グリーンまで距離のあるバンカーショットは難しい)
(売店の内部は普通。女性スタッフは対応に好感が持てた)
(高低差の大きいショートホールは距離感が第一)
コース売店側の6番ショートホールも谷越えで、距離感がつかみにくい。「ピンまで150ヤード弱?そんなにあるのかなぁ」と疑った3人はみなショート。クラブを持ち替えた4人目は逆にオーバー。
(7番ロングホールは左サイドが危険)
(各ホールの間にはこんな斜面が続く)
(所々に残り距離を示す数字があり、便利だった)
(高圧線や鉄塔は景観的には好ましくないが、やむを得ない)
(ティマークにはひと工夫)
(10番ミドルホール。時にはアップダウンもある)
(比較的距離のある11番ショートホール)
(コース内の立ち木が攻略ルートを狭める)
(バンカーを苦にしていてはスコアがまとまらないコースだ)
(乗用カートに設置された無線装置)
(14番ロングホール。池の周りは日本庭園風に整備されていた)
(これは夜間照明でなく、芝を保護するための扇風機)
(樹木には名前を書いたプレートがあった)
後半のINコースでは11番のショートホールと14番のロングホールが「景観の美しさ」で強く記憶に残っている。
特に14番はグリーン左手前の池が景観的にも、戦略的にも存在感を発揮している。
(「馬の背」の17番ホールフェアウエー右サイド。曲げたら大変だ)
最後にもう一つ。最も手強いと感じたのが17番のロングホールだった。距離はレギュラーティから469ヤードと短いのだが、フェアウエーが馬の背状態になっていて、1番ホール同様、左右に曲げるとリカバリーが厳しくになる。
このコースは一見、平坦で簡単そうに見えるが、両サイドあるいは片側が下に傾斜していることが多く、正確にフェアウエーセンターを捉えていかないと、常に余分な一打を強要される。
「調子はいいのにスコアがまとまらない」というケースが多いのも、このためだろう。
設計は赤星四郎、井上誠一、安田幸吉らと並んで日本のゴルフ黎明期を支えた富澤誠造氏。簡単そうに見えても「ワナ」は存分に仕掛けてある。
ただ、変化があって刺激的なINコースに比べると、OUTコースは似たような印象のホールもあって、やや単調な嫌いがあった。
(夏場にもかかわらず、コースメンテナンスは概ね良好だった)
コースコンディションは猛暑が続いたのにもかかわらず良好。フェアウエーは一部にベアグランドがあったが、気にする程ではない。
(グリーンはやや軟らかめ)
平成16年の改修工事で「高麗」を「ベント」に変え、ベント芝2つになったグリーンも多少軟らかく感じた程度で、コンディションに問題はなかった。
「通常は9.5フィートの速さで営業していますが、この暑さなので芝が傷まないよう少し伸ばし、今日は8.5フィートです」とキャディマスター室の男性スタッフさん。
前日に雨が降ったので、実際はさらに遅めだったのではないかと思われる。
ラフも適度に刈り込んであり、「コースに打ちのめされる」という感じではなかった。
イベント開催時にはまた、厳しいセッティングに仕上げるのだろうが、この日は景観同様、穏やかで上質なコースという印象だった。
ちなみに前回(5月)に来場した時は新緑の季節で、ツツジや八重桜が咲き、売店周辺の花壇には小さなパンジーの花がたくさん植えられていた。池の側では可愛いカルガモの隊列とも出会った。
春と秋を中心に、季節の変化も楽しめるコースになっている。
料金は「米山」「岩殿」とも同じで、ゲストの「通常料金」は「平日」が23,037円、「土日祝日」が30,125円。夏冬のOFFシーズンの「季節料金」は「平日」が17,052円、「土曜日」が25,452円、「日曜日」が24,402円。
(他に「通常料金」の場合、火・金曜日は2,100円の割引、夏冬は逆に210円の「季節手当」が必要)
ハイシーズンの休日とはいえ、3万円を越えるプレーフィは、さすがに高い。交通費や飲食代、雑費などを加えると、35,000円近い出費を覚悟しなければならない。
老舗の「会員制ゴルフ場」ではあるが、ゲストだけでもプレーする道はある。
「平日なら、同伴プレーヤーの中に以前、高坂CCでプレーした経験者がいればOKです。いらっしゃらなくても、空いていれば(予約を)お受けしますので、無理にメンバーさんを探さなくても大丈夫ですよ」と営業スタッフさん。
休日の場合はどうか。「混んでいる日は無理ですが、空き具合によっては可能です。3ヵ月前から予約を受け付けているので、早めに申し込んでいただければ取れます。一度お受けすれば、後で混んできても『やめて』とは言いませんので」。
アクセスの良さは冒頭に記した通りだが、最寄りの高坂駅からクラブバスが朝夕とも10本以上出ているので、近年は電車での来場者が増えているという。
同伴者は「飲酒運転厳禁なので、最近は駅から近く、必ずクラブバスのあるゴルフ場を選んでいる」と話す。
ただ「高坂CC」はクルマでの来場も比較的便利だ。東京方面からなら関越自動車道を北上、鶴ヶ島ICで一般道に下り約20分で到着できる。
都心からでも1時間半と掛からない近さ。この交通事情の良さも上記のプレーフィを下支えしている大きな要因だろう。
レストラン紹介の際にリポートし忘れたが、食事面はまずまず。この日のランチメニューは10種類。10月から5月までは名物「高坂タンメン」(950円)が人気。夏場は「冷し中華そば」(1,050円)などに取って代わる。ビール(生中)は600円。
朝食は和洋定食が850円。コーヒー350円。パーティルームは7つ。パーティメニューは1人2,000円からで「相談に応じます」とのこと。
高坂CCにはもう一つ「岩殿コース」がある。
ホームページ(HP=)を見ると「各ホール樹木でセパレートされており、フェアウエーは多少のアンジュレーションはあるが広く、距離は米山コースより若干短めです」と紹介されている。
会員氏も「フェアウエー、グリーンとも起伏があって、米山とはまた違う面白さがある」と話す。
「月曜日(休場日)セルフプレー」や「オープンコンペ」「早朝スループレー」などは皆、こちらの「岩殿コース」で行われており、ゴルフ場側も上手に使い分けているようだ。
最後に、細かなことだが「良かった点」と「まずかった点」を1つずつ。
(脱衣場はやや狭かった)
「良かった点」は浴室。内装や外の景観は大したことはないのだが、湯船が「39℃-41℃」と「41℃-43℃」に分けられ、自分の好みで使い分けられる。
「まずかった点」は受付での対応。帰りに「近くで1泊するとしたら、どこがいいですか」と尋ねた。
男性スタッフさんが坂戸市にあるホテルの「特別ご宿泊金券(1,000円分)」を渡してくれたのは嬉しかったのだが、裏を見ると「2011年7月31日まで」で既に有効期限切れ。
丁寧な言葉遣いやテキパキした動作など、他の面ではホスピタリティの高さを感じていただけに、券が使えないのはやはり残念だった。
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