2010年9月5日日曜日

上総一の宮カントリー倶楽部=時々、海も見える大型ゴルフ場。温暖な気候が魅力

 「プレー代が安いし、コースは一流。東京からちょっと遠いけれど、今度、一緒にどうですか」。そう紹介され、誘われたのが「上総(かずさ)一の宮カントリー倶楽部」だった。ホームページ(HP)を見ると「太平洋を望む高台に広がる、シーサイドコース」とある。普段、山の中や林間でプレーすることが多いため「シーサード」という言葉にはからきし弱い。青い海、白い波を想像しながら、その日を待った。
 場所は千葉県長生郡一宮町。地図で見ると九十九里海岸の南の端に近い所だ。好天の日曜日。東京駅からJR外房線、7:15分発の特急電車「わかし お1号」安房(あわ)鴨川行きに乗って一路「上総一ノ宮駅」へ。乗り換えなしの直通運転なので早い。1時間ほどで到着する。特急料金は片道900円。
 接続しているクラブバスで約10分。「東京から遠いのが難点」と言われていたので、「思っていたより近いじゃないですか」と誘ってくれた同伴者に車中でお礼を言う。
 南に向かって走っていたクラブバスは途中で右折し、山に向かってどんどん走る。海とは反対側だ。やがて姿を現したクラブハウスは山の高台にあった。バスを降りて周囲を見渡すが、海は見えない。
 「シーサイドじゃないんですね」と言うと、受付のスタッフさんが「コースに出れば海が見えますよ」。

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(クラブハウスの外観。送迎バスの多さが目立った)

 開場は昭和47年(1972年)11月。すでに40年近い歴史を持つ。クラブハウスの外観はオーソドックスなデザインで、駐車場も周囲にあり、比較的広い。建物の内部がやや暗いのは落ち着いた雰囲気を出すためか、それとも老朽化した個所を目立たなくするためか。
 館内は比較的ゆったりとした設計。入り口近くの一等地がゴルフバッグ置き場になっていたのが印象的。公衆電話(2台)の置かれたコーナーに懐かしさを覚える。奥のプロショップも狭いながら品数が充実。カウンターの中では女性スタッフが手持ちぶさたそうに客を待っていた。
 どこか、のんびりとした雰囲気。東京近郊の何かと慌しいゴルフ場と違い、時間がゆっくり流れている感じがして嬉しい。
 だが、その一方で、経営環境の厳しさを伺わせるシーンもあった。例えば、階段の上り口に掲げられた「ロッヂ」の看板。「2階は宿泊施設なのですか」と受付スタッフに尋ねたところ、「今年1月まで営業していましたが、利用者が少ないので閉鎖してしまいました」という。
 最近、地方のゴルフ場を中心に割安な「宿泊パック」が増えているが、今の利用者はただ泊れるだけでは満足しない。「安さ」と「快適性」の両方が必要なのだ。これが難しい。話を聞いて一瞬、頭の中が仕事モードになってしまった。
 気分を変えて、練習場に飛び出す。キャディマスター室に「アイアンしか打てません」との貼り紙。練習場の看板にも「土日、祝日のみ営業。午前7:00から11:00まで。アイアンのみ」とある。練習場にはあまり力を入れていないようだ。
 ドライビングレンジの打席数は10。距離は約200ヤード。1箱30球で料金は315円。ボールは新旧のものが混ざっている。
 周りを山に囲まれ、練習場から見た景色はまるで山岳コースのよう。ボールの落ちどころが下り斜面になっているため、どのくらい飛んだのか、確かに分かりにくい。
 早めに切り上げてパター練習場へ。こちらはフラットで細長いグリーン。グリーンといえば丸いものと思い込んでいたので何か妙な感覚だ。プレーヤーが一列に並んで練習できるので、混みあっている時は案外、好都合かもしれない。

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(東コースのINに向かうクラブバス。後ろに乗用カートを乗せて走る)

 スタートは「東コースIN、10番ホール」から。そこに向かうクラブバスがまた面白かった。小型バスの後ろに特殊な荷台が付いていて、乗用カートを乗せ一緒に運ぶのだ。「キャンピングカー方式ですね」と同伴者。
 こうして9時半過ぎ、やっと最初のティショットを放つ。フェアウエーは思っていたよりも広く、平坦だ。「穏やかな丘陵コース」というのが第一印象。
 ただ、実際にプレーしてみるとOBゾーンが意外に近く、この10番ホールでも同伴者は左にボールを曲げて、「あれぇ~」と首をかしげていた。善し 悪しは別にして、ラフまで短く刈られているために、ボールがなかなか止まらない。これもOBが出やすい理由の一つだろうと考えられる。

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(10番グリーンで見えた海。「絵になる景観」だ)

 「海だ!」と叫んだのは10番ホールのグリーン近く。パッと開けた空間の先に青い海が見える。手前に松の古木。そして足元には緑のグリーン。
 「シーサイドコース」といっても海沿いではないので、夢想していた浜辺や白い波は見られず、「高台から海が眺められる」といった程度だが、それでも海の見える景色は美しい。
 続く11番のショートホールでも左側に海が望め、皆しばらくは正面のグリーンよりも海の方に目を向けていた。

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(最も良く海の見えた14番ホール。じっくり楽しむ余裕がなかったのが残念)

 最も良く見えたのは14番ロングホール。10番と同様、グリーン近くで左側に大きく海が広がる。スタート前にキャディさんが「14番では水平線が丸く見えますよ」と話していたのを思い出す。
 だが、現実は厳しかった。このホールではボールを曲げて大苦戦。後ろの組が迫っていたこともあって、ゆっくり海を眺めている余裕はなかった。「この先も海は見える」と信じ、先を急いだ。

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(続く15番ホールは景観が一転)
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(15番のティインググランドからの景観。典型的な谷越えホールだ)

 それが間違いだった。続く15番のティインググランドは周り中が木、木、木。谷越えの印象的なホールだが、海が見えなければ他の丘陵コースと変わらない。そんなホールが最終18番ホールまで続く。

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(東コース1番ホール。フェアウエーが広く、伸び伸びと打てる)

 午後に回った東のOUTコースも自然豊かな丘陵コース。「2番と6番で海が見えますよ」と言われていたが、2番ホールでは気づかず、懸命に海を探した6番ショートホールではティインググランドから、はるか遠く、樹木の間にちょっとだけ見ることができた。

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(東コースの5番ホールからは海がちょっとだけ眺められた)

 このゴルフ場は東コースと西コースからなる。各18ホールあり計36ホール。海があるのは東側なので、西コースからはほとんど見えない。ハワイな どにある「シーサイドコース」のイメージとはだいぶ違ったが、今回は東コースを回ったので、何とか美しい景観に出会うことはできた。
 ゴルフ仲間には「比較的平坦で、美しい丘陵コース。おまけに東コースでは時々、遠くに海が見えますよ」と正確に案内してあげたい。
 ここまで景観にこだわってしまったが、コースとしての面白さも味わえた。特に印象に残ったのは5番のミドルホールと6番のショートホールだ。
 5番ホールは第2打地点に立って、びっくりした。ベントグリーンは左にドッグレッグした先に見えるが、高麗グリーンは正面の谷をグッと下った、まさに“底”にある。
 この日、利用したのはその高麗グリーンだった。残った距離は短いが、風と打ち下ろしの影響が読みきれず、クラブ選択に迷う。前を見ると右側にフォアキャディさんが立っていた。OBが出たり、ボールがなくなったりと、トラブル多発地帯であることが分かる。
 悩んだ末、短めに打つ。「あっ、ちょっと左かな」。慌ててフォアキャディさんを見る。サッと両手を広げた。「セーフだ」。降りてみると、グリーン左サイドのネットの下にボールが止まっていた。なかなかスリリングである。
 6番は池越えのショートホール。といっても谷が深く、ティインググランドからは池が見えないため、実感としては谷越えホールだ。レギュラーティからは182ヤードあるのにレディースティからは54ヤード。このあたりは共にトリッキーな設計。
 コース全体で言えば「美しい絵になるホール」よりも、こんなレイアウトの面白さやハザードの存在から「印象に残るホール」の方が多かった。

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(フラットだが、要所にバンカーが配され、正確なショットを求められる)

 コースやグリーンのメンテナンスはまずまず。キャディマスター室でグリーンの硬さとスピードを尋ねたが、「測っていません」とのこと。これはちょっと残念。ただ「刈り高は3㎜なので結構、速いと思いますよ」。
 コース内の売店は無人で、自動販売機を利用するため現金が必要。また南国ムードを醸し出すような樹木や、柑橘類の実がなった木が所々に植えられて、プレーヤーの目を楽しませてくれたことも付け加えておきたい。
 プレースタイルは、東コースが「乗用カート利用のセルフプレー」、西コースが「歩き(リモコンカート利用)のセルフプレー」。キャディ付プレーを希望することもできる。料金はプラス3,000円(3~4バッグの場合)。

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(乗用カートには詳しいレイアウト図が常備されていた。これは役に立った)

 料金表を見ると、今回プレーした夏季シーズンの場合、平日は東コース8,000円、西コース5,800円。一番高い土曜日で東コース13,300円、西コース12,300円と東コースの方が高い。
 キャディさんに「東コースの方がレベルが高いのですか」と聞くと、「コースに差があるわけではなく、乗用カート代などが含まれるためです」との返事。
 確かにレギュラーティからの全長距離(高麗グリーン)は東が6,262ヤード、西が6,328ヤード。同じくコースレート(同)も東が70・0、西が69・1と似たような数字だ。
 今回は「乗用カート利用のセルフプレー、高麗グリーン」だったので、次回は西コースやベントグリーンでラウンドしてみたい。何せ全部で36ホールもある雄大なゴルフ場。「西コースはまた東とは違う趣きがある」そうだから楽しみだ。
 プレースタイルも選択できる。別途料金が掛かるが、平日なら2サムプレーや1・5ラウンドもOK。事情が許せばスループレーも可能だ。「混雑する土日、祝日は難しい」がこれはやむを得ない。
 プレー終了後は浴室へ直行。クラブハウスがやや疲れた感じのだったので、正直、あまり期待はしていなかった。しかし、しっかり改装されていて、湯 船いっぱいに西日が降り注ぎ、中は眩しいくらい。パーティションも整備されている。コンパクトな設計で、豪華さには掛けるが不満はない。窓の外には小さな 庭園。
 脱衣場も同じ様な印象。飾り気はないが機能的には必要なものが整っている。ただ、脱衣場の外に並ぶロッカーは幅が狭く、ちょっと使いにくかった。
 2階のレストランは、ほぼ予想した通りの雰囲気だった。今風のデザインではないものの、豪華ささえ求めなければ十分、寛げる。奥にテーブルを縦に並べたスペースがあり、コンペのパーティはここで行う。
 朝食は和・洋定食、おにぎり定食がいずれも650円。ランチメニューは945円の「信州戸隠そば鴨せいろ」から2,500円の「産地直送 活締め鰻重」まで種類が豊富。周囲を見ると1,360円の「魚介入りカレーライス」や1,580円の「一の宮弁当」に人気が集まっていた。
 ビール(生中)は670円。パーティプランは割安で単品料理の種類も多く、工夫を凝らしているなと感じた。
 帰り際に「次回は一泊して東コースと西コースを全部回りたい。どこに宿泊したら良いでしょうか」と聞いてみた。教えてくれたのが「サンライズ九十九里」という国民宿舎。パンフレットを手渡してくれた。
 よく見ると「サンライズ ゴルフ コレクション」という商品があり、平日プレーなら「1泊2食付」で17,000円とある。ただし、場所がかなり離れているため、クルマがないと移動が難し い。「人数がまとまるようなら、送迎バスを検討しますよ」と担当の男性スタッフさん。
 「4人でもいいですか」と尋ねたら「う~ん・・・」。人数が確定したら改めて相談しましょうということになった。
 最後に、このゴルフ場が自慢する「温暖な気候」について触れたい。HPには「海沿いの気候のため、内陸コースより気温が夏は1、2度涼しく、冬は3度暖かいと言われています」とある。
 気象庁に問い合わせてみると、一宮町の月間平均気温は計測していないが、最寄りの茂原市分の観測データがあり、それによると冬でも1日の平均気温が7度前後(2009年)と確かに温かい。このゴルフ場は茂原市より海に近い分だけ、さらに温かそうだ。
 夏場は茂原市で25度前後(同)。2010年の猛暑ではさすがに平均気温も上昇したに違いないが、プレーをしたこの日も、暑い都心よりは多少涼しく感じた。
 「雷も来ない」という。そう聞いて、コース内に避雷用の小屋がほとんどなかったことにも合点がいった。
 「トップシーズンは11月から12月。プレー代もこの時期が一番高くなります」。降雪に悩まされる北関東のゴルフ場から見れば羨ましい限り。温暖で安定したな気候は大きな魅力である。

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