2010年6月27日日曜日

エヴァンタイユゴルフクラブ=名前の印象とは異なるタフなコース

 「エヴァンタイユ」とはフランス語で「扇」の意味。ゴルフ場全体の敷地が扇形をしていることから命名されたようだが、たまたま同じ名前の高級フラ ンス料理店を知っていたため、「上質でオシャレなコース」というイメージを勝手に膨らませてしまっていた。実際のコースは「豊かな自然に包まれたチャンピ オンコース」ではあるものの、想像以上にトリッキーで難しく、強烈な印象を残すホールの連続だった。


014

 「会員制」を取っているが予約に会員の紹介などは必要なく、誰でも簡単に申し込める。ホームページ(HP)を見ると、1人でも参加できる「オープンコンペ」を頻繁に開催。各種割安プランの設定も多く、営業面での熱心さが伝わってくる。
 都心からも比較的近い。クルマでなら東北自動車道で川口中央ICから佐野藤岡ICまで56 Km、約45分。高速道路を降りてからは20分余りで到着する。所在地の栃木市は県の最南部に位置しており、高速道路で渋滞さえなければ都心からも疲れることなく到着できる。
 ただし、電車利用だとちょっと大変だ。東京駅から新幹線で小山駅へ。そこで両毛線に乗り換えて栃木駅まで15分。送迎用のクラブバスがないのでタ クシーを利用するしかなく約15分、3,000円ほどかかる。浅草駅から東武日光線に乗る手もあるが、やはり栃木駅からはタクシーだ。このゴルフ場はクル マでの来場を前提に運営されているように思われる。
 今回は仲間のクルマに同乗して訪れた。一般道からクラブハウスまで続く長いアプローチには良く手入れされた植栽が並び、高級感を醸し出している。 玄関を入ると、館内のゆったりしたレイアウトに気持が和む。中央に半月状に並んだソファー。右手が受付とプロショップ。奥にラウンジがあって、さらに左手 奥がレストランという構成。
 プロショップには地酒や「佐野ラーメン」などの地元産品の他、「工場直送」を謳った「アメリカン倶楽部」製のクラブや、「値下げしました」「最大 50%OFF」と表示されたウエア類などがズラリと並ぶ。HPを見た時に「営業熱心なゴルフ場だな」と感じていたが、実際に来てみても同様の印象を受け た。
 クラブハウスは変則的な造りで、1階で受付を済ませて階段を降りると、下にコースに面したスターティングテラスがあり、そこがまた1階という構造。山の斜面を効率的に使い、窓辺から周囲の山並みを大きく見渡すことができる仕組みだ。
 「軽く練習を」と思ってスタッフに練習場の場所を尋ねると、「室内練習場があります」との返事。「室内?」。怪訝に思って行ってみると、先ほど降りた階段の下近くに小さな室内練習場があった。
 打席数は3。室内なので目の前に張られたネットを目がけて打つしかない。天井も低い。ちょうど大型のゴルフショップにある試打スペースのようだ。 練習ボール代が無料なので張り切ったが、中は蒸し暑く、打ち始めると汗がタラタラ。直ぐに諦めて外のパター練習場へと移動した。
 こちらの練習場は目の前に中規模の池があり、その両サイドに9番と18番ホールのグリーンが配されている。いかにも人工的ではあるが、良く計算さ れた美しい景観だ。ただ、パター練習のできるグリーンはこの1つしかなく、「次はアプローチを」と思って周囲を見渡しても、アプローチやバンカーの練習場 はない。スタート前の練習にはあまり比重を置いていないコースのように感じた。
 プレースタイルは「乗用カート利用、セルフプレー」のみ。マスター室で確認すると、やはり「キャディはいません」という。後で気が付いたが、コー ス内の茶店は無人で自動販売機が並んでいるだけ。朝の受付も男性スタッフが1人で奮闘していた。送迎用のクラブバスもない。人件費を節約して、その分プ レー代を安く抑え、集客力を高める。そんな経営方針が透けて見える。
 肝心のコースはどんなだろう。セルフプレーは嫌いではない。低料金でプレーできるのだから、コースさえ良ければ不満はない。
 1番ホールは山に向かって緩やかに上る長めのミドルホール。最初に戸惑ったのはティインググランド数の多さだ。何と7つもある。「フルバック」「バック」「レギュラー」「シニア」「レディース」・・・これで5つ。他に2つある。何と呼べば良いのだろう。
 スタッフに尋ねてみると「うちはティインググランドが小さいので、芝の養生のために頻繁にティマークを前後に動かします。INコースの10番は8つもあります」。
なるほど。山間部ではティインググランドのスペースを広く取れないので細かく分け、縦長の配列にしているのだ。コースの距離を短くすることで、初心者や女性でもプレーしやすくする配慮もありそうだ。
 2番ホールではもっと戸惑った。ローカルルールで「ティショットは5番アイアン以下のクラブで」とある。ミドルホールとはいえ、距離がバックティ から310ヤード、レギュラーティからだと276ヤードしかない。乗用カート内に置かれていた「コースレイアウト図」を見ると、第2打地点からは右に大き くドッグレッグ。しかも相当の下り坂だ。
 このコースでラウンドするのは初めて。しかも、セルフプレーなので相談者がおらず、どこに、どう打って良いのか分からないまま漫然と打つ。
 「あっ、OB・・・・・」。同伴者も第2打がグリーンをオーバーしてOB。「これは大変。相当に手強いコースだぞ」と同伴者同士、顔を見合わせた。
 その後も良く言えば「戦略的なホール」が続く。時季のせいもあるが草花はほとんど咲いてなく、周囲は緑一色。大半のホールが打ち上げ、打ち下ろし、ドッグレッグ・・・。「景観の美しいホール」というより「印象に残るホール」が圧倒的に多かった。
 例えば、INの12番ロングホール。山の間をS字型にフェアウエーが走る。正面にはクリークがあり、ティインググランド脇のコースレイアウト図を 何度見てもティショットの狙い目がなかなか決まらない。2打目地点に立つと、右側にクリークと池、そして正面に山。グリーンと池の間には大きなバンカーが 口をあけ、OBラインの白杭も目に入ってくる。
 「いやー、本当に難しい」とぼやき続けたが、後でスコアカードを見ると、このホールのハンディキャップは「16」。何度かプレーし慣れてしまえ ば、実は簡単なホールだったのかもしれない。今回は巧みに仕込まれたハザードと景観の“脅し”に負け、スコアを大きく崩すことになったが、「次回は必ずリ ベンジしたい」と思った。
 他のホールも総じてフェアウエーが狭く、山の斜面も自然のままの状態になっていることが多いので、ボールを曲げると、そのまま紛失球になりやすい。このコースは飛距離より、まず正確なストロークが大切だと痛感する。
 グリーンも曲者だった。2段グリーンは珍しくなく、ボールの位置によってはかなり大きく曲がる。前日に雨が降ったこともあるのだろうが、この日のスピードは遅めに感じた。

011

 特に上りのラインは止まりやすく、強めにしっかり打たないとショートしてしまう。普段、速いグリーンでプレーしている人はかなり戸惑いそうだ。ここで良いスコアを出すには「コースマネジメント」だけでなく、「グリーンの癖」にも慣れておく必要がある。
 「難しい」という思い込みもあって、「今日はかなり渋滞するぞ」と覚悟した。ところが実際には待たされる場面がほとんどなく、スムーズな流れで びっくり。その秘密は「前4」にあった。大半のホールにアドバンスティが設置され、しかも、その位置がかなり前なのだ。同伴者も「第一打目にOBを打った 方がスコアはまとまるかもしれないね」と苦笑い。
 ラウンド中、クラブハウス内のあちこちに「スロープレーは重大なマナー違反です」と書かれた貼り紙のあったことを思い出した。そうした小さな努力もスムーズな進行を実現する一助になっているのかもしれない。
 昼休み、男性スタッフさんに「なかなか大変なコースですね」と感想を漏らすと、「確かにホール間のインターバルには高低差がありますが、コースそ のものは意外にフラットだったでしょう。栃木県のコースはこんな所が多く、これを山岳コースと呼んでもらっては困ります。丘陵コースですよ。頑張って下さ い」と励まされた。
 後でコースレートを調べたら「バックティ」から71・8、「レギュラーティ」からで69・4。確かに数字的には難コースというほどではない。それ でもフェアウエーの狭さや随所に設けられたハザード、グリーンのうねりなどが脳裏に焼きつき、数字以上に難しく感じたのは事実だ。2回目以降はもう少し冷 静にラウンドできるかもしれない。
 フェアウエーやグリーンのメンテナンスは山間部のコースとしてはまずまずだった。ただし、ティインググランドはディボット跡が目立ち、メンテナン スが良いとはいえなかった。15番ホールのグリーン右脇には珍しく日本庭園風の「滝」が造られ、コース全体のアクセントになっていたのが印象的。
 茶店の自販機は現金がないと使えない。椅子とテーブルが用意されていたが、空調は稼動してなく、梅雨時だったこともあり、蒸し暑くて人影なし。
 次回のラウンドに向けてメモしたことが2つ。1つは小銭を用意すること。もちろん、この自販機を利用するためだ。もう一つがマスター室そばにあっ た「GPSゴルフナビ」を携帯すること。1台525円で貸し出している。実は今回も利用しようかと迷ったが、コースを楽観視して見送った経緯がある。コー スに不慣れなうちは利用した方が良い。初めてのコースでは強い味方になってくれそうだ。
 スコアカードにトイレや「売店」、避難小屋の位置が印刷されているのは良かった。「NP」「DC」というマークも。これはニアピン、ドラコン推奨 ホールの印だそうだ。また、グリーンのピンの位置は、旗の色(青、白、赤)で手前か奥かが分かるようになっていた。いずれもセルフプレーならではの工夫 で、好感が持てた。
 コースから離れる。まず“2階”のレストランだが、ここは快適だった。豪華さには欠けるものの、明るく、大きな窓からは正面の9番、18番ホール とパター練習場前の池が良く見える。メニューは比較的豊富。全体に低価格に抑えようという努力の跡が感じられる。ただし、ビール(生中)の735円は高 い。
 朝食メニューは充実している。特に朝食セットは自慢の一つらしく、HPや玄関の脇のパネルで詳しく紹介していた。レストラン隣のラウンジには日本酒や洋酒が飾られ、おしゃれな雰囲気を演出。
 浴室もコンパクトな造りながら、同様に快適だった。洗い場にパーティションがあるので、狭くても周りが気にならない。水風呂やサウナも完備。脱衣 場には冷水やマッサージチェアーが用意されるなど、様々な配慮がなされていた。外の景観は平凡だが、山の緑は飽きるほど堪能できる。
 精算時に「こちらのコースレートはいくつですか」と聞いてみた。女性スタッフが「コースレート? あっ、72です」。パー72のコースのことと勘違いしたらしい。
別の方に「前泊するとしたら、どこのホテルがいいですか」と質問すると「今、担当者がいないので分かりません」との返事。HPには近郊のホテルや周辺の宿泊施設が紹介されているのに・・。この対応にはちょっとガッカリした。
 パンフレットを見ると、設計者(米国人)の言葉として「初心者から上級者までレベルに応じて楽しめる」「何度でも挑戦したくなる飽きの来ないコース」と書かれている。
 確かにその通りだと思うが、でも、さすがに初心者には厳しいのではないか。中にはボールをたくさんなくし、「もう来たくない」とギブアップしてしまう人もいるかもしれない。