2011年5月15日日曜日

福島石川カントリークラブ=東京からクルマで3時間。安さとゆったり感が魅力。震災からの早期復興に期待

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(遠くに那須連峰。恵まれた自然を生かしたレイアウト)

 「義捐金を出す代わりに福島県に行ってゴルフしないか。地元経済の活性化に直接支援だ」――。そんな誘いを受けて5月の週末、「福島石川カント リークラブ」に向かった。福島第一原子力発電所から西へ50㎞。途中通過した「あぶくま高原道路」は路面が細かくうねるなど震災の傷跡がありあり。それで も美しい景観と堂々とした丘陵コースの魅力は十分に感じ取ることが出来た。
 福島県南部、白河地区にあるゴルフ場は、割安な「新幹線パック」や「宿泊パック」をこぞって採用。首都圏のゴルファーを集客しようと震災前から激戦を繰り広げてきた。
 「福島石川カントリークラブ」は150万㎡の広大な敷地と30年以上の歴史を誇る同地区の代表的ゴルフ場の一つだ。
 今回は近くの温泉に宿泊し、2日間で東・中・西の3コース、全27ホールをラウンドする計画を立てた。

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(1日目は10時近いスタートだったが、問題なく回ることが出来た)

 「初日は一番遅い組のスタート。2日目は朝一番でのスタート」。これが今回の“福島遠征作戦”だ。当初、東北新幹線の利用(新白河駅からクラブの送迎バスで40分)も考えたが、5月はまだ高速道路の料金が1,000円だったので、クルマで4人一緒に行くことにした。
 東京外環自動車道を経由し、川口中央ICから東北自動車道を200km。東京、埼玉、群馬、栃木、福島と各県を縦断、ひたすら北上する。所要時間は約3時間。

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(落ち着いた感じのクラブハウス。とんがった屋根がレストラン)

 出迎えてくれたのは、帽子のような形をした瓦屋根が印象的なクラブハウス。贅沢感こそないが、木の風合いを活かしたカントリー調の素朴なデザインだ。開場は1978年(昭和53年)9月。
 他の客は既にスタート。館内にはのんびりとしたムードが漂う。無人の受付カウンター前で「着きましたよ」と声を張り上げると、女性スタッフが奥の事務所からニコニコしながら登場した。
 豪華な照明も音楽もない静かな空間。ホスピタリティという面ではちょっと物足りない感じだ。
 設備も素晴らしいという感じではなかった。ゴルフ用品は受付カウンターの片隅で細々と販売され、地元「石川の銘菓」は見本品が置かれているだけ。

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(ごく普通のロッカールーム。豪華さとは無縁だ)

 ラウンジには簡素な椅子とテーブルが並び、ロッカーは普通のスチール製。トイレは1階に2ヶ所。両方ともこじんまりとし、メインのトイレは7つある個室のうち2つは和式。
 最近は設備の豪華さをアピールし、関連商品を売りまくろうというゴルフ場が増えているが、そんな商売っ気は感じられない。

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(ドライビングレンジでは浮き島目がけて練習する。手前のネットの先が打席)

 着替えを済ませて外に出る。東コース近くにあるドライビングレンジ(12打席)は実に刺激的だった。
 距離は200ヤード以上あり、目の前には大きな池。その中心に「浮き島」。アイアンの練習はこの浮き島目がけてショットする。失敗するたびにボールが池に消えてしまうが、ゴルフ場はそんなこと気にしてないようだ。
 西コースの近くには本格的なアプローチ練習場が造られていた。もちろん、バンカー練習場も完備。ドライビングレンジもそうだが、景観は本コースとまったく変わらない。
 1日目は「東コース」(3,044ヤード=レギュラーティ)と「中コース」(3,210ヤード=同)を回る。グリーンは「ベント」と「ニューベント」の2つ。今回利用したのは「ベント」グリーン。距離は合計で6,254ヤード。

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(丘陵コースらしい、美しいホールが多かった)

 典型的な丘陵コースで、設計は名匠として知られる富澤誠造氏。パンフレットには「福島県を代表するチャンピオンコース」と記されている。
 確かに雄大な地形を生かした堂々としたコースで、フェアウエーも広く、オーソドックスなレイアウトというのが第一印象である。
 「ヤマドリ、ウグイス、キジ、リス、タヌキといろいろ出てきますよ」とキャディマスター室近くにいた男性スタッフ。いくら自然が豊富とはいえ、首都圏のゴルフ場では、こうはいかない。

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(スターティングテラスには乗用カートが並び壮観)
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(ピン位置は旗の色で識別。グリーン中央までの残り距離は白いラインで判断)
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(ティマーカーの上には小鳥の置物。最初の数ホールまでしかなかったが・・・)

 1番は409ヤード(レギュラーティから、以下同)の長めのミドルホール。緩やかな上り傾斜が続き、数字以上の距離を感じる。
 2番もゆったりとした感じのロングホール。同伴した飛ばし自慢がティインググランド上で「(自分に向いた)いいコースだ」と嬉しそう。

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(東2番ホール。グリーン手前に仕掛けがあった)

 だが第2打地点で、グリーン手前のクリークを発見。今度は一転「レイアップかぁ」と悩む。単純に飛ばせば良いという設計ではないのだ。

027
(ちょうど藤の花が見ごろだった)

 4番は152ヤードのショートホール。大きな打ち下ろしで、風の影響が読みにくい。

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(東6番ショートホール。左の崖が鬼門)

 6番のショートホール(146ヤード)はもっと厄介だった。
 グリーン手前の左半分が谷。ミスショットした同伴者のボールは谷の急斜面に止まる。苦しい態勢で打った2打目がOB。「ボロボロになってきたぞ」と悲鳴を上げ始めた。

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(フェアウエーの微妙なアンジュレーションが悩ましい)
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(綺麗に見えるバンカーは砂が少なく、難しかった)

 花道が広いなど一見簡単そうに見えるコースなのだが、その割にスコアがまとまらない。ホールごとの難易度に差が大きいのと、フェアウエーの微妙なアンジュレーションがプレーヤーの手元を狂わせる。これが名匠の技なのだろうか。

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(東7番ホールには地元石川町の文化財「長郷田遺跡」の案内が出ていた)
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(巧みに配置された樹木が、美しさと戦略性を高めている)

 中コースは東コースよりもさらに「景観の美しいホール」が多いように感じられた。

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(フェアウエーから後ろを振り向くと、残雪の那須連峰がくっきりと見えた)

 1番ミドルホールでは第2打地点から後ろを振り返った時、思わず立ち止まってしまった。クラブハウスの後ろに、雪の残る那須連峰が見えてきたのだ。右奥には会津磐梯山の雄姿も見える。
 「この時季、まだ雪が残っているんですね」と一同、素晴らしい景観に見とれる。
 中コース3番のショートホールからも同様に冠雪の那須連峰が眺められた。「好天に恵まれたおかげだ」と幸福感に浸る。
 池は3コース合計で13個と多い。このうち12個は開場時に人工的に造ったものだそうだが、どれも長い歴史を経てすっかり周囲の自然に溶け込んでいる。

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(池は随所に造られている)
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(ハザードというより、景観美に貢献する池が多い)
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(人工的に造られた池もすっかり周囲に溶け込んでいる)
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(小さくてもグリーン近くにあると、池はかなり厄介だ)

 グリーン近くにあったり、フェアウエーの真ん中にあったりと悩ましい池もあるが、コース脇に置かれてハザードの役目を果たしていない池も意外と多い。こうした設計は敷地の広い、ゆったりしたゴルフ場ならではの余裕だろう。

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(中コース4番。日本庭園的な美しいホールだった)

 中コースで印象的だったのは、そんな池が絡む4番、5番、6番、7番の各ホール。美しさでは4番、難しさでは7番のロングホールが特に記憶に残る。

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(バックティから600ヤードを越える中コース7番)

 7番はバックティから612ヤード、レギュラーティからでも577ヤードと距離が長い。グリーン近くは下りだが、立ち木が要所にあってスコアを崩しやすい。
 プレーした季節が5月だったこともあり、藤やツツジなどが随所で花開き、目を楽しませてくれた。特にクラブハウス周辺の木々は手入れが行き届き、日本庭園風の趣。

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(石垣の間から可憐な花が顔を出していた)

 所々ではあるが、コース内にも四季の変化を感じさせてくれる工夫が施してあった。例えば中コース6番のティインググランド前では石垣の間から綺麗な草花が顔を出している。「目でも楽しんでもらおう」というゴルフ場側の意図が伝わる。
 ティインググランド数はホールによって若干異なるが、多くのホールは4つ。今回はレギュラーティを使ったが、バックティからだと「東」「中」コースの場合で計6880ヤードと距離がグンと伸び、難度が跳ね上がる。
 当然、コースレートもレギュラーティ(ベントグリーンの場合)の69.7から72.6へ急上昇。堂々たるチャンピオンコースになる。
 バックティからは「後続の組に迷惑が掛からない状況なら誰でも可能」だそうだから、次回はぜひ、難しいバックからプレーしてみたい。
 逆にレディースティはかなり前に設定されていた。レギュラーティから50ヤードも前というのは珍しくなく、中コースの4番ホールのように100ヤード近く前というホールも存在した。
 「女性にドラコン賞を取らせようと、そんなホールを賞の対象ホールに選ぶコンペ幹事さんもいます」と女性スタッフさん。
 OBを打った場合に使う「前方特設ティ」(前4)も驚くほど前に設けられているホールがあった。進行をスムーズにさせるためだろうが、やりすぎの感もあった。

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(中コースの売店。店内に置かれらラジカセから音楽が流れてきた)
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(小さいながら、避雷小屋は随所に設けられていた)

 コース内の売店は無人で簡素な造り。避雷小屋がたくさん設けられているのは周辺で雷が多いためだ。幸いこれまで人身事故は起きていないそうだが、東の9番ホールには落雷の傷跡が残る大きなポプラの木が立っていた。
 プレースタイルは「乗用カート利用のセルフプレー」が主体。予約時に依頼すればキャディ付プレーも可。ハウスキャディは全部で6人。他はパートの派遣キャディで賄っているという。
 ただ、この日は震災からまだ2ヶ月。来場者は極端に少なく、キャディ付でプレーしている組はまったく見かけなかった。

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(人手が掛けられないのか、フェアウエーはやや荒れ気味)

 実はコースメンテナンスの面でも、震災の影響が色濃く残っていた。普段と違う特殊事情下であり、早晩、改善されるとは思うが、正直言って芝の状態はフェアウエーもグリーンも良くなかった。
 雑草やディボットが目立ち、必要以上に芝が伸び、グリーン上のボールが不自然な転がり方をした。「小まめに手入れしないと、コースはどんどん荒れる」。改めてグリーン整備の大切さを認識した次第だ。
 キャディマスター室の男性スタッフは「わざわざ東京から来ていただいたのに申し訳ありません」と正直。不満は漏らさず「早く元の状態になると良いですね」と励ましの声を掛けた。
 震災の影響はもう一つあった。実は「西コース」が使用不可の状態だったのだ。「東・中コースに比べるとホールごとの変化があり、良い意味でトリッキー」と聞いていただけに残念。結局、2日目も同じ「東・中コース」をラウンドした。
 人手不足のせいか、ピン位置は前日とまったく同じだった。この時期、2日続けてプレーする人は「想定外」なのだろうが、やはりピン位置くらいは変えてほしかったというのが感想。

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(レストランは天井が高く開放的)

 クラブハウス内の施設では八角形をしたカントリー調のレストランが強く印象に残った。
 スペースが広いだけでなく、大きな窓から眺められる外の景色が素晴らしい。正面に中コースのスタートホール。手前には手入れの行き届いた植栽、パター練習場。
 昼食メニューは震災後の非常事態ということで4種類のみ。普段は8種類前後あり、価格は1,180円から1,480円程度という。ビール(生中)は700円とやや高め。
 浴室は外からの光がたっぷり入って明るく、気持がいい。ただ外の景色は良く見えない。立ち上がって眺めてみたが、周辺には植木などが多く、景観を楽しませるという設計にはなっていなかった。パーティションはない。
 注目したのは「クラブロッジ」だ。今回は事情があって別の温泉に宿泊したため、許可を得て中を見せていただいた。
 クラブハウスの2階にシングルルームが直線的に並ぶ。47人収容でき、シングルユースが31室、ツインユースが8室。宿泊料金は朝食付きで1泊4,935円という。
 雰囲気はひと昔前のビジネスホテルといった感じだ。風呂は室内にはなく、共同の浴場。画面の小さい“厚型テレビ”がベッドの脇にポツンと置かれていた。
 ちなみに「宿泊パック」は10月、11月を除くと「平日+平日」で1人20,000円、「休日+休日」で24,000円。これで宿泊代と2ラウンド分のプレー代、2回の昼食、さらに夕食と朝食まで付くのだからかなり割安。首都圏の有名ゴルフ場なら1ラウンド分の料金だ。
 値段を考えれば設備に不満は言えない。ロッジは衛生的で機能が整っていればいい、夕食も贅沢しないと割り切り、プレーに専念したい。
 それでも「もう少しリッチに」と願う人には「温泉宿泊ゴルフプラン」がある。近くの母畑温泉「八幡屋」と提携しており、ロビーの受付には「八幡屋」のパンフレットが常備されている。
 こちらに宿泊した場合は「1ラウンド、4バッグ、セルフプレー、乗用カート利用」という条件で「土曜・休日前宿泊・休日プレー」なら22,850円という料金。

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(こうした広々とした空間に身を置くだけでも幸せを感じる)

 2日目のプレーは朝、8時前にスタート。スルーで回り、午後1時にはラウンドが終了した。入浴後、遅めの昼食を取って2時過ぎにはクラブハウスを出発。
 高速道路は日曜日夕方の渋滞に巻き込まれることなく、終始スムーズな流れ。ほぼ予定通り3時間で東京に戻ることが出来た。
 福島石川CCは元来メンバーズコースだが、最近は「ビジターさん大歓迎。どんどん来てください」と極めてオープンだ。ネット予約で誰でも簡単に利用できる。「予約は3ヶ月前から」といった制約もない。「どんどん仮予約を入れてください。キャンセル料は頂きませんから」。
 初めて電話した時、その営業熱心さにびっくりした記憶が残っている。予約時に言ってもらえれば2サムも可能ですし、よほど混雑していなければ1.5ラウンドもできますよ」と融通も効く。
 「プレー料金」も首都圏のゴルフ場に比べれば相当に安い。ハイシーズンの土日曜日でもプレー料金は9,500円(セルフプレー、乗用カート利用の場合)。平日なら6,500円(同)で済む。
 オフシーズンはさらに安く、平日なら6,000円、休日なら8,500円程度まで値下がりする。
 セルフプレーでなく、キャディ付プレーの場合はプラス3,675円(4バックの場合)。1ラウンド終了後に「もうハーフ」を頼んでも追加料金は2,100円で済む。
 このほか、日本通運と組んだ「おどろきJRゴルフ」という割安パック商品もあり、東北新幹線を利用したい方には喜ばれそうだ。
 最後に降雪による「クローズ」の問題について。スタッフに尋ねたところ「年によって事情が異なりますが、前冬のケースでは12月はほとんど問題な く、1月は年始以外は何とかプレーできた。ただし、2月は半分くらいクローズを強いられ、3、4月でも何日かクローズしてしまった」という。
 ただ、これは考えようだ。確かに冬場は「クローズ」のリスクが高いし、東京からだと往復にも時間が掛かる。
 だが、その分、夏場は涼しいし(標高約300m)、1泊する気になれば東京からでもゆっくり楽しめる。
 もちろん、近隣の方ならそんな距離のハンディも気にせず、低料金でプレーできる。若者の姿が目立った理由も分かる気がする。
 「もう一度、今度は夏休みに・・・・」。ちょっと癖になりそうな予感がした福島遠征だった。

2011年5月8日日曜日

野田市パブリックゴルフ場・けやきコース=都心に近い、綺麗で手軽な林間コース。不慣れな高麗グリーンに戸惑う

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(乗用カートは2人乗り。カップルで楽しみたい)

 野田市は千葉県の最北部。東は利根川を挟んで茨城県に接し、西は埼玉県春日部市に近い。周囲にはゴルフ場が多く、名門「千葉カントリークラブ・梅 郷コース」はすぐ隣。今回ラウンドした「けやきコース」は平成8年、野田市のスポーツ公園施設の一部として開場した。距離こそ短いものの、ホールごとに変 化があり、結構、楽しめる。初心者でも手軽に利用できるのが最大の魅力だ。
 予約したプレー日は5月上旬の休日。パブリックコースなので誰でも自由に利用できる。通常プレーなら予約は3ヶ月前から。キャンセル料は取らない。
 プレー代は首都圏のゴルフ場としてはリーズナブル。「通常料金」は平日9,700円(昼食付き)、土日祝日14,700円(同)。OFFシーズンになると、これが7,700円(同)、12,700円(同)まで値下がりする。
 アクセスも良好。クルマなら常盤自動車道の柏ICから7km、約15分で到着できる。都心からでも渋滞に巻き込まれなければ1時間以内という便利さだ。
 電車利用だとちょっと厄介。JR常磐線か「つくばエクスプレス」を使い、柏駅などから東武野田線に乗り換えて野田市駅ないし梅郷駅で下車。
 クラブバスがないのでタクシー利用となる。両駅からはいずれも10分余り、料金は1,700円前後。
 乗り換えを面倒くさがって柏駅からタクシーに乗ると約30分、4000円以上かかる。せっかくプレー代を安く抑えても、差額が吹っ飛びかねない金額だ。
 当日はそんな悩みを抱える同伴者を柏駅でピックアップし、一緒にゴルフ場に向かった。

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(高級ゴルフクラブを思わせるような端正な外観)

 クラブハウスは予想以上に堂々とした外観だった。玄関先には綺麗な花が咲き、駐車場も広い。
 気分を良くしてクルマを降りる。高級な会員制ゴルフ場ならスタッフが並んで出迎えてくれるシーンだ。
 だが、さすがにそんな気配はない。自分たちでキャディバッグを担いでエントランスに入る。

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(無機質な感じの内装を綺麗な花(造花)が和ませてくれる)

 一歩足を踏み入れると、内部は思った通り簡素だった。コンクリート打ちっ放しの内装。受付周辺には各プレーヤーの持ち込んだゴルフバッグが無造作に置かれており、一瞬、戸惑う。
 中央の柱周辺では「アメリカン倶楽部」のドライバーなどが展示販売されている。
 大きな窓に面したラウンジは広く、明るく、使いやすい。大型テレビの前で若者グループが談笑している。

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(ロッカールームは小ぎれいだが、コンパクトな設計)

 受付手続きを済ませた後、向かったロッカールームはやや手狭。ロッカーはスチール製で、空いている番号のものを自由に使う。300円を投入し鍵を掛け、帰る時にボタンを押すと自動的に100円が返ってくる仕組み。1回のロッカー使用料200円というわけだ。
 ロッカーの裏側から「初めてだと戸惑うね。最初から200円に設定しておけばいいのに」という声が漏れてきた。
 ここでは飲料の購入も全て自動販売機なので、小銭を持っていないと何かと不便である。
 館内の売店も無人だった。注文すると、隣の受付にいるスタッフがやって来て、対応してくれる。
 「野田といえば醤油の街」らしく、醤油味のカステラ(1,000円)が土産物用に販売されていた。地元の漬物も人気でお勧めだそうだ。
 人件費を削ったローコストオペレーションが徹底している。普段、ゴルフ場のスタッフに何でもやってもらう癖がついている身には抵抗感もあるが、その分、プレー代が安くなっているのだと思えば不満は言えない。
 他の客もすっかりこの仕組みに慣れているようで、みんな手際よく動いている。接待目的のコースではないので、これはこれで割り切ってしまえば問題ない。
 ただ、受付スタッフの対応に素っ気なさを感じたのは偶然だろうか。言葉遣いや仕草に、もう少しホスピタリティがあると嬉しい。高級ゴルフ場との差を感じたのは簡素な内装より、むしろこちらの方だった。
 スタートまでに時間があったので、エントランスにキャディバッグを置いたまま、3本ほどクラブを持って練習場へ。
 ボールは受付で用紙にサインし、スターティングテラス近くにいるスタッフから受け取るシステム。料金は30球200円と安いが、少し変色したボールが目立つ。

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(鳥かご練習場。周囲には綺麗なツツジが咲いていた)
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(しっかりとしたバンカー練習場があった)
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(高麗芝に慣れるため、プレー前にもっと練習しておけば良かった)

 練習場も小さかった。打席数は10。まさに「鳥かご」で、正面のネットまで30ヤードもないくらい。そのネットには弓道の的のような円が貼り付けてあった。
 各打席に高さの異なるティが多く用意してあったのは嬉しかった。「鳥かご」の外には小さいながら本格的なバンカー練習場もある。
 乗用カートは全て2人乗り。手引きカートもあるが、周りを見ると大半の客が乗用カートを利用している(利用料は1人1,000円)。カートにゴルフバッグを積み込む際には、男性スタッフが親切に手伝ってくれた。
 乗用カートはコース内での走行が許されており、プレーの進行はかなりスムーズ。若い男女がペアで利用しているケースも多く、遠目にはリゾートゴルフ場にいるかのような錯覚を覚えた。
 キャディは不在で、セルフプレーのみ。そのため各ホールのティインググランド脇には「レイアウト図」が設置されていた。スコアカード裏や乗用カート内にも同様の案内が用意されていた。
 ただし、バンカーまでの距離など知りたいことが書かれておらず、もう少し詳しい方がコースに不慣れなプレーヤーには有り難い。
 昼休みに「コースガイドがありますよ」と教えられ、後半は1枚(B4サイズ)の裏表に印刷された「ガイド」(無料)を見ながらラウンドした。このガイドの方が内容は少し詳しい。
 ティインググランドはレギュラーティとレディースティの2つだけ。バックティはない。
 距離はレギュラーティからでもOUT2,624ヤード、IN2,784ヤードで、合計5,408ヤード(パー71)とかなり短い。
 283ヤード、275ヤード、284ヤードの300ヤードを切るミドルホールが3つ。ロングホールも435ヤード、424ヤードといった具合だ。

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(人工マットにはちょっとガッカリ)

 また、人工芝のマットが敷かれていて、ホールによってはそこから打つ。これはさすがに興醒めだった。
 距離が短い分、要所に池や樹木、バンカーを配置し、コースごとの変化と戦略性を高めている。自然林を生かした景観も美しい。プレー終了後に各ホールの「顔」を思い出せるのも、それぞれの個性が強いからだ。

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(「S」字型に設計された1番ロングホール)
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(短い4番ミドルホール。中央の2本の立ち木が印象的)
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(移動の際、近所の畑の脇を通過した)
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(ティインググランドには様々な表示があった)
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(OUT最後の9番ホール。かなりの打ち上げで距離感に戸惑う)

 1番ホールはS字に曲がったロング。2番は左サイドに林が迫る短いミドル。3番は砲台グリーンが距離感を狂わせるショート。4番はフェアウエーセ ンターの2本の立ち木が邪魔になり、5番はグリーンの傾斜がきつく、6番は大きく左にドッグレッグ、7番はグリーン近くのクリークが厄介。8番は短いが狭 く、9番は打ち上げの難しいショートホールといった具合。

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(グリーン上から見た10番ホール。ティインググランドからの印象とは全く違う)
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(左右の林が圧迫感を与える11番。中央に大きなケヤキ)
071
(ネットを避けて右に打ち出すと、クリークが待っている)
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(14番は左側の樹木が目障りになる)

 INの10番は左右の林と中央の立ち木がティショットの狙い目を狭くし、11番は狭く、長いロングホール。フェアウエー中央に鎮座するケヤキの大 木が印象的。12番は100ヤード前後の短いショート。13番は左側に高い防球ネット、右側にクリーク。緩やかに左ドッグレッグした14番は、ティショッ トで左手前の林が目障りになる。

077
(ティインググランドが林の中に設けられている15番ホール)
083
(続く16番ロングホール。景観的にはここが一番美しかった)
088
(16番の砲台グリーン。手前のバンカーに入れると大変だ)
089
(美しい景観。ちょっとしたリゾート気分が楽しめた)
092
(17番のショートホール。グリーンの手前にクリークが走る)
095
(全体にフラットで、池とケヤキが美しいコースだ(18番ホール)

 15番は林の中からティショットを打つ。16番は池を抱いた美しい看板ホール。17番も池の景観美が素晴らしい。最後の18番は珍しく広々としているが、最後に4つのガードバンカーが待ち受けている――。
 歴史が浅い割には立派な樹木が多く、風格さえ感じた。スタッフに聞くと「元の地形や樹木などをそのまま生かして造成したので、太い木が数多く残っています」。

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(コースの直ぐ側に民家が)
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(ミドルホールがショートホールに改造された5番。以前は奥の正面にティインググランドがあった)

 近年、コース周辺に住宅が迫り、防球ネットが増え、やむなくミドルホールをショートホールに改造するなど残念な面もあるが、全体としては、年季の入った立派なケヤキが多く、自然をうまく戦略化したコース設計になっている。
 想定外だったのはグリーンだ。2面とも最近では珍しい高麗芝で、難しい。「グリーンの速さはどの位ですか」とスタッフ数人に尋ねたが、誰も知らなかった。受付で聞くと「測っていません」。
 他のゴルフ場と比べかなり重く感じたのは芝目のきつさもあるが、あまり短く刈っていないことの方が大きいと感じた。
 別グループの人たちも「このグリーンには参ったね」とぼやいていたので、同じ様な印象を持ったのだろう。何回かラウンドし慣れるまで、ここでのパットにはコツがいる。

066
(所々にベアグランドがあった)
032
(グリーン上には一部、変色した個所も)

 コースの所々にベアグランドがあり、グリーン上でも部分的に整備の拙さを感じる所があった。メンテナンスにさらに力を入れて貰えるとコースの印象はさらに良くなるだろう。

054
(正面がレストラン。1階にラウンジと売店が見える)
057
(レストランからの眺め。見えているのはINの16番ホール)
058
(レストランのスタッフはテキパキとし、感じが良かった)

 コンクリート打ちっ放しの内装は、クラブハウス2階のレストランも同様だった。経費節約というより建設当時はこうしたデザインがはやっていたのかもしれない。
 カジュアル感は食事の品揃えにも伺えた。予約したのは人気の「昼食付き」プラン。そば、カレーなど一般的なメニュー6品目の中から好きなものを選んで注文する。「単品で頼むとそれぞれ1,000円の料理」だそうだ。ちなみにビール(生中)は600円。
 朝食メニューはモーニングセットで700円。つまみ類も1品350円から450円とリーズナブル。特筆するような料理はないが、そもそも豪華な食事を楽しみに来るようなコースではない。
 窓は大きく明るい。木々の間から看板ホールの16番フェアウエーが見える。眼下にはパター練習場。テーブルは全部で18卓。
 プレー終了後に利用した浴室はコンパクトな設計。デザインは平凡でパーティションはない。窓の外は竹の垣根。景観は遮られ、開放感もない。脱衣場はやや狭めだった。
 「けやきコース」の隠れた魅力は、使い勝手の良さだ。1.5ラウンドは比較的安い追加料金で楽しめるし、ツーサムも可能。「混んでいなければ」という条件付きながらスルーで回ることもできる。
 平日、空いていれば1人でもプレーできる。「練習のつもりでブラリとやって来られる方もいらっしゃいます」。
 早朝プレーはないが「薄暮プレー」プランは充実している。当日の午前10時から受付を開始し、曜日などによって若干の違いはあるものの、午後3時過ぎから日没までラウンドできる。「回れるのは9ホール+αですね」と女性スタッフ。
 料金は平日で4,000円、土日祝日で6,000円、ジュニア料金は1,500円(別途乗用カート代として1,000円)。
 帰り際「後日、またここでプレーしたいので、ゴルフクラブを預かって欲しい」と頼んだら「プレー日が決まっていれば無料でお預かりします」と笑顔で応じてくれた。
 ただし、精算時にカードが使えないのは不便だった。すべて現金での決済。仲間内から「いまどきカードが不可なんて」というため息が漏れてきそうだ。
 全体として贅沢感こそ味わえないが、気のあった仲間同士で安く、手軽に楽しむには好都合なゴルフ場。飛距離を求めない女性や初心者にも好まれそうだ。覚えて置いて損のないコースである。