2011年2月19日土曜日

習志野カントリークラブ キング・クイーンコース=長い距離、多いバンカー、砲台グリーン‥‥ 難しいが、飽きないコース

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(美しくも難しい林間コース。設計は「霞が関CC東コース」などを手がけた藤田欽哉氏)

 「習志野カントリークラブ」には以前から良いイメージを抱いていた。「なぜだろう」と考えてみた。自分がゴルフを始めた頃、男子プロのトーナメン ト会場として「習志野」の名前を何度も見聞きし、憧れを抱き続けてきたことがその理由だと気が付いた。そして「もっと早く、ここでプレーしたかった」との 後悔も。初めて訪れた「習志野」は期待以上に手強く、面白いコースだった。
 記憶に残る男子プロのトーナメントとは「サントリーオープン」のことだ。1974年から1997年まで延べ24回、習志野カントリークラブを舞台に名勝負が繰り広げられてきた。
 ちょうど尾崎3兄弟が全盛だった頃。中島常幸や倉本昌弘といった名前も歴代優勝者に名を連ねている。藤田寛之も同大会でプロ初優勝を遂げた。
 ちょっと古いが、セベ・バレステロスが優勝した第42回「日本オープン」(1977年)もここで開催された。
 
 2007年と2008年には女子プロの公式トーナメントである「フィランソロピー・LPGAプレイヤーズ・チャンピオンシップ」の舞台となり、テレビ中継されたので覚えておられる方も多いに違いない。
 開発・運営してきた日東興業㈱が1997年に経営破たん。その後、アコーディアゴルフグループ入りして再建を図ってきた。上記の女子プロトーナメントもスポンサー探しが難航して08年大会を最後に終了。現在、大きなプロの大会は開かれていない。
 古くからの会員さんは「アコーディアグループ入りしてからバンカーの数が減り、レディースティが新設され、乗用カートでコース内に乗り入れられるようになって、趣がだいぶ違ってしまった」と嘆く。
 しかし、往時にプレーしたことのない者にとっては、今でも十分に風格のある、魅力的なコースと映る。

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(駐車場はクラブハウスに近く、広い。この日も満車に近い状態だった)
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(練習を終えてクラブハウスに戻る。建物の外観は思ったよりも地味な印象)
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(クラブハウスを出ていざ、コースへ。右奥にキャディマスター室。スタッフは親切だった)
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(INコースに向かうにはこの橋を渡る。桜の咲く頃は綺麗な景色が楽しめそうだ)
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(ティインググランド周辺の植栽は手入れも行き届き、上質感が漂っていた)
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(梅の花が咲き、春近しを感じさせた)
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(INコースの10番スタートホール。正面に「NCC」の文字。左を狙い過ぎるとクリークにつかまる)

 この日(2月中旬の土曜日)はINコース10番ホールからのスタート。プレースタイルは「キャディ付の乗用カート利用」。正面に見える「NCC」の文字を目がけて、朝イチのティショットを放つ。
 第2打地点からは左へドッグレッグし、フェアウエーがグリーンに向かってグッとせり上がっている。下からグリーン面はまったく見えない。手前と奥にバンカー、左サイドにはクリーク。最初から美しくも厄介なホールだ。

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(コース内の茶店。「女子プロトーナメントを開催する時に建て替えました」)
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(ショートホールではピンまでの距離が1ヤード刻みで表示されていた)
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(数々のエピソードを教えてくれたキャディさん。背中の「ACCORDIA GOLF」が目立った)
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(16番のショートホール。「戦略性」より「美しさ」の方が印象に残った)
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(各ホールのティインググランドに、こんな高級感あるプレートが埋め込んであった。)
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(OUTの1番ホール。正面の鉄塔が目に付く。「狙い目はあの鉄塔です」とキャディさん)
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(茶店とは別に独立したトイレが整備されていた。体が冷えても安心してプレーできた)
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(次のホールへ移動する際に、こんなトンネルを通過した。珍しい光景)
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(フェアウエー内にある排水溝にもグリーン中央までの残り距離表示があった)

 午後に回ったOUTコースを含めて、ラウンド中に気づいた点をまとめると、以下の8つになる。
 ① 「距離が長い」。
 バックティからだと全長7,011ヤード。レギュラーティからでも6,601ヤードある。
 ショートホールは150ヤード前後(レギュラーティから、以下同)と長くないが、500ヤードを超えるロングホーが3つもある。特に4番ホールは583ヤードと長く(バックティからは608ヤード)強烈な印象を残す。

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(立ち木さえなければ、何の変哲もないホールなのだが・・・)
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(2本の立ち木が効いている。同じ様なシーンに何度か遭遇した)

 ② 「フェアウエーに立ち木が多い」。
 例えば、12番ミドルホール。ティインググランド近くの左サイドに大きな木が1本そびえ立つ。
 ティマークが同じく左側に置かれていたため、木の右側スレスレか、うまくドローボールを打たないとフェアウエーキープが難しい。
 アベレージゴルファーにそんな芸当ができるわけもなく、みんな揃って右の林に打ち込み、首をうな垂れた。
 ③ 「グリーンが砲台型で、難しい」。
 珍しく平凡なレイアウトだと思っていた15番ミドルホール。グリーンに乗って驚いた。右奥にマウンドがあり、傾斜がきつい。ピン位置次第で、いくらでも難しくできるグリーンだ。
 キャディさんが「08年の女子プロの大会で優勝した全美貞プロがここで4パットして、優勝がもつれるきっかけになったんですよ」と教えてくれた。
 キャディマスター室には「刈り高4.2mm、8.7フィート」の表示が出ていた。昼休み、男性スタッフに「数字よりも難しく感じました」と話しかけると「明日、月例会なのでグリーンが少し硬くなっています」と同情してくれた。
 ④ 「物語が多い」。
 全美貞プロの話もそうだが、数多くの名勝負を繰り広げてきたコースだけに、随所にエピソードが残っている。続く16番ショートホールではキャディさんが「ここも大変だったんですよ」と話し始めた。
 「金子柱憲プロがここで池ポチャし、そのまま水中のボールを打とうとして大トラブル。結局、優勝を逃したんです」。
 ⑤ 「桜並木が目立つ」。
 真冬のこの時期、さすがに花は咲いていないが、それでもひと目で桜と分かる古木が何本も並んでいる。特に1番、5番、14番などの並木は壮観。満開時の美しさはさぞ見事だろうと、春に思いを馳せる。
 「山茶花や椿、藤などいろいろな木があって、1年中、何らかの花が咲くようになっています」とキャディマスター室のスタッフさん。そういえば10番のスタートホール脇では綺麗な梅の花を見かけた。
 ⑥ 「実はアップダウンがある」。
場所は千葉県北部。東京に近い習志野市のイメージがあったせいか「フラットな林間コース」と思い込んでいた。
 実際は、総じて平坦ながら所々にアップダウンがあり、谷越えなど丘陵コースかと思うような景観にも出合う。
 長く、緩やかな上り。乗用カートでサッと移動してしまうと分からないが、歩いてみると結構、きついホールもある。

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(バンカーでがっちりガードされたグリーン。「バンカー恐怖症」は早く卒業したい)

 ⑦ 「多く、深いバンカー」。
 バンカーが苦手な人には辛いコースだ。キャディさんは「全部で125個くらいのバンカーがある」と話す。それでもアコーディアゴルフに経営が変わってから数を減らしたそうだから、以前の凄さが想像できるというものだ。
 しかも、アゴの高い立派なバンカーが多い。今回も「バンカーからバンカーへ」渡り歩いている姿を何度か目撃した。バンカーが二重、三重にガードしているグリーンを見たら、「もう開き直るしかない」。

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(狭い花道。立ち木とバンカーのプレッシャーに負けるな)

 ⑧ 「オーソドックスな設計」。
 ハザードを列記すると、癖のある難コースと思われるかもしれないが、決してトリッキーではない。攻め方を間違えなければ花道は使えるし、むしろオーソドックスで、フェアな造りだ。
 隣の「クイーンコース」に比べると池やクリークは少なく、男性的なイメージ。フェアウエーも堂々としている。
 開場は1965年(昭和40年) 11月。既に50年近い歴史を持つ。特に言及しなかったが、落ち着いた風格やコースメンテナンスの良さは評判通りだった。
 
 不満に感じた点を挙げれば、コース全体を俯瞰したレイアウト図も各ホールごとのレイアウト図も見当たらなかったことだ。
 キャディさんには「私たちが付いているから要らないんですよ」と反論された。しかし、コース全体の俯瞰図は見たいし、ハザードまでの距離を逐一、キャディさんに聞くのも正直、面倒だ。
 今回400ヤードを越すような長いミドルホールでは、『刻み千両』『刻み千両』と唱えながら“レイアップ作戦”を心掛けた。そんな時も「レイアウト図があったら良かったのに」と思った。
 もう一つ“難点”を挙げるとすれば、アベレージゴルファーにはやや難しいということか。「コースレート」はレギュラーティからでも71.0(バックティからは72.7)。
 もちろん「難しい方が飽きないし、挑戦し甲斐があって好きだ」という人はたくさんいる。しかし、必ずしも上級者でなく、「気楽にゴルフを楽しみたい」「もう少し良いスコアで回りたい」と願うアベレージゴルファーには厳しい設定だ。
 ふだん90台でラウンドしている同伴者も、今回は100が切れず「今年のワースト記録を更新だ」とぼやいていた。
 他の平均的難易度のコースに比べ3~4打スコアを崩すことを覚悟して挑むのが良いかもしれない。

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(練習用のボールは左手前の建物で購入できる。女性スタッフがテキパキと対応してくれた)
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(リニューアルされたドライビングレンジ。「ACCORDIA GOLF」の文字がズラリ)

 練習場には満足した。ドライビングレンジはリニューアルしたばかりで快適。16打席あり、距離は200ヤード弱。右サイドから正面に高いネットが設けられ、正面のネット中段に「250ヤード」の標識。「250ヤード飛ばしても大丈夫ですよ」という意味だろう。
 50ヤード、100ヤード、150ヤード地点に特設グリーンがあり、ティも高さの異なるものが3種類用意されていて完璧だった。全打席に「ACCORDIA GOLF」表示があったのには、驚くというより感心した。
 パター練習場は2面。うち1面は半分が「CLOSED」。それでも各面が広いので、ラッシュ時にも特に混雑は感じなかった。

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(バンカー練習場。これだけ本格的なものは、あまりない)
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(アプローチ専用の練習場も整備されている。奥に見えるのはパター練習場)

 アプローチとバンカーの専用練習場も近くにあり、スタートまでの時間を持て余すことは全くない。
 クラブハウス内は随所にアコーディアグループらしさが目立っていた。エントランスを入ると、床いっぱいに並んだゴルフ関連商品が目に飛び込んでくる。
 最新クラブあり、華やかなウエア類あり・・・。2階のレストランに続く階段には一段ごとにキャディバッグが置かれ、まるで展示会のよう。
 良くも悪くも商魂の逞しさを感じる。その分、文化性や豪華さは犠牲になっている。ホームページ(HP)には「アコーディアグループ内最大級の品揃え」と紹介されていた。
 1階フロアの一角には現金・クレジットカードの両方に対応する自動清算機が3台。合理化もしっかりと進んでいる。

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(上品な感じのロッカールーム。間隔が狭いのだけが腑に落ちなかった)

 ロッカールームは意外と窮屈だった。ロッカーそのものは木製の扉が綺麗で、高級感を醸し出す。しかし、なぜかロッカー間の距離が狭く、側を通るたびに「すみません。通らせてください」と他の利用者に声を掛けなければならない。
 1階のトイレは個室が9つあり、清潔で快適。特に洗面台は明るく、使い勝手が良かった。
 レストランは朝食メニューが充実していた。和洋の定食、フレンチトーストセットが1,050円。他に470円のオムレツや310円のトーストと選 択肢が広い。昼食時に注文したビール(生中)は780円。2,000円未満のメニューが多いが、全般に市中価格よりはやや高め。
 「どうしてゴルフ場では皆、こうした高めの価格設定をするのだろう」と同伴者も不満顔。「プチ贅沢をしたいからさ」「接待需要の名残では」「美味しいから文句は言わない」「単純に収益性の問題さ」と仲間内でも意見はいろいろ。
 レストランのスペースは比較的ゆったりし、窓も大きく、スタッフの対応もスムーズだった。コンペルームは4室。他にカンファレンスルームもある。
 階段脇には落花生や菓子、うどん、醤油などの土産品が並ぶ。「少しでも商機は逃さないぞ」という強い意志が垣間見える。
 浴室はちょっと古いつくりなのか、温泉旅館にある大浴場のような雰囲気。中央に太く四角い柱。その周辺が浴槽。さらにその周辺に、ぐるりと壁に向かって洗い場のパーティションが並ぶ。窓の外は塀が近く、景観はほとんど見えない。
 脱衣場は明るく使いやすいが窓がなく、やはり開放感には欠ける。
 都心からのアクセスは比較的楽だ。住所は千葉県印西市。京成本線「京成高砂駅」と印西市の「印旛日本医大駅」を結ぶ北総線「千葉ニュータウン中央駅」からクラブバスが出ている。
 地元の人以外には聞きなれない路線、駅名だが、2,010年7月に開通した空港行き「成田スカイアクセス」の新型スカイライナーが走っている路線といえば、思い当たる人も多いのではないか。
 東京駅から同駅までの所要時間は約1時間。クラブバスの本数は朝晩合わせて13本と多い。乗車時間も10分弱。タクシーなら1,200円前後。
 クルマで向かう場合は、東京都心からなら京葉道路などを東に走って1時間20分程度。東関東自動車道の千葉北ICからは約19Km、常磐道の柏ICからなら約25Km。
 最後に予約とプレー料金について。まず、予約についてスタッフさんに尋ねると「平日であればどなたでも予約できますが、土日祝日に限っては会員さんの紹介か、同伴が必要です」という。
 では、知人に会員さんがいない人はプレーできないかといえば、そうでもない。例外がある。
 HPの「カレンダー料金」をチェックすると、割安プランの中に、わずかだが土日祝日を対象としたプランがあり、空いてさえいれば、そのままネット予約が可能なのだ。
 そのネット予約を対象にした「Webユーザー料金」表を見ると、平日のセルフプレーを中心に「緊急特別企画プラン」「スタート時間限定 早め・遅め」「組数限定プラン」「AGサイト限定プラン」など、様々な割安プランが並ぶ。
 季節や混み具合などにもよるが、オフシーズンで、空いている平日のセルフプレーなら1万円(昼食付)程度でのプレーが可能。キャディ付プレーでも昼食代込みで13,000円から16,000円の水準だ。
 では、「割安プラン」の対象日以外の日にプレーすると、料金はどのくらいなのだろうか。まだ寒い3月と、ハイシーズンに入る4月のそれぞれ平日と休日の料金を聞いてみた。
 日によって多少の違いはあるが、3月は平日で16,000円(昼食代込み)、休日で19,000円(昼食代なし)。4月は平日で17,000円(昼食代込み)、休日で26,500円(昼食代なし)とのことだった。
 やはり良い季節の休日料金は高い。プレー日が決まったらHPなどの各予約サイトを小まめにチェックしたい。
 まったく別料金だが、所属プロによる「ラウンドレッスン」や「1DAYゴルフスクール」など、レッスンプログラムが充実しているのもここの特徴だ。
 歴史と風格があり、変化に富んだ面白いコースで、都心からも比較的近い。
 会員の方々には申し訳ないが、そうした有名ゴルフ場で経営主体が変わり、合理化が進んで、利用者本位のサービス、料金体系が導入されることは一般ゲストには有り難い。
 今回のラウンドで、憧れだった「習志野CC」が急に身近な存在に感じられるようになった。

2011年2月6日日曜日

千葉セントラルゴルフクラブ=30年の歴史誇る“パブリックの名門”。オープンコンペ開催にも熱心

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(フェアウエーは意外にフラット。しかし、ハザードも多く、ショットの正確性が求められる)

 住所は千葉県市原市。文字通り千葉県の中央部(セントラル)に位置する。JR内房線五井駅からクルマで南へ約20分。一帯は人気ゴルフ場の密集地だ。その中で、敢えてこのゴルフ場でプレーしてみようと思ったのはホームページ(HP)にある「パブリックの名門」という言葉が気になってしかたなかったからだ。

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(Aコース、Bコース、Cコースからなり全部で27ホール。スケールの大きさは魅力の一つだ)

 開場は1978年(昭和53年)9月。既に30年以上の歴史を誇る。140万㎡の広大な敷地に「Aコース」「Bコース」「Cコース」の計27ホールを展開、年中無休で営業する。
 ABCという素っ気ないアルファベットより、もっとお洒落なコース名を付ければ良かったのにと思うが、そこはパブリックコース。妙な色気は最初からなかったのかもしれない。
 珍しく暖かかった2月の日曜日。同伴者と待ち合わせて、五井駅8:20分発のクラブバスに乗る。駅東口には周辺ゴルフ場行きの送迎バスが10台以上も並び、相変わらずの大賑わい。「この寒い時期に、みんなよく来るね」と自分たちのことを棚に上げて顔を見合わせる。

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(玄関側から見たクラブハウス。堂々とした構えで、周辺の植栽も綺麗)
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(コース側から見たクラブハウス。ひと昔前の典型的なデザイン)
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(自然林が多く残り、空気まで美味しく感じられた)

 到着したクラブハウスは思った以上に大きく、堂々とした外観。玄関周辺の植木は良く手入れされていて美しい。正面の駐車場も広い。
 館内は広いようでいて狭く感じた。パンフレットに掲載されている「ロビー」の写真は天井が高くスッキリし、高級感さえ漂わせているが、実際はプロショップから溢れ出したゴルフ用品が通路にまで進出。賑やかというか、商売優先の姿勢がありあり。
 最初は商品群に隠れて、スターティングテラスへの出口さえ分からなかったほどだ。
 1階には珍しいコーナーが2つあった。1つは正面右側に設けられたコーヒーショップ。名前が「イーグル」。カウンター席とテーブル席のある本格的な喫茶店で、コーヒー1杯210円。スタート前、ちょっと寛ぎたい時に便利そうだ。
 もう一つが左側にある「パターフィッティング」コーナー。女性担当者が「(パターの)バランス調整やグリップの取替えなど簡単にできますよ。いかがですか」と熱心に声を掛ける。こちらもスタートまでに時間があれば一度、利用してみたい。

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(低く、狭いスチール製のロッカーが並ぶ。扉の内側に鏡は付いていなかった)

 受付を済ませロッカールームへ。小さな階段を登った先にあったのは、背の低いスチール製ロッカーが並んだ簡素なスペース。高級会員制ゴルフ場のような豪華さや文化性といったものとは無縁の世界だ。
 もっとも「このゴルフ場に初めからそんな要素は期待していない」という利用者が圧倒的に多いようで、みなテキパキと着替え、さっさと外に飛び出して行く。

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(ドライビングレンジではドライバーなど練習できなかった)

 練習場はどうだろうか。キャディマスター室でコインを購入。クラブハウスを半周して辿り着いたドライビングレンジは、かなり変則的なものだった。
 まずドライバーが打てない。ボールの自動販売機脇に「男性はアイアンのみのご利用となっております」との貼り紙。

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(打席は高さが少しづつ異なり、3段階に分かれる。マットは中央部分が磨り減っているものが多かった)

 打席は傾斜地に設けられているため、4席ほどが3段に分かれて並んでいる。200ヤード先まで広がる“フェアウエー”も自然のままというか、デコボコしてやや荒れ気味。
 何より太陽が正面に位置し、まぶしくて打球の行方が見えないのには閉口した。この時期、この時間帯だけの問題かもしれないが、朝練習にこの立地条件は厳しい。
 同伴者は「(どうせボールが見えないので)ヘッドアップしなくて良いよ」と開き直っていた。
 料金は1コイン30球で380円。傷のない綺麗なロストボールを集めたようで、ブランド名はまちまち。パター練習場は2グリーンあり、一方は「CLOSED」。アプローチやバンカーの練習場はない。
 この日回ったのは「Bコース」と「Cコース」。コースレート(バックティから)は「A→B」の場合で70.7。「B→C」も全く同じ70.7。「C→A」の場合が69.7となっているが、「A→B」と「B→C」なら難易度に差はない。

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(「ここは林間コースです」とゴルフ場。でも丘陵コースと呼んだ方が相応しいホールもあった)

 「比較的なだらかで、要所に池を配した丘陵林間コース」という設計思想、デザインも共通している。
 レギュラーティからの全長距離は今回プレーした「Kベントグリーン」の場合、「Aコース」が2,910ヤード、「Bコース」が3,029ヤード、「Cコース」が2,932ヤード。すべて短めで、同じ様な長さ。飛距離自慢の人はバックティからプレーした方が良さそうだ。
 パター練習を終えた同伴者が次々に「Bコース」1番ホールに集まってきた。ティインググランド脇の「素振り場」でドライバーを振りながら、レイアウトを確認する。
 右サイドの谷が気になるが、思った以上にフラット。スタートし易いホールのように感じる。
 「遠方に見える鉄塔が自然美を損ねているのが残念」とチェックするくらい、心にも余裕があった。
 惜しいパーパットを外したものの、無難に、静かなスタートを切る。
 続く2番ホールは459ヤードの短い“サービスロング”。ハンディキャップは「9」。ここは着実にパーで切り抜け、「今日はかなりの好スコアが出るかも」と自分に期待する。
 結果を先に報告すると、前年の自分の年間平均スコアよりも5打ほど良いスコアで上がることができた。
 プレー終了後、キャディマスター室近くにいた男性スタッフの方にスコアを漏らすと、「アップダウンは少ないし、トリッキーではないので、初めて来場された方でも良いスコアが出やすいんですよ」と喜んでくれた。
 そう聞くと、「易し過ぎて、面白くないのだろう」と思われるかもしれないが、決してそんなことはない。注意しないとスコアを崩すワナは随所に仕掛けられている。
 今回たまたま好スコアが出たが、それは「このコースの怖さを知らなかったお陰かもしれない」と正直、後で思った。
 振り返ってみれば、まずフェアウエーが絞られたホールが多い。「かなり曲げても大丈夫」という接待ゴルフ場の造りでは全然ない。
 同伴者が『ドライバーは必ず振り切る。振り切ればボールは曲がらないんだ』とアドバイスしてくれたことに改めて感謝。
 第二に、砲台グリーンに手こずらされる。特にショートホール。わずかでも届かないとボールは10ヤード以上、斜面を転げ落ちてしまう。他のホールでもアプローチの距離感が難しい。

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(ここは左が谷、右が山。フラットだが結構、難しい。飛距離よりも方向性が大事と痛感)
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(正面の立ち木の先には池。狙い所を定めず、迷いながら打ってミス・・・)
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(その池は周囲をコンクリートで固めた調整池のように見えた)

 第三に、左右が山や谷(あるいは池)になっているホールが多く、ティショットで強いプレッシャーを感じることがある。朝、男性スタッフが「戦略性に富んだコースですよ」と話していたが、確かにその通りの設計だった。
 第四に、難しいなと感じるグリーンが幾つかあった。全体的にはオーソドックスで、ポテトチップスのようないやらしい傾斜はないのだが、時々、思った以上に速く、微妙にボールが曲がる。

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(グリーンは2つで、いづれも小さく、まん丸の砲台型。距離に差を付けた配置が目立った)

 ちなみにグリーンは各ホール2つ。いずれも小さく、まん丸。「昔の名門コースのグリーンはみな砲台型で、小さく、丸く、速かったもんですよ」とベテランの同伴者。その意味では、ここのグリーンはまさに名門の造りだった。
 一般にパブリックゴルフ場というと、「初心者でも楽しめる手軽なコース」というイメージがある。だが、ここは来場者に媚びたようなコースではない。逆に真剣に、気を引き締めてラウンドした方が楽しめるコースである。

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(コースの近くを高圧線が通る。鉄塔が自然の景観を壊してしまう場面が時々、見られた)
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(安全確保のための防球ネット。必要な設備だが景観的にはあまり良くない)
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(Cコースの7番ショートホール。箱庭的景観の美しさが際立っていた)
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(「ワンオンチャレンジ」を開催。賞品は一般的なものが多く、挑戦意欲が湧かなかった)
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(Cコース内の売店。外観、内装、品揃えともごく普通のレベルだった)

 物足りなく感じたのはコースの戦略性より景観だった。「おっ、綺麗だな」と喜んだのは「Cコース」の7番ショートホールだけ。ティマークからピンまでは約100ヤード、箱庭のような造りだ。
 近くに売店があり、「ワンオンチャレンジ」も準備されていたので、ゴルフ場側も自慢したい美景ホールなのだろう。

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(フラットなフェアウエー、両サイドに谷と山。もう少しホールごとの個性があると嬉しい)

 他のホールは「景観の美しさ」をアピールするより、「戦略性」で勝負しようとしているように思えた。ただ、距離が違うだけで雰囲気が似て、ラウンドが単調になるきらいはあった。
 もちろん、この評価については冬の2月という季節を考慮する必要がある。春になれば事情が変わってくるのかもしれない。でも、どうだろうか。
 プレーしてみて初めて気づいた点が他にもある。まずティインググランドの多さだ。各ホールで4つから5つある。各自の力量に応じてティマークを選べるし、芝の養生のためにもティインググランド数には余裕があった方が良い。実際、メンテナンスは良好だった。

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(全ホールのティインググランド側に、こうした看板があった。とても便利で分かりやすかった)

 ホールの全体像を示す“看板“は全ホールにあった。セルフプレーコースなので、こうした配慮は有り難い。大きくて見やすく、これがあるだけで随分とプレーしやすかった。
 「ワンペナ」が多いのもこのコースの特徴といえる。プレー前にその看板を見ると「右OB、左ワンペナ」などといった表記が目に付いた。同伴者も時々「ワンペナが多いねぇ」と困惑した表情を見せていた。

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(売店以外にもトイレが設けられていた。トイレは多い方が有り難い)

 いくつかのホールではファエウエーのサイドに100ヤード、150ヤードの標識とは別の特別な表示板が置かれていた。グリーン中央までの残り距離が「K68Y、B98Y」といった具合に書かれている。これも便利。
 細かい工夫だが、スコアカードに売店やトイレ、避小屋の場所が印刷されていたのも好印象。

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(乗用カートは新しく、快適だった)
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(最終ホールなどには夜間照明がきちんと設置されていた)

 なお、ここでのプレースタイルは「乗用カート利用のセルフプレー」のみ。キャディはいない。
 営業面で特筆されるべきは、スポンサー付の「オープンコンペ」を毎週のように開催していることだ。
 「冬の味覚コンペ」「マルマン杯」「サッポロビール杯」などなど。日曜日の開催もあり、多いときには100人以上の参加者で賑わうという。一度、参加してみたい。
 プレー料金は冬の1~2月が最も安く、平日で8,000円、土曜日で14,000円、日曜日で13,500円。3月になると平日で400円、土日 祝日で500円アップする。4月以降のハイシーズンに入ると平日が9,000円、土曜日が17,300円、日曜日が16,500円。平日の安さが目立つ。
 早朝にスタートして「1.5ラウンド」回る場合は平日で3,150円、土日祝日で5,250円の追加料金が必要。
 2サムを希望する場合は1人平日で1,100円、土日祝日で同2,500が加算される。数百円レベルだが、3サムでも追加料金がかかる。この辺の料金設定は結構、ガッチリしている。
 ガッチリしているといえば自動販売機の飲料の値段も高かった。普通サイズの缶で1本200円、ペットボトルサイズで同250円。市中価格より明らかに高く、「なぜ」と思わずにはいられなかった。
 昼食をとったレストランはクラブハウスの2階。天井がやや低く感じるせいか、開放感は今ひとつ。入り口近くに大手飲料メーカーのポスターが貼ってあり、高級というより、ややカジュアルな印象。
 それでもスペースは広く、明るく、普通に食事を楽しむ分には全く問題ない。窓の外にはコースの一部が見える。特に良かったのは女性スタッフのきびきびとした動き。皆にこやかで、ホスピタリティが前面に出ている。後片付けも早かった。
 「そういえば受付のスタッフも皆、感じがよかったな」と思い出す。従業員教育には力を入れているようだ。
 昼食のメニューは種類が多いものの、価格は総じて高めに感じた。ビール(生中)は700円。スタンダードメニューでは「特製牛タンカレー」の 1,280円から、上は「セントラル御前」の2,480円まで。注文した「かき揚げそば」は1,380円。特選メニューの中には3,980円(国産牛ヒレ ステーキ200g)というものもあるようだ。
 レストラン隣のラウンジには所狭しとばかりにソファーが並び、ちょっと窮屈な感じも。1階のエントランス部分を含め、全体にもう少し「空間」が欲しい。
 クラブハウスの施設の中で、最も歴史を感じたのが浴室だった。木の感触を生かした四角い洗い場の中央に、同じく四角い形をした湯船がある構造。外の景色はほとんど見えない。窓が小さく、高い所にあるためだ。
全体に湯気が立ち込め、どこか山里の温泉にでも来たような錯覚に陥る。

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(どことなく「時代」を感じさせる脱衣場。遅い時間だったせいか、のんびりムードが漂っていた)

 脱衣場も清潔で備品等も揃っているが、昔風の造りで、これといった特徴はない。外の眺めも平凡。
 周辺のゴルフ場は小まめに改修を重ね、着実にレベルアップを図っている。「パブリックの名門」を自認する以上、歴史やコースの戦略性を誇るだけでなく、こうした施設面でも他を圧倒するような魅力を備えて欲しいと願う。
 最後に「アクセス」について簡単に触れておきたい。東京駅からならJRの京葉線特急電車が便利。朝7:30分発の「さざなみ1号」(館山行)で五井駅到着8:11分。8:20分発のクラブバスに接続し、バスの乗車時間は約20分。8:40分にはゴルフ場に到着する。
 総武線・内房線直通の快速電車でも五井駅までの乗車時間はちょうど1時間。ただし朝、クラブバスはこの1便しかなく、しかも土日祝日のみの運行。平日は予約制になる。タクシーだと約3500円かかる。帰りのクラブバスは2便。
 クルマの場合は京葉道路を通り、市原ICで降りて一般道を約15分。東京駅を起点にすると、所要時間は1時間22分(NAVETIME調べ)。神奈川県方面からだと東京湾アクアライン→市原IC経由となる。