2011年1月23日日曜日

ひととのやカントリー倶楽部=栃木県南部の平坦な林間コース。大小9つの池が攻略のカギ握る

 「1月下旬。寒い時期だけど栃木県でゴルフしない?」。そう誘われて一瞬、ためらった。「栃木県」と聞いて頭に浮かんだのが、高低差のある丘陵 コース。雪と寒さが心配だ。OKはしたものの、前日まで天気予報が気になった。向かった先は「ひととのやカントリー倶楽部」(小山市)。到着して驚いた。 平坦な地形。雪はゼロ。電車でのアクセスは良好だし、料金も首都圏の人気ゴルフ場に比べれば安い。これでコースが良ければ3拍子揃う。コースを早く見たい。

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(フラットな林間コース。池のプレッシャーを跳ね返せるか)
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(スターティングテラスには乗用カートがズラリ。スタッフが手際よくバッグを積み込んでいた)
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(1番ホールから2番ホールへと向かう途中。格好の良い橋が高級感を演出)
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(2番池越えのショートホール。池の縁は綺麗に整えられ、水面はまだ凍っていた)

 練習を済ませ、OUTコースの1番ホールに立つ。目の前に池。景色は良いが、いきなりのプレッシャーに戸惑う。続く2番ホールも池越えのショート ホール。「そうか、フラットで易しいので、池をたくさん造って難しくしてあるんだ」。設計者の意図を読み取り、冷静にスタートする。
 よく見れば、池は大きいもののティインググランド側に引き寄せられており、池の先からグリーンまではかなりの距離がある。池がグリーン近くまで迫っているわけではない。池越えに苦労する初心者でなければ「見た目ほど難しくはないはず」と自分に言い聞かせる。
 3番は真っ直ぐなロングホール(レギュラーティ、531ヤード)。池はないが、両サイドの林がフェアウエーを狭く感じさせ、別の緊張感を強いる。
 「ここは飛距離よりも方向性が大事。林に入れたら無理せず横に出そう」と宣言。同伴者も『1打のロスを受け入れる気持ちが大切なんだ』とうなずく。

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(コース内を一般道が通り、何度も乗用カートで「陸橋」=手前=を渡る)

 次の4番ホールに向かうには乗用カートで「陸橋」を渡る。実はこのゴルフ場はOUTコースとINコースとが飛び地になっており、さらに両コースの 中を一般道が走るなど、かなり複雑なレイアウト。このため「OUT―IN」の移動だけでなく、一般道を越えて次のホールに向かうたびに同じ様な「陸橋」を 渡ることになるのだ。
 この日は好天に恵まれたので、のんびり遠景を楽しみながら移動できたが、乗用カートの動きがゆっくりしているので、もし雨や風の強い日だったら結構、イライラするのではないか。
 4番ホールにはまた池があった。しかし、ティインググランドの直ぐ左前なので、ティショットを引っ掛けない限りボールを池に入れる心配はない。無視して正面を見据える。
 グリーン左サイドには隣接する「KDDI国際通信史料館」の建物が見えた。一般道を走る車の騒音も聞こえる。「雄大な自然に溶け込んだ」コースであるが、パンフレットに書いてある「街中の喧騒を忘れさせてくれる」という表現は、ここでは微妙だ。

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(売店の前に並べられた看板。妙に印象に残った)

 再び「陸橋」を越えて5番ショートホールへ。ティインググランド手前に売店があり、「甘酒」などの案内が並ぶ。
「どうぞ中へお入り下さい。暖かいですよ」。女性スタッフが店から飛び出してきて呼び込む。商売熱心。愛想もいい。

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(「ワンオンチャレンジ」を担当する女性スタッフ。参加費は1人1,260円)

 店内からは正面の窓を通して前の組のプレーが良く見える。このホールでは「ワンオンチャレンジ」も実施中。カートに乗った若い女性スタッフが寒さに耐えつつ一生懸命、客に参加を呼びかけている。
 「難しそうなホールですね」と話し掛けると、「ワンオンするのは1組で1人くらいですね」と正直。
 6番ホールと7番ホールの間にも大きな池があり、単調になりがちな景観にアクセントを付けている。この池はフェアウエーにあるわけではないので、ハザードというより景色を美しく見せるための舞台装置といった感じだ。

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(池がないとこんな感じのコースになり、印象が薄くなる。もう少し変化があった方が楽しめる)
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(人工的に造られたと思われる池。それでも、あるとないとでは面白さが全然違ってくる)
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(どこもフラットだが、林や池が戦略性を高める。こんな景観が随所で見られた)

 別の見方をすると、池がないホールは皆、似たような景色に見えてしまい、印象が薄くなる。元々、コース内の高低差が1.5mという平坦な地形。ま してこの時期、半分以上の木は葉が落ち、下の芝もすっかり枯れて冬景色。人工的に造られたとはいえ、「池」の果たしている役割は大きい。
 ラウンドしていると、白モクレンやコブシ、クヌギ、ナラ、ツツジなど様々な樹木に出合う。ティインググランド周辺には所々、藤棚も作られていて、春以降の色づいた景観をイメージしてみる。

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(氷の溶けた水面を泳ぐカモ。ほとんどの池にいて、目を楽しませてくれた)

 早朝には凍っていた池の表面も徐々に溶け出し、たくさんのカモが元気に泳ぎまわっている。名前は分からないが、ちょっと大き目の珍しい鳥の姿も目撃した。自然は思いのほか豊かだ。

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(ボールを探しに林の中へ。美しい木漏れ日が、焦る気持ちを落ち着かせてくれた)

 コースコンディションに多くを求めるのは気の毒な時期ではあるが、メンテナンスはまずまずといったところ。ただし、林の中に入るとベアグランドが多く、いつもよりリカバリーショットに苦労した記憶が残る。
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(朝方、一部表面が凍っていたグリーンも時間の経過と共に良好なコンディションに回復した)

 グリーンの状態も悪くなかった。スタート時にはパターで叩くと「カンカン」と音がするくらい表面が凍り、メンテナンスを云々する以前の状態だったが、日差しが強まるにつれて真っ当なグリーンに戻ってきた。
 キャディマスター室には「ペンクロスベント・刈り高4.2mm、シングルカット、9フィート、コンパクション10」との表示が出ていた。来場者に「しっかりメンテナンスしてますよ」と訴えているようにも感じた。

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(“隠れ池”も多く、14番ホールではこんな看板も。「知らない方が良かった」とボールを池に打ち込んだ同伴者)

 8番ホール以降も同じ様なレイアウトのホールが続いた。結局、池はOUT、INコース合わせて9つ。このうち明らかに池越えのホールが5つ。残りは一部がフェアウエーにかかっていたり、ティインググランドからは見えない“隠れ池”だった。
 景観的にも、戦略的にも、そしてスコア的にも「池」が大きなポイントになるコースである。

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(クラブハウス近くに造られた花壇。小さな、かわいらしい花が植えられていた)
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(10番ホール脇の「スタートハウス」。中は無人で、ちょっと寂しい感じも)
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(INコースの10番ホール。右側に池。見ないようにしても、やはり池は気になる)
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(11番ホール。スタート直後に池がらみのホールが連続するのはOUTと同じ)

 ちなみにホームページを見ると、池だけでなく「108個のバンカーを巧みに配しました」とある。
 振り返れば、確かにバンカーも多かった気がする。が、ラウンド中はバンカーだらけという感じではなかった。それだけ池の存在の方が大きかったということだろう。

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(乗用カートのハンドルにはピン位置を示す案内図。「本日のグリーン 左」とある)

 今回は「レギュラーティ」から「乗用カート利用のセルフプレー」で回った。グリーンは2つあるが、この日は全ホールとも左グリーンを使用。この条件での全長距離は6,372ヤード、コースレートは「70.2」。
 ちなみにバックティからプレーすると、距離が6,723ヤードに伸び、コースレートが「71.9」まで上がる。難度の高い本格的なコースといえる。
 「歩き」でのプレーはできないが、「キャディ付きプレー」は希望すれば可能。ただし先約順で、追加料金が2,900円かかる。キャディマスター室で尋ねると、「その時にもよるが、最近はセルフプレーを選択する人の方が多い」という。

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(練習場はコースから離れた所にある。打席の後ろ側を一般道が走り、車の往来も盛ん)
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(パター練習場は比較的広い。右側がクラブハウス。正面奥に見えるネットは練習場)

 このゴルフ場で一番残念だったのは練習場だった。実は「冬場は体が回りにくい」と自覚。早めに到着して、しっかり体をほぐそうと目論んでいた。
 事前にゴルフ場に電話すると「練習場は一般の方にもご利用いただいているもので、料金は15球で100円です」との返事。この安さにも魅力に感じていた。
 ところが実際のドライビングレンジは「鳥かご」。ボールの自動販売機以外にこれといった設備もない。周辺には畑などが広がり、ちょっと寂しい風景。
 16打席、90ヤード。一番困ったのは足元のマットが滑って危険だったことだ。朝露が凍ったのだろうか?これでは練習にならない。パター練習場は広く充実していたので、よけい落差を感じた。バンカーやアプローチの練習場はない。
 逆に、期待以上に素晴らしかったのが「クラブハウス」。エントランスに足を踏み入れると、正面の全面ガラスから朝の陽光が降り注ぎ、まぶしいくらいだ。天井は高く、ラウンジもゆったりとした設計で上質感がある。

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(手前がプロショップ。正面が受付。左側がラウンジ。高い天井と、たっぷり差し込む陽光が印象的)

 左側のプロショップも比較的広く、キャディバッグやウエア類の品揃えが充実。「佐野ラーメン」「宇都宮ひと口餃子」など周辺各地の特産品が販売されていた。

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(木製のロッカーは高級感があり、使いやすかった。ロッカーの間隔も比較的広め)

 その奥にあるロッカールームもゆとりある設計で問題なかった。洗面所は清潔で快適。トイレの個室は7つ。うがい用の紙コップとうがい液が常備され、利用頻度も高そうだった。
 2階はレストラン。1階同様、スペースに余裕があり、日差しがたっぷり入ってくる。温室のように暖かく、大きな窓からはOUTコースの一部が見える。階段脇には絵画が飾られ、半円形の天井のデザインと合わせ文化性も感じられる。奥には小奇麗なコンペルームが並ぶ。
 ランチメニューは10種類以上。すべてのプレー料金が「昼食代込み」なので個々のメニュー料金は分からない。女性スタッフに聞くと「1,500円相当ですね」と教えてくれた。メニューの中には「追加料金」が必要なものもある。ビール(生中)は690円。
 ロッカールーム奥にある浴室は広さこそ普通だが、明るく、気持ち良かった。浴槽は3つに仕切られ、1つは水風呂。残り2つは湯温に違いを持たせたかったのだろうが、実際に入ってみると、小さいほうがやや熱めといった程度で大差ない。
 浴室の大きな窓は印象的。外の景色は平凡だったが開放感がある。サウナを備え、洗い場にはパーティションが設置されている。
 脱衣場もコンパクトながら特に不満に感じるところはなかった。窓にブラインドが下りていたので少し開け、外を眺めてみた。美しいコースが見えるのかと期待したが、それはなし。見ない方が良かった。
 バブル期のような豪華さ、派手さはないものの、全体に機能的で明るく、余裕ある設計には好感が持てた。受付スタッフの対応もしっかりしていた。
 午後のスタート前、男性スタッフに「クラブバスの運行時間」と「電車(JR)との接続時間」を尋ねると、A4サイズの一覧表をコピーして、小山駅での待ち時間などを丁寧に説明してくれた。
 また「『エクセル イン 小山』というホテルと提携していて500円引きで宿泊できます」と紹介。その上で「イーホテル 小山」という別のホテルのパンフレットまで手渡してくれた。
 夕方の清算時には領収書のほか、「ゲスト特別ご優待券」など3種類のチラシを出して説明。「ぜひ、またご利用下さい」と繰り返した。
 気になる「料金」だが、月によって細かく分かれており、1月の平日なら9,800円(1Rセルフ、4バッグの場合、昼食付、消費税込み、以下同じ)、土曜日で15,800円、日曜・祝日で14,800円。
 2月が最も安く、平日9,300円、土曜日14,300円、日曜・祝日13,300円。ハイシーズンの4月になると、平日10,800円、土曜日 19,300円、日曜・祝日18,300円といった具合。「1,500円相当の昼食」が付いた値段なので、そう割高な感じではない。
 ただし、プレー日近くのキャンセルには「キャンセル料」が発生するので要注意。特に当日キャンセルの場合、キャディ付で1組8,000円、セルフでも同2,000円の出費となる。
 エントランスには割安な料金でプレーできる「年次会員募集」のキャンペーンチラシが置かれ、運営会社である「オリックス・ゴルフ・マネジメント㈱」の割引キャンペーンポスターも壁に貼られていた。
 通常料金以外に「コンペサービス」や「レディース&シニアデー」等も設けられているので、プレーする際には各プランを丹念に調べて上手に利用したい。
 都心からの「アクセス」は電車の方が便利だ。東京駅から東北新幹線で小山駅までは42分。駅西口から出ているクラブバスが10分ちょっとなので、乗り継ぎ時間を加えても約1時間で到着できる。
 新幹線料金(3,440円、自由席)を節約しようと思えば、上野駅から出ている「宇都宮線快速ラビット」を利用するのも手だ。運賃は小山駅まで1,450円。乗車時間が1時間12分。ちょっと早めに自宅を出れば約2,000円安く済む。
 この日は小山駅からタクシーでゴルフ場に向かった。料金は1,470円だった。
 クルマの場合は、高速道路を降りてから時間のかかるのが難点。東京からのルートとしてはまず、東北自動車道を北進。久喜ICで降りて国道4号線な どを通ってさらに北に向かうか、次の佐野・藤岡ICまで行き、国道50号線を東に走るかの選択になる。どちらのルートでも川口JCTから1時間半程度はか かりそうだ。
 クラブバスの運行は朝3本、夕方2本。運転手さんが「駅周辺が渋滞するので、夕方は15分くらいかかるね」と話していた。来場者には地元ゴルファーが多いようで、広い駐車場は自家用車で満杯に近い状態。逆にクラブバスは数人の乗客しかいなかった。
 開場は1991年(平成3年)11月。すでに約20年の歴史を持つ。設計は著名な安田幸吉氏と川村四郎氏。人気の出る条件が揃っている割に、地元以外での知名度は低いように感じる。
 理由の一つに「ひととのや」という変わった名前があるのかもしれないと思った。漢字で書くと「神鳥谷」。これを「ひととのや」とは読めない。それでもオリックスグループ入り(2003年)する前はこの漢字をそのまま使い、「神鳥谷カントリー倶楽部」という名前だった。
 パンフレットには由来が書いてあり、読んで納得したが、分かりにくさ、覚えにくさは否めない。
 ここまで来て、ハッと気が付いた。ゴルフ場の基本理念に「人と人との出会いと語らいの場の演出」と書いてあったことを。
 「ひととのや」「人と人とのや」「人と人との出会い」・・・。珍しい名前を逆手にとった新しい理念、自己PRに違いない。いや、考え過ぎだろうか。

2011年1月3日月曜日

小田急藤沢ゴルフクラブ=50年の歴史誇る本格派林間コース。上空の軍用機騒音が余計

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(堂々としたクラブハウス。左側のネットは練習場)

 関東1都6県の中で、神奈川県のゴルフ場は比較的プレー代が高いといわれている。小田急藤沢ゴルフクラブも例外ではない。誰でも利用できる手軽さ が売り物のパブリックコースなのに、基本料金は平日で22,800円、土曜日で28,720円、日曜・祝日で27,040円もする。季節料金や特別プラン などが多いとはいえ、高級会員制クラブ並みの水準である。それでも人気が高いという。「なぜだろう」。期待と疑問を抱いてゴルフ場を訪ねた。
 確かに交通アクセスは良かった。東名高速道路の横浜・町田ICから保土ヶ谷バイパス経由でゴルフ場まで約30分。新宿駅を出発点に「NAVITIME」でルート検索してみたところ「45km、所要時間1時間9分」と表示された。

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(小田急線長後駅から出ている送迎バス。立派な案内板があり、安心して待っていられた)

 この日は電車で向かったが、同じ新宿駅から小田急線の急行に乗り、相模大野駅経由でクラブバスの出る長後駅までは所要時間53分。バスの乗車時間 が10分弱だったので、待ち時間を入れても新宿駅からなら1時間10分程度で到着できる。送迎バスは朝6本(10~12月は7本)、午後は10本も出てい て便利。
 電話で予約を入れた際、男性スタッフが「アクセスの良いのが魅力です」と話していたが、とりわけ神奈川県や東京都西部在住のゴルファーにとっては好立地であること間違いない。
 住所は神奈川県綾瀬市。在日米軍と海上自衛隊が共同で使用している「厚木海軍飛行場」(通称:厚木基地)の直ぐ南側である。

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(木の風合いが印象的なクラブハウス。正面が入り口)

 到着したクラブハウスは、日本建築の意匠を生かした重厚感ある外観だった。出迎えてくれた女性スタッフが「宅配便で送られた方はバッグのご確認をお願いします」と声を張り上げる。
 一瞬戸惑ったが、周囲を見ると、先に送ったキャディバッグが玄関脇に立て掛けてあった。名札を見て確認。「ハイ、これです」と言ってシューズを受け取る。
 ロッカールームまで行ってからシューズを取り忘れていたことに気づくことが間々ある。今日のように玄関で受け取ればそんなミスもしないで済む。最初から好印象だ。
 エントランスの雰囲気は期待以上だった。入って左手がプロショップと受付。右側にゆったりとしたラウンジとバッグ置き場。天井も高く、明るい。「これでパブリックゴルフ場なの」と思わずつぶやいた。
 もっとも支払うプレー代はかなりの高水準。これからはパブリックゴルフ場のイメージでなく「高級会員制ゴルフ場」と考えてチェックしたい。そうでないと、ついつい過大評価してしまいそうな気がする。

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(2階建ての本格的練習場。50ヤード、100ヤード近辺に特設グリーンが設けてある)

 最初に向かった練習場は、そうした前提に立っても高得点の稼げる充実した内容だった。オープンは2010年4月。「朝10時以降は一般のゴルフ練習場として営業している」だけあって、街中の練習場と比較しても遜色のない、立派な造りである。

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(大きな鳥かごのようなドライビングレンジ。意外に高く、PWで高い球を打っても大丈夫だった)

 打席は1、2階合わせて32打席。周囲をネットで囲まれた「鳥かご」とはいえ164ヤードの距離があり、「ミズノゴルフスクール」も開設されている本格派だ。
 ボールは「TOUR STAGE」。どれも新品のように綺麗で30球315円と価格も良心的。自動販売機に現金やコインを投入する方式ではなく、カードホルダーについているバーコードを自販機にかざすとボールが自動的に出てくる最新型システム。

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(新しく開設されたバンカー練習場。朝は慌しく、練習する時間がなかった)
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(アプローチ練習場。こちらはちょっと狭い。奥に見えるのはテニスコート)

 ネットの外にはバンカー練習場が新設され、小さいながらアプローチ練習場も備わっていた。「平日なら1,365円で打ち放題(1時間、入場料420円)です」と練習場受付にいたスタッフさんも元気がいい。

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(スタートホールにある「素振り場」ボールは打てないが、体は十分にほぐせる)

 パター練習を済ませ、本日、最初にプレーするINコースへ移動する。前に乗用カート2台並んでいて「遅れ気味だな」と思っていたら、ティインググランド脇に「素振り場」の標識を発見。
 ドライバーを持って行ってみると、同伴者もニコニコしながら付いてきた。思った以上にしっかり造られた「素振り場」で、改めてフォームをチェック、準備運動に励む。
 こうした設備があれば進行の渋滞もまったく気にならない。練習施設に関しては「かなり力が入っているな」と感じた。
 コースも個性的なホールが続き、面白かった。以下、ラウンドしながら気づいた点を列記する。

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(最初の10番ホール。芝はすっかり枯れていたが、フェアウエーには手が加えられ、緑が浮き上がって見えた)

 まず、最初の10番ホールではファエウエーの“緑”にハッとした。訪れたのは1月。ラフの芝はすっかり枯れ、どこも白っぽい。
 「フェアウエーだけ(緑に)塗っているんですよ」と今回、同伴してくれた会員さんがこっそり教えてくれた。「なるほど」と納得。

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(11番ホール。狭い道路を挟んで住宅街が迫る。高い防球ネットが距離の近さを物語る)
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(人家に打球が飛び込む危険性を訴える立て看板。他のホールにも同様の表示があった)

 11番ホールでは正面に高い防球ネットがあり、その先に住宅が見える。ティインググランドには人家の存在とショットの注意を呼びかける立て看板。開場は1960年(昭和35年)。当時の雑木林がどんどん宅地開発され、住宅地に変貌してきた歴史が想像できる。

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(美しい12番のショートホール。樹木と池、バンカーがプレッシャーになる)

 12番は景観の美しいショートホール。手前に池、グリーン周りにバンカー。ホームページ(HP)には設計者が名匠の安田幸吉氏であること、その特徴として「グリーン周りを中心にトリックが潜んでいる」と記してあったが、その通りの印象。

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(各ホールごとに、当日のピン位置を示す表示板があった。これはとても便利だった)

 13番も同じショートホール。パー3が連続するのは珍しい。しかも、この13番はグリーンの芝に「ペンクロス」を使用したホールと「クレンショー」を使用したホールが縦に直線的に並んでいて、まるで13番が2つあるような錯覚を起こさせるレイアウト。

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(14番のティインググランド近くにある売店。シダレ桜の古木が満開時の美しさを想像させる)
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(フェアウエーが左右に分かれる14番の名物ホール。グリーンまで、左右で50ヤード以上も距離が違う)

 14番も不思議なホールだった。ファエウエーが途中で左右に分かれていて、右と左とではグリーンまでの距離が50ヤードも違う。2グリーンでこんなに差があるのは初めての経験だった。

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(400ヤードを超え、しかも上りの15番ミドルホール。振り返ると、樹木の奥にクラブハウスの屋根がのぞく)

 15番はパー4ながら400ヤードを越え、しかも、緩やかな上り坂の続く難ホール。ハンディキャップは「2」。後ろを振り返ると、クラブハウスの屋根が顔をのぞかせ、「頑張れ」と励ましているような気がした。

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(16番ロングホール。左サイドにはスギ科の針葉樹「メタセコイア」が並び美しい)

 16番と17番。今度はロングホールが2つ連続する。左に軽くドッグレッグした18番ホールの第2打地点からは正面にクラブハウスが見え、景観的にもなかなか美しいホールだ。
 全体に変則的なコース設定ながらも「結構、戦略的で面白いコースですね」というのが同伴者とも一致した感想だった。
 午後に回ったOUTコースについて先に触れてしまうが、変化に富んだINコースに比べると、やや物足りなさを感じた。INコースは上記したよう に、後になっても各ホールの“顔”が克明に蘇り、聞かれればアップダウンの感じやハザードの位置、景観、グリーンの様子までも説明することができる。

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(立ち木が一本あるだけで、難易度がガラッと変わる。グリーン周りに仕掛けのあるホールが目に付いた)
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(グリーン手前に並ぶ高い松の木。景観的にはとても綺麗だが・・・)
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(雷が多く、避雷小屋は数多く設けられていた。トイレが併設されるなど、内容も充実)
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(5番ホールでは「ワンオンチャレンジ」を実施中。参加費1,300円は高いと思ったが、頑張って挑戦)

 だがOUTコースは、グリーン手前の松の木が美しかった2番ホールと、「ワンオンチャレンジ」のイベントを催していた5番ショートホールが印象に残ったくらいで、思い出せないホールもある。
 コース設計よりも、終盤の各ホールにいたフォアキャディさんの奮戦振りの方が強く記憶に残っている。白い旗を持ってティショットの落下地点周辺に立ち、サッとボールの在りかを知らせてくれる。
 同伴キャディさんに尋ねたところ「今日は50組以上が入り、パンパン状態。進行が遅れてしまうと、最後の組が日没で回れなくなってしまうので、進行をスムーズにするためにフォアキャディがたくさん出ている」とのことだった。
 パブリックコースではあるがセルフプレーはなく、全て「キャディ付、乗用カート利用」。接待ゴルフ場のような対応とプレースタイルである。
 「コースレートは査定していない」(受付スタッフ)という。全長距離が6,100ヤード前後と短いので難しくないはずだが、ハザードが良く利いていて、スコアは意外とまとまりにくい。飛距離より正確性、戦略性が求められるコースだ。

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(キャディさんは乗用カートにほとんど乗らず、ずっと走り回っていた)

 偶然という要素は否定しないが、同伴してくれたキャディさんはかなり優秀だった。朝の挨拶から始まり、クラブ本数の確認、進行管理、安全管理、クラブの受け渡し、グリーン上でのアドバイスの正確性、元気のいい掛け声、言葉の端々にホスピタリティも感じた。
 グリーン上で、常にパットラインを踏まないよう注意しながら歩いていた点は特に印象に残った。会員さんに感想を漏らしたところ「ここのキャディ教育はしっかりしていると思うよ」と同感してくれた。
 スタート前にホールごとの攻略法を書いた「コースガイド」(無料)を入手。ポケットに忍ばせていたが、結果的にはほとんど見ずにラウンドを終えた。
 不満に感じた点もある。一番びっくりしたのは上空に飛来する軍用機の爆音だ。米軍機、自衛隊機、戦闘機、輸送機、ヘリコプターと様々なタイプの軍用機が低空で飛び、その都度、空を見上げる。集中力が切れる。始動させたスイングを途中で止め、仕切り直ししたこともあった。
 キャディさんは「ジェット機を見るのが楽しみと言ってくれる方もいらっしゃるんですよ」と笑っていたが、この騒音に慣れるのは大変だ。厚木基地が近くにあるためで、一時的なものではない。
 騒音といえば7番、8番ホール周辺では近くを通過する新幹線の「ゴーー」という通過音も聞こえた。
 軍用機に比べれば可愛いものだが、カラスも意外に多かった。乗用カートの荷物に狙いを定め、油断すると飛んでくる。キャディさんが大声で追い払う。最近はどこのゴルフ場もカラス対策に頭を悩ませているが、ここも同様だ。

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(ヤード表示は170ヤード。実際は145ヤード地点にティマークが置かれていた)

 3つ目が、ティマークの置かれている位置がスコアカードに記載されている所よりかなり前だったこと。例えば「ワンオンチャレンジ」を実施していた 5番ショートホール。本来「ペンクロス」グリーンなら170ヤードあるはずだが、この日は145ヤード。表示より30ヤードも短かった。
 もちろん、全てのホールで前というわけではなかったし、この日は入場者数が多く、進行が遅れないようにとの配慮があることは十分に想像できる。が、あまり前過ぎるのも興ざめする。
 4つ目はティインググリーンが「レギュラー」と「レディース」の2つだけで、いわゆる「バックティ」がないこと。開場したのは50年以上も前。用地は十分にあったはずだ。どんな思想でバックティを造らなかったのか――。もったいない気がした。

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(寒ツバキなど冬に強い花が美しく咲き誇っていた)

 コースコンディションは、冬場としてはまずまずといったところ。フェアウエーにディボット跡が目立つのはこの季節、やむをえない面がある。
 芝については表示板に「ペンクロス使用」と大書されていた。同じベント芝の中でも「ペンクロス」は寒さに強く、損傷からの回復も比較的早い品種。コンディションに十分気を遣っていることを強調したかったのかもしれない。
 グリーンの速さは「9.6フィート」(キャディマスター室)との説明を受けた。感覚的にはもう少し遅く感じたが、それでも2段グリーンには手こずったし、微妙なアンジュレーションには何度も泣かされた。グリーンの状態は悪くない。
 コースの風格は十分にあった。各ホールを分ける樹林は密度が濃く、一本一本が太い。夏場に風通しが悪いと、芝が傷まないかと心配になるほど。景観的にはオーソドックスで堂々とした佇まい。松、桜、柳、もみじと樹木の種類も豊富だった。
 クラブハウスに話題を変えよう。2階のレストランは明るく、広々とした造り。大きな窓から18番ホールや名物の「カワセミ橋」などが望める。ただ、席によっては1階の大きな屋根で美景の一部が遮られてしまい残念。
 スタッフの中に男性が目立ったのは、ゴルフ場を運営しているのが小田急グループの関連会社であることが影響しているのだろうか。
 入り口近くのカウンターには洋酒などのボトルなどがたくさん並んでいてバーのような雰囲気も。少し離れた場所にはコンペルームが7室。昼時で利用者が誰もいなかったので覗いてみたが、どれも上質な部屋だった。独立した「喫煙コーナー」もあり、分煙は徹底されている。
 昼食メニューは10種類以上あって選択肢が広いが、値段はやや高め。一番安いサンドイッチで1,150円。カレーライスやチャーシュー麺が1,360円。ステーキ御前が2,400円。ビールは生中で630円。
 ツマミ類もチェックしてみたが、傾向は同じ。種類は多いが、値段は安いものでも1品450円。上は1,260円で、調子よく注文していると結構な値段になりそうだ。やはりパブリックコースの感覚ではない。
 浴室は1階ロッカールームの隣。脱衣場からは外の景観が楽しめたが、浴室は窓の下半分近くが曇りガラスで、景色を楽しんでもらうという設計ではない。
洗い場には半透明のパーティションがあり、1人当りのスペースも広い。ジェットバスのせいか、湯温はぬるめだった。
 今回、同伴してくれた方は毎年5万円(別途消費税2,500円)を支払って「年会員」になっているという。「年10回プレーすれば元が取れる感じ。11回以上ならお得感が出る。だから毎年、頑張って最低でも10回はプレーしている」と話す。
 魅力的なコースだったので、プレー終了後にスタッフに尋ねてみた。「直ぐに入会できますか」。
 「カワセミ会という独自の会員制度があり、割安な料金でプレーできます。しかし、入会希望者が多く直ぐには無理です。しかも、募集するのは年1 回。それも一般の方にはお知らせせず、1月に現会員さんに継続の意志を尋ねて、脱会者が出た場合のみ、同数の方にご入会いただいております」
 何だかややこしい話だ。「要するに無理なんですか」とぼやいたら、「会員さんは現在500人ほどですが、(順番待ちの)予約がいっぱいなんです。 入会するには会員さんの紹介も必要です。3月に次の募集があり、クラブハウス内の掲示板に状況が表示されますので、それを見て下さい」と案内された。
 諦めかけていたところ、女性スタッフがパンフレットを持って近づいてきた。「1人でもご参加いただけるオープンコンペを毎月、開催しています。割安なレディースコンペやシニアコンペ、アフタヌーンハーフプレーなど様々なプランもありますので、ぜひご覧下さい」。
 読むと「送迎バスプラン」などもあり、確かに営業面で様々な努力がなされていることが分かる。ただ、大半が「平日」プラン。仕事で平日休めない身には辛い。
 それでも「都市近郊の立地と豊かな自然」「静かな佇まいと人工的騒音」「50年の歴史と先端的設備」――。好対照な要素が入り交じった興味深いゴルフ場だった。