2010年11月6日土曜日

八千代ゴルフクラブ=都心に近いパブリックゴルフ場、コンパクトで上質な林間コース

 「パブリックゴルフ場」と分かっていたので、大きな期待はしていなかった。しかし実際にプレーしてみると、会員制のゴルフ場と比べても遜色のな い、とても綺麗な林間コースだった。設計は名匠、安田幸吉氏。全長距離が短いという弱点はあるものの、その分、様々な仕掛けや工夫が施され、上級者でも結 構、楽しめる。場所は千葉県八千代市。都心に近く、若者の姿が目立つゴルフ場だった。

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(広々とした1番ホール。中央の木がプレッシャーを与える)

 パブリックなのでプレーは誰でも可能。予約は6ヶ月先まででき、大型コンペで日程を早く決定したい幹事さんには有り難い。キャンセル料は原則、取らない。
 ただし、ホームページ(HP)に掲載されている「料金表」は4バッグでプレーする際のもの。キャンセルが発生して3バッグに変更になった時には1人当り588円の追加料金が必要となる。
 まず、その「料金表」を見て「おやっ」と思った。同じコースを回るのに季節や曜日などの条件によって目まぐるしく変化するからだ。しかも、価格差が大きい。
 年間は「トップシーズン」「セミ オフシーズン」「オフシーズン」の3段階に分かれる。
 例えば、今回プレーした11月は「トップシーズン」で、土曜日のプレー代(キャディ付)が24,150円。日曜日(同)は22,050円。平日は15,750円(同)。毎週月曜日の「セルフデー」は9,900円(昼食付)といった具合だ。
 同じ時期、同じコースで9,900円は安い。セルフプレーとはいえ昼食付だ。最も高い土曜日料金(キャディ付、昼食別)の半分以下である。
 1、2月の「オフシーズン」になると、土日曜日とも同額で18,900円(キャディ付)。平日(同)が13,650円となる。
 また「コンペパック」と名付けた別の料金体系もある。これを11月の日曜日に利用すると、1人当りの料金は24,150円(キャディ付、4バッ グ、2~9組の場合)。これには昼食代、1ドリンク代(アルコール類可)のほか、プレー終了後のパーティ代(オードブル5品と1ドリンク)まで含まれてい るので、それなりにお得感がある。
 これが「オフシーズン」の1月に入ると、土日曜日で21,000円、平日で15,750円。ここまで下がると結構、お得だ。
 コンペパックの料金表には「10~19組」「20組~」といった表記もある。大型コンペの開催を想定しているのだ。上記料金にプラス1,050円すれば飲み放題プランにもなる。
 さらに無料で登録できる「Web会員」向けにはまた別の割引料金システムがあるなど、ゴルフ場側が料金を相当きめ細かく設定していることが分かる。
 となれば、後は実際のコース、施設、サービス等がどうなのかという点だ。そんなテーマを持って、小春日和に恵まれた11月の土曜日、ゴルフ場へと向かった。
 東京都心から直線距離なら約35Kmの場所にあり、アクセスは比較的良好。電車を利用する場合は地下鉄東西線が延長された東葉高速線の「勝田台駅」か、京成電鉄の「京成勝田台駅」で下車し、タクシーで約10分。料金は1610円。
 送迎用のクラブバスが無いのが玉にキズだ。駅北口のロータリーに出ると、近隣のゴルフ場行きクラブバスが走っているので、送迎バスの不在に余計、不満が募る。
 HPには「路線バス」がありますと記載され、ゴルフ場の入り口近くには停留場もある。しかし,土曜日/休日には7時台のバスは7:42分発の1本しかなく、8時台はゼロと運転本数が少ない。よほどスタート時間のタイミングを合わせないと、利用は難しい。
 クルマの場合は千葉北ICから約20分。順調に走れば、都心からでも1時間ほどで着くことができる。柏IC経由でも約60分かかる。柏方面からは渋滞しがちな国道16号線を長く走るので、時間にゆとりを持って行動しないと心配だ。
 到着したクラブハウスは「パブリックゴルフ場」とは思えない立派さ。「ゴルフの発祥地、英国の雰囲気を大切にし、紳士の社交場をイメージした」そうで、玄関の壁に用いられた重厚な石材と大きな屋根も印象的。

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(「英国の伝統的ハーフティンバー風」のデザインという。外観の美しさはとても印象に残った)

 内部も華やかさには欠けるものの無駄がなく、必要なスペースはしっかり確保されている。所々に大きな絵画が掲げられていて、文化性もさりげなくアピール。
 この日は土曜日ということもあって50組余りが利用。このため貴重品ボックスは満杯で、財布などは受付に預けた。受付スタッフに同伴者の到着状況などを尋ねてみたが、対応はスムーズだった。
 売店は広く、クラブやゴルフ関連用品が豊富。さらに地元産の漬物や落花生、各種洋菓子などがズラリ。また冷凍庫には地元産の「特選干物」と一緒に、なぜか「下関ふぐ一夜干」と「大宮ぎょうざ」が並んでいた。
 ラウンジは1階と2階の食堂脇にあり、いずれもゆったりとした設計。籐製の椅子が心地良い。

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(練習場は狭く小さい。練習しようと意気込んで来場すると、ガッカリする)

 ドライビングレンジは完全な「鳥かご」だった。打席数はわずか8席。しかも正面のネットまで10ヤードほどしかなく、打つ感触を確かめるくらいしかできない。
 キャディマスター室でコインを買うのを忘れてしまったが、練習場の近くにいたキャディさんが「コインあるよ。カードナンバー教えて」と言って気軽にコインを1枚手渡してくれた。
 ボール代は30球で315円と安い。アプローチ、バンカーの練習場はない。パター練習場は大小3ヶ所。貸しクラブ(1セット3150円)は男女用ともあるが新しいモデルではなかった。貸しシューズは1,050円。

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(左側がOUTの1番、右側がINの10番。若者たちの組や大型コンペが目に付いた)

 いよいよプレー開始だ。スタートホールはOUT、INともクラブハウスから少し離れたところにあり、それぞれの組が並んで同時スタートする。これは珍しい形。
 1番ホールと10番ホールが平行してコース設計されているためで、安全にプレーできるようキャディさんが大声を張り上げて、スタートのタイミングを図っていた。
 コースは適度のアップダウンがあり、ひと言で言うと「コンパクトで上質な林間コース」。難点は距離が短いこと。スコアカードに掲載された距離はAグリーンが6,096ヤード、Bグリーンは5,925ヤードしかない。
 しかも、実際にラウンドしてみて分かったが、記載されている距離はバックティからのもの。レギュラーティからだとさらに短いわけで、他のコースに比べ2打目に持つクラブがだいぶ違った。
 コースレートはバックティから69.1、レギュラーティから68.0(ともにAグリーンの場合)。フェアウエー中央に樹木が立っていたり、ホールによってはうねっていたりとスコアを乱す仕掛けは多々あるものの、やはり距離が短い分だけ易しく感じられる。
 グリーンの速さは「9.0フィート」、刈高は「3.8mm」との表示があった。同伴者は「そんなに速くは感じないなぁ」と首をかしげていた。バンカーはさほど多くない印象。
 コースメンテナンスはパブリックコースとは思えないほど良好だった。多少軟らかいのか、グリーン上に残されたピッチマークが目に付いたくらいで、同伴者からも不満の声は漏れなかった。
 堂々とした松林には50年近い歴史を感じる。ただ、全体的に平坦で遠景が見えにくいだけに「景観の美しいホール」より、池越えやドッグレックなど「印象に残るホール」の方が多いように思われた。
 OUTコースは比較的素直なレイアウト。4番と5番ホールはフェアウエーのアップダウンと傾斜に手こずったが、最後の3ホールは共に短めで、真っ直ぐ。攻略しやすいミドルホールが続いた。

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(池があると景観にアクセントがついて美しい。ただ近づいて見ると、水質が今ひとつだった)
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(特にOUTコースでは「防球ネット」が目に付いた。安全面を考えればあった方が良いのだが・・・)
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(4番ホールのグリーン。年季の入った松林がコースを巧みにセパレートしている)
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(5番ホールのティインググランド近くにある売店。屋根のデザインがユニーク)
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(2つの池には噴水装置が未使用の状態で残されていた。バブル期には綺麗に水を吹き出していたに違いない)

 逆にINコースは異なる顔を持ったホールが続き、かなり変化が楽しめる。キャディさんは「INコースの方がトリッキーで少し難しい」と話していた。
 確かにOUTでは目に付かなかった「前4」の黄色いティーマークがINではほとんどのホールに設置されていた。

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(11番ロングホール。ティショットを飛ばしても。第2打地点からは立ち木がボールの邪魔をする)
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(13番ミドルホール。グリーン近くは急な坂。途中に並んだ3つのバンカーがプレーヤーを苦しめる)
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(送電用の鉄塔と高圧線がせっかくの自然美を損なう。「鉄塔は目印になって良いんですよ」とキャディさん)
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(18番ショートホール。100ヤード前後の距離しかないが、池とバンカーと植栽の配置が美しく、名物ホールと言っていいい)

 プレーした日、関東各地では紅葉が見ごろを迎えていたが、ここは松や桜、梅、藤、竹など紅葉しない樹木が多く、期待していた紅葉美は楽しめなかった。
 キャディさんも「紅葉はあまりないんです。桜がとても綺麗なホールがあるので、春にまた来て下さいね」という。そういえばHPでも桜の花の見事さをしきりに強調していた。景観的には「秋より春」のコースなのだろう。
 8番のティインググランド前にある池では泳いでいるヘビの姿を目撃した。なかなかの“大物”で、「野生の元気なヘビを見たのは何年ぶりだろう」と仲間内で話が盛り上がった。
 キャディさんも「ここには野うさぎ、リス、タヌキ、青大将と何でもいますよ」と話の輪に加わってきた。自然が大切にされているゴルフ場だと感じた。

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(セルフプレーを選択する人も多く、各ホールに丁寧なコースレイアウト図が設置されていた)

 セルフプレーでも回れ、ブラインドホールも多いことから、各ホールには必ず「コースレイアウト図」が設置されていた。
 ただ、バンカーなど途中のハザードまでの距離が記載されてなく、やや不親切。「使用するティインググランドによって距離が変ってくるから」との説明を受けたが、一考の余地はありそうだ。
 フェアウエー上には所々に「赤」と「黄」の丸いマークが埋め込まれている。何だろうと疑問に思って尋ねたところ「赤はAグリーンの手前エッジまで残り100ヤード。黄は同じく残り150ヤードです」とキャディさんが説明してくれた。

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(コース内に埋め込まれた距離表示板。とても便利だ)

 他にもA、Bグリーンの中央までの距離を表示した小さな白いマークがあった。セルフプレーの時は貴重な情報源となる。

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(随所に設けられた「避雷小屋」。横風が強いと濡れてしまいそうで心配になる)

 ゴルフ場の立地場所がちょうど雷の通り道になっているらしく、「避雷所」も数多く設けられていた。「最近は少なくなったが、それでも年に数回、雷でプレーが中断することがある」そうだ。コース内の茶店やトイレはきちんとしていて問題なかった。
 乗用カートは3台あるが特別の場合に使用するだけで、基本的には「歩き」。このため、ホール間の移動距離は比較的短い。勢い防球ネットが目立つことになる。
 
 セルフプレーは月曜日と早朝・薄暮プレー(0.5ラウンド、手引きカート利用)のみで、原則は「キャディ付」。レディースを対象にした割引制度はなく、「ツーサム」でのプレーも不可。

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(茶店近くにある自動販売機。「早朝にセルフで回られる方用です」と言われ納得)
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(IN、OUTとも最後の2ホールには夜間照明の設備がある。他のホールで暗くなってしまったら「トラックを動員します」)
 
 しかし、冬場でも2:00までにスタートできれば1.5ラウンドは可能。スルーでのプレーも、当日の込み具合次第ではOKなので、希望者は問い合わせてみると良いだろう
 この日、私たちの組についてくれたキャディさんは若い男性だった。ハウスキャディではなく「派遣会社から来ている」そうだ。パートさんを含め約60人のキャディさんがいて、うち20人ほどが男性の“派遣キャディ”さんだという。
 「大丈夫だろうか」――。ちょっと心配したが、このキャディさんは思った以上にレベルが高かった。残りの距離を素早く伝え、ボールの行方は必ず確 認。グリーン上でも自信を持ってラインをアドバイス。わざと難しいゴルフルールを尋ねてみたが、確信を持って正確に答えてくれた。
 ラウンドの途中でクラブを置き忘れた時、すぐに気づいて走って取りに行ってくれた姿が特に印象に残る。
 さて昼食。山小屋風のレストランは天井が高くて気持ちいい。外の景観は平凡だが内部は明るく、開放感がある。運営は「レストラン・アラスカ」が受託。
 女性客を意識してか、スイーツのメニューが充実。さらにソフトクリームの自動販売機を設けたり、特産の焼酎を用意するなど、飲食面でも様々な工夫が見られた。外の広いテラスは利用されている様子がなかった。
 1階に置かれた自販機で売られているソフトドリンクが1本300円というのはさすがに儲け過ぎだろう。自販機は利用者が多いだけに、この値付けは残念だった。

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(右側がロッカー。左側が浴室。脱衣場はない。手前の左側に椅子が置かれてあった)

 浴室はロッカー室に隣接している。プレーが終わってロッカー室に戻ると、各ロッカーの前にタオルとビニール袋が置いてあった。その場で脱ぎ、タオルを持って浴室に向かうスタイル。
 浴室は明るく、浴槽脇に並べられた植木の間から18番の美しいショートホールが眺められる。洗い場がパーティションで区切られているのもいい。浴槽は2つに分かれていたが、同じ湯温だった。
 HPを見ると、女性用には「プライバシーを重視したパウダールーム」が設けられているそうだ。女性客重視は最近のゴルフ場の大きなトレンドである。
 コンペルームは2階に6室。さらに、それとは別に「特別室」(2室)が3階にあった。そっと覗くと1室は浴室付きで、いかにもVIP御用達という雰囲気。「接待で時々利用される」らしい。室料は1万円。

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(スターティングテラスとバッグ置き場。宅配便の受付(正面奥)と一体化し、使いやすい)

 宅配便の手配はスムーズだった。年配の方が少ない人数で奮戦し、手際よく対応してくれた。ここはスペースが比較的広く、場所も玄関に近いので使い勝手がいい。ゴルフバッグは「1週間や10日なら無料」で預かってくれるという。
 ここのコースは無理攻めをしなければ好スコアが出やすく、初心者にも楽しめる。誰でも参加できるスポンサー付イベント(オープンコンペ)が頻繁に開催されており、小まめに料金やプランを調べて利用すれば、かなりのコストパフォーマンスが得られそうだ。
 さらに早朝プレーや薄暮プレーなどの割引サービスも豊富。大型コンペ用に「一日貸し切り」も可能だ。こうしたきめ細かな価格設定や営業面での柔軟な対応は名門コースには見られない点で評価したい。
 プレー代が2万円を越えるとさすがに高い気がするが、実質1万円台で楽しめるプランも多く、「お得感」はありそうだ。「都心に近い」というだけで高額なプレー代を取るゴルフ場も多い中で、貴重な存在ともいえる。
 クラブバスがないので帰りもタクシーを利用した。乗ると「送迎代はいただきません」と運転手さん。ゴルフ場と特別契約し、常にそうした割引をしているのだという。最後でもう一度、嬉しくなった。

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