2011年7月16日土曜日

サンレイクカントリークラブ=日光市の南。米人気ゴルファー「リー・トレビノ」と「杉本英世プロ」設計の美しいコース。池が嫌いな人には不向き

010
(9番の名物“浮き島”グリーン。ゴルフ場の看板ホールだ)
082
(ドラマの舞台になるのも、こんな美しい光景があるからだろう)
093
(映画のワンシーンのような景観)

 「プロゴルファー花」という連読TVドラマ(日本テレビ系列で2010年放送)があった。主演の加藤ローサがプロゴルファーを目指す“スポ根コメ ディ”だ。撮影の舞台となったのが栃木県鹿沼市にある「サンレイクカントリークラブ」。2011年11月に劇場公開される映画「サラリーマンNEO」も、 やはり同クラブで撮影されたという。なぜ、メディアに好かれるのだろう。特別の何かがあるに違いない。猛暑の7月中旬、水筒持参で行ってみると…。

122
(静けさ漂う文挟駅。近くには立派な杉並木)

 東京からはちょっと遠い。東北新幹線「やまびこ351号」(仙台行)で宇都宮駅まで54分。JR日光線に乗り換えて23分。「文挟」(ふばさみ)という小さな駅で下車する。8:04分着の電車で降りたのは、自分の他に若者1人だけだった。
 予約しておいたクラブバスが駅前で待機。運転手さんがニコニコと出迎えてくれる。「私、1人ですか」。「ハイ」。申し訳ない感じだ。
 15分ほどでクラブハウスに到着。東京駅からの所要時間は約2時間。
 他の同伴者(2人)はそれぞれ東京近郊の自宅からクルマで来場。1人は東北自動車道の鹿沼ICから、もう1人は東北自動車道の宇都宮ICで日光宇都宮道路に入り大沢ICから来たが、共に2時間半前後かかったという。
時間的には電車の方が早いが、新幹線代等の運賃4,610円(片道、自由席)は高く、やはり懐にズシリと響く。

024
(クラブハウスの裏手にある中庭。池の噴水から水は出ていなかった)

 山の高台あるクラブハウスは、白い蒲鉾型の屋根が印象的。日本を代表する建築家、丹下健三氏が設計したもので、「飛行機をイメージした」とホームページ(HP)に書かれている。
 しかし、地上から眺める限り、どこが飛行機なのか良く分からなかった。

013_2
(クラブハウスのエントランス。正面が入り口。左側が受付)

 内部は天井まで届く大きな窓から眩しい光が降り注ぎ、明るい。想像していたよりはコンパクトな造りだ。
 入って右側に受付。奥にプロショップとロッカールーム。左側に階段があり、2階のレストランに通じる。
 受付は女性3人。暑い盛りで来場者が少ないこともあって、どこか手持ち無沙汰な様子。その分、問い合わせには丁寧に答えてくれた。
 「サンレイクCC」には東コース、南コース、中コースがあり、計27ホール。昭和61年(1986年)にまず18ホールが完成。設計は往年の名プロゴルファー、リー・トレビノ。「日本で唯一、トレビノが設計したゴルフコース」というのが大きな自慢だ。
 平成5年((1993年)に9ホールが増設され、その時の設計者は杉本英世プロ。コース設計の専門家より人気プロゴルファーに依頼するのが、当時の経営方針だったようだ。
 受付スタッフから「本日はご予約頂いたコースが変更になり、トレビノが設計したコースを回って頂くことになりました」と通告された。
 コースの一部を修繕するためらしいが「トレビノコース」なら嬉しい。突然の変更でも不満はない。
 実はこのゴルフ場は平成14年(2002年)4月に一度、経営破たん。民事再生法を申請し、同年末に計画案が認可され、再建の道を歩んできた。
 その際も「リー・トレビノ」「杉本英世」というビッグネームが有形無形の力になってきたことは想像に難くない。少なくとも中年以上のゴルファーには、今でも心に響く人気ブランドだからだ。

008_2
(高台にあるクラブハウス。スターティングテラスからの眺めも綺麗だった)

 軽く練習。地元出身の同伴者1人を加えて、乗用カートでINコースの10番ロングホールへと向かう。

033_2
(ティインググランド脇の看板には情報がいっぱい)
034
(当日のピンポジションはハンドルに付けられた印刷物で分かる)
030
(INコース10番。ティインググランド前の大きな池。石垣の美しさが印象的だった)

 早速、目の前に大きな池が広がる。「真夏の照りつける太陽。そして美しい湖。まさにサンレイクですね」と若い同伴者。一同、これから繰り広げられるであろう池との戦いに思いを馳せる。
 4人ともそこそこの腕前なので、最初の池は難なくクリア。グリーン近くに置かれた池は難度を高めるが、ティインググランドに引き寄せられた池は美しい景観を演出するための素材であることが多い。ここもそんな感じだった。

053
(クラブハウス周辺の植木は手入れが十分。人工的過ぎて、違和感を持つ人もいるかもしれない)

 周辺の植栽は十分に手入れされ、どこを見ても綺麗。「撮影の舞台になったのは、この景観の美しさが大きな理由」と確信した。

035_2
(INコース11番のショートホール。かなりの上りで、距離感に迷う)

 続く11番は打ち上げのショートホール(レギュラーティから175ヤード)。やはり右サイドに池がある。ただ、池の周囲に青いシートのようなものが敷いてあり、最初の池に比べると美観は劣る。美しいというより距離感の難しいホールである。

037_2
(コース内で咲いていた小さな白い花。盛夏のせいか、他に草花は目にしなかった)
040
(コース内を悠然と歩くカモ。近くの池から出てきて散歩中)
041
(こうした池が随所にあり、まさにレイクCC)
044
(山間部にある割にはフェアウエーが広い。平坦なホールも意外に多かった)
051
(ピン位置は手前、奥とホールごとにかなりの変化を付けていた)

 続く12番と13番ホールは並んでいて、行って帰ってくる形のレイアウト。両ホールの間にやはり池が配され、往復で2度、出会うことになる。

055
(池がグリーン近くまで迫り、ハンディキャップ<13>以上に難しく感じたINの15番ホール)

 その後も15番、16番、17番と池がらみのホールが続き、同伴者は「毎ホール池があるような感じですね」と苦笑い。池が苦手な人には辛いコースだ。

063
(炎天下でのプレー。カモの泳ぐ姿が羨ましく思えた)
067
(景観の美しいホールが多く、女性にも人気が高いという)
068
(池が強調されがちだが、バンカーもしっかりある)
071
(木陰に入ると気温が下がり、ホッとっする)
079
(クラブハウスを背景にした「浮き島グリーン」。ピンが手前に切ってあり、距離感に悩む)

 象徴的だったのが午前中、最後に回った18番のミドル。グリーンが“浮き島”になっている名物ホールである。
 距離はレギュラーティから320ヤードと短い。きちんと第一打が打てれば、残りは100ヤード前後。決して難しくない(ハンディキャップは18)はずだが、浮き島グリーンのプレッシャーが、余計な緊張を強いる。
 同伴の上級者が「すくい打ちだけは絶対しない。それだけ注意すれば大丈夫」とアドバイスしてくれる。
 メキシコ系アメリカ人のトレビノは「サービス精神とユーモアに富んだ人」というイメージが強い。このホール設計には、そんな人柄も表れているような気がした。

094
(OUTコース4番。ショートホールは全て池が絡んでいた)

 午後に回ったOUTコースも、同じ様に池がらみのホールが多かった。特に印象的だったのは、グリーンの側にまで池が迫る4番ショートホールとレギュラーティからでも500ヤードを超える6番ロングホールの2つ。
 6番はティインググランドから池が見えない。午前中に回った12番ホールもそうだったが、“隠れ池”には一瞬、ヒヤッとさせられる。

088
(フェアウエー途中にある大きな池。レイアウトを良く確認しておきたい)

 コースレイアウトは事前にチェックしておいたはずだが、プレーに熱中してしまうと、ついつい池の存在を忘れてしまう。
 あるいは、池があると承知していても、樹木等に隠れていて見えないので不安を抱えたままショットし、ミスを重ねる。トレビノの術中にまんまとはまってしまうというわけだ。

102
(下からピン位置が全く見えない砲台グリーンに手こずった)
103
(池がなければ普通の丘陵コースの景観)
106_2
(最終ホールには夜間照明設備が整っていた)

 現役時代、ライバルだったジャックニクラウスは第一打の落とし所が見えないホールづくりを強く嫌ったという。
 しかし、トレビノはそんなことはあまり気にしなかったようだ。所々に大きな起伏があって、稜線の先が見えないホールにも何回か出くわした。
 「景観が美しく、戦略性に富み、面白いコース」――。それがトレビノ流のようだ。
 「ベントの1グリーン。これもトレビノがこだわった点です」。昼休みに男性スタッフさんが教えてくれた。
 日本の歴史ある名門コースの中には2グリーンのコースが少なくない。だが、これだとグリーンに向かってフェアウエーが狭まっていく設計にならず、本来のゴルフのあり方に反するという主張だ。
 日本でも最近、2グリーンを1グリーンに改修するゴルフ場の話を耳にする。同じ理由からだ。
 今回ラウンドした「トレビノコース」の場合、全長距離はバックティからで6,795ヤード、レギュラーティからで6,370ヤード。
 3つあるティインググランドはどのホールもゆったりスペースを取ってあり、バックティとレディースティの間が100ヤード近く離れている所もあった。
 コースレートはバックティから「71.7」、レギュラーティからで「69.8」。
 アベレージゴルファーにとって決して易しくはないが、難し過ぎて嫌になるという程でもない、チャレンジングな難易度だ。
 コースメンテナンスは良好。ある男性スタッフは「早朝や夕方はメンテナンス時間に当てているので、早朝プレーや薄暮プレーはやっていません。周辺ゴルフ場の芝が猛暑でやられた昨年夏も、ここの芝は元気でした」と強調する。
 ただ、グリーンの速さは公式には計測していないそうだ。キャディマスター室にいた別の男性スタッフさんに重ねて尋ねたら、「スティンプメーターで7フィートから8フィートくらいでしょうか。今日はちょっと遅めです」。
 「芝の養生を考えると刈り過ぎてもいけませんし、この暑さですから(芝の)伸びも速い」と調整の難しさを嘆いていた。
 ピッチマークが目に付いたので、グリーンも比較的軟らか目に造られているようだ。

091_2
(グリーンまでの残り距離は大きな数字で書かれていた)

 ラウンド中に気になった点が3つ。1つはグリーンまでの残り距離を示すフェアウエーサイドの表示板。
 太い字ではっきり書かれているのは良いのだが、左右の一方にしかない。1グリーンなので当然という理屈は成り立つ。が、フェアウエーが曲がったホールなど場所によっては片方だけでは見えにくい所もある。
 景観的にお洒落ではないかもしれないが、左右両サイドに設置してほしいと感じた。
 コースレイアウトが一部、入り組んでいるため、乗用カートを運転しながら進行方向が分からなくなる場面があった。これが2つ目。

092_2
(午後になって突然、雷が鳴り出した)

 もう一つは雷だ。午後1時過ぎからゴロゴロと鳴り出し、雲行きがぐっと怪しくなった。「ゴロウちゃんが来たから、急がなくっちゃ」と地元出身の同伴者。
 聞けば「夏場は雷が比較的よく通る地域」だそうだ。「冬の雪はどうですか」と尋ねると「12月、1月は意外に降らない。でも2月は降雪によるクローズが多い」とのことだった。
 プレー終了後に話を聞いた女性スタッフさんも同じ意見。「ただ、日光寄りの(標高の高い)ゴルフ場に比べれば、まだ降雪は少ない方」だという。
 プレースタイルは全て乗用カート利用で「セルフプレー」が中心。「キャディ付プレー」も可能だが、この日、キャディさんの姿は一度も見なかった。
 予約時に電話で対応してくれた女性スタッフさんも「最近はほとんどがセルフですね」という。
 乗用カートには各ホールごとのレイアウト図やピン位置を示すガイドが搭載されていた。
 ただ、これだけでは「第2打地点からバンカー手前まで何ヤードだろう」といった細かな疑問には答えられない。ブラインドホールもあるので、初回は「キャディ付」でプレーした方が賢明かもしれない。
 冒頭に紹介した丹下健三氏(正確には丹下健三・都市・建築設計研究所)設計のクラブハウスに話を移す。

086_2
(レストランの内部。天井の丸い形が印象的)

 2階レストランの内装は、個性的なデザインが印象に残った。半円筒形の天井。椅子とテーブルが長く3列に並ぶ。大きな窓。明るく開放的で、小さなテラスが外側に設けられている。
 正面に見える景色が素晴らしい。午前中、最後に回った18番ホールの浮き島グリーンを上から眺めることができる。
 その左側には朝、スタートした10番ホールのティインググランドと池。造成時、頑張って平坦なホールを増やした様子が想像できる。
 昼食のメニューは一般的な内容。料金も多くが1,000円台前半で、ゴルフ場としては抑え気味に感じた。「モーニングコーヒー、無料サービス中」の貼り紙もあった。
 良心的な価格志向と評価していたら、1階の売店で購入した炭酸飲料が何と1本260円。通常120円程度で販売されている商品だ。これにはガッカリした。
 レストランの側にはラウンジがあり、重厚感のあるソファーが並ぶ。その手前に「氷と冷水」を提供する容器が置かれていた。持参した水筒にたっぷり入れ、水分補給に万全を期す。
 エントランスの一角ではお土産用に「日光」の名前の入った羊羹や漬物、うどん、そばなどを販売中。世界文化遺産に登録された「日光」近くのゴルフ場にいることを改めて思い出した。

004
(通路には絵画や大きな花瓶(造花)が置かれ、上質な雰囲気づくりに貢献していた)
005_2
(洗面所はちょっぴりメルヘン調のデザイン)

 ロッカーは木製で綺麗だが、横幅が狭いのが難点。幅の広いバッグだと出し入れがギリギリだ。貴重品ボックスは「指紋認証式」。トイレは清潔感があり、個室(6室)も横幅が広かった。

115
(脱衣場。入り口には杉の巨木を切った飾り物があった)
116
(比較的こじんまりとした浴場。遠景は見えない)

 浴室と脱衣場はコンパクトながら好印象。浴室の窓の外は日本風の庭園。小さな玉石を敷き、低木を植え、石灯篭が全体の構図を引き締めている。洗い場にパーティションがなかったのは残念。
 脱衣場の棚に置かれた籐製のカゴは、常に裏返した状態で並んでいた。注意して見ていると、客が帰るたびに担当の男性スタッフさんがサッと寄って来て、カゴをひっくり返している。
 確かにこの状態の方が初めて使うような感じがして、利用者には気持ちいい。

019
(開放的なドライビングレンジ。朝からの猛暑で、誰もいなかった)

 驚いたのが練習場だった。クラブハウス前の広い駐車場を横切って階段を登ると、9打席のドライビングレンジが現れる。側の小屋に担当の女性スタッフがいて、用紙にサインしボールを受け取る仕組み。
 1箱24球で315円。ボールは新旧混合。カラーボールも含まれていた。正面の山まで120ヤード程度しかない。
 「ドライバーは打てないですね」とスタッフに確認すると「(山へ)どんどん打ち込んじゃって下さい」。鷹揚というか、う~ん。初めての経験だった。

025
(南コース側にあるバンカーとアプローチの練習場)

 少し離れたところにあるアプローチ練習場は、バンカー付きの本格的なもの。かなり上手な女性が黙々と練習に励んでいた。

027
(パター練習場もきちんと整備されていた)

 アクセス面でのハンディもあり、他のゴルフ場同様、集客には頭を悩ませている。それだけに営業面での努力が目立った。
 まず「プレー料金」。ハイシーズンの平日がセルフで7,100円、キャディ付で9,600円。休日はセルフで13,100円、キャディ付で15,800円。
 7月16日から9月末までの夏季特別料金は、平日がセルフで6,600円、キャディ付で9,100円。休日はセルフで11,000円、キャディ付で13,500円。
 これらは全て「昼食代込み」(1,050円まで)なので、夏休みの平日にセルフ(6,600円)で予約すれば、プレー代は実質5,550円。「コンペパック」ならここからさらに500円引きで、1ドリンクが付く。これは安い。
 「コンペパック」もハードルが低い。通常は「3組9人以上」が適用人数だが、「2組7人以上ならOKです」。
 予約は「何ヶ月先でも受け付けます」と言い、キャンセル料金も取らない。休日でも2サム保証をしてくれる。
 シニア割引やレディース割引の制度はないが、1人でも参加できる「オープンコンペ」は毎週のように実施。他の組に迷惑を掛けなければ、誰でもバックティからラウンドできる。
 女子プロによる「レッスン会」(昼食付、10,000円)も毎月のように開催されている。いずれも利用者本位で、アクセスが楽な地元の人には特に重宝されそうな内容だ。
 精算時、ある女性スタッフさんに「東京から時間とお金をかけて日光近くまで来るなら、ぜひ1泊し、ゆっくりゴルフを楽しみたい」と話したところ、 「鬼怒川温泉のホテルと提携しています。今市駅前のビジネスホテルも紹介します。2食付で割安になりますよ」と熱心に勧められた。
 こうした営業熱心さも、メディアに撮影場所として重宝される大きな理由だろうと納得した。

0 件のコメント:

コメントを投稿